『仁王3』インタビュー。“戦国死にゲー”は、ついにオープンフィールドに変化。サムライとニンジャを切り替えるアクションとなり、妖怪技なども別の形で登場。地獄のような戦国時代が幕を開ける

by西川くん

更新
『仁王3』インタビュー。“戦国死にゲー”は、ついにオープンフィールドに変化。サムライとニンジャを切り替えるアクションとなり、妖怪技なども別の形で登場。地獄のような戦国時代が幕を開ける
 2025年6月5日に発表された、コーエーテクモゲームスのダーク戦国アクションRPG『仁王3』。対応ハードはプレイステーション5(PS5)、PC(Steam)で、発売は2026年初頭を予定している。開発はコーエーテクモゲームスのTeam NINJAが務める。

 本作は2020年3月12日に発売された
『仁王2』の続編で、約5年ぶりとなる最新作。“戦国死にゲー”と銘打たれた骨太な難度もさることながら、細かな装備収集要素や育成によるハック&スラッシュ要素や、豊富なアクションでさまざまな攻略法が存在する戦いの自由度などで評価され、シリーズ累計販売800万本を突破する人気シリーズだ。

 本記事では
『仁王3』のゼネラルプロデューサー・安田文彦氏と、プロデューサー・柴田剛平氏にインタビュー。『仁王3』がどのような作品になっているのか、詳しくお聞きした。また、インタビューの前に、PS5で2025年6月18日まで期間限定配信の体験版を1時間ほど試遊させていただいた。試遊してわかった、本作の鍵となる新たなシステムなどを先にお伝えしておこう。

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『仁王』は、オープンフィールドへ

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 体験版を試遊してまず大きく変わったのが、ゲームがオープンフィールドになったこと。『Rise of the Ronin』クラスのオープンワールド、というほどの広さではないようだが、ステージが自由に探索できるオープンフィールドとなり、これまでのステージ踏破型ではなく、マップを自由に攻略していくようなゲームシステムになった。

 探索要素も拡大しつつ、道や拠点にいる敵ともしっかり戦っていく形になっており、
『仁王』らしい骨太な戦いを、自分ならではのアプローチで攻略していくようなゲーム性になっていた。ちなみに、本作からジャンプができるようになっていて、崖登りなども可能。なんでも登れるような自由度ではないので、このあたりは『Wo Long: Fallen Dynasty』に近い感じだった。

 フィールドには“地獄”と呼ばれる、前作でいう“常闇”のような空間があり、こちらがマップの攻略目標。地獄を祓っていき、最後の目標となる最深部をクリアーすることで、つぎのマップへのルートが広がるようだ。地獄という目標ポイントはありつつも、そこにいたるまでの道順はプレイヤーに委ねられているゲームシステムになっている。

 そして、もうひとつの大きな変化が、バトルスタイルの違いだ。初代
『仁王』から続く、刀や槍などを駆使したサムライのような剣戟アクションはもちろん健在。『仁王2』からは妖怪の力を駆使した“妖怪技”や“妖怪化”といった要素があったが、こちらは『仁王2』ならではのシステムといった感じで、本作ではまた別の形で登場するとのこと。武器ごとの上段・中段・下段といった構えも健在だ。

 
『仁王3』では戦闘スタイルが“サムライスタイル”、“ニンジャスタイル”の2種類に分けられた。バトル中にいつでも切り替えられ、バトルシステムをガラリと変更しながら戦える。

 サムライスタイルは、これまでの
『仁王』シリーズと同じようなスタイルで、気力(いわゆるスタミナ)を回復する“残心”を駆使して戦える。新たな要素として、武技を強化してくり出せる“技研ぎ”が追加され、チャンスが訪れればよりパワフルかつド派手に立ち回れるようになっていた。また、刀や槍などはサムライ専用、鎖鎌などはニンジャ専用というようにスタイルごとに使用できる武器が異なるようになった。

