元スクエニの広野啓氏が新会社を設立、第1弾は『歌マクロス』復活プロジェクト。「“おもしろいから売れる”は幻想」とプロデュース業へ意欲【インタビュー】

元スクエニの広野啓氏が新会社を設立、第1弾は『歌マクロス』復活プロジェクト。「“おもしろいから売れる”は幻想」とプロデュース業へ意欲【インタビュー】
 スクウェア・エニックスで『ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス』や『WAR OF THE VISIONS ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス 幻影戦争』などをプロデュースしてきた広野 啓氏が、2025年7月をもって同社を退社。同年8月1日付で新会社“AUGUST(オーガスト)”を設立していたことが明らかとなった。退社後、約1年にわたってその動向を明かさなかった広野氏だったが、独立後初めて現状を語ってくれることとなった。
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 広野氏はAUGUSTの第1弾パブリッシングタイトルとして、2017年にリリースされ、2022年に惜しくもサービスを終了した『歌マクロス スマホDeカルチャー』(以下、『歌マクロス』)の復活プロジェクトを発表。さらに、同プロジェクトのクラウドファンディングを“CAMPFIRE”にて実施することも明らかにした。サービス終了から約4年、『歌マクロス』の根強いファンの声に応える形で動き出したこのプロジェクトの全貌を、広野氏にうかがった。
元スクエニの広野啓氏が新会社を設立、第1弾は『歌マクロス』復活プロジェクト。「“おもしろいから売れる”は幻想」とプロデュース業へ意欲【インタビュー】

広野 啓(ひろのけい)

バンダイ、バンダイナムコゲームス(現バンダイナムコエンターテインメント)を経て、2013年からはスクウェア・エニックスに在籍。バンダイ時代の代表作に『Gジェネレーション スピリッツ』、『ガンダムバトル』シリーズ、『マクロスアルティメットフロンティア』、『AKB1/48』シリーズ、『DARK SOULS』など多数の作品をプロデュース、スクウェア・エニックスでの代表作に『ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス』シリーズなどがあり、同作はゲームだけでなく舞台化するなど、幅広く展開している。(文中は、広野)

準備万端での退社ではなかった。それでも踏み出した理由

――公表はされていなかったですが、2025年7月末でスクウェア・エニックスを退社され、翌8月1日に個人会社を設立されたのですね。

広野
 ちょうどスクウェア・エニックスの執行役員の退任というタイミングと重なったこともあって、今後は新しいことに挑戦してみようという考えに至ったんです。退職後に個人会社を設立して、そのあとはいろいろな方とお会いしたり、お仕事させていただいたりと、忙しい毎日でした。

――事前に準備や計画をされての退職だったのでしょうか。

広野
 わりと突発的と言いますか、万全の準備をしての退職ではなかったので、どんなことができるんだろうと模索しながら進めました。会社への所属がなくなったことで、いろいろなことにチャレンジができるようになったとは思いますが、その一方で「自分には何ができるんだろう」と手探り状態でした。他社さんに企画を持ち込んだり、まったく別の企画を考えてみたり、いろいろな方にお会いして話を聞きに行ったり、いろいろな会社のお手伝いをしたり……と、いろいろとバタバタしていた1年でした。

――これまで退職を公表してこなかったのには、どういった理由が?

広野
 公表しなかったというよりは、これまでプロデューサーとしてずっと顔出しをしていた自分が会社を去ることをお知らせしてしまうと、運営中のゲームや開発中のゲームに何かしらの影響が出てしまうかも……ということを考えての判断でした。ただ、いよいよ会社として本格始動していくことになり、今回のプロジェクトを誰がリードしているのかや、自分の考えも含めてユーザーさんにお伝えしなくてはいけないターンになったので、こういった形でお話させていただくことにしました。

――新会社の社名“AUGUST(オーガスト)”には、どういった意味が込められているのでしょうか。

広野
 人との出会いで生まれた名前なのですが、以前からお付き合いのあったゲーム関係でビジネスをされている先人の経営者の方から「Aから始まる社名がいいよ」とアドバイスをもらったんです。そんなことがあったので、「じゃあAから考えてみよう」と決めました。どんな単語があるかなと調べていたところ、頭に浮かんできたのが、“AUGUST”でした。僕が8月生まれということで(笑)。

