2002年5月16日にサービスを開始した、スクウェア・エニックス(開始当時はスクウェア)のMMORPG『ファイナルファンタジーXI』(以下、『FFXI』)。ファミ通では3年前よりこの周年のタイミングで開発陣にインタビューを実施しており、18周年となる今年も取材を申し入れていた。そんな矢先、新型コロナウイルスの影響で在宅勤務への移行を余儀なくされ、今年は取材が困難と目されていたが、『FFXI』開発チームのご協力により、リモートでのインタビューを実施することができた。今回は、『FFXI』プロデューサーの松井聡彦氏、ディレクターの藤戸洋司氏に2019年を振り返っていただきつつ、現在主流となっているコンテンツや今後の予定について訊いた。

松井聡彦氏(まついあきひこ)

『ファイナルファンタジーXI』プロデューサー。開発初期からバトルプランナーとして本作に関わる。2013年に田中弘道氏の後を引き継ぎ、プロデューサーに就任した。

藤戸洋司氏(ふじとようじ)

『ファイナルファンタジーXI』ディレクター。チャットまわりやアイテム合成、チョコボ育成など、生活系コンテンツを中心に幅広く開発に関わる。2016年、ディレクターに就任した。

今回のリモート取材の様子。下段が松井氏、左上が藤戸洋司氏、右上が筆者。

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多くの不満を解消した2019年。今年の夏ごろに今後の展望を発表?

──『ファイナルファンタジーXI』運営18周年、おめでとうございます。昨年2019年の3月に「少なくとも、20周年である2022年まではサービスを継続する」と宣言をされて、昨年は“20周年に向けての計画を立てつつ、足回りの強化を行う”という年であったかと思います。まずは、昨年1年間を振り返っていただけますか。

松井1年前ってずいぶん昔な感じがしますね(笑)。月イチで実施しているバージョンアップの内容としては、昨年はあまり大きなものはありませんでしたが、年度末(2020年3月)のタイミングで新コンテンツ“オデシー”をスタートさせることができました。当初は今年度のどこかのタイミングでスタートできればと思っていたのですが、バージョンアップがあまり細かいものばかりでも……ということもあり、ちょっと前倒した形です。

 昨年から1年かけて行ってきたジョブ調整に関しては、何らかの手を入れたいなと思っていたジョブには調整を行うことができて、残っているジョブは比較的強いジョブという状況です。今後は、過去に調整をした、していないにこだわらずに、手を入れるべきところには入れていくという感じになるのかなと。

2020年3月に実装された最新コンテンツ“オデシー”。探索をテーマとし、戦利品によってウォンテッド装備を打ち直すことができる。

藤戸昨年予定していた内容としては、『FFXI』をプレイするまでの障害をいかに取り除くかというところがいちばん大きかったんです。それの取っ掛かりが、インストーラーやゲーム外コンフィグの刷新でした。その後、ゲームに入ってきた人たちがぶつかる壁として、アンバスケードの待ち時間の長さがありました。これは、かなり緊急な手当てに相当するところではあったんですけど、どうにか手を入れることができました。

 あとは、あまり遊ばれていなかったコンテンツのドメインベージョンの改修をしたほか、利便性の向上という名目でメリットポイントのツボチャージを自動化したり、バトルフィールドでの残り占有時間の表示、印章やレム物語の一括預かり、オーグメント付きの装備品を同アカウント内のキャラクターに宅配できるようにしたりとか、わりと地味ではあるのですが、かなり多くの部分を改修しているんです。

──ああ、これも去年改修したのか……という感じのところも多いんですよね。

藤戸1年前にたくさんご要望をいただいていた部分の大半は解消しているはずなんです。その対応がある意味メインの1年だったので、お祭り的に盛り上がれるような内容ではなかったというのは自覚しています。そんな中でも、フェイスのモンブローや新コンテンツのオデシーは完全な新規要素として実装できました。

 あとは、モンスター飼育にマンドラゴラを追加して、一部のプレイヤーが大喜びというのもありましたね(笑)。ひさしぶりに新規グラフィックのモンスターが入って、バトルとは違う使われかたをしたというのは、中だるみを避けるいい要素だったのかなと。

