『NIKKE』×『ステラーブレイド』コラボ秘話インタビュー。イヴの艶やかな背中に見る両開発チームの情熱。キム・ヒョンテ「『NIKKE』を真似するならここまでしないと」

by堤教授

『NIKKE』×『ステラーブレイド』コラボ秘話インタビュー。イヴの艶やかな背中に見る両開発チームの情熱。キム・ヒョンテ「『NIKKE』を真似するならここまでしないと」
 2025年6月12日にPC版がリリースされる『ステラーブレイド』(Stellar Blade)、そして2.5周年イベントの興奮冷めやらぬ『勝利の女神:NIKKE』。韓国のゲームスタジオSHIFT UP開発による両作品同時コラボイベントを記念し、6月7日にコラボ発表、6月11日に豪華対談の特別番組2本が配信された。『NIKKE』に『ステラーブレイド』の要素が、『ステラーブレイド』に『NIKKE』の要素が実装される大ボリュームなコラボだ。

 その収録現場で、ディレクターのキム・ヒョンテ氏やユ・ヒョンソク氏、司会を務めた元ソニー・インタラクティブエンタテインメント-インディーズ イニシアチブ代表の吉田修平氏からお話を聞くことができたので、その模様をリポートしていく。

 また、対談番組には『
NieR:Automata(ニーア オートマタ)』で知られる齊藤陽介氏とヨコオタロウ氏も出演。ヨコオ氏からは「グラマラスな女の子が出てくる市場は『NIKKE』と『ステラーブレイド』がぎゅうぎゅにひしめき合っているので、もうそういうゲームは作らないと思います」など、気になる発言も。さらに、番組のラストでは、7月3日に『ニーア』コラボ復刻の実施もアナウンスされた。
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『NIKKE』×『ステラーブレイド』コラボの“再現”や“オマージュ”に要注目

キム・ヒョンテ 氏

SHIFT UP代表 『勝利の女神:NIKKE』開発総括プロデューサー、『ステラーブレイド』ディレクター。文中ではキム 氏。

ユ・ヒョンソク 氏

『勝利の女神:NIKKE』ディレクター。文中ではユ 氏。

吉田修平 氏よしだしゅうへい

元ソニー・インタラクティブエンタテインメント-インディーズ イニシアチブ代表。文中では吉田 氏。

――『NIKKE』はサービス開始から2年半、『ステラーブレイド』は発売から1年が経過しました。それぞれの作品での手応えをお聞かせください。

 『NIKKE』は、2年半という決して短くはない時間が経過しているということで、感じ入ることはたくさんあります。とくにいま重要だと感じているのは、やはりシステムの安定性を確保すること。ゲームをプレイする中で、なるべくトラブルが起きないように安定的なビルドを作ることが、皆様に長く愛されるゲームになるための課題だと思っております。

 そのため、プレイにあたっての利便性向上、最適化、安定性確保のために、さまざまな準備をしております。今後の『NIKKE』の発展を見守っていただけるとうれしいです。とくに、2.5周年直前のデベロッパーノートで「3周年のストーリーにご期待ください」と言い間違えてしまうほど、3周年に対する私の期待が大きいので、皆様もぜひ楽しみにしていてください(笑)。

キム
 『ステラーブレイド』は、リリースから1周年を迎え、さらにはPC版の発売を間近に控えています。私にとっては、これがシングルプレイゲームの4作目にあたるのですが、昔はゲームが完成した後はバグ修正のパッチを用意して終了、という感じでした。

 しかし、『ステラーブレイド』を制作するまでに運営型のタイトルに慣れすぎて、発売後もアップデートのパッチをたくさん作ってしまいました。その結果、いざPC版をリリースするタイミングになってみると、発売直後とは別のゲームと呼べるものに進化しています。

 この1年、本作を楽しんでくださっているユーザーの皆様のフィードバックを見て、私もうれしい気持ちになりました。いまはコンテンツもより豊富になり、コスチュームもたくさん追加しています。そのため、最近ではつねに新しいゲームをリリースするような気持ちになっています。もちろん、PC版での追加要素はPS5版でも楽しめるので、ご安心ください。……私もユもありきたりなPRコメントのような回答になってしまいましたね(笑)。

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――今回のコラボの見どころを、それぞれの作品ごとに教えてください。
 『NIKKE』側での見どころはたくさんありますが、まずはストーリーが私の期待以上にいいものに仕上がったことが挙げられます。『ステラーブレイド』とはポストアポカリプスという共通の世界観を持っているので、物語としての親和性も高かったです。

