『ヘブバン』逢川めぐみ役・伊波杏樹さんインタビュー。演じられなくなるかもしれないと覚悟した第四章前編を越え、逢川とともに成長していく

『ヘブバン』逢川めぐみ役・伊波杏樹さんインタビュー。演じられなくなるかもしれないと覚悟した第四章前編を越え、逢川とともに成長していく
 ライトフライヤースタジオ × Keyが贈るスマートフォン、PC(Steam)向けRPG『ヘブンバーンズレッド』(以下、『ヘブバン』)。50人を超える個性的なキャラクターたちが織り成す切ないストーリーが大きな魅力で、多くのユーザーの心をつかんで離さない。そんな本作は2024年8月10日に2.5周年を迎えた。

 『ヘブバン』2.5周年を記念して、逢川めぐみ役の伊波杏樹さんにインタビューを実施。逢川が中心となるメインストーリー第四章や、第四章後編からつながる水着イベント“水着を制する者は夏を制す in 習志野 Supported by Higher Self”についてうかがいつつ、逢川との出会いや本作の魅力を語ってもらった。
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 なお、本記事は週刊ファミ通2024年8月8日号(No.1859/2024年7月25日発売)に掲載されている『ヘブバン』2.5周年記念特集内のインタビューに加筆を行ったもの。

 誌面では水着イベントなどの2.5周年を盛り上げる最新情報に加え、ベテランと初心者、ふたりのライターによるレビューや、國見タマ役の古賀葵さんとルミ役の遠野ひかるさんからのメッセージなど、ファン必見の豪華な企画を掲載している。

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伊波杏樹さんいなみあんじゅ

 ソニー・ミュージックアーティスツ所属。『ヘブバン』では逢川めぐみを演じる。舞台にも出演するなど、多方面で幅広く活躍中。

勝気で言葉を強く届ける逢川が伊波さんの演技とマッチした

――『ヘブバン』がサービス開始から2.5周年を迎えますが、率直な感想をお聞かせください。

伊波
 『ヘブバン』が多くの方に本当に愛されているのだなと実感しています。日本のみならず海外にもコメントを出させていただくなど、『ヘブバン』の大きさに改めて驚きを感じています。

――これまでを振り返ってとくに印象に残っている出来事を教えてください。

伊波
 キャスト発表のあった生放送(※)が印象に残っています。これまで関西弁で演技をしたことがなかったので、皆さんに受け入れてもらえるかがすごく不安でした。逢川がしゃべりだすまでドキドキしたことを鮮明に覚えています。
※キャスト発表のあった生放送……2021年9月11日に配信された公式番組“『ヘブンバーンズレッド』新作ゲーム発表会【WRIGHT FLYER STUDIOS × Key】“
――伊波さんにとって『ヘブバン』はどんな作品ですか?

伊波
 いまはまだまだ未知数で、冒険しがいのある作品だと思っています。現段階では謎が多く、解明されていないことも多いです。皆さんと同じようにキャストも「これからどうなっていくんだろう」という気持ちで収録しているので、個人的に“いま”や“冒険”という言葉がすごくハマっている作品かなって……。

――本当に逢川と冒険している感覚というか。

伊波
 そうなんです。先をまったく教えてもらえていないので(笑)。シナリオを手掛ける麻枝さんたちも日々の会議でストーリーに関する意見を交換し、展開が変わっている部分もあるのではないかなと勝手に思っています。たくさんの愛情が集まってできあがった台本を航海図として、私たちも引き続き冒険を楽しんでいきたいです。

――ちなみに伊波さんは『ヘブバン』に携わる前にKey作品を知っていましたか?

伊波
 もちろん知っていました。『CLANNAD』は人生なので! 十代のころに放送されていたアニメの『CLANNAD』をたまたま観て、音楽や空気感にすごく引き込まれて一気に好きになりました。その後『Angel Beats!』などのKey作品に触れ、どんどん魅力にハマっていきました。

――そんなKey作品に出演することが決定したときはやはりうれしかったですか?

伊波
 とてもうれしかったです。麻枝さんが作る世界観にすごく惹かれていたので、オーディションのお話が来た段階で「絶対にやりたい」と思いました。Key作品が世界中で愛されていることを知っていたので、携われることがわかった段階ですごく緊張しましたし、それが先ほど話した不安にもつながっていたと思います。

――うれしい反面、緊張もあったのですね。伊波さんと逢川の出会いを教えてください。

伊波
 オーディションを受けるにあたって3人のキャラクターを選ぶことになったときに、マネージャーから逢川を提案されたんです。ただ、逢川は関西弁を話すので、関西弁を話せないと担当するのは難しいかなと考えていました。

――マネージャーさんはなぜ逢川を提案されたのでしょう?

