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『フォールアウト4』インプレッション(後編)~敵を作れ!どんどん作れ!敵を倒して負けない自分を作れ!

公開日時:2015-12-17 05:16:00

 『フォールアウト4』怒涛のインプレッション後編であります。
 前編では、基本設定の復習から始まり、ディスクからデータが溢れるかのようなメガ盛り感満点のゲームデザインについて語り倒したが、やはりこのゲームの醍醐味は緊迫感溢れる戦闘にある。そして対峙するエネミー連中の、まあ恐ろしいこと。今回は相手がヒャッハー上等なドちんぴらレイダーだからと侮っていたら、返り討ちを喰らうのはこっちの方である。もちろんレイダーなんてのは単なるフロントアクト(前座)であり、2200年代のボストンは郊外でも都市部でも野生の王国状態。しかも変異を遂げてるから厄介極まりない。
 今回はプレイヤーに襲いかかる様々なエネミー紹介を中心に、瀕死の重傷、下手すりゃ死んでることもしばしばの緊迫感溢れる戦闘や、その束の間に癒しを与えてくれる頼れるコンパニオンについても解説。前後編合わせて8000字超えの壮大なインプレッションとなってしまいましたが、最後までお楽しみいただければ幸いであります!

※本記事で使用している画像等はPS4英語版のものになります。ご了承ください。

●ボストンで死にたい!?エネミーだらけのマサチューセッツ

 核戦争後の秩序も良識も失われた世界において君臨し、プレイヤーに襲いかかるエネミーたち。倒せば何かしらドロップしてくれるため、余程都合が悪いタイミングでない限りは極力倒しておきたい。しかし、『フォールアウト4』は全体的にエネミーが強いうえに、恒例のキャラからご新規さんキャラまで多種多様なエネミーが主人公の命を狙ってくる。

 その代表選手であるレイダーは、タイヤレンチ片手に罵声を飛ばしながら突っ込んでく足軽系と、強力な銃火器やお手製パワーアーマーで身を固めたボスクラス(筆者は「番長」と呼んでいる)が徒党を組んで襲いかかるのが特徴。都市部でも郊外でもあちこちにバラック建ての砦や要塞を建設したり、前時代の遺物となった工場や集合住宅の跡地に住み着いている(不法侵入者は警告なしに射殺)。

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▲ちなみにレイダーはたまに犬装備をした番犬を連れていることもあり、かっぱらって愛犬ドッグミートに着せてやることもできる(ゴーグルは人間用を流用可能)。

 多くのプレイヤーが序盤の戦闘でレイダー軍団と対峙することになるのだが、物陰にカバーしながら銃撃してきたりと腕の立つレイダーや、グレネードをポンポン投げ込んでくる特攻野郎もいるので、決して甘く見てはいけない。また、本作でもシリーズ恒例レイダー芸術(※編注:ベセスダ得意のオブジェクト配置によるギャグアート)が登場。アジトなどを襲撃した際は、アイテムを探しつつ内装にも注目しておきたいところだ。

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▲「……ということがあったのさ」ってな感じ。制作者がどういう気分でこれを作ったのかは知る由もない。

 野生動物も恐ろしい。コモンウェルズには野犬を筆頭とする野生動物たちが独自すぎる生態系を築いている。そして、ドッグミートのような可愛さを備えたフリーランスの野犬など、そうそういない。この世界で出会う犬連中は基本的に噛みつき専門のワイルド系ばかり。

 まだ犬は犬なので突進してくるだけだから苦労はしないのだが、地中を自在に移動するモグラとネズミの変異体モールラットとの戦闘は、まさに核戦争後のモグラたたきの様相。出会い頭に噛みつかれ、即死という悲惨なケースも多い変異熊ヤオグワイや、食物連鎖最強を誇るデスクロー様と、この世界の毒々動物ランドぶりは相変わらずなのだが、それだけでは終わらない。
 特定のポイントやクエストを受けることにより怪獣クラスの超ド級クリーチャーまで対峙する羽目になるのだから、気分はもう『パシフィックリム』。もちろん登場する敵の中でも最強クラスなので、超ド級系と対決する場合はパワーアーマーやロケットランチャー、各種ドーピングや特殊弾頭など万全の装備で挑みたい次第。