 開発的に重たかったのは、上位ミッションバトルフィールドの“★翼もつ女神”でしょうか。報酬のマリグナス装備があまりにも高性能でしたので、行列ができてしまったという……。それにも対策をしましたけど、けっこう応急手当に見えて、じつは準備にめちゃめちゃ時間がかかることを追々でやっていった感じです。やはり、人手が限られていますので、何を優先するかということになると、いまいちばんホットな(要望が多い)部分にどうしてもなりますよね。そこを解消したら、つぎにホットな部分が課題として残るわけで……。つぎの課題はそのつぎのバージョンアップで対応する、というのをくり返した感じがします。

最新のフェイスとしてモンブローが追加。『FFV』の“くすりし”よろしく、薬品を使いまくってプレイヤーをサポートする。

──細かいところの積み重ねが多かった1年でしたね。

藤戸昔からその仕様だったんじゃないの? というところがわりと多いですよ(笑)。それくらい、自然に機能しちゃっているので。

松井こうして1年を振り返ってみると、やるべきことはやれたのかな、という感じはしています。ただ、年が明けて2月くらいにもうひと山作りたかったんですけど、そこに新型コロナウイルスがやって来て、まさかこんな事態になろうとは……。これはぜんぜん読めませんでしたね。丸々3ヵ月ぶんの開発工数がなくなってしまった感じがあります。

──月イチのバージョンアップと並行して中長期的な計画も進められていたんですよね。

藤戸長期にわたって展開するひとつの軸があって、それに関係するコンテンツの実装であったり、皆さんとお約束しているエンピリアン装束の強化などを、20周年を迎えるまでどう配置するかといったマイルストーンを設定していたんです。本当は、今回のインタビューでいろいろお話しできる予定だったのですが……。

──3ヵ月ぶんスケジュールがスリップしてしまったと。

藤戸だいぶ計画もズレてしまった感がありますね。

──それでも、枠組みくらいは固まった感じでしょうか?

藤戸だいたいのマイルストーンを設定したという感じです。大きな枠組みとしてこういうのを入れていこうという話をしている段階なので、このジョブをこうしようといった具体的な話はもっと実装が近づいてからになります。いかに盛り上げの山を作って、飽きが来ないタイミングでリリースできるかというのを考えていたところですね。

──まさに今回のインタビューの本旨がそこで、根掘り葉掘りお聞きしようと思っていたのですが(苦笑)。

藤戸代わりにスタッフの状況をお話しすると、とりあえずみんな元気です。それぞれ在宅で作業をしている状況ですが、会社の専用機材を使わないとできないこともあるので、そういった部分以外の企画などの作業が中心ですね。5月のバージョンアップも、ファイルを1〜2個更新する程度のものになってしまったのですが、本来実装する予定だったものはほぼほぼできています。あとは検証を進めて、調整を残すのみといったタイミングで在宅勤務に移行となりました。いま検証中である、本来の5月のバージョンアップ内容を6月に実装できそうかな、というところまでは来ています。

──幸いにも作業が進んでいた部分は何とかなるでしょうけど、問題は今後でしょうか。すぐには前の状況には戻れませんよね。

藤戸開発環境が古いというのもありますけど、それ以上に専用機材を自宅に持ち帰るのが難しいというのがいちばんの問題ですね。どうにかならないか、試行錯誤をしているところです。

──プレイヤーの皆さんに今後の展望について発表できる時期はいつごろになりそうでしょうか?

藤戸いまの感じだと、夏ごろには何か言えるかなと思います。

松井少し遅れていますが、またそのタイミングで取材をぜひお願いします(笑)。

──承知しました(笑)。さて、今回のコロナ禍で、幸か不幸かMMORPG(広義としてはゲーム)はステイホームに打ってつけのエンターテインメントになっていますよね。実際、会員数に変動はありますか?

藤戸客観的な数値として見た場合、明らかな上昇カーブが出てきています。だいたい、2月や3月は会員数が減るんですよ。それを押し戻す形で、ベースが上がっている感じがします。日々の同時接続数を見ていても、とくに平日が増えていますね。自宅で過ごす時間が確実に増えているでしょうし、ゲームのための時間をなかなか捻出できなかったという方にも若干余裕が生まれて、その選択肢のひとつが『FFXI』になっているのかなという推測です。

──Asuraワールドは同時接続4000人を超えたなんて話も聞こえてきましたね。1ワールドの同時接続数としては、最盛期に匹敵する数字ではと(笑)。

松井ゴールデンウィークが顕著でした。『FFXI』って長期休暇の期間はかえって人が減るんですよ。皆さん、ご家族を連れて出掛けたり、帰省されたりするので。そういう意味で、今年はゴールデンウィークのへこみがなかったですね。

──なかなか盛況なわけですが、今年に入って開発人員や環境の変化はありましたか?

