2025年4月24日の発売が待たれるプレイステーション5(PS5)、Xbox Series X|S、PC(Windows、Steam、Epic Games Store)用ソフト『Clair Obscur: Expedition 33 』(クレール・オブスキュール:エクスペディション サーティースリー)。 リアルタイムシステムを取り入れたターン制RPGで、Sandfall Interactiveの処女作。パブリッシャーはKepler Interactiveが務め、パッケージ版はセガからの販売となる。発売に先駆けて、2月25日にShibuya Sakura Stageでデモ体験会が開催された。同イベントでのデモ版レビューと開発チームへのインタビューをお届けする。 VIDEO
デモ体験会がスタートすると、Sandfall InteractiveのCEO兼クリエイティブディレクターのギョーム・ブロッシュ氏とCOO兼プロダクションディレクターのフランソア・ムーリス氏が登壇し、プレゼンテーションを行った。 巨大なスクリーンを背景に、2019年から6年かけて本作が制作されてきたことや、JRPGに影響を受けてターン制バトルやコマンド形式を採り入れた経緯、19世紀末から20世紀初頭のベル・エポック時代の華やかなフランスをモチーフとした世界観についての説明がなされた。
プロローグ解説では絶望的な世界について語られた。まず本作を象徴する“ペイントレス”という少女がいるということ。彼女は年に一度だけ数字を描き、その数字と同じ年齢の人々が消滅していくのだという。数字は年々小さくなっていく。恐るべき呪いを止めるために派遣された“遠征隊33”に唯一生き残った男の存在など、謎めいた設定が取材陣を引きつける。 続いて6人のプレイアブルキャラクターと声優陣へ話が移った。英語版のキャストは遠征隊員のギュスターヴ役をチャーリー・コックスさんが、ギュスターヴの義妹であり遠征隊員でもあるマエル役をジェニファー・イングリッシュさんが、魔法使いのルネ役をカースティ・ライダーさんが、謎の生き残りであるルノワール役をアンディ・サーキスさんが担当している。
ゲームシステムの説明では、コマンド制バトルでありつつも古さを感じさせないリアクティブなターン制バトルへの言及も。このバトルを採用したことにより、プレイヤースキル次第ではノーダメージクリアーも可能であり、一風変わったJRPGを楽しんでほしいとのことだった。 最後に両氏は、魔法使いであっても育成次第では通常攻撃でわたり合えるという特徴的なキャラクタービルドとこだわり抜いた世界、Unreal Engine 5により実現した臨場感のあるグラフィック、心に響くサウンドについて改めて解説。恐ろしくも美しい本作の魅力を強く印象付けたプレゼンテーションとなった。
デモ版体験リポート。アクション性の高いリアクティブなターン制バトルがスパイスに プレゼンテーションの後は、デモ版の体験会場へ移動。PC版を用いて、ACT1のステージ“春の牧草地”を約1時間ほど体験できた。 難度はストーリー(イージー)、エクスペディショナー(ノーマル)、エキスパート(ハード)の3段階が用意されており、バトル中以外ならいつでも変更可能。グラフィックは最大120fps対応。クイックプリセットが搭載されているため、自動的に使用PCのスペックに合わせてカスタマイズしてくれるのがうれしい(※)。
※手動でも、アンチエイリアシング、シャドウの鮮明さ、テクスチャーの表現など、項目ごとにカスタマイズできる。 ひと通りオプションを確認し、いざゲームスタート。デモ版用のプロローグのダイジェストが流れ、出発の地であるルミエールの街、ペイントレスが刻んだ33の数字と同じ年齢の人々が煙のように消え去る光景が映し出された。遠征隊33のメンバーとして出撃するものの、謎の男ルノワールによって隊員たちは壊滅状態に陥ってしまう。
圧巻な映像美と絶望感に襲われていると、見知らぬ場所で遠征隊員のギュスターヴが目を覚ますシーンへ。デモ版ではここから操作が可能となり、木々が生い茂るフィールドを歩いて行くことに。しばらく進むとバトルに関するチュートリアルが始まり(※)、戦闘ホイールから攻撃、エイム、スキル、アイテムの各コマンドを選べることがわかった。 ここからは、デモ版で判明した戦闘コマンドとアクションについて解説していこう。