 そして、『ステラーブレイド』のファンなら気づいていただけるような要素を、3Dフィールドのあちこちに盛り込んでいる点も見どころです。いろいろなところでオマージュや小ネタが見つかると思います。また、エクゾスーツ(プロビデンス)のバトルも再現しておりますので、そちらにもご期待ください。

キム
 『ステラーブレイド』側で見どころをひとつ挙げるとしたら、やはり紅蓮と剣を交えた戦いの実現ですね。『NIKKE』でも紅蓮は剣士ではありますが、(ゲームの性質上)遠距離攻撃をするキャラクターになっていました。しかし、今回のコラボでは、紅蓮との文字通りの“真剣勝負”が楽しめます。

 紅蓮とのバトルは、“マン”というキャラクターにならび『ステラーブレイド』でも屈指の手強い相手になると思います。そのほかにもいろいろな要素がありますが、そちらはぜひトレーラーでご確認ください。


――今回のコラボにあたって『NIKKE』側から『ステラーブレイド』側にリクエストしたことはありますか?

 そういう必要がないというのが、社内コラボの特徴だと思っています。お互いがやりたい放題で、一切の制限を設けることなく自由にできました。チームは違いますが、同じ会社のコンテンツなので、最初は簡単に作れるだろうなっていう風に思っていたんです。

 ただ、実際にはそんなことはなく、両チームが熱を入れて議論を重ね、お互いの作品をより深く理解できるように努力を重ねていきました。

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――『ステラーブレイド』チームのほうはどのように今回のコラボに取り組まれたのですか?
キム
 『ステラーブレイド』のチームは、PC版のリリースと『NIKKE』コラボというふたつのプロジェクトを並行して進める必要があったので、とてもタイトなスケジュールでした。そのため、私の方から「こうしてほしい」と言える状況ではありませんでしたね。

 しかし、『NIKKE』チームとの競争に火がついて、「そこまでする必要があるの?」と思ってしまうほどの熱量を目の当たりにして、感動していますし、感謝もしています。

 キムから「PC版と同時進行なので、ベストなものを作るのは難しいかもしれない」と聞いていたのですが、開発中のビルドを見たらとんでもないクオリティだったんです。急いで『NIKKE』チームに戻って「あっちはすごいものを作ってるぞ!」と伝えなくてはいけない! と思うほどの熱量でした。その結果として、お互いが刺激しあって、よりよいものに仕上がりました。
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――『ステラーブレイド』ファンに注目してほしい『NIKKE』の魅力を教えてください。
 今回のコラボは、『ステラーブレイド』のチームが『NIKKE』を作ったら、『NIKKE』のチームが『ステラーブレイド』を作ったら、という想像が形になったものと言えます。

 SHIFT UPの特徴でもある、キャラクターの魅力的な表現、ポストアポカリプスという世界観にまつわるストーリーテリングの手法は両作品に共通するポイントです。そのため、『ステラーブレイド』のファンの方には、『NIKKE』も楽しく遊んでいただけると思います。今回のコラボのストーリーでは、“記憶”というテーマのもと、ふたつのタイトルの融合をお見せできるものとなっているので、ぜひとも楽しみにしていてください。

「実現できない世界線もあった」夢のコラボ実現までの道のりとは?

――ユさんは以前から『ステラーブレイド』とコラボしたいとおっしゃっていましたが、実際にはどのような流れでコラボが決まったのですか?

 『ステラーブレイド』がリリースされる前から、コラボはしたいと思っていました。また、そのことをキムには何度も伝えていました。お互いのチームがリスペクトし合っていたこともあって、何かきっかけがあったというよりかは、自然な流れでコラボが決まったという感じです。運命のように、当たり前にコラボするものだとチームの誰もが思っている中で、今回絶好のタイミングがやってきたので実現する運びとなりました。

キム
 ここだけの秘密の話をさせていただくと、“『ステラーブレイド』は『NIKKE』とコラボできない”という世界線も存在していたんです。『ステラーブレイド』がリリース後、売れ行きや評価が芳しくなかった場合、コラボは実現できていなかったかもしれません。

 コラボイベントというのは、四半期のコンテンツを決めるようなものなので、それがうまくいかなかった場合、ユーザーの皆様をガッカリさせることになってしまいます。そういった重大なプロジェクトとして相応しいものになるか、という心配はずっとありました。