藤戸いまいる人たちでがんばるというスタンスは変わらないですし、そもそも大規模な変化は想定していません。そんな中でも、佐藤弥詠子(※)がチームに戻ってきているので、戦力は増えていると言えます。

※佐藤弥詠子氏……ウィンダスミッションや『プロマシアの呪縛』などのシナリオを手掛けたプランナー

──『第50回 もぎたて ヴァナ・ディール』で松井さんが佐藤さんを借りパクしたと話されていましたね(笑)。

松井はい(笑)。あと、コミュニティチームの人も増えたりして、今年入ったメンバーによっては違うことができるようになるかもしれません。これまでも、個性的な人による個性的な運用があったりしましたので(笑)。

──運営側にも変化があるんですね。

松井『FFXI』専属のような形で張り付くのではなく、『ファイナルファンタジーXIV』も含めた“オンラインチーム”として取り組んでいき、『FFXI』に人が必要なときは『FFXI』のことをよく知っている人が手伝いに来てくれる感じです。もっとわがままを言えば一時的に人を投入してもらえる可能性もあるので、そこはアイデア次第かなと。

──あとは、今年の取り組みとして新規のプレイヤーや復帰者に向けた施策は予定していますか?

藤戸インストーラーの刷新を始めとした足回りの強化を行ったこともあって、新しいプレイヤーが入ってこられるのですが、何かわからないことがあるときに、どこに聞けばいいのかわかりづらいという声をいただいています。その解決法としては、某サイトばりの情報を公式側で用意できればいいんでしょうけど、それを実現するのは難しいです。であれば、ゲームの中で解決できる方向に落とし込もうということで、中の人たちで教え合える仕組みを検討していました。そのほうが、よりコミュニティにとってはいいのではないかと。

──それはいいですね。『FFXIV』のビギナーチャンネルのような、サポートに特化したリンクシェルチャンネルといったところでしょうか。

藤戸イメージとしてはそういう方向ですね。ただ、仕様を切るにあたってRMT(リアルマネートレード)業者やbotへの対策が悩ましいんです。業者とbotの問題はSTF(スペシャルタスクフォース)と協力して日々潰してはいますが、法的な壁もあったりして、なかなか難しい面もあります。仕組みも含めて、検討しているところです。

ジョブ調整はスタッフ間のディスカッションを増やしていく

──冒頭でもありましたが、ジョブ調整は一段落といったところでしょうか。

松井昨年に手が入らなかったジョブに関して言うと、何かしら一線級のものを持っているという認識です。個性を尖らすことも、ユーティリティ的な強化もしづらいので、ジョブの変化という側面で検討したほうがいいだろうという話をしています。獣使いやナイトなど、まだやりかけな感じのジョブについては、随時調整を行っていきます。

──先に言われてしまいましたが(笑)、ナイトや獣使い、忍者、狩人など、プレイヤー側から「もう一声ほしい」というような要望があるジョブに対してどのようにお考えか、お聞かせください。

松井それぞれのジョブには得手不得手がありますから、そのときホットになっているコンテンツによってジョブの評価は変わります。それが前提である以上、いまよく遊ばれているコンテンツで全ジョブ横並びにするような調整は必要ないと思っています。また、単純にダメージ云々での強い、弱いという話は違うかなと……。こういうシチュエーションだとこのジョブが機能しない、みたいなフィードバックをいただけるといいですね。

──実情として、“このジョブだと攻略できない”みたいな事態にはなっていないと思いますが、どちらかと言うと“このジョブを出したいけどほかのジョブと比べて見劣りするからコンテンツに出しづらい”というようなシチュエーションがほとんどな気がします。

松井気持ちはわかります。こうしたデリケートな問題に対して、ジョブ担当者だけで背負うのはちょっと酷だなと思っていて、今後はみんなでディスカッションしながらやろうぜ、という方向に持っていくことにしました。開発チームも、バトルにひと言あるような人ばかりが残っていますので、担当の垣根を超えて知恵を出し合おうかという話をし始めたところです。