※製品版ではこのチュートリアルはルミエールのプロローグに含まれているとのこと。 遠征隊の攻撃ターンのコマンド 戦闘でのプレイヤーのターンでは下記のコマンドやアクションを駆使して戦っていくこととなる。
攻撃:いわゆる通常攻撃。実行することでスキルの使用やフリーエイムショットに必要なAPが手に入る。 エイム:フリーエイムショットのこと。ターゲットの弱点や飛んでいる敵を狙う際に有効で、カーソルを移動させて照準を合わせる必要がある。敵シンボルに対して離れた位置からエイムで攻撃して先制することも可能。1発撃つごとに1APを消費する。 スキル:APを消費してくり出すコマンドで、スキルホイールから任意のものを選んで発動させる。発動後にはQTEが発生し、表示されるボタンを適切なタイミングで押していくこととなる。失敗してもスキルは発動するが、成功すると効果が上昇するうえに、パーフェクトを達成するとさらなる効果を期待できる。1キャラクターに6つまでスキルをセット可能。 アイテム:体力回復、APの回復、蘇生のアイテムを使用できる。アイテムは休息やスキルの習得も可能な“遠征隊の旗”に触れると補充される。遠征隊の旗はゲームオーバー時のリスポーンポイントでもある。 スキル使用時のQTEは失敗してもペナルティーはないので積極的に狙っていきたい。スキルはプレイアブルキャラクターごとに異なるようで、デモ版ではギュスターヴは物理ダメージや雷ダメージの攻撃のほか味方へのバフ効果のある技を、魔法使いのルネは氷、大地、雷などのざまざまな属性の技を習得できた。
スキルの発動に必要なのがAPだけではないのも、本作のおもしろいところ。ギュスターヴでスキルを発動させてクリティカルが出ると“チャージ”が溜まり、消費して強力な“オーバーチャージ”を放てる。ルネの場合は少し異なり、スキルを放つと“ステイン”が生成される。ステインには氷、火、雷、大地、光の5属性が存在し、特定のスキルを放つ際にこれらが消費され、効果が上昇する仕組みとなっている。 属性が付与されている攻撃を放つ際に注意したいのは、ターゲットとの相性だ。属性と敵との相性は、弱点、耐性、無効、吸収の4種類。戦況を大きく左右する要素であるため、初めて遭遇する敵と戦う際には相性を見極めるのがポイントだ。
敵の攻撃ターンでできるアクション 敵の攻撃ターン時に下記のアクションを駆使することで、ダメージを抑えたり、無効化すらもできてしまう。
回避:敵の攻撃に合わせてタイミングよくボタンを押すことで成功し、ジャストタイミングでパーフェクトとなる。失敗するとダメージを受ける。 パリィ:回避よりもタイミングがよりシビア。成功するとAPが1ポイント手に入るだけでなく、すべての攻撃をパリィを成功させると最後にカウンター攻撃が発動する。 遠征隊カウンター:敵の全体攻撃時に全員が行うパリィで、成功すると味方全体でカウンター攻撃を放つだけでなく、APが1ポイント手に入る。 敵の攻撃ターンで特定のボタンを入力して回避やパリィを狙っていくのは、リアクティブなターン制バトルを謳う本作ならではのシステム。敵の種類や攻撃によってもボタンの入力タイミングが異なるため、まずはアクションゲームのように敵の攻撃モーションを覚えてリズムをつかむのが攻略のカギとなりそうだ。 また、フィールドの光を調べたり敵を倒したりすると、武器や“ピクトス”という装備が手に入る。デモ版では自動で強化されていたが、武器は“クロマカタリスト”という素材でレベル3まで強化できるようだ。 ピクトスは同時に3つまで装備できるアイテムで、キャラクターのステータスを上昇させる効果がある。ピクトスには“ルミナ”と呼ばれるパッシブ効果も付与されており、ルミナポイントを使って活性化させると装備せずとも効果を得ることができる。デモ版では、ピクトスの強化方法は判明しなかった。
さて、デモ版のリポートに話を戻そう。目覚めた森のような場所から不気味な洞窟へ入ったところで、ギュスターヴは魔法使いのルネと再会する。ふたりで力を合わせて敵を倒し、“春の牧草地”を進んでいくと、今度は遠征隊の仲間が大型の敵によって命を落とすシーンに遭遇。逃げ道を塞がれたふたりは、最初のボスであるイヴェキと戦うことになる。
イヴェキは1ターン内に魔法を連発してくる強敵で、頻繁に回避もしくはパリィで応戦することになる。力を溜めた後の会心攻撃は9連続にも及ぶため、集中して対処したい。また、盾を持っており、すべての盾を破壊するまで本体にダメージが通らないのもこのボスの特徴だ。 そのほか、槍による2種類の攻撃、手下の召喚などの攻撃パターンも確認できた。どのバトルでも言えることだが、相手の攻撃を避けてダメージを受けるリスクを減らし、弱点属性で攻めることが勝利へのいちばんの近道だと感じた。