 ニンジャスタイルは、主人公が身軽になり、スピーディーに動けるように。これまであった “鎖鎌”などのニンジャらしい武器は、ニンジャスタイルでのみ使えるようだ。1発の威力は低いが全体的に手数にすぐれ、さらに“残心”による気力管理がない代わりに、“霞”という独特の移動技が使用可能。自分の残影をデコイにし、敵の背後に回り込むような立ち回りが可能だった。

 また、これまでの“忍術”は、習得したものを装備し、使い切ったら社(拠点となるチェックポイント)で補充するような使いかたが基本だった。本作では、忍術はニンジャスタイルでのみ使用可能となっている。

 忍術を発動できる回数に制限があるのは同じだが、攻撃を当てていくと回数が回復するシステムになっているので、攻めながら忍術を大量に使いこなせるようになっていた。ちなみにサムライスタイルの攻撃でも補充された。

 さらに、スタイルチェンジのアクションは、防御アクションにもなっている。ボタンを押すと早着替えのように、瞬時にその場で衣装を変更するのだが、そのときの赤く光る危険な攻撃“大技”を弾くくことが可能で、敵の体勢を崩せるようになっていた。
『仁王2』の“特技”(妖怪の姿になってカウンターしたりするアクション)や、『Wo Long: Fallen Dynasty』の“化勁”などに近いイメージだ。

 装備セットはサムライスタイル、ニンジャスタイルに分かれていて、装備しているものもスタイル変更をした際に一瞬で変更される。装備できる防具自体が2スタイルで異なるので、装備の幅も2倍。突き詰めてプレイすれば、ふたつのビルドを同時に使い分けるようなプレイもできそうだ。

『仁王3』インタビュー

 といった体験をもとに、安田氏と柴田氏にインタビュー。システムで疑問に思ったことや、『仁王3』がどのような経緯で作られることになったのかなどをお聞きした。
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安田文彦 氏やすだ ふみひこ

『仁王3』ゼネラルプロデューサー。『仁王』ではディレクター、『仁王2』ではプロデューサー&ディレクターを務めた。Team NINJAブランド長。

柴田剛平 氏しばた こうへい

『仁王3』プロデューサー。『仁王』、『仁王2』では、プロジェクトマネジャーを務めた。

『仁王』の新たな挑戦

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――今回、安田さんはゼネラルプロデューサー、柴田さんはプロデューサーということで、どのようなスタッフ体制で開発に臨まれたのでしょうか?

安田
 ディレクターは『仁王』シリーズに最初から関わってきたメンバーで、テクニカルディレクターはじめ主要の開発スタッフもほぼ続投です。ただ、チームには若いスタッフも増えていて、若返りはしています。『仁王』シリーズは2017年から始まり、『仁王2』が2020年発売ですから、シリーズ作品を学生のころにプレイしたというようなスタッフも多数参加しています。

 
『仁王』発売から時間が経ったんだなと感じつつも、シリーズ作品のファンが開発スタッフとして加わることは大きな力になりますし、既存のメンバーとしても心強く、高いモチベーションを保てているように感じます。

――『仁王2』発売後、2020年6月4日発売の週刊ファミ通本誌にて、プレイヤーアンケートを交えて安田さんにインタビューさせていただきました。そのとき、安田さんはすでに「もし『仁王3』があるのであれば、つぎはオープンワールドでしょうね」とお答えしていました。そのときからすでに、ビジョンはあったのでしょうか。
安田
 そのときすでに、裏では『Rise of the Ronin』などが動いていたので、そう答えたのかもしれません。また、もともと『仁王2』を作り切って、リニアに進むステージを攻略していく以外の形が作れないものかと模索していましたが、なかなかゲームデザインとして答えを出せない部分も当時ありました。

 今回はもう1度見つめ直し、
『Rise of the Ronin』を制作した経験も生かして、オープンフィールドに挑むことにしました。なお、『Rise of the Ronin』を制作したスタッフも本作には多数関わっています。

柴田
 今回オープンフィールドに挑戦するとなり、サムライとニンジャのスタイル変更など、ゲーム全体のコンセプトが固まっていきました。実際に動き出したのが2021年末~2022年ごろでしたね。『仁王2』のダウンロードコンテンツがすべて作り終わるくらいのタイミングでした。