藤戸開発側とプレイヤーの皆さんとで、ジョブバランスに対する前提の違いというのはあると思います。たとえば、ふたつのジョブを比べるとしたら、同じ立ち位置のジョブどうしで比較するのが妥当なんですが、そのジョブでさえぜんぜん設計思想が違います。よく、「こちらのジョブではできて、このジョブでできないのは不当」みたいな論調がありますが、なぜそう思うのか、お互いが前提を揃えておいたほうがいいとは思いますね。

松井少なくとも、開発は敵ではないというところを受け入れていただいて……(苦笑)。我々も、そのジョブの能力や個性を総合して、さまざまなifを想定したうえで、いまの選択を採っているところもありますので。

好評だった各種バトルフィールド

──続いてですが、昨年は上位召喚獣バトルフィールドが3種、上位ミッションバトルフィールドが1種追加され、難度や報酬も含めて非常に好評だったように思います。今後のバトルフィールドの追加はありますか?

藤戸上位ミッションバトルフィールドはひと通り入れられた状況です。今後のバトルフィールドの追加については、オデシーの実装が済んでからになると思います。

松井もともと、いまの水準のIL119装備で戦いたいというニーズに応えるものであったので、昨年追加した4つのバトルフィールドに関しては、十分歯応えがあるバトルができると思っています。逆に、いままでの上位バトルフィールドのような難度で据え置いてしまうと、報酬に差をつけられないのです。今回は難度を一段上げ、代わりに報酬もそれなりにしました。いまの強い装備品が多い中で、それでも使えるような性能を付けています。

──“★翼もつ女神”の報酬として実装されたマリグナス防具は、最近追加された装備の中では群を抜いて高性能なものだったと思います。こういった複数ジョブで着回しが可能な防具のいわゆる重装版、後衛版は追加される予定はありますか?

アルタナミッションに登場する冥護四衆が身にまとっていたものと同一グラフィックのマリグナス防具。全部位装備すると、命中/飛命/魔命+250、回避+477、魔回避+674、魔防+29、ヘイスト+26%、ストアTP+50、物理ダメージ上限+20%、被ダメージ-31%というすさまじい性能になる。その代わり、攻撃力を直接ブーストする要素がない。

松井いまは検討していないです。マリグナス装備は、あのバトルの難度に見合った性能を付けたという部分が大きいですね。こういう装備を入れたいからバトルを作った、という順番ではないのです。

藤戸だいたい報酬を決めるのは後ですね。逆の場合もときどきはありますけど。今回は、まずこういうバトルフィールドを作ろうという話からスタートしています。その後、これくらいの性能がないと挑戦してもらえないよねとか、モンスター(冥護四衆)が着ているものとしたらこんな性能だよね、というところを意識して作ったという側面が強いです。このバトルのための特別な装備という感じで捉えてもらったほうがいいかなと。

──いわゆる“中衛”に区分されているジョブの強化という側面もあるのかなと感じました。

藤戸装備を設計するときに、どこの部位を出して、どういう性能にするかというのは、当然テーマとして出てきます。今回のケースで言えば、中衛装備一式になるというのはほぼほぼ決まっていて、そこにどんな性能を付けるかというふうに進んでいきました。実際、欲しい性能というのはだいたい決まってきますので、それは確実に付けておこうと。さらに、今回の難度に見合った特色みたいなものを考えて盛っていく。ちょっと盛りすぎた感もありますけど(笑)。

──いつもあのくらいでお願いします(笑)。さて、上位バトルフィールドと区分は異なりますが、召喚獣セイレーンとのバトルも実装されました。関連するクエストではひさびさのカットシーンを見ることができて、プレイヤーにとっては非常にうれしい要素だったと思います。開発側の手応えとしてはいかがでしょうか?

藤戸セイレーン召喚のクエストは、これはウケるに決まっているということが事前にわかるくらいのデキでした。当初、セイレーンを召喚獣としてリリースするにはストーリー的な問題が山積みで、実現は不可能としていました。しかし、これまで触れられていなかった裏の部分を語りたいという要求もあって、やってみようということになりました。計画が始まったのは3年くらい前で、かなりじっくりと作ったという経緯があります。セイレーン自体の能力や技はじつは1年以上前にできていて、お話を作って実装していくところのほうがたいへんでした。それだけクオリティーの高い状態でリリースできたというのは、プレイヤーの反響にも表れていましたね。担当も喜んでいました。

セイレーンと契約するためのクエスト“静かなる森”が実装。クエストオファーの条件は高めに設定されている。

──こういったお話の追加は今後も期待していいのでしょうか?

