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『フォールアウト4』インプレッション(前編)〜歓迎回家! 俺はボストンに帰ってきたぜ!

公開日時:2015-12-17 05:15:00

 7年ぶりである。
 7年ぶりにまたも、無人島ゲーム(※)にマストな傑作が生まれてしまった。もう最初から結論を下してしまおう。『フォールアウト4』は2015年最後にして最強のタイトルであり、筆者的無人島ゲームベスト1を更新した超弩級の洋ゲーである!(※編注:無人島に一本だけ持って行ける時に選ぶやつ)

  フォールアウトシリーズは、ベセスダ・ソフトワークスによる、核戦争後の荒廃した世界を舞台にしたオープンワールドRPGだ。荒野を放浪する一匹狼になるもよし、律儀に頼まれごとをこなしながら旅する聖人となるもよし、廃墟に吹き荒れる暴虐の権化にも、冷徹なリアリストにだってなれる。
 使い古された言葉だが、そこには「自由」がある。もはやFPSだとかオープンワールドとか、RPGといったジャンルのカテゴライズすら無意味な、文字通り「何でもできる=作れる」仮想世界が実現している事実にも驚くばかりだ。北米版でプレイを始めて3週間ほどの筆者だが、未だ全く手付かずのエリアがあり、探索もクエストもストーリーとのリンクも手探り状態のでのプレイが続き、ひたすら睡眠時間だけが削られる「牡丹灯籠ゲー」再び。
 ちなみに、ゲームプレイと記事執筆を並行して激務のあまり睡眠時不足で死にかけたのは、7年前の『フォールアウト3』プレイ日記連載時以来である。だから今回は筆者にとって7年ぶりの悪夢の再来なのかもしれないのだが、それはもう辛くとも最強に楽しい悪夢である。その冒険譚の詳細を報告するには文字数が全く足りない。しかし、プレイヤーの魂を吸い付くすような魅力を語らずして洋ゲー冒険家は名乗れない、というわけでお久しぶりです皆さん。これより前後編にて『フォールアウト4』のインプレッションをお届けします!

※本記事で使用している画像等はPS4英語版のものになります。ご了承ください。

●ボストン〜そこは復興と再生の世界か? それとも地獄への入り口か?

 まず手始めに、『フォールアウト4』の舞台となるボストンとは如何なる都市なのか、筆者の個人的な視点を交えつつ復習しておこう。アメリカ合衆国の北西部、マサチューセッツ州の首都であるボストンは、ゲーム本編では「コモンウェルス」もしくは「連邦」と呼ばれている。
 ここで思い出されるのが『フォールアウト3』におけるリベットシティ編のクエスト“The Replicated Man”だ。ここでは「連邦」による精巧なアンドロイド開発と、脱走したアンドロイドを探す任務が与えられるのだが、その依頼者であるDrジマーは「連邦」、つまりボストンからワシントンにやって来たという背景があった。今回はその本拠地に殴り込みをかけ、瀕死の体験をする羽目になるのだが、その話に関しては後編のお楽しみにしておこう。

Fallout3_DrZimmer

▲『フォールアウト3』より、「まぁ君のような学のない者にはわからんだろうがね」とひたすら偉そうなオッサン、ジマー博士。彼の語っていた「コモンウェルスで開発された自律思考型シンセティック・ヒューマノイド」は本作でも重要な問題として登場する。

 ちなみに時間軸としては『フォールアウト3』から10年後、『フォールアウト: ニューベガス』から約6年後となっており、核戦争により荒廃し尽くした世界が少しづつであるが復興へ向けて輝きを取り戻しつつある様子が描かれているのが、これまでとは最も設定上で異なっているのが本作最大の特徴といえる。それにより情報産業や流通・ビジネスの復興、新薬開発技術などが発展しているという設定に注目したい。
 現実にもボストンは合衆国第5の都市というポジションにあり、アメリカ独立戦争、そして南北戦争においても重要な役割を担いながら化学工業/産業分野においてのモデル都市として成長を遂げており、ゲーム中では博物館などの施設にて、その歴史を垣間見ることができる(※編注:実際、ハーバード大やMITことマサチューセッツ工科大など教育機関と、その関連研究機関が非常に強い街である)。

