
本作の発売日が、2024年10月8日に決定した。それに合わせて、ゲームの雰囲気やシステムの一端を感じ取れる最新映像も公開された。
本記事では、『サイレントヒル』作品群を再びリブートさせた、シリーズプロデューサーの岡本 基氏へインタビューを実施。リメイク版『SILENT HILL 2』に込める想いを始め、細心の注意を払いつつ磨き上げたシステムの詳細などについて詳しく聞いた。
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岡本 基 氏(おかもと もとい)
2019年にKONAMIに入社し、『サイレントヒル』シリーズプロデューサーとして『サイレントヒル』シリーズ全体の復活を目指す。(文中は岡本)
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『SILENT HILL』のアイデンティティ
語りすぎてもいけませんし、何も語らないわけにもいかず。
そこのさじ加減は、我々も開発を手掛けるBloober Teamもとても慎重に見てきました。それだけに、反響の大きさには責任感も感じると同時に、楽しみにしてくださるファンの声を聞くとうれしさも大きいですね。
――そうですよね。長尺のトレーラーが公開されたことで、楽しみだというファンの声も多く目にしました。しかし名作のリメイクと言うからには、しっかり変えるところは変えつつオリジナルのよさを残さないといけないと思うので、そこのバランス感覚がたいへんそうです。
ときには意見がぶつかり合いながらも、最終的にはうまいところに落とし込んでいます。オリジナル版のよさを残しつつ現代的に生まれ変わった姿は、トレーラーを見てもらえばきっとわかっていただけると思います。
――オリジナル版に関わっていたからこそ変えたい部分も多かったと。
ですが、最終的にはオリジナル版の大ファンでもあるBloober Teamの意見のおかげで、原作を高くリスペクトした仕上がりになりました。
もし完全に日本国内だけで開発チームを結成していたら、ガラリと変わったリメイク作品になったかもしれません。
――そうだったんですね。しかし、それほどまでにシリーズファンから注目されている『SILENT HILL 2』を、シリーズのリブートの嚆矢としてリメイクしようと考えられたのはなぜでしょう。
――たしかに。主人公が平凡な一般人だったり、不条理な表現がなされるような作品も多いです。
だからこそ、「『SILENT HILL』ならではの個性とは何か」をじっくりと考えてみたんです。そこで見えてきたのが、やはり精神的に追い詰められていくような、自分の心に潜む葛藤などを描く“サイコロジカルホラー”の部分でした。そのアイデンティティの塊こそが、『SILENT HILL 2』だと考えたのが決め手です。
――『SILENT HILL』のアイデンティティを現在の技術で確立させるためには、苦労もあったのではないでしょうか。
“サイコロジカルホラー”とは何なのか、それをもっとも体現しているのが『SILENT HILL 2』であるということを最初から理解していただいていて、そこの共通認識はスムーズでした。
――たくさんの海外スタジオからのお声掛けがあった中から選ばれるほどに、Bloober Teamの『SILENT HILL 2』愛が高かったんですね
ただ、バトル部分に関するノウハウなど、経験の少ない部分での懸念点はありました。それでもきっとBloober Teamのこの熱量ならば、乗り越えてくれる、チャレンジしてくれると信じて、リメイクを託すことにしました。
――探索では、静謐なサイレントヒルの街を長く歩き回ること自体にも、意味を感じられる趣があったと言いますか……うまく言語化できないのですが、ゲーム的な攻略やテクニックとは別に、プレイすることで独特の情緒のようなものが胸に去来するところも本作の魅力のひとつでもありますよね。
そこのバランス感は、オリジナル版の時点でもきっと完璧に狙っていたわけではないと思いますが、結果的にファンにとっての黄金比になったのかなと。
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たとえば、落ちているはずのないモノが突然カギになったり。それがファンたちには「ジェイムスの心理を表している」と解釈していただいたり、パズル自体の不条理さも楽しんでもらえているように見ています。
説明しすぎるとすべてがジェイムスのことに見えて『SILENT HILL』らしさに欠けてしまったり、ジェイムスのことを示唆しすぎると、味わいがなくなってしまいます。そういったストレートに描かない、あいまいなところこそが、国内外問わず、ファンの心をつかんだのではないでしょうか。
――リメイク版では、見た目から伝わる情報量がより増えたので、そうした要素もがさらに研ぎ澄まされていそうです。トレーラーでは、風景から街並までがとても細かく描写されていて、寂寥感のようなものも強く感じられました。
また、Bloober Teamはポーランドの会社です。ポーランドって、街並の彩度がすごく低いんですよ。全体的にシックな空気感をもっていて。あの色彩感覚が『SILENT HILL 2』にすごくマッチしていて、Bloober Teamにお願いしてよかったポイントでした。
――ただ暗いだけの闇を歩くのは、『SILENT HILL 2』の色使いとはちょっと違いますよね。
ショッキングな見た目でもないですし、静かそうな街並に女性の顔が浮かんでいるだけで。そういった、ある意味美しさすら感じられるところも含め、きっと独自性の強いホラーゲームとして見てもらえると思います。
――そのほかに、“サイレントヒル”の街並を作るうえで、気をつけたポイントはありますか?
