コーエーテクモゲームスの歴史シミュレーションゲーム『三國志8 REMAKE』。一度は発売延期となっていた同作の、新たな発売日が2024年10月24日と発表された。
同作では2024年7月12日、Bilibili WorldにてPV公開およびプロデューサー・越後谷和広氏登壇のステージイベントを開催しているが、本記事ではそれに先駆けて収録した越後谷氏、そして開発プロデューサーの石川久嗣氏へのインタビューをお届けする。
2023年12月の発売延期発表から約半年、どのようなことが行われていたのか、また延期を経てどのような作品に仕上がったのか。刮目して読み進めてほしい。
完成度を徹底的に煮詰めていった半年間
──発売延期の発表から約半年、ついに再開ですね。
越後谷
ご期待いただいていた皆さまを、長いあいだお待たせしてしまい申し訳ございません。ここまでお待たせしたのは、ゲームに不具合が見つかった……というような問題があったわけではなく、われわれが見据えていた完成度にいたらず、ブラッシュアップをくり返し想定外の時間が掛かってしまったからなんです。
──どういうところが問題だったのでしょうか?
越後谷
リメイク作品と銘打っておりますが、規模は新作同等のものですし、シリーズで最大のボリュームにすることが私の中で前提条件としてありました。そのうえでクオリティーを保つために、社内で何度も何度もテストをしてはさまざまな人の意見を訊き、その都度ブラッシュアップをくり返してきました。モニタリングには過去シリーズの開発者にも参加してもらっています。
──『三國志』シリーズの歴代開発者はいちばんの『三国志』マニアと風の便りに聞いておりますが……。
越後谷
ものすごく細かく、たくさんの意見をもらいました(笑)。そのぶんクオリティーも格段に上がったと思います。最終的なテストプレイの社内評価では、シリーズの過去最高得点を叩き出しましたし、自信作に仕上がっています。ただ、とにかく時間が掛かってしまいました。本当に申し訳ございません。
──最終的なテスト……ということは、ゲームそのものは完成しているということでしょうか?
越後谷
あとはバグのチェックと微調整だけですね。パーセンテージで表すと95%以上、と言っていいと思います。お待たせしたぶん、リミットギリギリまで調整していいものをお届けするつもりです。
過去最大ボリュームと遊びやすさを両立させた改善要素
──それでは、この半年でブラッシュアップされた要素についてうかがっていきたいと思います。まずはUIが刷新されたということですが……。
石川
もともと、現行の『三國志』シリーズを遊んでいただいているファンにとって遊びやすいもの、というコンセプトがあって、当時のUIを活かしつつ『三國志14』に寄せて作っていました。ただ、社内モニターから「『三國志VIII』に寄りすぎ」、「スタイリッシュさを出そうとし過ぎていて欲しい情報が足りていない」などの意見があり、画面内に表示される情報量を調整しています。
大きく変わったところでは、シナリオ選択の手順があります。従来ではシナリオを選んでから、そのシナリオでプレイできる武将を選ぶ……という仕組みにしていましたが、それだとプレイしたい武将を捜すのが手間なんですよね。そこで今回は、プレイしたい武将を選んでからその武将が登場するシナリオを選ぶという要素も追加しました。
──それはありがたいですね。『三國志VIII』はシナリオが細かく分かれているぶん、選び直すのがたいへんですから。あとは操作感についても変更があるようですね。
石川
これについては延期発表前からお伝えしていたものですが、テンポアップに重点を置いて開発を進めてきました。とくに戦闘です。『三國志VIII』では敵味方の初期配置がマップの端と端で、開始後にそれぞれが真ん中まで移動してからようやくぶつかり合う、というものになっていて、それがテンポを損ねていたという声をたくさんいただいておりましたが、今回は多くの戦闘で開始直後から部隊がぶつかり合うような配置にしています。
越後谷
戦闘ではさらに個々の要素もブラッシュアップしていまして、それらについては今後随時発表させていただきます。
──武将間の人間関係を表す新要素“宿命”についても、延期前から変更があったようですね。
石川
そもそもの親密度、相性などの関係性については『三国志演義』をベースにしているのですが、それとは別にゲーム中で生じた関係性について表現したものが“宿命”という要素です。簡単にまとめると、仲よくなると“相生(そうしょう)”、仲が悪くなると“相克(そうこく)”という状態になります。
──相生や相克になるとどういったメリットがあるのでしょうか?