Fallout 4_CITruins

▲MITならぬCIT跡地に到着! 周囲には関連研究機関なんかもいっぱい。

 しかし、いち早く産業革命を取り入れて工業化を推進した煽りで不況に陥った過去もある。ちなみに筆者の持つボストンのイメージはこの時代に産み落とされたハードコア・パンクのコンピレーションアルバム「This is BOSTON, Not L.A.」に集約されている(このコンピに収録されたGANG GREENのパフォーマンスは最高)。
 さらに音楽的には、スカコアバンドのオリジネイターの1つとして有名なMIGHTY MIGHTY BOSSTONESのホームグラウンドという意味でも重要。そのほかズバリ「BOSTON」という地名そのままの渋いハードロックバンドも思い出される通り、実はなかなかROCK方面でも実力のある地域、それがボストンなのである。ダイヤモンドシティ・ラジオがロックンロール色の強めな選曲となっているのにも、こういったボストンのミュージックシーンへのリスペクトが随所に感じられるのだ。

●もはやジャンル分け不可能?『フォールアウト4』に詰め込まれた至極のゲームデザイン

 7年前の衝撃……『フォールアウト3』は本当に画期的かつ野心溢れるタイトルだった。RPGでありながらシューターでもあり、サバイバルとホラーの要素も取り入れられていたが、基本はあくまでもオープンワールドのRPG。作り込みにこだわり、革新的なDLC展開によって永く愛される(遊び続けられる)ゲームデザインを作り上げた。
 その後、(外部スタジオObsidianによる『フォールアウト: ニューベガス』を挟んで)ベセスダ・ゲーム・スタジオは当時の技術の集大成となる『TESV:スカイリム』を発表。より精巧になったキャラクターメイキングやハウジング(※編注:DLCで実装された建築要素)、武器防具の自作や装着できる位置のバリエーションなど、数多くの新要素を登場/追加させた。それらテクノロジーを、さらに磨き上げて最初から全部ぶち込んでいるのが『フォールアウト4』なのである。

 本作はまず大前提としてシングルプレイオンリーのRPGなのだが、今回はレベルキャップの廃止により、これまで本編のみではLv20〜30で打ち止めとなっていた成長が無制限になった。『スカイリム』においても「スキル配分のリセット」は可能だったが、上限廃止は実に大胆なデザインである。おかげでこちらプレイヤーは、自分好みのウォリアーを育てるために幾らでも試行錯誤を繰り返すことができる。
 またスキルポイントの振り直しこそできないが、育成の方向性に関しては非常に自由度が高く、それだけに効率よくプレイするためのPERKS選択は多いに悩まされる。一方でそんな悩みもお見通しなのか、レベルアップによって得たスキルポイントの配分自体は任意のタイミングで実行できるのは非常に助かる(つまり溜めておける)。

Fallout 4_skill

▲本作の強化システム。レベルがあがるとポイントがひとつ貯まり、基本ステータスを決定するS.P.E.C.I.A.L.や、能力強化を得るPerksに割り当てることができる。方針が決まるまでポイントを使わずに貯めておくことも可能(貧乏性だと後生大事に貯めがち)。

 ゲームシステムにも注目しよう。RPGであるからして、敵を倒して経験値を貯めるのが常なのだが、本作ではその戦闘がガンファイト、もしくは手持ち武器(素手ゴロ含む)によって展開する。FPSかTPSにオンタイムで切り替え可能なのはシリーズ恒例だが、本作はFPS時におけるエイミング(狙い)にリアルさが増加し、V.A.T.Sによるアシスト無しでは当たり辛いものの、成長を経てアシスト無しでも命中するテクニックを身に付けられるし、FPSで腕に覚えがあるプレイヤーならば、かなり歯ごたえのある戦闘を楽しめる。

Fallout 4_VATS

▲もちろんリアルタイムのシューティングアクションだけでなく、AP(アクションポイント)を使って指定攻撃を行うV.A.T.S.も健在。FPS/TPSがそれほどうまくない人でも、APとV.A.T.S.に特化した強化をしていけばなんとかなる。ちなみに、旧作ではV.A.T.S.発動時に完全停止していたのが本作では敵が超スローで動くようになっていたり(物陰から姿を現し始めた敵に対しても使いやすくなった)、クリティカルヒットメーターが溜まっていれば任意のタイミングでクリティカルを出せるといった仕様変更も。