本当は街の雰囲気作りやライティングを出すために信号機や街灯なども使いたかったのですが、設定の時点で使えないので採用しませんでした。
そういったものを使うことで絵作りはしやすくなるのでつい出したくなるところですが、そこはこだわって別の形で雰囲気作りをしています。
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没入感を重視したオプション機能も登場
序盤で変わっている点と言えば、初めてクリーチャーと遭遇するタイミングが変わっていますね。『SILENT HILL 2』にとって、クリーチャーと戦うことはそこまで重要ではありません。そのため、開発初期は「リアルな世界が狂気に変わる前をもっと楽しんでもらおう」と、クリーチャーとの遭遇をオリジナル版よりもさらに遅らせていました。
ただ、あまりにも遅すぎてメリハリがなく、どうしても「つまらない」といった意見が多かったため、それよりも遭遇タイミングを早めています。
とはいえ、遭遇タイミングは時間で言うとオリジナル版よりも遅いですね。これは、おもにシステムの違いなどによる影響です。
――いちファンとして、残してくださってありがとうございます。しかも、新しく調整されたクリーチャーとの初遭遇シーンは、「早めよう」ではなく、「さらに遅らせようか」との議論があったとは、まさに『サイレントヒル』シリーズ作品作りの矜持のようなものを感じてしまいました。
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そういった描写を尊重するために、リメイク版では極力ゲーム的なユーザーインターフェース(UI)を登場させない方針を取っているので、マップを取り出す形にしました。
――オリジナル版も、UI表示はほとんどなかったですよね。
近年では、海外を中心とした大作ゲームなどでUI表示を排除して没入感を高めているタイトルがありますが、それを『サイレントヒル 2』発売の2001年当時から取り入れていたというのも珍しい魅力だったと思います。
――落ちているアイテムにはジェイムスが視点を向けるので、見つけられるヒントになっていたり。
どうしてもアイテムを取るときに丸いアイコンが表示されたりと、少しだけUI表示を採用しています。
ただ、安心してほしいのですが、どういったアイコンが表示されるのかはプレイヤー側がオプションで選べます。アイコンを非表示にもできますよ。
デフォルトでプレイするといくつかアイコン類の表示がありますが、それらも全部見えない設定にできるので、「UIが画面に出るだけで興ざめする」といった人は、ぜひ活用してください。
――そんな細かい配慮まで。では、リメイク版ではアイテムへの誘導的なものはないのでしょうか?
また、演出によってわかるようになっている場合もあります。ただ、グラフィックの密度が高いと、どうしても背景とアイテムが同化して発見しにくい部分は出てきてしまいます。
オリジナル版はトップビューに近い視点ですが、リメイク版は肩越し視点のいわゆるTPSに近い形ですので、よりアイテムの視認がしにくいです。それを解消するためにアイテム取得アイコンなどが表示されるようになっています。
もちろん、こちらもオプションで変更可能ですが。
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――(笑)。
ただ、それを置きすぎると「とにかく棚を探索するゲーム」になってしまうので、アイテム配置のバランス感はいまも議論を重ねています。
――なるほど。遊びやすくすることを追求するゲームは多々ありますが、雰囲気作りのためにUI表示の設定があるのも『サイレントヒル 2』へのリスペクトを感じます。
「このアイテム、ジェイムスはどこに持ってるの?」といった疑問も解決したくて。
ですが、やはりジェイムスがリュックを背負って探索する姿はなんだか冷めてしまいますし、アイテム管理的なゲーム性が加わってしまうのも、本作の場合は何か違うなと。
――わかりやすさも重要だとは思うのでそこの塩梅もまた難しそうです。
ゲーム的表現と没入感のバランスはテストプレイを重ねて意見をもらいながら調整していますね。
――よかったです。現代に蘇るとなると、もしかしたら、目的地までナビが表示される『SILENT HILL 2』になってしまうのではないかと危惧していて(笑)。
また、情報量が増えたことで、たとえば倒れたゴミ箱ですとか、何かしらの探索の指標になるオブジェクトなどで、すこしだけ探索しやすくなっています。
ただ、これも安心してほしいのですが、プレイヤーを誘導するためのいわゆる“黄色いペンキ”みたいなものは出ません(笑)。
――わかりやすくはなりますが、『SILENT HILL 2』の場合はそれが出てきたら作品の雰囲気が壊れてしまいますよね(笑)。
――演出によって自然にいざなわれていくような構成なんですね。あの“サイレントヒル”の街を歩くことが、独特の魅力と言いますか。ある意味、観光に近いような。
あまりにも霧が濃いと、せっかく作った密度の高い街並が見えなくなってしまいます。かと言って晴れすぎていたら、それは『SILENT HILL 2』ではありません。情緒のある風景の中で探索してもらうことこそが重要ですので、調節は難しい部分でした。
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クリーチャーとの戦いは“不気味さ”を重視
――オリジナル版からして、戦闘はあくまで演出のひとつのように意図的に使っていましたね。