藤戸ひとつの観測気球を上げたというような感じです。クエストやカットシーンの追加はリクエストとしてよくいただくのですが、「本当にやりたいの?」というところもあって(苦笑)。

松井ソーシャルゲームなどを見ていると、けっきょく生き残るゲームって物語や世界観をしっかり作っているんですよね。その世界でのドラマを見ることがご褒美になるゲームというか。

──期待しています! それはそうと、セイレーン強くないですか?

藤戸後発の召喚獣というのもあるので、少なくとも過去のものと並ぶかそれ以上じゃないと使ってもらえないですよね。

松井召喚獣のヒエラルキー(序列)的にも、“弱い”は許されないという感じでした。

藤戸クエストオファーの条件に“ヴァナ・ディールの星唄”をクリアーしていないとダメというハードルもありますので。

ディードは960でひと区切り

──話を変えまして、ディード(※)の報酬としてモンブローのフェイスが追加されました。モンブローに薬品を提供したりギルを寄付することで性能が強化されるという仕組みはなかなかユニークですね。ちなみに、寄付は月や年単位などでまとめてできるようにはなりませんか?(笑)

※ディード……エミネンス・レコードのマンスリー目標をこなすことで貯められるポイント。ひと月に40ディードまで貯めることができ、480ディードの報酬として“盟-モンブロー”が追加されている。

松井その手間も含めて破格な強さということなので、週に1回くらいは彼のところに行ってあげてください(笑)。

──わかりました(笑)。それでは、今後のフェイスの予定についてお聞かせください。

松井フェイスについては、いま具体的に考えていることがひとつだけあります。以前、皆さんの投票によってフェイスの性能を決めてもらうというのがあったのですが、それをまたやりたいなということで募集を始めました。

インタビューを実施した時点では伏せられていたが、上記のキャンペーンが開始されている。制作予定のフェイスは松井P。アイデアの募集は2020年5月31日の23時59分まで。松井氏曰く、「リアル重視とか言いながら、“ですいつ”の私の行動を再現しようとしなくていいですからね」とのこと。

──パーティの人数によってフェイスのレベルが引き上げられる仕様が2018年5月のバージョンアップで追加されましたが、フェイスの強化はこれ以上はない感じでしょうか?

藤戸そうですね。オデシーのエリアの中だけで有効な強化要素はありますが、それ以外ではまだ具体的なことは考えていません。

松井プレイヤーより強くなってしまっては困りますしね。

──フェイスを活用している人の中には、連携に割り込むのをやめてほしいとか、命令を出したいといった声もあるようですが。

松井それに応えることはないかなと思っています。フェイスはそうしたキャラクターの個性も込みであの数になっています。特定の戦術にハマるフェイスをこちらが提供するというのは順番が逆です。いまあるフェイスの挙動に合わせて作戦を考える、というほうがゲームとしては正しいかなと。

──ディードの話に戻りまして、新たに960ディードまでの報酬が公開されましたが、懸念されていた“追いつけなくなっていく問題”についてはどのようにお考えでしょうか。

松井いま話しているのは、これから先はゴールが逃げていく形は避けようと。20周年までは運営しますと宣言していますので、いまから貯め始めても960ディードまではいけると思います。先頭を走っている人のディードの使い道は、追々検討をしようかなと思っています。

──720ディードと960ディードの報酬に“武神流秘伝書(※)”を用意した意図をお聞かせください。

※武神流秘伝書……メリットポイントで習得できるウェポンスキル(武神流秘奥義)に、トータルで割り振れるポイント上限が+5される。なお、ひとつのウェポンスキルに振れるポイント上限に変更はない。

松井メリットポイントは、もともとカスタマイズ性が欲しいという要求から始まったものです。そのため、頑なに全振りはさせないと言ってきたのですが、利便性を考えて、じゃあここまで続けてくれた人なら最大強化したウェポンスキルがひとつやふたつ増えてもいいのでは、という考えで追加しています。そもそも、ガチ勢の方は必要に応じてメリットポイントを振り直していたでしょうし、ひとつのウェポンスキルに振れるポイント上限が変わるわけではないので、強さには影響しないでしょうと。

日々のコンテンツとその“所要時間”

