※唐突ですが、本稿ではナナの日(7月7日)にちなんで2005年に発売されたプレイステーション2版『NANA』をプレイした模様をお届けします。 昔の自分を思い出すのは辛い。
10代のころ、勉強なんか好きじゃなくて、だけどやりたいこともなくて、将来なりたいものも夢もなかった。

なりたいものがないんだから努力なんかするわけない。社会に出てからも仕事はいい加減だったし、だからすごく貧乏だった。
だからマンガ『NANA』を読むのはちょっと辛い。
『NANA』は、多くの人のハートをガッチリ掴んで震えさせた矢沢あい先生の代表作。
夢に向かって孤高のプライドを守りながら突っ走るナナと、男に依存していて甘ったれで、文句ばっかり言っている奈々(ハチ)の物語だ。

そんな風に『NANA』を評したところ、編集のMちゃんからハチに対して厳しすぎないかとのツッコミが。
「ナナはナナでカッコイイだけでなく、頑固でハチ以上に依存体質を見せることもあります。ハチはハチで面倒見がよくて、簡単に心を開かないシンやナナの懐にもスッと入れるような人柄を持っています。どちらも完璧じゃないからこそ支え合っている関係が私は好きですね」
とのこと。

なるほど、まあ確かに、ハチに対しては評価が厳しいかもしれない。だって恥ずかしいんだもん。
ハチは昔の私そのものだ。

「昔の和久井さんは、もしかしたらナナに出会えなかったハチなのかもしれませんね。そんな和久井さんが、ナナとハチのいる世界に行ったらどうなるのか。気になります」
そういって、Mちゃんから渡されたのが2005年にKONAMI(コナミ)から発売されたプレイステーション2版『NANA』だった。
ねえ、ナナ。覚えてる?
3人目のNANAになって、NANAの世界に入れるゲームがあったことを……。
覚えてるかってより今回初めて知ったんですが。そんな『NANA』をプレイしてみた。
Y2K全開のナナたちの時代にタイムスリップ
まずはキャラクター登録。

操作する主人公の名前は“なな”で固定。出身地やら将来の夢は自由に選べるので、20歳だったころの自分を思い出して、出身は埼玉県、将来なりたいものは“お嫁さん”。
いちばんお嫁さんになりそうな見た目を選んでスタート。

ゲームの物語は、3人目の“なな”であるプレイヤーが、ふたりのNANAと偶然同じマンションに引っ越すところから始まる。

この不動産屋のおじさんマンガにもでてきたな……。
そんなことを考えていたら、即日入居が決定。

入居先決定の帰りしな、主人公ナナとハチにばったり遭遇。

右手にはタバコ。さすがナナ
ナナとハチの住む707号室の隣りに住むことがわかり、1日が終了。
すると、いきなり出てきたのが収支明細書!
貯金20万から家賃が差し引かれるシビアさよ……。ここで一気に貧乏ムードになってしまった。働かねば。

翌日は買い物に行けるようだ。
ナナたちの住む、調布駅周辺を散策。

地元民にはわかる。駅が地下に移設される前の調布駅
いつまでも寝袋で寝るのもなんなので、とりあえず家具屋で家具を買おう。

- ボールクロック 3500円
- フラワーベッド 22800円
- Bシャンデリア 53700円
- グラデマット 7200円
- ブラックチェアー 13000円
- カウファーチェアー 3800円
所持金15万円なのでシャンデリアなんか買えない!
イスはベッドに座ればいいからいらないとして、買い物は必要最低限にしよう。私の必要最低限アイテムは時計とベッドだ。

ああ、容赦なく寂しくなっていく懐。すっごい貧乏な気持ちなんだけど、大丈夫これ?
さて、隣りの部屋にお呼ばれして行くと、タクミやレンがブラストのメンバーと麻雀をしている。
しかも、タクミの立ち絵もまさかの喫煙中。

セリフはガッツリマンガのシーンを再現してて、これはファンにはたまらないはず。

興奮冷めやらぬまま自室に帰って、開くのは時代を感じるガラケー!
いつの間にかナナたちのみならずレンやタクミともメルアド交換したようで連絡先がある。

しかも、デートにも誘える。どうやら恋愛要素もあるようだ。
そうなると誰を落としに行くかは悩ましい。ひねくれ年下好きなのでシンちゃんは好みだけど、レイラとの関係もあるし……。

レンはナナでしょ、タクミはハチだけど、この段階ではまだノブとハチがいい感じのはず。残りはヤスか……? でもナナの癒し役のヤスに軽々と言い寄りたくはないし……。

一般的に恋愛ゲームというと、ゲーム開始時に主人公と登場キャラクターの間に設定として関係があるものの、フラットな関係から始まる。
しかし、このゲームは違う。
マンガで人間関係を把握しているので、始めた途端に、全員の関係がわかっている。
なんなら私はこの物語に途中参加した新参者だし、この後どうなるのか未来も把握しているのだ。
この感覚、斬新だ。