――親しみのある単語を社名にしようと考えられたんですね。

広野
 スクウェア・エニックス在籍時には、自分のプロデュースするタイトルに必ずと言っていいほど自分の星座である獅子座にちなんだライオンを模したキャラクターを出すというのをこだわりとして密かに入れていたんです。そういった意味でもAUGUSTは合っているかもしれないなと思い、社名に決めました。さらに紐解いてみると、AUGUSTという言葉はローマ皇帝アウグストゥスが由来ということもあり、自分が初めて作る会社だし、初代として、ローマ帝国くらいの破竹の勢いで大きくなってやるという気持ちも込めました。

――今後の意気込みも込められているんですね。現在、会社の規模や体制はどのような状態ですか。

広野
 いまは基本的にひとりで動いていますが、いろいろな方の協力もいただきつつ何とか進めてきております。そのため、仲間はつねに欲しています。いろいろな会社さんのお手伝いをさせていただいていますが、ひとりだと動きやすい反面、逆に寂しいと感じる瞬間も多いんです(笑)。ですので、いっしょにお仕事できる仲間が欲しいと思っています。

――基本的にはこれまでのようにゲームのプロデュースをメインに働かれるのでしょうか。

広野
 20年以上、ずっとゲームプロデューサーをやってきましたが、自分の強さ、自分の得意分野はそこなので、この部分をさらに伸ばしていこうと思っています。会社を作る以上、もちろん大きくしていきたいですが、単純なゲームのプロデュースだけだと規模感としては限界があると思うので、自社ブランドや自社コンテンツを作っていきたいと思っています。まずはいま手元にあるお仕事をしっかりやっていって実績を作り、将来的には自分の会社のIPを生み出したいですね。
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パブリッシングタイトル第1弾は『歌マクロス』の復活プロジェクト

――2022年にサービスを終了した『歌マクロス』を復活させるプロジェクトが第1弾になるとうかがいました。そもそもどういった経緯で動き出したプロジェクトなのでしょうか。

広野
 退社してからいろいろと動いているなかで、「マクロス」シリーズの権利元であるビックウエストさんにご挨拶し、お話をさせていただく機会がありました。『歌マクロス』はディー・エヌ・エーさんが2017年から2022年まで運営されたスマートフォン向けのリズムアクションゲームです。

 サービス終了してもう4年近くになりますが、その間も「『歌マクロス』を復活させてほしい」という声がユーザーさんからたびたび聞こえてきていました。ビックウエストさんも『歌マクロス』を復活させたいという想いをずっとお持ちだったようで、「ゲームコンテンツとマクロスに詳しく、信頼のある方といっしょにやりたい」ということで、お声がけいただいたというのが経緯です。そこで私が代表する形で『歌マクロス スマホDeカルチャー』の開発等に携わっていたメンバーや、当時はファンとして楽しんでいたメンバーたちが集まって『歌マクロス』復活プロジェクトをスタートさせることになりました。
元スクエニの広野啓氏が新会社を設立、第1弾は『歌マクロス』復活プロジェクト。「“おもしろいから売れる”は幻想」とプロデュース業へ意欲【インタビュー】
 私はこれまでに『マクロスエースフロンティア』に始まり、『マクロスアルティメットフロンティア』、『マクロストライアングルフロンティア』などのゲームシリーズの開発にプロデューサーとして携わっていまして、『マクロス30 銀河を繋ぐ歌声』(※)という作品では、河森正治さん(「マクロス」シリーズの生みの親のひとりで、登場する三段変形メカ・バルキリーをデザイン)に無理をお願いして、ゲーム用に新型機をデザインしていただいたこともありました。
※「マクロス」シリーズ30周年記念作品。同じく30周年企画として開催された「ミス・マクロス30コンテスト」の歌手部門でグランプリに輝いた千菅春香さんが、ゲームオリジナルの歌姫ミーナ役と主題歌を担当した。歴代シリーズのキャラクターや機体に加え、多数のオリジナルキャラクターが登場。時空を超えて歴代作品が交わる独自のストーリーが描かれ、シリーズファンから根強く支持されている。
――そもそも広野さんと「マクロス」との個人的な出会いはどこから?