ボス撃破後は、フィールドへ出てキャンプで態勢を立て直し、つぎなるステージ“浮遊する水”へ。先ほどまでとは雰囲気がガラリと変わり、空中を泳ぐ魚たちと色とりどりの海藻がじつに幻想的だ。出現する敵の種類も変化しており、雷を落としたり、連続で体当たりしてきたりするため、再度攻撃パターンを覚えて被ダメージを抑えつつ戦っていった。
今回は1時間ほどのプレイだったが、ベル・エポックとファンタジーを融合させた世界観やターン制ながらアクション性の高い戦闘システム、Unreal Engine 5を用いた美しいグラフィックを十分に体感できた。個人的には回避やパリィに失敗することも多かったため、製品版では成功率を上げて世界の謎に迫っていきたい。
『Clair Obscur: Expedition 33』インタビュー。開発チームが語る本作の制作裏話と魅力 ここからは、本作を手掛けたCEO兼クリエイティブディレクターのギョーム・ブロッシュ氏と、COO兼プロダクションディレクターのフランソア・ムーリス氏へのインタビューをお届け。本作に込められた想いから、こだわりまでを訊いた。
ギョーム・ブロッシュ氏
Sandfall InteractiveのCEO兼クリエイティブディレクター。
フランソア・ムーリス氏
Sandfall InteractiveのCOO兼プロダクションディレクター。
――はじめに、20世紀初頭のフランスとファンタジーがミックスされた本作の世界観がどのようにして生まれたのかをお聞かせください。
ギョーム
開発当初はまったく違う見た目で、初めのうちはアクションから着手していました。アートディレクターのニコラス(※)がチームに入ったときに最初にしたことが世界観のすり合わせで、どうすれば自分たちのゲームにオリジナリティーを持たせられるかの議論を重ねるうちに、ベル・エポック時代のフランスが候補として挙がってきたんです。この時代を象徴するのが繁栄と希望と美しさでして、絵画にも非常にすばらしいものが数多くあります。JRPGに影響を受けたシステムであっても、きちんと独自性を出していかないとゲームを作る意味がないと考えていますし、ベル・エポックを舞台としたゲームもあまり多くはなかったため、この時代を本作の世界観の軸に決め、さらに世界を膨らませていきました。
※Sandfall Interactiveのアートディレクター、ニコラス・マクソン・フランコム氏 ――敵の見た目が特徴的ですが、何かモチーフがあるのでしょうか?
ギョーム
ニコラスのクリエイティブな頭脳から奇想天外なアイディアが湧いてくるというのももちろんあるのですが、今回彼が敵を作り込んでいくなかで着想を得ているモチーフが“素材”らしいんです。たとえば「セラミックをベースに敵を形作っていくとどうなるのか」といった具合です。そこから、どのゲームにもない、プレイヤーの心に残るような魅力的な敵を作り上げています。また、ゲームの世界観やステージの雰囲気に合うようにデザインを変化させてもいます。最初のステージ“春の牧草地”は美しい自然をイメージしているのに対して、つぎのステージ“浮遊する水”は水中ですので、同じような素材でもステージに調和させていくと別の敵が出来上がっていく。ニコラスはそういった考えをもとに、敵を生み出していくんです。
――先ほどJRPGのお話が出ましたが、どんなゲームから影響を受けたか教えていただけますか。
ギョーム
『ファイナルファンタジーVIII』、『IX』、『X』が私たちの世代に刺さったゲームでして、『VIII』をプレイしたときにゲームのおもしろさを知ったと言っても過言ではありません。『VIII』冒頭のバラムガーデンの音楽を聴いただけでも涙ぐみそうになるくらい、深い思い入れがあります。じつは『ペルソナ』シリーズや『アトリエ』シリーズも遊び込んでいて、多くのJRPGに手を出しました。それくらいJRPGが好きで、ターン制のRPGを作っていきたいという思いがありまして、現代においても楽しんでいただくための創意工夫を本作に詰め込んでいます。
フランソア
