【星裕也】のおすすめゲーム
『勝利の女神:NIKKE』
- 対応ハード:スマートフォン(iOS、Android)、PC
- 発売日:スマートフォン版2022年11月4日配信、PC版2023年2月15日配信
- メーカー:Level Infinite
- 価格:基本プレイ無料(アイテム課金制)
- 『勝利の女神:NIKKE』公式サイト
- 綿密に構成されたストーリー
- 少女たちの揺れて魅せる“背中”
後悔が刻まれた“背中”以上に見るべきストーリー
ニケとは人類を守るための兵器、いわゆるヒューマノイド。そんな彼女の初登場シーンは、お世辞にもいいとは言えない。穏やかそうな見た目とは裏腹に、かなり強欲でエゴイスト。プライドが高く、そして人間嫌いだ。主人公率いる部隊を蔑み、人類が住む最後の砦“アーク”の転覆まで企んでいるなど、まあ根っからの悪人だ(いちおう仲間)。
見た目は確かにいい。ただ性格が終わっている。先にメインストーリーを読んでから、ドロシーのことが好きになった指揮官(プレイヤーの名称)は、ドMか面食いかのどちらかだろう。
そんな問題ありのドロシーのまま、ハーフアニバーサリーのタイミングで開催されたのが“OVERZONE”というイベントだ。主役はドロシーで、メインストーリーより過去の物語が描かれた。
そこでは彼女が“過去”に人類を救った“女神”であること、そして人類から裏切られたことが語られた。目的を果たせば“英雄”として迎え入れられると言われ、大切な仲間が敵に侵されてみずからの手で処分することになりながらも奮闘したドロシー。いざ目的を達成するも、人類から突き放され、 彼女に残るものは何もなかった――。
フルボイスで展開される物語は、予想だにしなかった展開やドロシーの心情に、 胸が張り裂けるような気持ちになった。ときにはやむを得ず、みずから仲間に手をかけることも。そして人類からの裏切り。そうした過去の辛い出来事を彼女は人知れず背負っていたのだ。
通常ニケは、精神的ショックやストレスを受けると“思考転換”と呼ばれる現象が発生し、性格が変わってしまう。例にもれずドロシーの経験は思考転換するほどの内容だったにもかかわらず、彼女は変わらなかった。それほどまで強い憎しみを人間、そしてアークに対して持っていたことで、自我を保っていたと考えると、ドロシーを見る目もガラリと変わってくる。
さて、思い出してほしい。ドロシーの初登場シーンを。人間不信やアークの住民である主人公を蔑んでいたのは、過去の苦痛からだったのだ。最初は彼女を毛嫌いしていたはずが、同情を越して罪悪感すら湧いてくる。
ふだんストーリーを2周する私だが、OVER ZONEはどうしても見返せない。もちろん、OVER ZONEからメインストーリーの順に読めば、感じかたは変わったのだろう。だが、これを逆の順番で実装してくるのが『勝利の女神:NIKKE』というゲームだ。
こんな予想だにしない展開の物語が、定期的に追加される。プレイする際は覚悟してほしい。