広野
 WOWOWで『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』を観たのが最初でした。小学生のころでしたが、大人の恋愛が描かれていたからけっこう衝撃でしたね。“歌”、“三角関係”、“変形メカの戦闘”の三大要素のすべてが衝撃的で、いまでも胸が高鳴ります。

 中学生になったころには、
『マクロス7』をリアルタイムで観ていて、楽曲をCDレンタルしてめちゃくちゃ聴いていました。ちなみにいちばん好きなFIRE BOMBERの曲は『TRY AGAIN』です。僕のなかでのアニメの原体験は「マクロス」は『マクロス7』で、『ガンダム』は『機動武闘伝Gガンダム』なんです。どちらもシリーズの中でちょっと挑戦的なタイプの作品で、いまでもすごく好きですね。

――それだけ愛があれば、ファンとしても安心ですね。

広野
 僕自身も「マクロス」ファンのひとりですし、ぜひやりたいと思って。ただ、意気込みとか想いだけでは実現できません。オリジナル版のリリースは2017年ですし、少し昔のコンテンツだと言われればその通りでもあります。本当にプロジェクト化できるのか、ユーザーさんが望む形のゲームにできるのかというのをじっくりと検証しました。

――こうして発表できたということは「いける」という確信があったと?

広野
 そうです。とても良いゲームとして成立できるものになると確信したので。それから検証を続け、ある程度お見せできるところまで来られたかなと。

――本作はAUGUSTがパブリッシャーになるのでしょうか。

広野
 はい。今回はビックウエストさんとしっかりとタッグを組んだプロジェクトとして、パブリッシャーはAUGUSTが担うことになりました。本作が、AUGUSTの初パブリッシングタイトルになります。開発はもともとの『歌マクロス』を手掛けていた開発会社のxeenさんが担当してくださっています。昔からいろいろなコンテンツでお世話になっていた会社さんなので、今回こういう形でまたいっしょに働けるというのも、すごく縁を感じています。

――オリジナル版を開発していたデベロッパーがそのまま手掛けるというのも、ファンにとっては安心材料ですね。もともとはスマートフォン向けの運営型ゲームでしたが、今回はどのような形でリリースするのでしょうか。

広野
 今回は運営型ではなく、売り切り型という形に変わります。運営型ですとサービス終了後に遊べなくなってしまうので、今後ずっと遊べる環境を残すために売り切り型にしました。また、サービス終了時点のゲームをそのまま移植するのではなく、膨大だったゲーム内容をいったん整理して、リズムアクションゲームとしてしっかりと楽しんでいただけるように整えています。

――どういったところを整理したのでしょうか。

広野
 意外かもしれませんが運営型ゲームはコンテンツの量が膨大なんです。そのためシンプルなリズムゲームとして遊んでいただくために、だいぶ整理しました。5年間の運営で積み上がったデータを紐解いたら、会話テキストだけでも100万文字ぐらいあったんです。

――100万文字というのは相当な量ですね。

広野
 大ボリュームのRPGに匹敵するぐらいの量です。おもにイベントで使用されていたテキストで、それら全部を今回のパッケージに入れることも検討したのですが、今回は英語版も作る想定なので、すべて入れるとなるとデータ容量が大きくなりすぎ、なかなかの高価格帯のゲームにせざるを得なくなってしまいます。そういった背景と、今回は手の届きやすい価格帯でお届けしたいという方針があるので、収録するのはリズムアクションゲームとしてのコアな部分を中心とさせていただきました。

――フルボリュームかつフルプライスのゲームという方針ではないんですね。

広野
 正確な価格帯の決定はこれからですが、より多くの方に楽しんでいただきたいと考えているので、まずは、お求めやすい価格のゲームになるようなバランスを目指しています。