ギョーム氏に声をかけてもらったときに、お互いの好きなゲームや遊んでおいたほうがいい作品を共有し合い、任天堂ファンで、RPGなら『クロノ・トリガー 』や『ペーパーマリオRPG 』が昔から好きだという話をしました。本作ではターン制でありつつ回避やコンボなどのアクションもできますので、そのあたりはJRPGの影響を受けているのかもしれません。 ――ターン制バトルにいろいろなアクションが盛り込まれている作品で、フリーエイムやスキルを放つとAPが減り、キャラクターの攻撃順や通常攻撃時、パリィ成功などにAPが回復するというあたりがうまく作り込まれていると感じました。ターン制バトルにアクションを盛り込むうえでのこだわりや、苦労された点はありますか? ギョーム
前提として、私はMPの概念が好きではありません。MPのように最大値のあるもののなかから消費していくシステムだと、結局はまったくMPを使わずに物理攻撃だけで戦闘が終わることも多くなるのではないでしょうか。AP制であれば消費するとなくなって初期値に戻るため、再度ポイントを増やす行動を積極的にとることになります。ちなみに、パリィは開発当初かなり高難度になっていまして、いろいろなプレイヤーにフィードバックをもらいつつ調整し、いまのバランスとなりました。カメラワークで視認性をよくしたり、敵の攻撃モーションのスタート時に少しだけディレイをかけて直感的に反応できるようにしたりと、ものすごく作り込んでいます。
――攻撃モーションやエフェクトがスタイリッシュで非常に印象的でしたが、こちらも『ファイナルファンタジー』からインスピレーションを受けたのでしょうか?
ギョーム
アニメーターと話したときによく話題にのぼっていたのは『デビル メイ クライ 』です。アクションゲームのような空中の動きをターン制バトルに落とし込む際の参考になりました。ただ、個人的には日本のアニメが好きで、エフェクトの作り方はどちらかというとアニメのほうに影響を受けていると思っています。 フランソア
バトルでひとつひとつのコマンドを選択したときにカメラワークをダイナミックに変更していまして、アニメーションを静止させず、つねに動いている世界を作り上げています。だからこそ、映画のようなドラマチックな印象を受けるのではないでしょうか。そのあたりの演出は『ペルソナ5 』から着想を得ているんです。 ――注目してほしい要素を挙げるとしたらどの部分になりますか?
ギョーム
キャラクターのカスタマイズ性を見ていただきたいです。ゲームを開発するにあたっていろいろなプレイヤーにテストをしてもらった際、使いたいスキルや技の構成のビルドがひとりひとり違っていたんです。自分たちも想定していない動きをしていたり、フリーエイムだけでゲームをクリアーする方もいたりしましたので、ご自身のプレイスタイルに合わせて本作を遊んでいただければと思います。我々がまだ知らない攻略法を見つけてくれるのを楽しみにしています。
フランソア
私はワールドマップに注目してほしいです。本作では写実的で細かな描写を追求しているのですが、ワールドマップにそれらを落とし込んでいくのが難しい作業でもありました。プレイしていくなかで世界の広さが判明していき、ゲームの進行とともにペイントレスのもとへ近づいていくのが目視できるのもワールドマップの強みだと思っていますので、ワクワクしながら眺めてください。
――本作のメインターゲット層を教えてください。
ギョーム
想定しているメインターゲットは22歳くらいから35歳くらいです。私のようにJRPGで育ってきた層には、本作に触れることでどこか懐かしさを感じてもらえるかと思います。また、アクションゲームのようなダイナミックなターン制バトルになっていますので、これまでアクションゲームがメインでターン制バトルを遊んでこなかったような方々にも、すんなりと受け入れられることを願っています。 ――最後に、発売を楽しみに待っている方に向けてメッセージをお願いいたします。
ギョーム
日本の文化とJRPGを作り上げてくださった方々、そして日本の皆様に本作を体験していただくことを誇らしく思います。ぜひ遊んでいただき、このゲームならではのユニークさを評価していただけるとうれしいです。幼少期からこれだけ楽しいコンテンツを与えてくれた日本の方々へ、少しでも恩返しになればと思っています。
フランソア
本作をプレイして没入感に浸り、キャラクターに対して思い入れを持っていただければと思います。開発チームとしても日本には特別な思いがあります。ぜひ日本の方々に本作を体験していただきたいです。