『戦場のフーガ』CC2松山社長がゲーム制作授業で“IPを預かるプロの作法”を語る。「何度も撃てるソウルキャノン」では原作ファンは喜ばない

『戦場のフーガ』CC2松山社長がゲーム制作授業で“IPを預かるプロの作法”を語る。「何度も撃てるソウルキャノン」では原作ファンは喜ばない
 サイバーコネクトツーのゲーム『戦場のフーガ』を原作とし、ファミ通.comにて隔週火曜日に掲載しているマンガ『戦場のフーガ 鋼鉄のメロディ』。本日休載のため、『戦場のフーガ』シリーズに関するプロジェクトの記事をお送りする。
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 東京情報デザイン専門職大学にて、異色の産学連携授業の最終発表会が行われた。サイバーコネクトツー(以下、CC2)のオリジナルIP『戦場のフーガ』の“本物のゲームデータ”を使って、大舘隆司准教授の指導のもと、学生たちが新規ゲームを制作するというプロジェクトだ。
 8月に実施されたこの最終発表会では、前期の授業で制作したゲームを2チームが発表し、CC2の松山洋社長が審査員として参加した。学生たちが生み出した作品に対し、開発現場さながらの本気のフィードバックが飛び交う、緊張感に満ちた場となった。

「ソウルキャノンって、気軽に何度も撃てていいのか?」IPを預かるプロの作法

 ひとつめのチームは『戦場のフーガ』をシューティングゲームとして再構築した作品を発表した。

 プレイヤーが好きなキャラクターを選択して出撃し、弾の種類などキャラクターごとに異なる性能を持たせた作品だ。

 プレゼンターの学生は、原作の究極兵器である“ソウルキャノン”の仕様についてこう説明した。

 「ソウルキャノンは貯めたゲージを消費して、Qボタンを押したら発射できるようにしています」

 しかし、この仕様に対して松山社長から容赦のない指摘が飛ぶ。

 「シューティングゲームとしての作法がまるで入っているように感じない。ダメージ演出もないし、画面の4割をUIで潰してしまっている」とゲームの手触りについて言及したうえで、こう言葉を続けた。

「ゲージを消費して何度でも撃てるソウルキャノンは、ソウルキャノンじゃない。原作のソウルキャノンは子どもたちの命を代償に放つものじゃないですか」

 松山社長が指摘したのは、IPを借りてゲームを作る際の重みについてだ。

「ファンの人は、“タラニスに乗れるなら、あの凶悪なソウルキャノンがあるんだよね”と期待する。そこで何度もソウルキャノンが撃てますと言われたら、ファンは“わかってないな”とがっかりしてしまう」

 IPを借りてゲームを作る以上、ただキャラクターのガワを被せるだけではいけない。

 世界観にシステムを落とし込み、プレイヤーに「なるほどね」と思わせること。それがファンの期待に応えるゲーム作りにおける、いちばん重要なポイントであるというきびしい作法が叩き込まれた。

“不安からの足し算”はするな。そして、君たちのゲームは誰に届くのか?

 続いて、別のチームが発表したのは、『バックパック・バトル』などでおなじみのシステムを使ったオートバトルゲームだ。

 キャラクターやアイテムをスペースの限られたバックパックに詰め込み、配置によるシナジー効果などがバトルに反映される仕組みだ。

 このチームの学生は、今後の開発予定についてこのように語った。

 「今後の実装予定として、新しいピースの追加や、それに伴うシナジーの拡張、さらに徹甲弾などの属性機能、ボスステージなどを考えています」
 一見すると意欲的なアップデート案に思えるが、松山氏の指摘は鋭かった。

 「これから先、不安だからといっていろいろな要素を足し算しようとしてしまうかもしれない。しかし限られた時間の中で磨かないといけないのはゲームの根幹のシステムです。真ん中にあるシステムさえしっかりしていておもしろければ、不安な足し算は必要ないです」

 開発中に行き詰まると、クリエイターは不安から機能や要素を増やしてしまうことがある。

 しかし、コアとなるおもしろさを磨くことこそが重要だと指摘する。さらに松山氏は、学生たちにこう問いかけた。

 「世の中の人たちにどれくらい喜んでもらいたいのか。たとえばSteamで無料で配信するとして、何ダウンロードされたら報われるのか。YouTubeで何回再生されたら報われるのか」

 プロの現場ではいくら時間をかけたかではなく、世の中にどれだけ評価されたかという結果が求められる。

 ゲームを作るときは、無駄な足し算をする前にコアのシステムを完成させ、自分たちの中で勝ち負けの基準を決めてやりきること。それが、クリエイターとして成長するための鉄則として語られた。

「きびしい世界だ」。ボコボコにされてから始まるクリエイターの第一歩

 すべてのプレゼンが終わると、松山社長から学生へ最後の言葉が贈られた。

 「開発現場に甘い言葉はない。当たり前のようにダメ出しを受けるのが日常茶飯事です」と、きびしさを伝えたうえで、こう締めくくった。

 「でも、これはいいことです。我々が”成長を見たい”と言っているということですよ。今回で終わりにしないで、これを自分の糧として活かし、クリエイターとして世の中に還元できるようになってほしい。いくらでも協力しますし、指導もしますので、これからのがんばりに期待しています」

 本物のデータに触れ、容赦のない本気のフィードバックを浴びた学生たち。

 いろいろな課題点を挙げられてまたイチからスタートかもしれないが、プロからの愛のあるエールを胸に、彼らがこれからどんなゲームを世に送り出すのか。

 次世代クリエイターたちの今後に、期待したい。