――英語版へのローカライズをするとのことですが、ワールドワイドでリリースされるのでしょうか。

広野
 オリジナル版は日本国内でリリースされたゲームなので、本作も同様に、まずは日本国内で遊べるタイトルとしてリリースします。日本国内にも外国語話者のファンの方がたくさんいますので、そういった方にも遊んでいただきたいと思って、英語版へのローカライズを行っています。本作が好調にセールスすれば、将来的にはプラットフォームを追加するなど、『歌マクロス』が全世界に広がっていくようにしたいですね。対応言語ももっと増やしたいです。

――どのくらいの楽曲が収録されるのでしょうか。

広野
 ゲームのボリューム感としては、メインとなる初回リリース版に約50曲の楽曲を収録する予定です。さらに、楽曲などを追加できるダウンロードコンテンツを複数本同時にリリースさせていただくことで、オリジナル版のサービス終了時までに楽しめた楽曲は、ほぼ網羅できる形にしようと考えています。

――ダウンロードコンテンツ展開について、詳しく教えていただけますでしょうか。

広野
 ダウンロードコンテンツは現状では複数種類を予定しています。楽曲の追加とキャラクターの衣装、そしてプレートがセットになったパッケージを想定しています。どの楽曲がメインパッケージ、DLCに入るかは検討中です。「マクロス」の楽曲は人気曲ばかりなので、どういう分けかたにするのか悩みながら検討しています。

――ダウンロードコンテンツまで揃えることで、ほぼすべての楽曲が網羅されるということですね。そのほかのゲーム内容、たとえばライブパートの部分はどうなるのでしょうか。

広野
 そこは絶対にオリジナルのまま体験していただきたいポイントだと思っていますので、ご安心ください。『歌マクロス』の核となるのが、楽曲に合わせてキャラクターが歌って踊るライブパートでした。当時楽しめたライブパートは、楽曲とセットという形ですが基本的にはすべて収録しています。登場する歌姫たちの3Dモデルは高品質なもので、現代でも見劣りしません。開発環境では50インチクラスの4Kテレビで表示してグラフィックの検証をしましたが、いまでもまったく見劣りしないほどのクオリティーがあると思っています。
元スクエニの広野啓氏が新会社を設立、第1弾は『歌マクロス』復活プロジェクト。「“おもしろいから売れる”は幻想」とプロデュース業へ意欲【インタビュー】元スクエニの広野啓氏が新会社を設立、第1弾は『歌マクロス』復活プロジェクト。「“おもしろいから売れる”は幻想」とプロデュース業へ意欲【インタビュー】元スクエニの広野啓氏が新会社を設立、第1弾は『歌マクロス』復活プロジェクト。「“おもしろいから売れる”は幻想」とプロデュース業へ意欲【インタビュー】元スクエニの広野啓氏が新会社を設立、第1弾は『歌マクロス』復活プロジェクト。「“おもしろいから売れる”は幻想」とプロデュース業へ意欲【インタビュー】元スクエニの広野啓氏が新会社を設立、第1弾は『歌マクロス』復活プロジェクト。「“おもしろいから売れる”は幻想」とプロデュース業へ意欲【インタビュー】元スクエニの広野啓氏が新会社を設立、第1弾は『歌マクロス』復活プロジェクト。「“おもしろいから売れる”は幻想」とプロデュース業へ意欲【インタビュー】
配信当時からクオリティの高さで話題だったライブパート。
――モニターにも出力できるとなると、スマートフォン以外の対応もするのでしょうか。

広野
 もともと展開されていたiOS、Androidに加えて、Steamでもリリース予定です。当初はスマートフォンのみという案もあったのですが、自分から「PCにも対応させてほしい」と提案して、プラットフォームを追加したという経緯があります。Steam版はキーボードとマウスでの操作が基本になります。オリジナル版のリズムゲームはタップ操作も多く、キーボードでの操作が難しいので、そこはキーボードで遊べる形に調整を入れています。コントローラでも遊べるように将来的には検討したいですが、まずはキーボードとマウスでしっかりと遊べる環境を整えることを優先しています。

――当時ガチャで入手できたプレート(イラスト)の扱いはどうなりますか?