──続いてドメインベージョンについてです。大幅な改修の甲斐もあり、連日多くの参加者がいる状態ですが、初期状態では1日の最大ポイントまで貯めるのに4戦必要なことや、ログイン人数の少ない日中にNM(Mireu)が出現して基本獲得量が人知れずリセットされるといった点は、改善が必要にも思えます。このあたりについて意図をお聞かせください

藤戸もともとの仕様からすれば、すでにアッパーな調整が行われています。Mireuの連続討伐数に応じたボーナスの仕様も、最初はなかったものです。これは、いまとなっては言い訳になってしまうのですが、Mireuが後出しで実装された“足枷”のように見えてしまっているのが不満の原因でしょうね。本当は、ドメインベージョンの改修と同時にMireuも実装したかったんです。実装当初のゆるい印象があっただけに、強力なNMであるMireuを倒す必然性がほしいという状況になってしまったと。

──Mireuについては倒すことのメリットが新たに用意され、1戦で1日のポイントを稼ぎ終わることもあります。その一方で、ドメインポイントの基本獲得量が初期状態だと4戦必要になるのは、ちょっと長いような気もします。

松井プレイヤーからしてみれば、デイリーでこなさなきゃいけないタスクのひとつなので、簡単にさせてくれよという思いがあるかもしれません。しかし、遊ばれなくなってしまったドメインベージョンを改修するにあたり、「IL119時代に対応したビシージが欲しい」という要望があったことも踏まえて、多くの敵とプレイヤーが入り乱れ、かつ強大な敵に力を合わせて立ち向かうというイメージのコンテンツにしよう、ということになりました。

 NMに関して言えば、倒すとボーナス状態になるというだけで、初期状態は損をしているわけではないのです。人のいない時間帯にNMが湧いて連続討伐数がリセットされてしまう点についても、たとえば人が多い時間帯にしか湧かないようにしたら、よほどのことがない限りはリセットされることはないでしょう。事実上、常時ボーナス状態になってしまいますよね。

──なるほど。コンテンツの所要時間や難度で報酬を設定しているのでしょうから、最大ボーナス状態がずっと続くようでは破綻してしまうと。

藤戸僕たちは作業をしてもらいたいわけではなくて、そこはあくまでもゲームなんです。ソロ向けにも作っていないですし、みんなで集まって敵を倒しましょうというドメインベージョン自体の方針も変えていません。『FFXI』は時代の変化に合わせてソロでも遊べる部分が増えてはいますが、「ここはみんなでやらないと本当にまずいぞ」という状況も作りたいんですよ。

松井いわゆる「のりこめー!」的なコンテンツなので、ワールド中の猛者に声を掛けるくらいのことをしてもいいんじゃないかなと。

──そういえば、実装当時のMireuをなかなか倒せなかったのは、表示優先の問題でターゲットできなかった影響が大きいですか?

藤戸それは大きいですね。

松井パラメーター自体も強いですよ。当初はあれくらいでいいと思って作りました。初期のビシージでボスクラスが登場すると、皆さんあっさりと倒されていましたよね。そういうイメージだったんです。でも、プレイヤーの皆さんはいまさらドメインベーションでバタバタと全滅するなんて想像していなかった。そこにだいぶ設計者との温度差がありましたね。

最前線のプレイヤーにとっても魅力的な戦利品が追加されたドメインベージョン。モンスターが飛翔する要素も削除され、遊びやすくなっている。

──つぎはアンバスケードについておうかがいします。1章(エキスパート)は過去に実装されたものの復刻、2章(ノーマル)は松井さんみずからが毎月新規で作成という体制が続いていますが、これに変化はありませんか?

松井基本、いままで通りやれたらなと思っています。最近始められた方や復帰者に向けて補足すると、2章はパーティを組むのにまだ不安があるという人に、フェイスを使ってバトルの段取りを覚えてもらうという位置づけで作っています。自分に強化をし、敵を弱体し、状態異常になったらそれを治すといった一連の手順ですね。月替わりで何かしらギミックを入れて、それが解ければ簡単に倒せるような感じにしています。

 一方の1章は、パーティで行動したときに、それぞれの役割をしっかりこなさないと壊滅するというポリシーにしています。1章はずっと復刻で回している状態ですが、年に2回くらいは新作を入れたいなと。ほかのバトルコンテンツの工数の兼ね合いもあって、やれるかどうかはわかりませんが、計画はしています。

──1章の新作はいいですね! 1章については復刻で難度が据え置きである一方、プレイヤーはどんどん強くなっていっているので、“とてもむずかしい”でも瞬殺してしまうものもありますよね。難度の見直しなどはされないのでしょうか?