伊波
 逢川の勝気な性格で言葉を強く届ける姿が私の演技の得意分野にハマっていると思ったようです。

――なるほど。その結果、逢川を演じることになったのですね。

伊波
 でもじつは山脇を第一希望にしてオーディションを受けたんです。
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山脇・ボン・イヴァール
――伊波さんが山脇を!? 想像できません(笑)。逢川を初めて見たときの印象はどうでしたか?

伊波
 超かわいいと思いました! ハーフツインで髪がピンク色じゃないですか。だからオーディションのときに高い声で演じたんです。勝気だけどかわいさも残しつつ、猫のようにしたら、「もう少しドスを」と言われました。
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逢川めぐみ
伊波
 関西弁は事務所の方にレクチャーしてもらっていたんですけど、あまり手応えがありませんでした。ですが、最終的には逢川を担当することになって、本当に驚きました。

――オーディションのときのドスを効かせた声はいまの逢川の声よりも低いイメージで?

伊波
 いえ、いまの逢川の声よりも高かったと思います。『ヘブバン』をプレイしている方は、メインストーリーのプロローグと第五章前編で逢川の声が変わっているのがわかるのではないでしょうか。逢川の自己紹介ムービーを見ると、いまより数段声が高くて自分でもギャップを感じます。
伊波
 当初は逢川の声に対して自分の先入観に囚われていた部分もあってか、麻枝さんたちが想像している声にチューニングしていくことに必死でした。とはいえ、この世界に寄り添えるようにとしっかりアプローチをして、スタッフの皆さんと声を構築していきました。

――伊波さんにとって逢川はどのようなキャラクターですか?

伊波
 逢川は生い立ちも含めて自分ととても似ています。最初は素直になれなくて、自分を保つために茅森にライバル心を燃やしていました。第四章前編までプレイした方なら知っていると思いますが、それも彼女の生い立ちがあったからこそ。

 この言いかたであっているか迷いますが、とくに自分を顧みない姿にはシンパシーを感じます。逢川は何とかできるところには手を差し伸べたいという気持ちがあって、自分もそういうことをしてしまう場面があります。相手をすごく想いやっているので、似ていると言ったらおこがましいですけど、私が大事にしている部分を逢川も同じように持っていると思います。
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――伊波さんと逢川には共通点がいくつもあるのですね。逢川を演じるうえで、意識していることを教えてください。

伊波
 やはり関西弁です。いつもディレクションしてくれる方は兵庫出身で、その方以外に麻枝さんたちもいるのですが、関西弁と言っても地域によって少し違っていて、収録中にたくさんの関西弁がうごめいているんですよ。

 事務所に大阪出身の方がいらして、その方に原稿を読んでもらったボイス集を毎回参考にしているのですが、ほかの地域の関西弁を話す方から「ちょっときつすぎますね」などと指示があるので、その対応がたいへんです。

 ひとつのワードに対してその場で会議が開かれることもあって……。悩みながらではありますが、臨機応変に対応できるよう成長できました。それでも、対応するのが難しい単語や言い回しがいくつもあります。

水着イベントの見どころはタイムスリップしたタイミング

――ここからはメインストーリーについてお聞かせください。メインストーリーでとくに印象に残っている場面を教えてください。

伊波
 第一章のBAD ENDで豊後が退場してしまうのにはびっくりしました。山脇と豊後の組み合わせが大好きなので、「BAD ENDが本当にBADじゃん」と思ったのを覚えています。

――スマートフォン向けゲームでBAD ENDはあまり聞かないですよね。

伊波
 はい。BAD ENDによる展開の緩急がすごすぎて、二度とBAD ENDにならないようにしようと心に誓いました。

――ちなみにそのBAD ENDは収録中に知ったのですか? それとも自分でプレイして?

伊波
 自分でプレイしてです。分岐を間違えてしまって……。瓦礫にカニのハサミが落ちているあのシーンは恐ろしくて忘れられません。
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――たしかにあのシーンは衝撃でした。メインストーリー第四章では、逢川にフォーカスした物語が展開されましたが、台本を初めて読んだ際にどんな印象を受けましたか?

伊波
 何が起きているのかまったくわからなかったです。これまでプロローグから第三章まで演技してきましたが、第四章では見たことない量の台本が届いて、台本を開くと全部が逢川のセリフになっていてびっくりしました。

 
『ヘブバン』は茅森が主人公で、逢川たちはストーリーの中で手を差し伸べたり、壁になったりする仲間。第三章時点では逢川の本心が見えない部分も多く、まだいっしょに冒険して模索している段階だったので、ストーリーの中心になると自覚したときは焦りすら感じました。

――第四章前編で逢川が31Aから除隊したのも衝撃的でしたが、どう感じましたか?

伊波
 まったくの想定外でした。「逢川を演じ続けられなくなるかも?」と思って。逢川がもう登場しないのかスタッフの方に聞いたら、内緒にされたんです。なので第四章後編でプレイアブルキャラクターになって習志野ドームに行くとは思ってもいませんでした。ドームでの生活をメインストーリーで描くにはものすごく労力がかかると思うのですが、そういったことを実現させるのが『ヘブバン』なのだと実感しました。
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――収録では麻枝さんからどういったディレクションを受けたのでしょうか?

