2025年3月、多くの名作ゲームの開発を手掛けてきた“B.B.スタジオ”は、“バンダイナムコフォージデジタルズ”への社名変更をともなう新体制を迎えることになった。そんな同社が力を入れているタイトルのひとつ『機動戦士ガンダム バトルオペレーション』(以下、『バトオペ』)シリーズ。
本記事では、そんな『バトオペ』シリーズを長年にわたって携わってきた、神戸秋義氏と徳島雅彦氏へのインタビューをお届け。開発秘話や機体へのこだわり、今後の抱負などを訊いた。
『機動戦士ガンダム バトルオペレーション』シリーズとは?
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『機動戦士ガンダム』シリーズを題材としたオンライン対戦ゲームとして、第1作が2012年にプレイステーション3で基本プレイ無料(一部アイテム課金制)のゲームとしてリリース。第1作は2017年にサービスを終了し、現在は『機動戦士ガンダム バトルオペレーション2』がサービス中。
ゲームは自軍と敵軍に分かれ、敵機や敵拠点を破壊するなどして獲得できるポイントを競い合うのが基本ルール。重量感のあるアクション性が人気となっている。
新しい機体が毎週追加され、『ガンダム』ゲームとしてはトップクラスのプレイアブル機体数を誇るのも本作の魅力のひとつ。マイナーな機体も率先して実装しており、その姿勢が『ガンダム』ファンから高く評価されている。
徳島雅彦 氏(とくしま まさひこ)
シリーズでは、インゲームのセクションリーダーを主に、モビルスーツの選出や3Dモデルの監督、各種演出部分選出なども兼任。
神戸秋義 氏(かんべ あきよし)
『機動戦士ガンダム バトルオペレーション』シリーズでは、アウトゲームを中心とした企画セクションリーダーとディレクターを担当。
「立像のようなリアルな造形を見たい」ひとつの思いから始まった企画
——『バトオペ』はどのような経緯で開発が始まったのでしょうか。
徳島
新しいガンダムのゲームを作ろうと企画を練っているときに、お台場に等身大ガンダムの立像ができたんですよね。そこで気晴らしもかねて、スタッフの皆で見に行った際、迫力と細かなディテールに感動しまして、そのときに「ゲームなら等身大の立像、立て放題じゃない?」と思い立ったんです。
——たしかにゲームならいくらでも作れますね。
徳島
そこで、人がモビルスーツを見上げるようなシチュエーションのあるゲームを作ってみようという企画が立ち上がりました。私がもともとパブリッシャーであるバンダイナムコエンターテインメントのスタッフの皆さんといっしょに、ガンダムゲームの中でもリアルな戦場ものをずっと作っていたことと、世間的にFPS系のゲームがブームになっていたので、企画当初は歩兵戦がメインで、歩兵・戦車・モビルスーツの三つ巴の戦場になるゲームを考えていました。
ただ、そうなると難度と敷居が高くなりすぎたので、途中から多対多のPvP作品に切り換え、『バトオペ』の原型ができました。
劇中のイメージとリアルさを第一としたディテールに仕上げる
—— 機体へのこだわりをお聞かせください。
徳島
やはりディテールはかなり大事だと思っています。線の少ない状態だと、間が持たなくなってしまうので、立像のような説得力のあるディテールをすべてのモビルスーツに加えています。ゼロからのスタートなので、かなりの挑戦でしたね。
そのため、最初のデザインの起こしから実際に触れるようになるまで、基本的に1体につき半年ぐらいかかります。ですが、ガンダムというIPの特性上、新作の実装が不意に湧いて、スケジュールが崩れることもありました(笑)。
——『バトオペ2』は新作の実装も多いですね。
徳島
ようやくやりやすい環境になりました。初期とは違い、機体のコスト帯が増えましたので。運営初期はコストが300くらいまでしかなかったのですが、そんなときに限って実装要望された機体がどう考えても700相当のものだったりして、機体実装以外でうまくバランス調整を行う方法などで頭を悩ませました。
少し話が逸れるのですが、『バトオペ』シリーズは比較的、機体による反響に差が出にくい傾向があり、マイナーな機体も特徴があれば需要があったりします。知名度だけで実装機体を選出すると、全部ガンダムになってしまいますので、なるべくマイナーな機体も工夫を凝らして取り上げ、話題が絶えないよう心掛けています。
神戸
でも、最近は低コストの新機体を出すのがきびしくなっているところはありますね。
——ギャンキャノンなど、まだありそうですが。
徳島
難しい話ですが、ガンダムは大きなIPなので、その時々で許諾していただける機体が変わります。とくにゲーム系の許諾は難しいようですが、『SDガンダムGGENERATION モノアイガンダムズ』の機体や『機動戦士ガンダム EXREVUE』のドルメルの許諾をいただけました。今後も許諾をいただけるのであれば、ゲーム系の実装も検討していきたいです。
神戸
サイコガンダムは徳島の強い要望でシチュエーションバトルに実装しました。
徳島
どうしても巨大な機体は出したくて。
——やはり、登場させる機体には強いこだわりがあるということですね?