松井いえ、報酬が変わっていない以上、いまの難度から変える必要はないと思っています。コンテンツの特性上、連戦を苦しくするのは違いますから。

──あとは、新規プレイヤーや復帰者がアンバスケードの防具を揃えられるまでに時間がかかりすぎると思うのですが、2章の獲得ポイントの見直しであったり、A.チケットやA.トークンの必要ホールマークの引き下げなどは検討していますか?

松井アンバスケードの防具を獲得するためのポイントは高いとは思っていません。アンバスケードの防具は、強化も含めて長い期間をかけて実装されてきたものです。いまはそれがすべて見えている状態ですので、一気に欲しいと思うと高いと感じるかもしれません。獲得ポイントの調整については、1章と2章のバランスもありますし、いまのところ予定はしていません。

エンドコンテンツは現状維持

──オーメンはボス攻略が落ち着いていることや、“黒の残魂”のドロップの影響もあり、ソロで挑む人が増えています。アーティファクト装束の打ち直しに必要な各種小札の入手経路の追加や、ボスと戦うことのメリットなどが追加される予定はありますか?

松井小札については現状維持という感じです。

藤戸ボス目当ての人が減っているというのは明らかで、開発側も認識しています。では何か手を入れるかというと、まだ早いと思っています。コンテンツとして機能していないとか、使われてないという状況ではなく、ほかにもっと優先度の高いことがたくさんあるからです。オーメンは比較的新しい部類に入るコンテンツですし、まだ通っている方もいます。いまここにテコ入れを行うと、“やらなきゃいけない”という要素を増やすことになり、結果として遊び疲れを呼んでしまいます。

──デュナミス〜ダイバージェンス〜の今後の調整方針についてお聞かせください。60時間おきの入場制限や、WAVE3と呼ばれているフェーズの難度緩和、トライのしやすさなどは検討されていますか?

藤戸こちらもオーメンと同様、現状は緩和できません。緩和してしまうと、義務と感じてしまう人が絶対にいます。

──確かに、これまで突入が週2回に制限されていたところを週3回入れるとしたら、何か損をしているような気になってしまって「週3でやるか……」ということにもなりそうですよね。

藤戸レリック装束の強化やジョブ専用装備のRP(リエンフォースポイント)稼ぎは、いまのプレイヤーのキーになっているはずなので、そこの作業感がハンパなくなってしまいます。“やらざるを得なくなる”という部分を増やすのは怖いんですよね。“デュナミス~ダイバージェンス~石像ウマウマキャンペーン-HQ”が来ると、うれしいけどしんどいみたいな声があるのも知っています(苦笑)。

デュナミス〜ダイバージェンス〜は、レリック装束の打ち直しやマスター武器の強化、RMEA(後述)の強化フラグなど、プレイヤーの最終的な強化に大きく関係するコンテンツ。

──今後実装が予定されているエンピリアン装束の打ち直しについて、何か情報のアップデートがありましたらお聞かせください。

藤戸いまの段階で言えることはありません(笑)。ただ、プレイヤーの皆さんと約束していることなので、必ずお届けします。

──エンピリアン装束が強化されると、また一段プレイヤーが強くなると思いますが、それに合わせる形でいわゆる“RMEA(※)”の強化を実装する予定はありますか?

※RMEA……レリックウェポン、ミシック(エルゴン)ウェポン、エンピリアンウェポン、イオニックウェポンといった伝説武器群の総称。

藤戸もうやめておいたほうがいいと思っています。強さを付与するための試練を追加することはできるでしょうけど、それって際限がないですよね。もう強化要素を増やしてほしくないみたいな声もあちこちから聞こえてきますし、苦しくなる人のほうが多いのかなと。

オデシーのシェオルCはそう遠くない時期に実装。さらに続きが……?