――2021年2月の『仁王』4周年のタイミングでは「戦国時代のサムライや妖怪たちから離れ、新しいプロジェクトに挑戦します」とお答えしていました。と言いつつ、じつのところはかなり早い段階で『仁王3』に着手されていたんですね。

安田 
『仁王』『仁王2』と10年近くディレクターとして制作し、物語としてもゲーム的にもある程度やり切れたと思ったので、個人的には1度区切りが付いたと思っていました。ですが、柴田を中心に『仁王』チームのメンバーたちから「『仁王3』を作りたい!」という声が多く挙がりまして。そこから、コンセプトなどもハッキリとしてきたので、だったら挑戦してみようか、という話になりました。

――しかも、そのあいだにも“ダーク三国死にゲー”の『Wo Long: Fallen Dynasty』があり、“幕末オープンワールド”の『Rise of the Ronin』があったわけですよね。昨今のタイトルとしては、とても速い開発スピードに感じます。以前も、1年1本は大きなタイトルを発売したいと、安田さんからお聞きしましたが。

安田
 先ほどのお話のように、会社方針もあって若いスタッフは多数採用していますし、毎年スタッフ数自体は増えています。また、主要スタッフの配置もうまく分散できており、任せられる体制になってきていると思います。そのため、Team NINJAの中でも制作タイトル数を増やすことができました。

 プラチナゲームズさんに制作をお願いしている
『NINJA GAIDEN 4』もありつつ、今後も毎年1本は大型タイトルをお届けしたいと計画しています。TeamNINJAにとって2026年は『仁王3』がそれに当たります。

『仁王』ならではのオープンフィールド

――実際に本作はオープンフィールドのタイトルとなりました。オープンフィールドと言うように、『Rise of the Ronin』ほどのオープン“ワールド”ではないと思うのですが、なぜオープンフィールドを採用したのでしょうか?

安田 
『仁王』シリーズは攻略の自由度が高いタイトルですが、それはアクションの幅としての自由度で、ステージやレベルデザインの攻略の幅はそこまでありませんでした。そこを『Rise of the Ronin』で培ったノウハウを踏まえ、密度の高いアクション体験に加え、オープンフィールドだからこその攻略の幅を持たせようと考えました。たとえば、ボスに勝てないときには、ほかの場所を探索したり、ほかのボスを攻略したりといった幅です。

 ただ、最初はフィールドの設計が難航しました。あまりにも広すぎてしまったり、逆に狭すぎてこれまでの
『仁王』シリーズと変わらないようなものになってしまったり。その塩梅をレベルデザインチームが何度も調整して、ようやくうまい落としどころに落ち着きました。

――『Rise of the Ronin』とは、どのような差別化を図っているのでしょうか?

安田
 体験としては明確に違うものになっていると思います。『Rise of the Ronin』は、幕末の世界を生きていくことがテーマなので、幕末のフィールドを再現することが制作の主軸でした。『仁王3』は、シリーズのテーマとも言える“戦国死にゲー”である部分は変わりませんので、何度も何度も挑戦して困難に立ち向かう体験と、それを乗り越えたときに味わえる達成感が主軸です。それをオープンフィールドの形に落とし込みつつ、自由度を高めました。

 シリーズ従来のリニアに進むステージ制のよさも、もちろんあります。今回はオープンフィールドにしたことで、プレイヤーの皆さんがシームレスに困難に遭遇するような、プレイヤーそれぞれの体験も大きな価値として生まれました。これまでとはひと味違う魅力を感じ取ってもらえると思います。

柴田
 これまではミッション方式でしたので、ステージごとに用意された密度の高いバトルですとか、攻略の楽しさもありました。それをオープンフィールドで活かすことを目的としていたので、フィールドの広さのみに頼らないように気を付けていました。いままでの楽しさを担保しつつ、それでいてフィールドを探索する自由度を広げています。

――たしかに、美しい幕末の世界をオープンワールドで生き抜く、みたいな感じよりも、血なまぐさい荒廃とした戦国時代で、人間や妖怪と戦うことこそが、『仁王』らしいなと言いますか。