石川
相生の武将は"加勢"してくれるようになります。たとえば自分の名声が低くて面会拒否された際、相生の武将が加勢して面会を許可してもらえたり、戦闘中に戦法の使用回数を回復してくれたりします。
越後谷
相克は基本的にデメリットばかりです(笑)。
──それはそうですよね(笑)。具体的にはどういう行動を取るとそれらが変化するのでしょうか。
石川
たとえばいっしょに任務をこなしたり、任務外でもその武将がいる都市を訪問したりすると相生になる場合があります。逆に戦闘で相対したりすると相克になったりします。宿命の発生は、演義や正史で描かれた関係よりも、ゲーム中にどういう会いかたをしたかが影響するので、誰と相生、相克になるかはプレイするたびに変わります。そのランダム性がおもしろいと思っています。
──そのほか、わかりやすく変わった要素はあるのでしょうか?
石川
『三國志VIII』から変わった部分で言えば、いちばんの違いは“演出”です。戦闘のスピードのほか、スキップ機能も搭載してテンポアップに重点が置かれています。また大ダメージを叩き出せるような仕組みを増やして、敵を倒したときの爽快感もアップさせました。
武将の存在感についてもかなり上がっていると思います。とくにボイス量はシリーズ最大で、『三國志14』の約2倍ものボリュームを収録しています。それに関連して、イベントの量も増やしました。だいたいひとつ季節が変わるごとに何か1個は発生するくらい入れています。具体的には『三國志VIII with パワーアップキット』では97個だったのが、本作では456個と5倍近くなりました。
越後谷
結婚イベントも増えていますし、if系では反董卓連合で曹操だけが抜け駆けするとか、『三国志』好きな人にも楽しんでもらえるようなものが追加されています。
石川
また、史実シナリオに関してはオープニングを本作でも入れていますが、今回はナレーションだけでなく、武将がしゃべるシーンも入れています。
──ボイス量2倍の中に、そういった要素も含まれているということですね。
越後谷
イベント関連ではほかにも、イベントを発生させるかさせないかをあらかじめ設定できる機能を搭載しています。イベントには強制的に武将が退場してしまうなど、メリットにもデメリットにもなる要素がありますから、そこはプレイヤーが選べるようにしました。『信長の野望・新生』などでもおなじみの要素ですね。
──あれは便利ですよね! 歴史イベントは勢力図が一気に変わってしまうものもあって、勢力によっては善し悪しの差が大きいですから。
石川
イベントとは違うのですが、チュートリアルもかなり作り込んでいます。“現代のファンに『三國志VIII』を楽しんでほしい”というコンセプトがありますから、とくに初めて遊ぶ人はぜひチュートリアルを体験してみてください。ガイド役がていねいに教えてくれます。
あとは“名声”についても変更を入れています。『三國志VIII』でもあった要素なのですが、正直そこまで機能していたとは言い難いものでした。本作では、“武名”、“文名”、“悪名”の3種類を用意していて、前述のように、武名、文名については一定値ないと会ってくれない武将もいます。また、NPCの反応も変わったりします。
越後谷
自身の行動内容で変化する名声によって、周囲も変化する。武将プレイの醍醐味である、ロールプレイをしている感じがより強く味わえると思います。また、悪名はデメリットばかりではなく、一定値増えると略奪系のコマンドなどが追加されたりします。略奪は悪名を馳せていないとできないんです。
──謀反なども悪名が必要になるのでしょうか?
