数々の周辺機器を世に送り出してきたホリが、ゲーマーのニーズに応えるべく、新たなハンドルコントローラを開発した。その名は、“HORI FORCE FEEDBACK TRUCK CONTROL SYSTEM”。 “TRUCK(トラック)”からもわかるように、なんとトラックシミュレーター向けのハンドルコントローラ。しかも、『Euro Truck Simulator 2(ユーロトラックシミュレーター2) 』と『AmericanTrucksimulator(アメリカン トラックシミュレーター) 』の公式商品である(※)。 ※本製品には『Euro Truck Simulator 2(ユーロトラックシミュレーター2)』と『American Truck Simulator(アメリカン トラックシミュレーター)』のSteam版ダウンロードコードが同梱。 現在市場には数多くのハンドルコントローラがあるものの、トラックシミュレーター向けとしてリリースされるのはHORI FORCE FEEDBACK TRUCK CONTROL SYSTEMが初めて。トラックシミュレーターはワイパーやライトなど必要な操作が多く、既存のハンドルコントローラでプレイしようとすると、ボタンの数が足りない、マウスやキーボードと併用しなければいけないといった課題があった。 だが、本製品はトラックシミュレーターの操作に必要な製品仕様を実現しており、かつゲーム開発元のSCS Softwareと協力して作り上げられたため、キーバインドなどを行う必要がないというお手軽ぶりだ。 そんなHORI FORCE FEEDBACK TRUCK CONTROL SYSTEMはどのような経緯で生まれたのか。開発担当者にインタビューを実施した。 なお、ファミ通.com編集部の北口徒歩2分がHORI FORCE FEEDBACK TRUCK CONTROL SYSTEMを紹介する動画も公開しているので、こちらも併せてチェックしてほしい。
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大村一馬氏(オオムラカズマ)
ホリの第一開発部に所属。HORI FORCE FEEDBACK TRUCK CONTROL SYSTEMのプロジェクトリーダーを務める。
トラックシミュレーターのファンの要望に応えて専用ハンコンを開発 ――まずは、大村さんのプロフィールを教えてください。
大村
私は第一開発部でプロジェクトマネージャーを担当していまして、専門分野はおもにデザインと機構設計になります。HORI FORCE FEEDBACK TRUCK CONTROL SYSTEMでは、プロジェクトリーダーを務めておりまして、その他に外観のデザインと機構設計を担当しました。 ――HORI FORCE FEEDBACK TRUCK CONTROL SYSTEMについて詳しくお聞きする前に、これまでホリさんがどのようなハンドルコントローラを手掛けてきたのか教えてください。そもそも、いつごろからハンドルコントローラの開発がスタートしたのですか?
大村
ハンドルコントローラは初代プレイステーションのときから商品展開を続けていて、プレイステーションだけではなく、XboxやNintendo Switch向けの製品も手掛けています。 ――とくに反響の大きかった製品は?
大村
プレイステーション4向けにリリースしたレーシングホイールエイペックス(2016年10月発売)ですね。フォースフィードバック(※)はない廉価なモデルとしての設計でしたが、それゆえに多くのお客様にお求めいただけました。
※クルマの挙動に対して振動や抵抗などを返し、よりリアルに感じさせる機能。 以前はレース向けのハンドルコントローラをメインに開発してきたのですが、昨今ではHORI FORCE FEEDBACK TRUCK CONTROL SYSTEMのように、シミュレーター向けのハンドルコントローラにも力を入れるようになりました。 ――シミュレーター向けのハンドルコントローラにも、力を入れようと考えた理由を教えてください。
大村
ハンドルコントローラを使うのはレースゲームと思う方が多いと思います。当社でもその認識が大きかったですが、トラックシミュレーターで多くのユーザーがハンドルコントローラを使っていると知りました。 それで調査してみたところ、トラックシミュレーターの販売・ダウンロード数やアクティブプレイヤー数は、主要レースゲームを上回っていたことがわかりました。ニーズがありそうなのにも関わらず、市場にはレースゲーム向けのハンドルコントローラしかありません。 レースゲーム向けのハンドルコントローラを代用している方も、トラックを運転するにはボタンが圧倒的に足りないので、ステアリングとマウス、キーボードを組み合わせて操作しているケースが多かったです。 市場にマッチしたハンドルコントローラがないのなら我々が新たに開発し、トラックシミュレーターのファンが満足して遊べる環境を作りたい。そうした経緯から、世界初となる『ユーロトラックシミュレーター2 』と、『アメリカン トラックシミュレーター 』公式のハンドルコントローラである、HORI FORCE FEEDBACK TRUCK CONTROL SYSTEMが誕生しました。 ――本製品は、いつごろどういった形で販売されるのでしょうか?