 じつはその心配はいまでもあります。ただ、いまはそんな心配ごとよりも、コラボがうまくいくことを切に願っています。本当に『NIKKE』チームには感謝しかありませんね。『ステラーブレイド』なんかとコラボしてくださってありがとうございます(笑)。

 給料アップの件、よろしくお願いします(笑)。
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――今回のコラボは最初の発表から実現までの期間が長いように感じました。特別な理由があったのでしょうか?
 初の2作品同時コラボ、しかも自社作品どうしということもあって、“できることや作れることがたくさんありすぎた”というのがひとつの理由ですね。自社コラボなので「このタイミングまで発表は控えてほしい」という声もなく、かなり早い段階で発表ができました。

 キムは『ステラーブレイド』の発売日あたりでもうコラボについて言及していたようなのですが……そのことはゲームメディアの記事で知りました(笑)。

物語のテーマは“記憶”。『ニーア』コラボとは違ったアプローチで展開

――『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』とのコラボでは、両作品のファンが喜ぶこだわりの要素が多数収録されていました。今回も大ボリュームだと思いますが、中でも『NIKKE』ファンに注目してほしいポイントはどこでしょうか?

キム
 『NIKKE』と同じ性格と声をした紅蓮が、『ステラーブレイド』らしいリアルなテイストがありつつ、魅力的なキャラクターとして登場します。『NIKKE』の“宝もの”の要素も入っているほか、『NIKKE』風のバトルコンテンツも用意しています。

 最近は他社の作品でも『NIKKE』風のコンテンツを見ることが増えてきましたが、「やるならここまでしないと」と言いたくなるようなクオリティに仕上がりました。

――両作品とも人類とヒューマノイド、アンドロイドが重要なキーワードになっています。そうしたキーワードが深堀りされる内容になっているのでしょうか。

キム
 『ステラーブレイド』のほうは、本筋とは少々脱線して、キャラクターの魅力にフォーカスした内容になっています。一方、『NIKKE』のほうは、深い考察ができるような物語となっております。

 ふたつの作品には類似性があるので、そこが活きる物語になるように工夫しました。ポストアポカリプス世界やヒューマノイドについては『ニーア オートマタ』とのコラボで1度描いているので、今回は違ったアプローチと言いますか、先程も申し上げたように“記憶”をテーマにした物語にしました。これ以上はネタバレになるので詳しく申し上げられませんが、ご期待いただければと思います。
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――『ステラーブレイド』コラボ以降の新しい企画は、どのような予定がありますか?
 たくさんの作品が議論の対象になっていて、少し進捗のある企画も存在はします。しかし、現在は詳しくお伝えすることは難しいですね。いまは『ステラーブレイド』のコラボのほうにフォーカスしていただけるとうれしいです。

――コラボの話題から離れてしまい恐縮ですが、『NIKKE』の最新のストーリーでは、アイドルだったというアニスの過去が明らかになりつつあります。元メンバーたちも戦闘は可能なのでしょうか?

 ネタバレになるので詳しくは言えませんが、うまく戦えるか、性能として強いかどうかは別として、ニケである以上戦闘能力はあると考えています。
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『NIKKE』『ステラーブレイド』各作品の大成功の秘訣とは?

――今回の対談で司会も務められている吉田さんやSIEへの印象をお聞かせください。

キム
 まずは、この場をお借りして改めてお礼を申し上げたいと思います。以前の映像撮影もそうですが、今回もたいへんご尽力いただき、感謝の気持ちでいっぱいです。

 吉田さんにこの場に来ていただいたことは、大きな意味があります。『ステラーブレイド』を発掘し、世界中に届けられるようなきっかけをくださったのが吉田さんです。そして、『ステラーブレイド』PC版や『NIKKE』とのコラボも応援してくださり、『ステラーブレイド』の母親のような存在だと思っています。

 皆様もよくご存知のように、吉田さんはプレイステーションの誕生からゲーム業界に携わっておられた人物です。『
アンチャーテッド』や『ゴッド・オブ・ウォー』などのタイトルを始め、ファーストパーティーとしてもゲーム業界を支えてくださったので、すばらしいゲーム体験ができました。ゲームを作る者として、また、ひとりのゲーマーとして感謝の気持ちでいっぱいです。