安田
 和風な世界観であることやダーク戦国ファンタジーであることは、オープンフィールドになったとしても感じてもらえるようにグラフィックチームが強く意識して作っています。

――なるほど。また、ムービーなどからも察することができるように、本作の舞台は戦国時代なんですよね。以前のインタビューでは「もし『仁王3』があるなら、戦国時代は描き切ったので海外になるでしょう。たとえば三国志とか」とお答えされていました。

安田
 きっとそのときにはもう、『Wo Long: Fallen Dynasty』の企画がもう動き出していますね(笑)。

――そうなんですね(笑)。どこかで見たキャラクターも居るようですが、世界観は同じ戦国時代になるのでしょうか?

柴田
 まず、舞台は戦国時代にすることは最初から決めていました。やはり『仁王』シリーズファンの方々は、“戦国死にゲー”として、ダークな戦国時代の世界観を好きになってくれていると思います。いきなり違う世界観でスタートしてしまうと、「あれ、これ本当に『仁王』かな?」と思われてしまうのではないかと。

 従来のシリーズと同じ戦国時代を描いているのでそういった部分で疑問に思われるかもしれませんが、物語を進めていくとまた風景も様変わりして、だから戦国時代を舞台にしたんだなとわかっていただけるかと思います。
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――物語としては『仁王』のウィリアムの活躍があり、『仁王2』で秀のストーリーがあって、そこから地続きの世界観なのでしょうか?

安田
 うーん、回答が難しいのですが、地続きだとも言えるし、そうではないとも言えます。ただ、時代としては『仁王2』とほぼ同じ時代が舞台で、それをまた別の視点で描いています。たとえば、体験版では“三方ヶ原の戦い”前後が舞台になっています。となれば、徳川家康や武田信玄も出てきます。

 シリーズをプレイされた方々ならば「おっ」と思えるキャラクターもいますが、これまで
『仁王』を遊ばれていない人も、イチから楽しめるタイトルになっているので、ストーリーを楽しみにしている方もぜひ注目してください。

――主人公は、徳川竹千代という名前なんですよね。主人公は『仁王2』と同じようにキャラクタークリエイト式ですが、どのような主人公なのでしょうか?

安田 
『仁王2』の秀千代と似たような、本名はわからないけれど大きな歴史の流れとつながりがあるような主人公です。歴史に詳しい、察しのいい方ならすぐわかってしまうかもしれません。体験版の範囲ではあまり描かれていないですが、歴史ロマンあふれる部分は今回も大切に考えています。

――期待しています! 『仁王』シリーズはマスコット的な妖怪がいますよね。木霊、魑魅、すねこすりなど。本作からのマスコット的な妖怪“千々古”もいて、やはり増やしたかったのでしょうか?

柴田
 それぞれ探索に紐付けたかったので、木霊やすねこすりなどの妖怪もアクティビティー的な要素になっています。千々古も、鈴の音が聞こえたら空を見上げてもらうと空中に浮いているので、それを射抜くことで報酬が手に入るような遊びになっています。

――悪くない妖怪なのに、弓矢で射抜いていいのかなと思いました(笑)。

柴田
 一応、妖怪としては遊んでいるという設定になっています(笑)。探索要素でありつつ、遠距離武器の練習にもなるでしょう。

サムライ×ニンジャのダブルスタイル

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――バトルで大きく異なるのが、サムライスタイルとニンジャスタイルの変更です。どのように考えられたのでしょうか?