徳島
そうですね、ただゲームの中に違和感なく参加させるために一部のデザインをアレンジして実装している機体もあります。たとえばバウンド・ドックはちょっとサイズを縮めていますね。モビルスーツ形態時のバウンド・ドックは左手のシールドカバーの先端が長すぎて頭の角より上にいってしまうため、先端を切って胴体側の穴に蓋の一部として残すようにアレンジしています。
ほかの変形機もアレンジしているものが多いですね。たとえばガブスレイのモビルアーマー形態はスカートの中が丸見えになるのですが、中身がさびしいので内側に蛇腹的な可動フィンを仕込んで、変形時に展開させて密度が増すようしています。全体的にメカが詰まっている感や、本当にありそう感を大事にしていますね。
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『バトオペ2』の毎週のアップデートは苦労の塊
——開発の苦労ややりがいを教えてください。
神戸
とにかく毎週のアップデートが苦労の塊です(笑)。シリーズ通して言えることですが、機体の追加だけでなく、バランスも壊してはいけない。たとえどんなにおもしろいゲームでも、ずっと同じシステムで長い期間遊んでもらうのは難しい話なので、プレイヤーの皆さんの声を聞きつつ、たくさんのアイデアの中から、何を優先して実装するかにいつも頭を悩ませます。だからこそリリース後に好評だと、めちゃくちゃうれしいです。その喜びがあるからチーム一同、がんばれています。
また、機体追加という面では『バトオペ』は制作フロー自体も確立しておらず、開発視点では安定して実装することができませんでした。いいときで月に4機、悪いときは2機か1機でしたので。私は現在『バトオペ2』から離れていますが、8年目のいまでもこのペースを死守している運営チームは本当にすごいスタッフたちです。皆様の温かいご支援のおかげですね。
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徳島
自分は『バトオペ』シリーズの開発が全体的に苦労したなと思っています。パッケージソフトを作る場合は、そのときの流行りを参考に企画を立てるのですが、『バトオペ』のような長期運営型のゲームは何年先も見据える必要があり、拡張できるような余白も設けたうえで飽きがこないようにしなければいけないので、すごく難しかったですね。
いまどきのアクションゲームでは必須になりつつある、ロックオン機能について、クライアントから入れてほしいという意見もありましたが、長期間遊ぶゲームはある程度の難しさや、プレイし続けることで自分がうまくなってく手応えがないと続かないんです。
そういった不便さとやりごたえの瀬戸際を探りながら、ほかの要素も何年も先を見越して設計しておくというのがすごく難しいです。あえて瞬間火力を最大にしない、し過ぎない作りかたと言いますか、とにかく長く遊んでもらうための施策を今後も大事にしたいですね。
——今後の展開も楽しみです。
神戸
まず、シリーズを13年も作り続けられていることに関して心から感謝したいです。そして13年という月日の中で、ゲーム市場も大きく変化しました。とくに基本プレイ無料のコンシューマーゲームというものは、『バトオペ』が世に出た時代は珍しいものでしたが、13年経ったいまはコンシューマーのひとつの売りかたとして当たり前になっています。
その時代の流れをしっかりと読み、昔のままの考えにとらわれずに新しい『バトオペ』の形を作り続けていき、『バトオペ』を日本だけでなく世界中に広げていきたいと思っています。プレイヤーの皆さんには引き続き『バトオペ2』を遊んでいただけたらうれしいです。
徳島
自分は30年ぐらいゲーム開発に携わっているので、半分近くが『バトオペ』シリーズに関わっている計算になります。そこまで長く関わらせていただけるゲームというのは、やはり開発者人生の中でも特別です。プライベートでも遊び続けているので、人生の一部とも言えますね。
じつは『バトオペ』シリーズは“プレイヤーのメインコンテンツである必要はない”という思想のもと作られたコンテンツでもあるんですよ。ひとつのゲームが何年もメインコンテンツとして遊ばれることは、そうそうないことですし、ゲーム業界に関わる人間としてもユーザーの皆様にはさまざまなゲームに触れてほしい。
そしてゲームが一段落したタイミングで、ついでに『バトオペ』もプレイしようと感じてもらえる、サブコンテンツ的な立ち位置を狙っていました。その狙いが当たって、長く遊んでいただけているのかなと思っています。
今後もモビルスーツやシステムの追加や改善なども行い、皆様が飽きないような工夫を凝らすようがんばりますので、これからも『バトオペ2』を末永く遊んでいただけたらうれしいです。
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