大村
当初は海外向けに販売しようと考えていたのですが、日本のお客様から要望があったのと、日本でも多くのプレイヤーさんが遊ばれていることかあら、ニーズはあると考えて日本でもリリースすることになりました。 2024年7月4日に発売予定でして、ホリストア(ホリの通販サイト)やAmazonで販売する予定です。価格は税込84980円で、本製品のほかにSteam版の『ユーロトラックシミュレーター2 』と『アメリカン トラックシミュレーター 』のダウンロードコードが同梱されます。 徹底的にこだわったのは、実車のような操作感 ――HORI FORCE FEEDBACK TRUCK CONTROL SYSTEMの特徴を教えてください。
大村
本製品はステアリング(ハンドル)、シフター、ペダルの3つのユニットで構成されています。とくにステアリングとシフターには、トラック特有の操作に対応できるように、さまざまな仕様を詰め込みました。
大村
ステアリングからご紹介しますね。ゲームの臨場感を高めるためにも、フォースフィードバック機能は必須になります。本製品にはデュアルモーターのフォースフィードバック機能が搭載されており、ふたつの高出力モーターとヘリカルギアによって、路面の振動感やカーブ時のハンドルの反力を体感できるようになっています。 ――臨場感のあるハンドル操作が楽しめると。
大村
そのうえでトラックの操作に特化した特徴を挙げますと、より実車に近づけたいという思いから、トラックで採用されている400~450ミリほどのステアリングに近い、直径約400ミリのステアリングを開発しました。先ほどご紹介したレーシングホイールエイペックスのステアリングが直径約280ミリだったので、実際に触ったことがある方は大きさがイメージしやすいかもしれません。 ステアリングは太さや材質にもこだわっていまして、国内のトラックメーカーにお願いして実際のサイズを計測して再現しました。握りやすさはもちろん、グリップ部分の材質やデザインも実車に近づけることで高級感も出せたかなと思います。ほかにも再現性を高めるうえで重要になるのが、ステアリングの設置角度になります。
――このハンドル、乗用車のものよりも寝た角度になっていますよね。
大村
そうなんです。トラックステアリングの設置角度は車種によって違いますが水平にやや近い角度になっていて、ステアリングを回転させやすく設計されています。本製品はステアリングの設置角度を実車に近づけていますし、ステアリングの回転切れ角を実車と同じ1800度(計5回転)にすることで、高速走行時、カーブや駐車時に緩やかで安定したハンドリング操作が可能になっています。 ――たしかにトラックのドライバーさんは、ハンドルをグルグル回しているイメージがあります。
大村
そうですよね。絶対に再現したいと思いましたが、1800度の回転切れ角のあるハンドルコントローラはこれまで作ったことがなかったので、実現するのはたいへんでした。回転角度が多いほど、耐久性が求められます。なめらかな回転を再現しながら、内部の回転構造に耐久性を持たせるにはどうすればいのか。耐久性と操作感のバランスを納得できる形にするまで苦労しましたね。 ――本製品のステアリングはボタンが多いですが、配置にもこだわりが?
大村
ボタン配置も試行錯誤しました。トラックシミュレーターはハンドルを握りながらプレイするゲームなので、ゲームの開発元であるSCS Softwareさんと配置の相談を行いました。カーナビの操作や視点変更など、トラックの運転中に使う操作ボタンは、できるだけステアリングに集約しつつ、操作しやすい配置にしています。 左右には形状の異なるウインカーレバーが搭載されていて、ワイパーの操作やパッシング、ハイビーム、リターダーの操作が行えるのも、レースゲーム向けのハンドルコントローラにはない仕様だと思います(※)。実際にトラックドライバーの方にも触ってもらい、ハンドルを握ったときのウインカーレバーの距離感や指のかけやすさ、操作感など、いろいろな意見を反映してリアルに再現しています。
※本製品は左ハンドルを想定しているため、ウインカーレバーが左側に付いている。 ――レースゲームでウインカーやワイパーの操作は必要ないですものね(笑)。シフターの特徴やこだわりも教えてください。
大村
シフターはマニュアルとオートマに対応しているのですが、トラックは乗用車と違ってギアの数が非常に多いです。トラックの種類によっても異なるのですが、多いものですと18速のトラックもあるんですよ。 ――乗用車は4~5速とかですもんね。
大村
最近では安全を優先してオートマのトラックも増えているようですが、本製品ではトラックのギアチェンジに対応するために、シフトレバーに4つのシフトボタン、そしてシフターユニットに“1~6速+R”のHパターンモードと、アップダウンのギアチェンジを行うシーケンシャル(SEQ)モードを搭載しました。
大村