広野
 ゲームに収録しているプレートは最初からほぼすべてを見ることができる状態になっています。ただ、当時のガチャが好きだったという方もいると思うので、プレートの強化に相当する要素として、ガチャ的な仕組みは残しています。

――このプレートの量も凄まじいことになっていそうですね。

広野
 なっています(笑)。ただ、容量の問題があるため、さきほどのテキストのように収録するプレートの量についても整理させていただいています。具体的に言うと、レアリティの☆1〜☆3のプレートについては収録を見送らせていただく形にしました。☆4以上のプレートは、基本的にすべて収録する方針です。一部DLCで解放されるものもありますが、メインパッケージでは1000枚以上のプレートがプレイ開始後すぐに観られるようになります。

――当時入手できなかったプレートも観られるのがファンとしてはうれしいですね。

広野
 収録できるイラストは解像度が非常に高く、アーカイブとして観るだけでも大きな価値があると思っています。当時のデータを見れば見るほど、当時のディー・エヌ・エーのスタッフさんがいかに心血を注いで運営していたかということをあらためて実感します。当時のスタッフさんに対する敬意を持ちながら、その想いは必ずつなげないと、という気持ちです。
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「マクロス」ファンなら堪らないプレートの数々。
――今回、タイトルの発表と同時にクラウドファンディングも実施することが明らかとなりました。

広野
 “ファンの皆さんの復活への思いをどのようなかたちで実現するか”ということと、“より多くの人に手に取りやすい形でお届けするためにどのような方法が望ましいか”を両面で検討した結果、AUGUSTだけでなくて、ファンの皆さんといっしょに復活させるプロジェクトにしようと考え、クラウドファンディングを実施することにしました。自分としてはクラウドファンディングは初めてのチャレンジなので、リターンの設計をかなり悩みました。

――クラウドファンディングで目標金額に届かなかった場合、プロジェクトは止まってしまうのでしょうか。

広野
 いえ、今回はオールイン方式(支援金額に関わらず支援を受け取る方式)を採用しているので、そこはご安心ください。もちろん、いただいたご支援や反響を踏まえて、対応プラットフォームや対応言語の拡張、追加楽曲やDLCなど、より長く楽しんでいただける展開も検討していきたいと考えています。そのためのストレッチゴールも検討しています。

――リターンの内容も気になるところです。

広野
 まずはゲームのメインパッケージのSteamキー、さらにメインパッケージとDLC全部入りのセットも用意しています。これは事前にゲームを予約するといったイメージですね。また、ゲーム以外のリターンとして、当時の膨大なイラストをまとめたアートブック、Tシャツなどのグッズ、『歌マクロス』のライブ演出を楽曲とともに楽しめるミニライブ版の視聴権などを考えています。ユニークなものとしては、ゲーム内にあった“デコルーム”(キャラクターや飾りで部屋をカスタマイズする機能)は容量の問題でゲームへの収録を断念したのですが、そのデコルームをリアルなグッズにしようと考えています。マグネットを使って、実際に自分でデコルームを作れるようなイメージです。

――リアルグッズとしてデコルームが手に入るのは、かなり魅力的ですね。ゲームのリリース時期はいつごろを予定していますか?

広野
 2027年の前半にリリースできるように開発を進めています。というのも、2026年は『マクロスΔ』の10周年ですし、来年は「マクロス」シリーズが45周年を迎えます。こういったアニバーサリーイヤーが続き、盛り上がりを見せるタイミングで「マクロス」シリーズの大きな魅力のひとつである楽曲で遊べるリズムゲームを、オフライン版という形でずっと身近に置いておけるものとして届けられるのは、本当に素晴らしいことだと思います。
元スクエニの広野啓氏が新会社を設立、第1弾は『歌マクロス』復活プロジェクト。「“おもしろいから売れる”は幻想」とプロデュース業へ意欲【インタビュー】