そしてオリジナル版同様に難易度選択がありますから、苦手な人はイージーを選択すればいいですし、得意な人向けに歯応えのあるハードな設定もあります。
とはいえ、“敵が強すぎることがホラーになってしまう”みたいな、本末転倒な高難度にはしていません。
――オリジナル版では打撃武器がすごく強かった思い出もありますが、ジェイムスの、とある部分を表現しているのかな、と想像したりもしました。
しっかり攻撃を狙って、回避アクションで攻撃を避ける……といったアクションの楽しみを用意しています。
――トレーラーでは『SILENT HILL 2』らしい、クリーチャーたちの動きの存在感や奇妙さも感じ取れました。
「しっかりアクションも楽しめます」とアピールしたかったのですが、すこし激しすぎたのと、敵の動きなどからアクションゲーム寄りに見えてしまっていたんですね。
たとえば、クリーチャーの“バブルヘッドナース”は優雅に、まるでパルクールをしているかのような動きをしていました。そういった部分にも言及されてしまって。
――コンバットトレーラーではたしかに、バブルヘッドナースの持つあの得体の知れなさ、不気味さみたいなものがあまり感じられなかったかもしれませんね。
“何を考えているのかわからない”といった部分が敵のアクションとしても反映されないといけなかったわけです。ですので、そういった部分をよりブラッシュアップして『SILENT HILL 2』に似合うバトルになっています。
――露骨に噛みついてくるだけのクリーチャーが出すだけならばきっと簡単だったはずですが、そうではないと。
どう攻撃するのか、何をするのか、どんな動きなのかなど、不気味さを残しながらクリーチャーを作っているので、『サイレントヒル』シリーズのクリーチャー制作にはきっと通常の数倍の労力は掛かっていると思います。
――そこのバランスの加減も、アクションを作るうえでかなりたいへんそうに見えます。
戦っていながら「コイツはいったい何なんだ?」と思ってもらえることが『サイレントヒル』の戦闘なのかなと。
そこをBloober Teamとも見直して、『SILENT HILL 2』の敵たちはどう表現すればいいのか、もともとのモチーフや物語から解釈していろいろな動きを取り入れています。
――ちなみに、クリーチャーの種類は増えていますか?
元のクリーチャー像からは乖離しない程度に、動きやシチュエーションなどでバリエーションを増やしている形です。ホラーゲームですし、アクションとしてもついにクリーチャーを増やしたくなるところですが、『SILENT HILL 2』のクリーチャーにはしっかり“意味”があるので増やせないんですよね。
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リメイクだからこそ、ストレートな表現を
ただ、そうなると“顔の造形と演技両方でジェイムスに似ているか”が重要になってくるため、キャラクターたちのオーディションは慎重に行いました。
――ジェイムスが警察官のようにしっかりとした所作で拳銃を扱ったりしていたら、それは違う動きですものね。
たとえば、発表時に公開したゲーム冒頭のシーンはすでに作り直しているんですよ。ですから製品版ではよりよいものになっています。そのくらい感情表現へのこだわりは強いです。あと、ジェイムスの年齢感もすこし変更を加えていますね。
――年齢感ですか。発表時は、もう少し年齢の高いジェイムスに見えました。
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Bloober Teamはそのような表現が得意なチームで、とてもいい感じになっているのでぜひ続報をお待ちください。
『SILENT HILL 2』の裏世界はシリーズ作品で比べると、一見地味なんですよね。ただ、各裏世界、物語の中で深い意味を持っているので、オリジナル版で伊藤さんが描きたかったものを、今回はよりイメージに近づけたように思います。
――設定があるからこそ、曲がったことはできなかったわけですね。
マップもそうですが、ゲームの要素も「今風のシステムにするならこうしたいけれども、『SILENT HILL 2』では矛盾してしまうのでできない」みたいな要素が開発する中で多々あり、Bloober Teamもとても苦労していました。
――ある意味では、リメイクの宿命ですね。
たとえば、代表的なクリーチャーの“ピラミッドヘッド”の大きさも議論を重ねたところです。通常ならば、単に巨大で異質なクリーチャーを作ればいいと思うんです。大きくて強そうで……というだけで怖さを演出できますから。
ただ、ピラミッドヘッドを巨大にすると、本来の意味合いが変わってきてしまいます。単純な魅せかたではなく、動きや演出などで工夫して脅威感が出るようにしています。
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――動いているところを早く見てみたくなります。発売日もいよいよ公開されましたので、最後に、『SILENT HILL 2』を待ちわびているファンの方に、岡本さんからメッセージをお願いできますか?
また、これから発売日に向けて、どんどん続報も公開していくので、ぜひお楽しみにお待ちください。
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なお、本日2024年6月6日発売の週刊ファミ通2024年6月20日号(No.1852)では、『SILENT HILL 2』の記事を掲載。こちらもぜひチェックを。