 野生動物といえば、昆虫や甲殻類も忘れてはならない。前編でも触れたカサカサ高速移動する変異ガニのマイアルークは、卵から孵化したばかりの子ガニが厄介。足元に群がって身動きが取れないよう親をアシストするし、これまた舐めてかかると地味に痛い。水辺では注意が必要だ。

 雑木林や家屋内には昆虫も潜んでいる。ビーチサンダルを遥かに上回る大きさのゴキブリ、長いパイプのような管を突き刺しプレイヤーの血液を吸う巨大モスキート、蛆虫を弾丸のように発射して追加ダメージを与えてくる巨大ハエ、そして外殻の硬さなら最強クラスの毒サソリ“ラッドスコルピオン”まで、まったくどいつもこいつも手強いので、何度も念押しするが油断大敵。ハエだと思ってハンドガンで倒そうとして、実はレジェンド級で反対にあの世に送られてしまう。そんな経験ありませんか? それでもなお、野生動物の全てが何らかの料理または薬品や武器の素材になると考えれば、ビビって狩りをやめるなんてあり得ない。突撃あるのみである。

 強さの順で語るなら、レイダーや野生動物の危険レベルは似たようなもの。ヤバいのはやっぱりあの方々……スパミューことスーパーミュータントの皆様である。戦時中、バイオ研究所にて最強の兵士を生み出すべく開発された新薬が全ての元凶となり、凶暴かつ攻撃力の高い怪物が誕生。その結果に政府は最強兵士計画を中止するが、実は秘密裏にマッドサイエンティストにより研究が続けられたという、核戦争後のフランケンシュタインのような出自を背景に持つスパミュー軍団は、今回シリーズ最強の攻撃力と優れた統率力でプレイヤーを殺しにかかる。警護を担う番犬ならぬ番ミュータント犬を従え、アジトの見回りにも余念がなく隙が少ない。おまけに使用してる武器はアサルトライフルなど強力極まりなく、狙いも正確。3匹以上のスパミューに遭遇したら念の為死を覚悟しておきたい。

 中でも恐怖度MAXなのが、ミニニューク爆弾を小脇に抱えて突進してくる自爆スパミューだ。「カッチカッチ」というタイマー音が聞こえたら、奴がいる合図。振り向けばいきなりドカーンというケースもあり、装備が完璧でも即死率200%オーバー。
 接近される前に倒すか、引きつけてダッシュで逃げ切るか状況によって判断が分かれるところだが、出会った時の総毛立つ感覚は、まるで現実の世界で起きている自爆テロの狂気を間近に体験しているかのような恐怖であり、倒すまでの緊張感と殺られてしまった時の無常感たるや、実に恐ろしい。ゲームの中の出来事とはいえ、コントローラーを置いて放心状態になる。でもうまく接近爆発前に倒せれば、もれなくミニニュークが手に入るため、ここでもめげずに戦う精神力が要求される。でも、やるんだよ!

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▲ミニニューク(小型核爆弾)を抱えて一直線にタッチダウンを目指す自爆野郎。「カッチカッチカッチカッチ」という音が聞こえたら警戒すべし!

 エネミーはまだまだいる。前編でも触れたが、ボストンは機械工学部門において全米でトップレベルの都市。そこは暴走するテクノロジーが生み出したマシンソルジャーたち巣窟でもあるのだ。家事手伝いロボの戦闘バージョン、Mr.ガッツイーに代表されるロボ軍団は装甲の硬さと攻撃力の高さが売りなのだが、ロボ軍団にもニューフェイスが加わり、アニマル連中とは違うプログラミングに忠実かつ無慈悲な攻撃をかましてくる。
 さらに連邦の誇るアンドロイド兵士たちが、これまた手強い。“人造人間”は表情こそ無愛想だが、コモンウェルズの人々から恐れられている、というか人をさらって入れ替わったりするので嫌われている。標準装備のレーザー銃から繰り出される攻撃は機械だけに正確無比。ボヤボヤしてると灰にされてしまうので、遭遇したら迅速に片付けたいところ。動き的には剥き身のターミネーター(Tー800)そっくりで、下半身を吹っ飛ばしてもなお匍匐前進で向かってくる根性は、機械ながら天晴れだ。つうわけで人造人間相手にトドメは忘れずに。