──最後は2020年3月に実装されたばかりの最新コンテンツ、オデシーについてです。ウォンテッドの装備の打ち直しということで、もっと簡易的な実装も選択肢としてはあったと思います。こう言ってはなんですが、限られた人的リソースの中でよくぞコンテンツとして実装してきたなと。

松井こちらも、コストを掛けるなら効果的に掛けたいということです。報酬をある程度強いものにするなら、挑み甲斐があるものを用意しないといけません。逆に言えば、強化が簡単だとそれなりの報酬しか渡せないですし、プレイヤーも遊んでくれない。それは避けたいと。今回の担当者に「ちゃんとした遊びにしたい」という意思があって、多少時間がかかってもじっくり作ろうよという話になりました。

藤戸最初は、ウォンテッド装備を打ち直すということだけ決めていて、さて方法をどうしようかと考えたとき、単にアイテムを集めるだけでは作業にしかならないんですよね。それに、ちょっと性能を盛る程度では一線級の装備にはなり得ず、使い道もなくなってしまう。それだと開発もプレイヤーも消耗するだけなので、コンテンツの形にしませんかということになったんです。

──エリアへの進入に必要なモグパケットですが、“だいじなもの”として持てる数がひとつとなっています。今回のインタビューの一連の流れからすると、これも遊び疲れを考慮して、しばらくはこのままでしょうか。

藤戸ええ。モグパケットのストック数については絶対に話題になると思っていました。ストック数を増やす仕組みはもちろんありますが、いつ開放するかは決めていません。様子を見ながら徐々にやっていこうかなと。

──では、シェオルBやシェオルCの実装時期についてはいかがでしょう?

松井そう遠くにない時期に実装を予定しています。

藤戸オデシー関連の実装は、今年度の計画にすべて入っています。

松井のんびり遊んでほしくて。ぜんぜん終わっていないのに新しいエリアが来てしまうのはもったいないと思っているので、皆さんの状況を見ています。ひょっとしたら、少し期間を開けるかもしれません。前倒しはさすがにないでしょう。

──シェオルCが最終エリアですか?

藤戸シェオルCが実装された時点で、すべてのウォンテッド装備が打ち直しの機会を得ることになります。ただ、“オデシー”としてはもうちょっとだけ続く予定です。

──ピルグリムモーグリの応援の詳細(上限値や具体的な効果)についてもおうかがいしたいです。オデシーのテーマが“探索”ということで、応援効果についても自分たちで調べてみてね、という感じでしょうか?

藤戸こちらの意図としてはそうです。みんなで情報を共有してほしいですね。ひとつ言えるのは、敵を倒したり、宝箱を開けたり、中でやれることにムダはありません。すべて影響し合っています。

松井プレイヤー側で追求しきれないものがある場合は、情報を匂わすようなことは検討してもいいかなと思いますが、いまは皆さんの力でやってみてください。

“ピルグリムモーグリの応援”のランクを上げると、フェイスの能力が強化されるほか、宝箱の解錠やNMを出現させるために必要なイザットのコストも下がるようだ。

『FFXI』はコミュニティでできている

──今回はコロナ禍の中、お時間をいただいてありがとうございました。では最後に、18周年の今年も変わらず遊び続けてくださる現役のプレイヤー、そして復帰を検討しているかつての冒険者に向けてメッセージをお願いします。

藤戸毎年言っていますけど、ここまで続けてくださってありがとうございます。最近顕著に感じるのは、コミュニティの盛り上がりがハンパないということです。ライブ配信をしてくださる方が、ものすごく増えましたよね。アルファブロガー的な動きはこれまでもあったのですが、そういう方たちも動画配信を始めて、そこに視聴者がついている。

──ライブ配信は開発のかたも見られているのですか?

藤戸見ていますよ。とは言っても、リアルタイム視聴は無理なので、アーカイブされているものになりますけど。ライブ配信の影響としては、ウェルカムバックキャンペーンの時期でなくても復帰者を多く見かけるようになりました。やっぱり、このゲームはコミュニティでできているんだなと再認識した次第です。いわゆる復帰予備軍って、すべて取り切ってしまったと思っていたのですが、実際はそんなことはなくて。そういった人たちの声に応えられるような運営を心掛けていきたいです。

松井こんな形の18周年のスタートとなってしまいましたが、まずは、ずっと支えてくださっているプレイヤーの皆さんに感謝申し上げます。なるべく皆さんの居場所を変えないようにと考えてきましたけど、今回のようなことがあると、僕たちも変わらないといけないし、変えたほうがいいものも見えてくると思います。そこを見つめ直す1年にし、皆さんといっしょに『FFXI』というコミュニティがよくなるようゲーム内外でがんばっていければと思っていますので、よろしくお願いします。