越後谷
それについては、じつは開発チームやモニター関係者ともだいぶ議論を交わしました。当時の価値観で、謀反とは悪なのかと。結果、謀反が悪かはケースバイケースということにしました。そうしないと、劉備は大悪人になってしまいますからね(笑)。
──たしかに。曹操、袁紹、劉璋など所属したほとんどの勢力を裏切っていますしね(笑)。ほかにも変更された要素はありますか?
石川
変更ではなく新要素として“奇才”というものが入っています。たとえば劉備なら“大徳”という名前で、一部の武将に用意された固有のスキルになっています。延期前までは“個性”として入れていたものなのですが、モニターで「1個1個の効きが弱い」と指摘を受け、有名な武将には際立った活躍をしてほしいということで、効果も大幅に強化して“奇才”という形に変更しました。
──“一部”とはどのくらいの数なのでしょうか。
石川
奇才は30個あり、イメージとしては「超有名な武将が持っている」くらいに捉えていただければと。とくに呂布や馬超などが持っている戦闘系の奇才はかなり尖った性能になっていて、敵に回すとものすごくたいへんになっています。
──それは楽しみなような、楽しみではないような……(笑)。
石川
それからシリーズではおなじみの“舌戦”も入れています。今回はオリジナルの仕様で作っていて、バランスもきびしめにしています。能力に任せて適当にやっていては勝てないくらいになっているので、楽しみにしていてください。
シリーズファンにこそ刺さる(?)追加要素も
──あとは新たな都市として“交趾”が追加されていますね。それにともなってどんな変化があるのでしょうか。
石川
まずは武将ですね。士燮やその関係者が追加されています。
越後谷
あとはルートです。じつは“コーエーテクモLIVE! in TGS2023”の動画でも交趾の存在は確認できるのですが、そのときとつながっている都市が変わっています。あの動画発表後にモニターで指摘を受け、揚州の都市(会稽)とつながるようになりました。
石川
つながっていないときは、会稽はつながりが少ない“安全地帯”でもあったのですが、攻められる危険性が増えて安全とは言えなくなってしまいましたね。
越後谷
モニターには『三國志14』のスタッフも参加していて、愛ある指摘をたくさんもらいました。おかげで完成度もより高まったと思います。
──武将データは『三國志VIII』と『三國志14』、どちらに準拠しているのでしょうか。
石川
データについては最新の評価を採用しています。ですから、『三國志14』のイメージがもっとも近いと思います。『三國志VIII』にはなかった“統率”のデータも入っています。
──エンディングにも追加があるとか?
石川
『三國志VIII』では45種類でしたが、今回は“中間エンディング”を追加しています。名声が一定値を超えたとか、名品をたくさん集めたとか、一定の目標を達成すると見られるようになっています。わかりやすい目標があるとより遊びやすいですからね。
──さて、今後の広報展開についてもうかがえますでしょうか。
越後谷
まずは発売日ですが、2024年10月24日です。今度こそズレることはありません。また、今回お話できなかった要素についても、1ヵ月に1~2回のペースで公表していければと考えています。リメイク作品ということで新要素自体はそこまでたくさんあるわけではありませんが、注目していただきたい要素はたくさんあるので、お楽しみにしていてください。また、7月19日には実機プレイも公開させていただきます。
石川
テンポのよさは実際にプレイを観ていただけるとより感じていただけると思います。
──それでは、最後にひと言ずつメッセージをお願いします。
越後谷
CGも一から描き直すなど、新作と同じ期間をかけてじっくりと作ってきました。最新の時代考証も反映しているところもあり、実質的な最新作です。また、過去作に携わった人たちからも意見と同時に魂や怨念もいただいて、本当の意味で集大成と言える作品になっています。とくに『三國志』シリーズは何から入ればいいか悩んでいる方は、本作でぜひデビューしてみてください。
石川
本作は、これまで『三國志』シリーズを難しそうだからと敬遠してきた方にはとくに遊んでいただきたいと考えています。もともとが昔のゲームなだけに、シンプルにまとまっている部分もあって、かなり遊びやすい作品です。チュートリアルにも力を入れているので、ぜひお手にとってみてください。