世論操作系アドベンチャー『コメンテーター』が開発中。スポンサーや視聴者に“忖度”しなければ即・解雇。報道をめぐる“不都合な真実”を表現

by小林白菜

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世論操作系アドベンチャー『コメンテーター』が開発中。スポンサーや視聴者に“忖度”しなければ即・解雇。報道をめぐる“不都合な真実”を表現
 インディーゲーム制作チームのテバサキゲームズは、世論操作系ノベルゲーム『コメンテーター』をSteam向けに開発中だ。
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 本作でプレイヤーは架空の大人気ニュース番組“NEWS SQUARE”のコメンテーターに抜擢された人物となって、番組に出演。本番前の打ち合わせで、番組内で取り上げる4つのニュースに対して「強く支持」、「支持」、「不支持」、「強く不支持」を振り分け、ここでの選択によって番組内でのコメントが変化する。

 どんなニュースを支持するか、支持しないかによって“視聴者注目度”と“スポンサー満足度”が変化。必ずしも一致しないこれらのポイントを意識して、ちょうどいいバランスで“忖度”を働かせなければ、すぐに番組を解雇されてしまうのだ。
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 コメントが求められるニュースの内容は、現実でも耳にしたことがあるようなものばかり。「カジノ開発に際して贈収賄を受けた大臣が逮捕された」「オリンピック開催に掛かる多額の費用に反発の声」「麻薬を所持していた芸能人が逮捕」「隣国からのミサイル発射が頻発」などなど……。

 「汚職に塗れた世の中をコメントで斬るぞ!」と意気込むプレイヤーもいるかもしれないが、家族を養うためにこの仕事を長く続けたいのであれば、「スポンサーが喜ぶのはどんなコメントなのか?」と考えたほうが身のためだろう。また、芸能人のゴシップネタをセンセーショナルに取り扱うのも、視聴者の注目を手堅く集めるためには有効だ。
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 「なんでこんな的外れなコメントをしているコメンテーターが起用され続けているのか?」といった疑問を持ったことがある人も、本作のプレイ中は気付けば的外れなコメントをせざるを得なくなっているかもしれない。

 なお、本作は試遊版がunityroomでプレイ可能だ。開発途中のバージョンであり、製品版ではここからさまざまな仕様がブラッシュアップされていくと思われるが、“思ってもいないことを言わざるを得なくなる”怖さの一端は、プレイを通して垣間見ることができる。気になる人は、ぜひプレイしてみてほしい。

一級建築士と高校生プログラマー(当時)の出会いが生んだ社会風刺ゲーム

 『コメンテーター』を手掛けるテバサキゲームズには、2024年3月の“TOKYO INDIE GAMES SUMMIT 2024”(TIGS2024)への出展時、取材をさせていただいた。
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 このとき筆者は初めて『コメンテーター』をプレイし、その日本版『ヘッドライナー:ノヴィニュース』(※)というだけでは留まらない、身近な諸問題をゲームに落とし込む手腕に感心しながら楽しんだのだが、同じくらい興味をそそられたのが、テバサキゲームズのメンバーについてだった。
※『ヘッドライナー:ノヴィニュース』……政情不安定な国で唯一発行されている新聞の編集長となって、見出しを飾る記事などを選択、世論を操作するシミュレーションゲーム。
 テバサキゲームズは、プランナーが一級建築士のヒヅメ氏、プログラマーがN高在学中の手羽先氏、デザイナーがエリナ氏、この3名で構成されている。

 年齢の離れているヒヅメ氏と手羽先氏は九州で行われた『マインクラフト』のイベントで出会い、意気投合。この出会いがテバサキゲームズ誕生の切っ掛けだったという。手羽先氏はヒヅメ氏と出会った当時からこの春まで、高校生だったというから驚きだ。
 番組中に速報ニュースが飛び込むなど、いっそう臨場感のあるコメンテーター体験を目指したブラッシュアップが現在も進められている『コメンテーター』。

 本作は9月26日(木)~29日(日)に開催される東京ゲームショウ2024にも出展されるとのこと(一般公開日は28日と29日)。社会風刺的なメッセージ性を込めたインディーゲームを作り上げようとしているテバサキゲームズが気になった人は、今後の動向も要チェックだ。
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