おもしろいから売れる、は幻想。インディーゲーム業界でも実力を発揮したい

――AUGUSTとして、『歌マクロス』のプロジェクトのほかに取り組みたいことはどういったものがあるのでしょうか。

広野
 まずは、今回の『歌マクロス』にフォーカスして、しっかりとご評価をいただきたいと考えています。会社から離れ、個人として動いてみて改めて感じるのは、売上を作ることの難しさですね。プロジェクトそのものがないと人を集めて会社を大きくしても意味がないので、とにかくまずはコンテンツを出していくことに集中したいと考えています。そのうえで、今回のような“コンテンツを復活させる”という取り組みは、とても意義深いことだと感じています。

 スクウェア・エニックスさんにいたときにも、フリートゥプレイのコンテンツはサービス終了後に遊べなくなってしまうという問題があることを感じていて、『ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス』でも、ユーザーさんがいつでも遊べる形で残すことができないかと社内で検討していたことがあります。そういった取り組みは、いろいろなコンテンツであるべきだと思うので、この『歌マクロス』の経験をもとに、自分の力が使えるなら積極的に関わっていきたいです。

――ほかのメーカーさんから、そういったお声がけがあるとうれしいですね。

広野
 「売り切り版を出すならAUGUSTに任せよう」みたいになるとうれしいです(笑)。そのほかですと、インディーゲームにも非常に興味があります。大きなゲームメーカーに所属していても、クリエイターたちがなかなか思い描くゲームが作れないといったことがありますが、非常にもったいないことだと日々感じていました。また、インディーゲーム市場も成熟してきて、個人でも大ヒットのゲームを作れるような事例がたくさん出てきました。「こんなゲームを作りたい」と考えているクリエイターの方といっしょにインディーゲームを作っていくというのも、すごく興味があります。

――AUGUSTが開発費を出資するという形式でしょうか?

広野
 出資する形もあると思いますし、ファンドを組んで資金を集めるような形もあると思います、クリエイターと二人三脚でやっていくような関わりかたのほうが自分らしいかなと思っていますので、クリエイターやコンテンツにどういう関わりかたをするかを大事にすると思います。

 プロデューサーって、編集者みたいな立場だと思うんです。クリエイターがいかに好きな方向にパワーを発揮できるか、間違った方向にエネルギーを割いていないか、それを補助したり正したりできることが重要ですが、そういった能力が自分の強みだと感じています。「おもしろいから売れる」というのは完全な幻想なので、おもしろいものをどう売るか、そのために何を仕込んでおくかというところをいっしょに考えたりして、光るゲームが売れるようにサポートしていけたらうれしいです。

――最近のインディーゲームは、露出の機会が増えているほか、パブリッシャーが付く事例も珍しくなくなり、いろいろな形で大ヒットを記録するゲームが出てきています。

広野
 BitSummit(インディーゲームをメインとした展示会。ゲームの試遊ブースの出展や講演などが行われる)に視察に行きましたが、出展されている作品のなかには、もっと知られてほしい、売れてほしいと思うものがたくさんありました。そういう方々と何らかの形で組んでいけたら、ゲーム業界にもっと貢献できるのでは、と考えています。ゲームメーカーに勤めつつ、個人でゲームを開発している方もたくさんいるので、そういった方に「いっしょにやろうよ」と口説いたりもしています。「広野といっしょにゲームが作りたい」と思ってくれる方がいれば、ぜひ声をかけていただきたいです。

――今後の広野さんがどういった活躍をされるのか、楽しみです。最後に、『歌マクロス』のファンの方々へのメッセージをお願いします。

広野
 自分もいち「マクロス」ファンとして、「マクロス」のゲームをもっと遊びたいと思ってきました。「マクロス」の魅力のひとつである“歌”という要素をふんだんに盛り込んでいるのが『歌マクロス』です。そんな魅力的な『歌マクロス』を、現行のハードで遊べ、後世に残せる形で、皆さんに満足していただける形でリリースできるように開発を進めています。

 リリースに向けた最初の取り組みとして、クラウドファンディングを行いますので、ぜひご支援ください! ご支援をいただければ、『歌マクロス』をもっと魅力的なゲームにできますので、ぜひ応援をよろしくお願いします。
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