柴田 
『仁王』でやりきれなかったことを『仁王2』で安田が取り組み、システムとしてはとても完成度の高いものに仕上がりました。そのため、これ以上のアクションの拡張は複雑になってしまうので難しい面がありました。どうしようか考えたときに、アクションの手触りと、操作したときの見た目を大きく変えようと思ったんです。

 とはいえ、いままでの『
仁王』らしいアクションがなくなってしまったり、別モノになってしまったりするのは違いますよね。いままでは、プレイヤーキャラクターの中に、サムライもニンジャもすべて内包するような形でシステムを構築していましたので、それを独立させつつ、うまく組み合わせて戦う方法を模索し、現在のスタイルチェンジの仕組みになりました。

安田
 これまでの主人公は、サムライとして軽装~重装の差や構えの違いなどで立ち回りが変わりました。やろうと思えばニンジャのような形で素早い身のこなしで戦うこともできたと思います。今回はより明確に、ニンジャらしいゲームプレイを用意しています。

 ゲーム体験としては、従来の構えに似ているところもあって、これまでも「自分は上段しか使わない」みたいに構えを1個に絞ってプレイしてもクリアーできました。あくまでアクションの幅のひとつですので、相手を見てスタイルを変えてもいいし、変えなくてもクリアーできます。これは体験版で、我々としてもとくに反応を気にしている部分です。

――「自分はサムライ1本でいく」、「自分はニンジャとして生きる」みたいなこだわりのプレイもできますし、切り替えて臨機応変に立ち回ることも可能なんですね。

安田
 そうですね。キャラクタークリエイト制は引き続き採用していますから、なりきってプレイしてみてください。

柴田
 そういった人たちのために、スキルの中には片方のスタイルのみを活かしていくようなものもあります。

――竹千代が、サムライでもありニンジャでもある理由はあるのでしょうか?

柴田
 はい、そこも物語に取り入れています。

安田
 Team NINJAのタイトルに物語を期待している人は少ない、と私は思っていたり(苦笑)。ただ、『仁王2』でも歴史とファンタジーの結びつきはうまく描けたんじゃないかなと思っていますし、『仁王』の西洋の要素も含む世界観が好きだという声もいただいています。また、『Rise of the Ronin』などを経て、アクションと同じようにストーリーを楽しんでくださる人も増えてきたので、そこも楽しんでいただけると思います。とはいえ、基本はアクションRPGであることを重視しています。

――スタイル変更時の弾き性能ですとか、Team NINJAが作ってきたアクションの集大成のような形で好評だったものをうまくミックスしているように感じました。

安田
 やはりアクションバトルを作る中で、パリィ系のアクションはアクセントにしやすいです。『仁王2』の特技もカウンター系アクションで、それとはまた違う形ですが、今回も取り入れています。いずれのタイトルも、やはりシステムの仕組みや見せ方は苦労した経験もありますので、好評だった部分や不十分だった点はTeam NINJA内で意見交換しています。ですので、『仁王3』でもこれまでのエッセンスは入っていると思います。


――これまでにない部分ですと、ニンジャスタイルの忍術が、バトルを通して補充できるようになり、大量に使うことができました。これはオープンフィールド体験との兼ね合いなどもあって採用したのでしょうか?

柴田
 どちらかというと、バトルとしての体験ですね。ニンジャスタイルは、スピーディーな身のこなしであることは第一だったのですが、やはり忍術を使えることがニンジャらしさだと考えました。機動性の高い戦いかたができるのに、忍術を使い切ってしまうと社に戻って補充しないといけない、となるとバトルのテンポが悪いですよね。

 ニンジャが好きなのに、忍術を使い切ってしまったらサムライスタイルで戦い、社に戻るまでサムライで居なくてはならない、というのも選択の自由度を狭めてしまいます。ですから、戦いながら忍術を補充できるアクションにしています。
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――遊んだ限りでは忍術は手裏剣などの飛び道具がメインでしたが、これまでのような設置系や発動系もあるのでしょうか?

柴田
 はい、あります。忍術はこれまであった設置系や属性攻撃系など、だいたいあると思っていただければと思います。

――『仁王』シリーズは忍術がものすごく強い、というイメージが個人的にはありますが、ニンジャスタイルの忍術はどうでしょうか?

安田
 初代『仁王』のときはすごかったですね(笑)。『仁王2』は毒が猛威を振るったり……。結果的に、いろいろとバランスに手を加えたりしました。攻略法のひとつとして確立して拡散されることもあるとは思いますし、基本的にはあまり弱体化するような調整はしたくなくて。まだまだ調整中ですが、攻略の幅として許容できるものは許容したいと思っています。

――忍術スキルがスタイルとして独立しましたが、陰陽スキルはありますか?