シフトレバーによってシフト操作をしながらボタン入力が可能ですし、“7速以降”のギアへのシフトチェンジや、シフトギアの“High/Lowの切り替え”も行えます。また、HモードとSEQモードを搭載することで、車種や操作シーンに合わせてお好みのモードで操作できます。モードの切り換えはスイッチで工具無しで簡単に行えるのもポイントです。 ギアの仕組みはトラックの車種はもちろん、アメリカやヨーロッパなど、国によっても異なります。『ユーロトラックシミュレーター2 』と『アメリカン トラックシミュレーター 』では、マニュアルのギアチェンジが再現されているので、公式コントローラであるHORI FORCE FEEDBACK TRUCK CONTROL SYSTEMでもそういった操作をできるようにしました。 ――なるほど。 大村
シフターにはシフトレバーの荷重調整機能も搭載しています。これでシフトレバーを操作したときの荷重をお好みの感触に調整できるのですが、既存のシフターは工具などを使って調整するものが多かったです。でも工具が必要だと気軽に調整できないので、本製品では専用のスイッチで荷重を切り換えられるようにしています。
――愛車と同じような感覚で運転できるわけですね。そのほかにこだわった点もお聞きしたいです。
大村
デザインに関しては、実車らしく感じてもらえるかどうかを重視しています。実際に実車の部品を購入して、グリップの握り具合なども参考にしました。あとはステアリングのシルエットにもこだわっていて、トラックのハンドルだと認識してもらえるようなデザインにしています。 ――各ボタンのアイコンのデザインもわかりやすくていいですよね。
大村
コントローラやキーボードに、自分でシールを作って貼っているお客さんもいますので、もとからわかりやすいデザインにしようと心がけました。アイコンはソフトメーカーの担当者と相談しながら決めていて、各操作にあったイラストを採用しています。ライトなどほぼ実車に近いイラストもあるので、クルマに乗り慣れている方はすぐに操作できるようになると思います。
ハザードランプのように実写でおなじみのマークと、本作オリジナルのマークの2種類が描かれている。
――ちなみに、エアコンボタンなど、さすがに不要なものは実装されていませんよね。そういったボタンも再現するかどうか、検討するなどしたのでしょうか?
大村
正直に言うと、どこまで再現するかは悩みましたね。とくに悩んだのが、トラックが停車したときに使用するパーキングブレーキレバーです。当初は実装したいと考えたのですが、ON/OFFするだけの機能のため、コストなどを考慮して見送りました(苦笑)。要望が多ければ考えたいと思います。 ――残念です(笑)。シフトレバーの根本の作りや、ステアリングのホーンボタンを押したときの感触もリアルですよね。
大村
ありがとうございます。どちらも再現するのはたいへんでしたが、とくにホーンボタンは、最初は押したときのスト―ロークや感触が物足りなかったので、実車に近い感触が得られるように調整を行っています。 ――フットペダルに関しても、反動をしっかり感じられてよかったです。これはどのような技術を採用しているのですか?
大村
本機は高価格帯の商品になりますので、ペダルも長く使っていただけるように設計しています。ペダルの可動部に非接触の磁気センサーを搭載することで、センサー部の摩耗をなくして精度が落ちない、優れた高耐久性を実現しました。 また、実車と同じようにアクセル、ブレーキ、クラッチの荷重を変えています。ブレーキはダンパーをつけていて、ギュッと踏み込むような感じを再現していますし、クラッチは重すぎず、かといって軽すぎない荷重を加えて、半クラッチの操作がしやすいように調整を行っています。 ――ペダル自体が重いので、踏み込んだときにずれにくいのもよかったです。
大村
ペダルの操作を気にされるお客様は多いので、これまで寄せられたフィードバックをもとに、要望にはできるだけ応えるようにしています。 また、ステアリングとシフターユニットはクランプがあり、パソコンラックに簡単に取り付けられますし、ペダルのユニットはケーブルを出す方向を変えられるので、壁にピッタリとつけて固定するといったことも可能です。 ――そのあたりの作りも便利でいいですよね。84980円[税込]と購入にはけっこう気合が必要な金額ですが、たしかにこれがあると『ユーロトラックシミュレーター2』や『アメリカン トラックシミュレーター』をより楽しめると感じました。
大村
HORI FORCE FEEDBACK TRUCK CONTROL SYSTEMは、トラックシミュレーターがこれまで以上に楽しめる環境を作りたくて開発しました。お客様のニーズに応えられるように、実車の雰囲気を大事にしながら細部までこだわって製品化していますので、ぜひHORI FORCE FEEDBACK TRUCK CONTROL SYSTEMを使って『ユーロトラックシミュレーター2 』や『アメリカン トラックシミュレーター 』を遊んでみていただけるとうれしいです。 先行体験会が実施決定 HORI FORCE FEEDBACK TRUCK CONTROL SYSTEMの試遊ができる先行体験会の開催が決定したとのこと。興味のある方は、以下のリンクよりチェック!