このスタジオは、『Disco Elysium』のライター陣のArgo Tuulik氏やOlga Moskvina氏、そしてトレイラーのナレーションを担当したLenval Brown氏らによって設立。発表にあたって公式サイトでは、まずこのスタジオがどうやっていくかについての複数の声明が発表されている。
Artistically driven. Creative led. Worker *and* player owned. Welcome to Summer Eternal, a brand new art collective making RPG's for the future.https://t.co/KwiZQofZ58 pic.twitter.com/BNLBmhyOQ1
— SUMMER ETERNAL (@summer_ete38239) October 11, 2024
具体的には、フルタイムで関わるメンバーの協同組合(Summer Eternal株式の50%が割り当てられる)、パートタイムで関わるメンバーの協同組合(同25%)、投資家の出資先にあたる有限会社(同20%)、ゲームを所有するプレイヤーによる非営利団体(同5%)の4つの団体に対して責任を持つ会社としてSummer Eternalを構成し、取締役会による議決権ベースの意思決定を行いながらクリエイティブ面の追求を行っていくようだ。
この背景を説明しておくと、そもそもZA/UMとは元々エストニアのアーティスト集団として存在しており、その後に小説家であったRobert Kurvitz氏のゲームのアイデアを実現するためにゲーム会社としてのZA/UMが組織されたと言われている。その後完成した『Disco Elysium』は批評面・セールス面双方で圧倒的な成功を収めたものの、やがてエグゼクティブプロデューサーたちがKurvitz氏らコアのクリエイター陣を解雇する騒動となり、法廷闘争にまで発展。Tuulik氏らが継続していたスピンオフ的な新作も開発中止され、人員整理が行われたという。
たとえばヒットしたらもっとお金をかけてとにかく次の作品を出して儲けるのは必然と考える人もいると思うが、それは“製品”としてのゲームの論理であって、アーティストの“作品”としては必ずしも自明ではない。一方でゲームは多くの人が集まって時間とお金をかけて作業しないとなかなか完成しないという実情もある(これはSummer Eternalの設立趣旨でも触れられている)。
Summer EternalはこのようなZA/UMの顛末を受けた上で、アーティスト集団としてどのようにゲーム作りを続けていけるかの模索なのだろう。「反資本主義みたいな政治思想が入るのはちょっと」と思う人もいるだろうが、そもそもの『Disco Elysium』が先述したような背景を持つ作品であることもあり、記者としてはどんな作品が飛び出てくるのか非常に楽しみにしている。
まだまだあるぞ、元ZA/UM系スタジオ
そしてそもそもの発端を担った『Disco Elysium』リードライター兼リードデザイナーのRobert Kurvitz氏とリードアーティストのAleksander Rostov氏らはRed Infoというスタジオを設立し、準備を進めているとされている。
ちなみに、彼らが離れた大元のZA/UMそのものも解散したわけではなく健在だ。『Disco Elysium』はゲームの映画・ドラマ化を専門とする製作会社のdj2 Entertainmentがドラマシリーズ化の権利を取得したことが2020年に発表されている。