柴田
 あります。陰陽スキルはどちらのスタイルでも使用でき、札をアイテムとして使う従来のような形です。また、『仁王2』では“魂代”を手に入れると、妖怪技が使用できましたよね。そこのシステムが、今回は陰陽スキルになっています。

 ですので、敵を倒した際にドロップした魂代を拾うと、陰陽スキルの札となり、陰陽スキルが使えるようになります。また、一部の強敵を倒した際にドロップする特別な魂代を拾うと、その妖怪が札となります。使用するとその妖怪を呼び出して得意な攻撃をくり出してくれます。つまり、妖怪技の代わりのような陰陽スキルがあります。

――そこは『仁王2』で人気だった妖怪技システムを踏襲しつつ、本作ならではの形に落とし込んだ結果なのでしょうか。

柴田 
『仁王』『仁王2』で人気だったシステムや、ハック&スラッシュ性などは本作でもとても大事にしたいところですから、消したくありませんでした。魂代を集める遊びも魅力のひとつでしたので、本作に合わせて陰陽スキルと絡めた形になりました。

――なるほど。サムライスタイルは基本的にそのままでありながら、ジャストガードであるスキル“捌き”や、武技を連続でくり出せる“技研ぎ”などがあります。ここはサムライの部分も強化しようと考えて取り入れたのでしょうか。

柴田
 体験版を配信するまで、社内でも数々のテストを重ねていきました。最初のころは「ニンジャスタイルが強すぎる」といった意見がとても多かったので、サムライスタイルを強化したら「サムライスタイルが強すぎる」と、片方が極端に強くなることが多かったですね(苦笑)。

 もちろん調整はしていますが、単に立ち回りが強いサムライスタイルになってしまうと、これまでのシリーズ作品と変化がなく、新鮮味がなくなってしまいます。サムライならではの特徴をより持たせたいというところで、武技をフィーチャーし、強力な武技をくり出せる“技研ぎ”を取り入れました。

――また、サムライスタイルとニンジャスタイルで使用できる武器種が異なります。『仁王2』までに出てきた武器種が登場しつつ、さらに新しい武器も取り入れているイメージなのでしょうか?

柴田
 武器種の詳細についてはまだお話できないのですが、これまでの主人公たちはニンジャっぽい武器もサムライとして使っていましたよね。今回は、サムライとニンジャで武器を分けて持たせることにしました。

安田
 まぁ、だいたい武器種は『NINJA GAIDEN』シリーズからの使い回しです。

柴田
 ちょっと! ちゃんと新しい技や動きになっていますし、せめて積み上げてきた経験とか言いましょうよ(苦笑)。

――(笑)。“地獄”は、『仁王2』の“常闇”に似ていると感じましたが、そのイメージであっていますか?

柴田
 はい。常闇も進化させようと考えたのですが、そのままの形で採用するのはおもしろ味に欠けかます。和のダークファンタジーとして、『仁王3』ならではの特徴がほしいと考えたときに、“地獄”を出すことにしました。

 “和”の中で、いちばん恐ろしい場所はどこだろうかと考えたら、やはり地獄だと思うんです。ですので、フィールドに地獄の一部が現れて、結果妖怪たちが入り混じるような世界になったら、和風ダークファンタジーらしさ、そして
『仁王3』ならではの要素になると考えました。

――“地獄”は、どのような攻略要素になっているのでしょうか。

柴田
 主人公の大きな目標のひとつは、地獄を祓うことです。地獄がある状態ですと、フィールドの先に行くことができません。オープンフィールドを攻略するうえでの鍵になっています。いきなり地獄に向かうこともできる自由度を持たせていますが、フィールドを探索して戦って、主人公を強化し、それから地獄を攻略することもできるようになっています。

 フィールドには敵がいるので、経験値を稼いでステータスを上げたりですとか、装備品を集めたり。また、レベル上げだけではなく戦いかたが変わるような強化、たとえば先ほどお伝えしたように、魂代を集めて陰陽スキルに利用することも可能です。ほかにも、フィールドを攻略していくと新たな忍術を取得したり、特殊なスキルなども習得できたりします。