 もし機会があれば、いま力を入れておられるインディーゲームや今後のゲームの未来などについてお話できればと思っております。

吉田
 お酒を飲みながらね(笑)。

キム
 (日本語で)はい、わかりました(笑)。

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――吉田さんは、実際に韓国のSHIFT UPにも足を運ばれたことがあるそうですが、スタジオの印象はいかがでしたか?
吉田
 じつは私はSHIFT UPさんの『デスティニーチャイルド』が大好きで、たっぷりと遊んでいたんです。やっぱりキムさんの描くキャラクターが可愛いですし、ライブ2Dの動きもすごくよかったんですよね。

 最初にSHIFT UPさんに伺ったのはコロナ前の2019年で、SIEでいっしょに仕事をしているメンバーに連れられて韓国へ行きました。最初は、何を見せてもらえるのかはわかっていませんでしたね。そんな中で、“プロジェクトイヴ”という『ステラーブレイド』のプロトタイプを遊ばせてもらって、「これはすごい!」と思わず唸りました。

 韓国にはたくさんのデベロッパーさんがいらっしゃるものの、MMORPGが多く、対象ハードもPCやモバイルが中心だという印象があったんですよね。一緒に行ったスタッフと「コンソールゲームも作ってくれないかな」と話していた最中に、いきなりの『ステラーブレイド』だったのでインパクトは大きかったです。

 そして、キムさんとお話しをしたら「子どものころからプレイステーションで遊んでいて、いつかプレイステーション向けのゲームを作ってみたかった」とおっしゃってくれて、感動しました。

 その後、粘土細部まで作り込まれたネイティブ(『ステラーブレイド』のモンスター)が並んでいる工房や、開発者がぎっしりと詰まったデスクフロアを見せていただき、すごく熱気を感じました。

――吉田さんは、最初期から『ステラーブレイド』を見守ってこられましたが、大成功を収めた理由をどう分析されていますか?

吉田
 キャラクターの造形や、開発の技術力、美しいグラフィックなど、いろいろとすばらしい面はありますが、私の中では“バトルの手触りのよさ”がとくに大きかったですね。難しいんだけれども慣れてくると乗り越えられる点や、パリィやジャスト回避のような気持ちのいいアクションを誰でも学べるようにしてある点など、とても遊びやすくて、でも奥の深いバトルになっている。そこがいちばんの成功理由だと思ってます。

 それも、SHIFT UPさんが自分たちだけで作るのではなく、SIEのメンバーと議論を積極的にしてくれたことが、成功を生み出す大きなポイントでもあったと思います。かなり密にキャッチボールをしてくださったので、すごく磨き上げられたいいゲームになったのではないでしょうか。

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――改めて、吉田さんは『NIKKE』と『ステラーブレイド』にどのような印象をお持ちですか?
吉田
 『NIKKE』は、リリースにあたっての日本でのマーケティング展開が凄まじかったことが印象に残っています。まさに街をジャックしているような感じで、SHIFT UPさんならではのキャラクターの魅力が全面に押し出されていましたし、“背中で魅せる”というのもよかった。並んでいた広告の数々を見て、「このゲームは勝ったな」と思いました。

 『ステラーブレイド』は、難度が高め、かつ3人称視点のアクションゲームということで、じつは私がいちばん好きなタイプのゲームなんです。プロトタイプの段階から触らせていただいていたのですが、どんどん完成度が上がっていっているのを間近で見てきましたし、発売後もいろいろと改善、追加していく姿勢も含め、素晴らしい作品だと思っています。

――今回のイベントの感想をお願いします。

吉田
 私は『デスティニーチャイルド』からSHIFT UPさんの大ファンなので、お声がけいただいたときは「ぜひやらせてください!」とすぐに返事をしました。しかし、返ってきたスケジュールを見て初めて丸1日かかるということを知り、正直「やばい!」と思いはしました。ただ、今日1日でいろいろなお話が聞けてとても楽しかったです。
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特別番組の視聴はこちら

 6月7日の特別番組では、『ステラーブレイド』コラボの情報が公開。イヴ、レイヴン、リリーの各性能や、紅蓮の新規コスチューム販売などが発表された。

 6月10日の特別番組では、齊藤陽介氏とヨコオタロウ氏も出演した5名の豪華対談が実施。ヨコオ氏のキャラクター制作の気になる発言(
配信33:14ころ)や、『ニーア』コラボ復刻情報(配信49:27ころ)など、見どころ満載な53分となっている。
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