頭にこびりついてるストーリーが邪魔して、ターゲットを絞りづらい……とりあえず「引っかかったらラッキー」ってことで片っ端からデートに誘ってみることにしよう。
ゲームなので思いっきりビッチな選択をするのだ。

ところが翌日からは地獄の日々
さて、ひと晩明けて次の予定を決めることに。まずは新宿に行って気に入った服を購入。懐がどんどん寒くなっていくので、早くバイトを探さないと。

バイト求人広告を広げると、なんと矢沢あい先生のマンガ『ご近所物語』の主人公が立ち上げたファッションブランド“ハッピーベリー”や、マンガ『Paradise Kiss』のタイトルにもなっているブランド“Paradise Kiss”など矢沢ワールドに!

職種はなんでもいいから稼ぎたい。適当に面接に受かった仕事場で、毎日仕事することにした。

休んでなんかいられない、時給700円だし。えっ……700円!?
『NANA』の連載が始まった2000年の東京都の最低時給は703円。 でも2023年度の最低時給1113円なので、生活できるか心配になるレベルだ。
仕事場までは、切符を買って電車で移動。このころSuicaってあったよね? パスネットだっけ。

電車に揺られ、到着したのはライブハウス。ここで仕事を開始する。

まさかの『Paradise Kiss』の登場キャラクター、嵐に遭遇
これ以後、私の1日ルーティンは、
- 仕事に行く
- ダブルヘッダーで働く
- 帰ったら707号室を覗いてみる
- 全員にメールしてデートに誘う
となった。
ところが、707号室を覗いたところで誰もいないことが多く、デートはたいてい断られてしまう。
振られる率高すぎじゃないですか?

就業中も、仕事っぷりを監視しに来る、坂上さんの目を盗んで、とにかく毎日全員にメールを送った。さっさと誰かを捕まえて結婚しなければ。

ねえ、ナナ。毎日全員に思わせぶりなメール送ってる私ってなんだか……
営業しているキャバ嬢みたいじゃない?
坂上さん、ただ私がサボらないかずっと見張ってるんだけど……。

私を見張っても金にはならないぞ。お前こそ仕事しろ。
どうせ断られると思って全員に適当にデートに誘ってたら、思いっきりシンとノブのデートがダブルブッキングに。

ノブには嫌われるけど、シンちゃんとデートさせてくれ
おまけに、デートの時間を確保するのに、シフトを変えてもらおうと仕事場に行ったら、仕事休むどころかクビになってしまった。

ねえ、ナナ。覚えてる?
なんか、このゲームは昔を思い出して辛いよ、ナナ。
これはいったい、なんの罰ですか?
すると私のプレイに見かねたMちゃんが、あるアドバイスをくれた。
「和久井さん。このゲームは、最初に設定した目標を達成することでゲームのエンディングが変わるんですよ」
最初の目標……?
そうだ、お嫁さんだ。

「ハチって、マンガで“お嫁さんになりたい”という夢をちゃんと叶えているんですよね。結婚までいろいろあったにせよ、夢のために邁進してそれを実現させてしまうのはすごいなと。そう思ったときに、このゲームも最初に自分の目標を設定させて、それに向かって日々の行動を決めていく。『NANA』の世界はもちろん、ナナやハチに寄り添えるゲームなんだなとプレイを観ていて思いました。」

確かに、登場キャラに会うだけが『NANA』の追体験じゃないんだな。すごい再現度の高いゲームだ。
「それに、ちょっと思うんですけれど」
Mちゃんは、今度はヤスみたいな達観した表情になった。
「昔の和久井さんはハチだったかもしれないけど、めちゃくちゃがんばって勉強して、仕事して、いまは昔と違うでしょ? だから“恥ずかしい”って思えるんじゃないですか?」

〇ボタンを押す手が止まって、目頭が熱くなった。
そう……か、そうだよね、ごめん、『NANA』、ごめんなさい、矢沢先生。
ハチの未来も含めて、ハチは私なのかもしれない。
ゲーム内の“なな”は出だし不調だったけど、いくらでも挽回できる。
いざとなったら、やり直せばいいんだしね!
とりあえず、しばらく『NANA』の世界に浸っていよう。人生なんとかなる!
いかがでしたか? 皆さんも、せっかくのナナの日なので原作を読んでみるのもいいかもしれません。
そして、もっとみんなで『NANA』のことを語り合いましょう!