――攻略順の自由度がありながらも、『仁王』シリーズらしく、ビルドの自由度もあるんですよね。

柴田
 今回はさらに、サムライとニンジャで2種類のビルドを使い分けることができます。たとえばサムライは重装にして、ニンジャは軽装にするような。体験版でもある程度はその差を付けたり、特別なビルドを組んだりすることもできますので、ぜひそのあたりの幅について、ご意見をいただけるとありがたいです。

――装備品にはいつも通り細かな特殊効果がズラリと並んでいました。さらに本作の新要素として、探索で新たな能力を手に入れ、社でパッシブスキルとして付け替えていく“能力付け替え”システムがありました。わかりやすい能力を付与できるのかな、と思っていたら、初手からすごくマニアックな能力が伸びていって(笑)。もう最初から、細かなビルドが楽しめるゲームなんだというメッセージ性を感じました。

柴田 
『仁王』シリーズはビルドを組み立てるのも醍醐味のひとつです。手に入るもので、武技や忍術はとてもわかりやすいですよね。それがありつつ、より深い部分も楽しめるように、探索で手に入るものをカジュアルとコアな部分で両方用意しました。

 ただ、自分でも“能力付け替え”は最初から深みを見せすぎなのではと思っていました(笑)。最初はもっとわかりやすい能力を提供したほうがいいのかな、とすごく迷ったのですが、最初から深みを見せたほうが今後のやり込み度も序盤からわかってもらえるのではないかと。また、序盤は細かい部分を気にしなくても攻略できるようになっています。

安田
 シンプルな方向性でお届けすることも考えてはみましたが、やはり細かいビルドを楽しめるのは『仁王』シリーズの醍醐味です。『仁王3』はとくに、もし攻略に行き詰ってしまってもほかのフィールドを探索して強化したり、別の装備を探してみたりするなど、多彩なアプローチができます。すべてを使いこなさなくても遊べるようにしていますし、その中に深く複雑なシステムがあったとしても、決して悪いとは思っていません。そういった部分は、プレイヤーの皆さんが試行錯誤しながら楽しんでもらいたいところです。なにをやっても、どうせ落命しますから(笑)。

――やはり骨太さは、健在であると(笑)。

安田
 もちろん簡単にクリアーさせる気はありません(笑)。とはいえ、理不尽にプレイヤーの皆さんを落命させたいわけではありません。段階を経て、いろいろな戦術を学んでいくことも魅力のひとつであり、その試行錯誤も醍醐味だと思っています。ですから、ただシンプルに、そして簡単なものは本作には合わないのかなと。

 また、システムなども段階を経て解放されていくようにしています。本作はシリーズで踏襲されてきたシステムも多いですから、一度にすべてが使えても何を使えばいいのかわからないですよね。もちろんアクションスキルが高いプレイヤーは刀を振るだけでもクリアーできるものの、攻略が難しい場合にさまざまなアプローチを学んでいけるような形にしています。
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柴田
 たとえば、今回は武器ごとの構えの変更が最初からは使用できません。とはいえ、やろうと思えば初期からすぐに使えるわけですが、スキル解放のひとつになっています。構えは『仁王』シリーズの特徴のひとつですが、今回はニンジャスタイルという新しい要素がありますので。

 慣れている人はそこまで気にしないと思いますが、初めて遊ぶ人にとっては、サムライスタイルとニンジャスタイルが最初からある時点で、武器2種とふたつの構えが用意されているようなものです。ですので、いきなりサムライスタイルで構えが使えると、アクションの幅が多すぎて戸惑ってしまうんじゃないかと。

――また、切り札のひとつとして“九十九化身”が使えますが、『仁王2』では“妖怪化”がそれにあたるシステムなので、初代に戻ってきたと思いつつ、『仁王2』のような見た目の変化もありました。

柴田 
『仁王2』は半妖の主人公なので妖怪化でしたが、『仁王3』の主人公はそうではありません。『仁王』ではウィリアムが自分の守護霊を武器に宿し、九十九武器として戦っていました。『仁王3』もそれを踏襲しつつ、本作ならではの形にしています。