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▲初期型人造人間は機械丸出し。世代が進んだバージョンでは、人間と区別がつかないため、社会に紛れ込むものもいるという……。また自律思考型であるため、人間に敵意がなく、ひっそりと暮らしていきたいだけの人造人間も存在する。

 いわゆるゾンビ的なポジションにいるフェラルグールも負けてはいない。正確にはゾンビと言うより脳が溶けちゃった人間なのだが、動きは迅速。普段は無目的に廃屋をウロついていたり、死んだふりをしているが、こちらを発見すると一目散にダッシュ! そのままの勢いで前のめりにダイブしながら噛み付いてくる慌てん坊だが、こちらもダメージを受けるので笑ってる場合じゃない。

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▲時々コケるぐらいの勢いでダッシュしてくるフェラルグール。

 動きが早いため狙いもつけにくく、集団相手の接近戦では銃火器は不利。ここでマチェーテに代表される打撃武器の出番となる。銃ではなかなか動きを封じられなくとも、打撃であれば数発殴るかブッタ斬れば片がつく。火にも弱いので火炎瓶攻撃や、周辺の状況を確認して床に巻かれたオイルやガス漏れに引火させて一網打尽にすることもできる。ただし、レジェンダリー級となると相応に手強いので、クリティカルゲージを雑魚で使い切らないように注意したいところ。

 これだけの敵を前に孤独に戦うのだから、疲労だって蓄積する。それを癒してくれるのが、冒険のパートナーとなる相棒=コンパニオンの存在だ。コンパニオンは『フォールアウト3』や『フォールアウト: ニューベガス』にも登場するが、本作においては戦力上でも物語上も重要なポジションにある。
 家事手伝いロボのコズワースに名犬ドッグミートのお役立ち&癒し系も大変に重宝するが、やはり注目すべきはブン屋(新聞記者)のパイパー。多くを語るより、彼女との会話を存分に楽しんでほしい。辛い戦いの連続の中で、一服の清涼剤になるのは間違いない。コンパニオンは基本的に不死身だが、戦闘中にダメージを負いすぎると動けなくなる。そんな時は敵の銃撃の切れ目に回復アイテムを投与することで復活させてやろう。

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▲コンパニオンを自分の拠点に送って待機させることもできる。

 戦闘の後は恒例のハック&スラッシュお楽しみタイムでは持ち切れない荷物を持ってくれるなど、移動時においても欠かせない存在だが、一方では完全孤独な一人旅を続けるための専用PERKSも用意されているので、やはりどちらを選ぶかはプレイヤー次第。ここでもまたバランスと自由度が見事に調整されている。

●『フォールアウト4』~それは終わりなき旅時の始まり

 前編の冒頭でも触れたが、筆者にとって『フォールアウト4』は現時点で無人島ゲームのナンバーワンに挙げられる。ちなみに以前の無人島ゲームは何だったかというと、それは『フォールアウト3』だったりするので無人島ゲームの二冠を達成したことになり、これをもって、『フォールアウト4』という作品への最大級の賛辞と代えさせていただきたい次第。
 もう2015年度最強傑作であることは決定だが、何しろまだ筆者とて冒険を始めたばかり。あの世界にやるべきことがまだまだ残っており、何ならもう一度キャラクターメイキングからやり直しても構わない。無制限の面白さを秘めたもう1つの世界が、今夜も筆者を手ぐすね引いて待っている。

 俺は荒野のワンダラー♪ 今日も道なき道を往く♪

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著者紹介
マスク・ド・UH
マスク・ド・UH
 国籍、年齢、職業すべて不詳という設定の自称・洋ゲー冒険家。週刊ファミ通において、ゲームクリエイター須田剛一氏と共に“洋ゲー発着便AIRPORT 51”を連載していたが、2011年4月をもって最終回を迎える。社名を出せば誰もが知ってる某大手海外ゲームデベロッパーの元社員という噂もあるが、本人曰く「オマエの過去は聞かない。だからオレの過去も聞くな」とのこと。座右の銘は「毒蛇は急がない」。Twitterでは<MASKDEUHBADASS>名義で小ネタ&コボレ情報も投下中。ADIOS GRINGO!!!!
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