伊波
 第四章後編に登場する氷菓子屋や雑貨屋と話しているときは、ツッコミの部分などを「もっと強く」、「もっとまくし立てて」などのディレクションを受けました。

 麻枝さんのすばらしいところは細部までこだわることで、キャラクターに愛着を湧かせる描写や、キャラクターに注目させる瞬間作りがとても丁寧だと感じます。濃密なメインストーリーがあるうえに、ストーリーの細かいところまでしっかりとこだわるところを見て、キャラクターひとりひとりへの愛情の深さを感じました。
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伊波
 オーダー通りに演技できないと悔しくなりますし、どうアプローチしていいかわからなくなることもあります。だからこそ、どうしたらいいのかをいっしょに探りながら日々体当たりしていくしかない。役者としてこういう経験はあまりできることではないので、難しくてもなんとか応えていきたいです。

――水着イベントでは、第四章後編の舞台となった習志野ドームにタイムスリップします。ファンにとってはまさかの展開だと思うのですが、この展開はご存知でしたか?

伊波
 収録のときに初めて知りました。水着イベントで逢川がメインになると聞いて、皆さんと同じように「まさか!」と思いました。
――メインストーリーに関わるストーリーイベントはこれまでもありましたが、習志野ドームへタイムスリップするのには驚きました。

伊波
 『ヘブバン』はやりたいことがたくさんあるのでしょうね(笑)。タイムスリップはメインストーリーにあってもおかしくないくらいのインパクトだと思います。

 台本を読んでいて、習志野ドームにまだこんなに選択肢があったんだと感じ、ストーリー自体にものすごく驚きました。第四章後編をプレイしているとわかるあの人やこの人が出てきたり、タイムスリップしたタイミングだったりと、見どころが満載です。

――実際にプレイするのが楽しみです! プロローグから水着イベントまで逢川とともに歩み、逢川の成長を感じているかと思いますが、ここが変わったと思う部分を教えてください。

伊波
 心や体、技術が強くなっていると思います。『ヘブバン』で鼻血が出るとざわつきますよね。なので、体の強さもすごく必要になってきていて、そこも怠らずに成長している。

 自暴自棄になってしまう瞬間もありましたけど、逢川の心が弱かったところは人の痛みがわかるいいところでもあります。だからこそ、ルミやドームにいる人の痛みがわかるのがいまの逢川の最大限に強いところ。それをすべて原動力にして、31Aにい続けてほしいです。
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――逢川の成長に伴って麻枝さんのディレクションにも変化はありましたか?
伊波
 当初は「もっと突き放して」や「語尾を上げないで」といったディレクションが多かったのですが、いまでは「かっこよくして」や「たくましさや頼もしさを出して」と言われることが増えました。

『ヘブバン』は切なく温かい。心が揺れて熱くなる作品

――今後『ヘブバン』でやってみたいことはありますか?

伊波
 キャラクターの声が入れ換わってしまうストーリーとかおもしろそうですよね! 誰かに逢川を演じてもらうことで逢川の違った一面を知れそうですし、皆さんが逢川を演じるとどうなるのか見てみたいです。

――キャラクターの声が入れ換わるとなると逢川以外を演じることになりますが、とくに誰を演じてみたいですか?

伊波
 それならやはり山脇を演じてみたいです。ぶんちゃんも個性的なので演じてみたいですし、推しの佐月を演じてみたい気持ちも……。あと、同じツッコミでもタイプが違う和泉も。みんな魅力的なので演じたいキャラクターはたくさんいます。

――夢は広がりますね! 『ヘブバン』を始めようか悩んでいる方々に向けて、ストーリーの魅力を教えてください。

伊波
 『ヘブバン』のストーリーと言えば“切なさ”だと思うんですけど、私は“温かさ”がポイントだと思っています。先入観で切なさばかりを体験してしまうと考えて、気負ってしまう人もいると思います。だからこそ『ヘブバン』は切なさを引き立てるための温かさ、愛情、やさしさ、笑いが魅力だと知ってほしいです。それがあっての“最上の切なさ”なので!
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――最後に読者へメッセージをお願いします。

伊波
 ここまで読んでくれて本当にありがとうございます。『ヘブバン』と出会って得たものは多く、いちユーザーとしても心が揺れて熱くなって、そしてざわついて……。Key作品が好きな身として、麻枝さんが手掛けるシナリオからたくさんのものをもらっています。

 ストーリーを読み進めるのが苦手な方もいると思いますが、
『ヘブバン』はひとりひとりのキャラクターに寄り添い、心情に寄り添うような音楽が流れてひとつの映画を見ているような感覚になれる作品です。そんなストーリーを楽しみに待ってくださればうれしいですし、まだプレイしていない方はぜひ踏み込んでほしいです。
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