 
『仁王3』の主人公は、守護霊の力をより引き出せる才能がありますので、守護霊と半分合体したような見た目になります。ちなみに見た目は、サムライスタイルとニンジャスタイルで異なります。

体験版から、ぜひご意見を

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――主人公はキャラクタークリエイト式で、これまで以上に自由な主人公を制作できるのでしょうか。

柴田
 体験版ではプリセットのみが選べますが、『仁王2』よりも少しカスタムの幅が上がっています。また、カスタマイズの部分は、サムライとニンジャで個別に設定できるので、さらに楽しさが広がっているはずです。キャラクタークリエイトの共有機能も、もちろん製品版ではお楽しみいただけます。

――マルチプレイ要素や、“血刀塚”などの非同期オンライン要素などは、前作よりそのまま踏襲されています。協力マルチプレイ部分では、どのような新要素がありますか?

柴田
 基本的には、複数人で協力プレイできる要素はそのままです。ただ、ステージを選択するゲームではないので、マッチングしたプレイヤーと、フィールド上をお互いにある程度自由に探索や攻略できる形になっています。

 一定のエリア内であれば複数人でフィールドをバラバラに探索してもいいですし、いっしょに挑むこともできます。ホストのプレイヤーが、たとえばボス戦に挑むとなったら、全員集結するのはこれまで通りです。よりプレイヤーたちがフィールドを自由に楽しめるようにしています。

――さすがに、まるでMMORPGかのように、フィールド全体で協力プレイするわけではないんですね。

柴田
 せっかく協力プレイをしているのに、1度も出会わずに終わってしまったら、さすがに意味がないですから(笑)。

安田 
『Rise of the Ronin』でも、オープンワールドの世界を協力プレイで遊びたい、という声はいただきました。しかし、特定のステージに挑む協力プレイはあるものの、ワールドでの協力プレイは残念ながら実現できませんでした。

 
『仁王』シリーズは、ストーリーを協力プレイでみんなで追える“常世同行”もあり、人気だったシステムです。そこは『仁王』シリーズだからこそ、オープンフィールドでも実現しようとスタッフたちが努力してくれました。実際、かなりシステム構築はたいへんだったように見ています。

柴田
 シリーズ通して手強いゲームでもありますから、オンライン協力プレイに頼って攻略していくのも手のひとつですし、人気のポイントでした。そこはどうしても捨てたくなかった部分もあります。

――『仁王』シリーズは、発売前のベータテストなどから意見を汲み取ってブラッシュアップしてきたタイトルです。今回の体験版も、やはりプレイヤーの意見を聞きたかったのでしょうか?

柴田
 やはりとても気になります。今回はとくに新しいことにチャレンジしている部分が多いので、そこの感触をぜひお聞きしたいです。ネットでいただく声も含めて意見はスタッフも目を通しますので、ぜひ公式サイトのアンケートでもさまざまな意見を送ってください!

――最後に、『仁王3』に期待されているファンの方々に、メッセージをお願いします。

柴田
 体験版は地獄を祓って終了となりますが、製品版ではその先にはまだまだ世界が広がっていますので、どんな体験が待っているのか想像しながら遊んでいただきたいです。また、体験版ではありますが、かなりの時間は遊べるボリュームがありますので、短い期間ですが遊び込んで、意見をくださるとうれしいです。

安田 
『仁王』シリーズはTeam NINJAにとって最も重要なフランチャイズのひとつです。『仁王3』は、シリーズ以外にもさまざまなタイトルを手掛けてきたTeamNINJAの集大成のような側面もあり、さらに本作ならではの新しさも感じ取っていただけるはずですので、ぜひ体験版をプレイしてご意見をいただければと思います。その声を聞きながら、製品版に向けて完成度を高めていきます。シリーズとしては約5年ぶりとなりますが、過去に「もう『仁王』は作りません」みたいなことを言って、すみませんでした。嘘でした(笑)。

――(笑)。ありがとうございました。
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