 だが、それだけで終わるなら単なるRPG風シューター。本作では射撃のテクなどゲームを円滑に進めるためのイチ要素に過ぎない。およそ登場する武器のほとんどは、レアアイテムも含めて改造が可能。専用のPERKSを身に付けることで、より威力の高く自分好みに調整した武器を作り出せるのだ。さらに新登場のワークベンチにより武器防具薬品食料、そして家屋建築までもクリエイト可能となっているのだが、これがまたドップリとハマる。
 特に建築に関しては本気になればちょっとした繁華街ぐらい作れるほどの規模である。真面目に基本設計から挑んでも良いし、ゲームならではのトンデモ家屋を建築するのも自由自在。罠だらけのボッタクリ酒場だってオープンできるし、連邦最大の観光スポットを作るべく、ひたすらタワーを建立してバベルの限界に挑むこともできるが、これみんなゲームの本筋には関係ない。でも、やるんだよ!(©️根本敬〜幻冬社文庫刊『因果鉄道の旅』参照)

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▲毎回、珍妙な荒野の村が出てくるフォールアウトシリーズ。今回は自分でそれを作れる! 瓦礫を片付け、インフラを整え、バラックを建てて戦利品を飾り、愛犬ドッグミートのために犬小屋を建て、なんとなくカッコいいからガススタンドの看板をドカンと設置。村人を集めてレイダーやスパミューなどの襲撃にも対抗する。アメリカとはオラたちのことだ! ナメるでねぇ!

 「まるで『マインクラフト』のようだ」とも例えられる大盛りのエディット要素は、それだけでも単体で遊べる完成度なのだが、規模を拡大させるには冒険=戦闘と探索による素材集めが必須であり、そこにはRPGの伝統であるハック&スラッシュも盛り込まれ、レジェンド級のエネミーから様々なレア武器をゲットしたり、大枚(大キャップ=コーラの蓋が通貨)はたいてレア防具を購入する、そのための資金調達、また冒険、クエスト、たまにメイン……と、やることなすこと過積載。いつまで経ってもゲームは終わりはせんのです!

 オープンワールドにしてRPG、FPSでありTPS、ハック&スラッシュ並びにクラッシュ&ビルド、ハッキングやPIPーBOYゲームカセットなどのミニゲーム要素などなど、もはや単純にRPGの一言では片付けられない壮大な作品に仕上がっているのが、この『フォールアウト4』なのだ。

● IRON CHEF IN ボストン〜ケーキが無ければゴキブリを食べればいいじゃない

 クラフト要素の豊富さは、武器改造やハウジングだけではない。コモンウェルスの各地で倒したモンスターの肉は蝿からゴキブリ、野犬に始まり、この世界の食物連鎖の頂点に君臨するデスクロー様まで含め、全てが倒せば料理の素材となる。
 まさに核戦争後の某「ひと狩り行っとく?」なクッキングの世界は深く、気づけばレシピ探しでゲーム内時間が数日経過していることも、ままある話。スーパーミュータントが飼ってる変異犬の肉や巨大蟹マイアルークの卵などは、調理によって美味かつ特殊効果も発動する健康食品の鑑といえるので、命懸けで狩りに行く価値は充分にある。

 さらに郊外エリアや墓所などに自生する薬草やキノコ類は、回復剤となるスティムパックやステータスを一時的に上昇させるジェット、サイコなどの各種お薬の原料にもなるため、一見すると特に敵や人がいない荒野であっても、プラントハンターとして目を光らせねばならない。本作では物価が全体的に高く、回復アイテムの調達には何かと苦労しがち。とにかく「無い物は作る」のDIY精神を徹底させることで、少ないキャップを節約できるあたり、バランス面が練りこまれている。

Fallout 4_syringer

▲新武器のひとつ“シリンジャー”は、薬剤入りの弾を使用し、さまざまな効果を対象に与える。弾は回復剤などと同じ薬物用のケミカルワーキングベンチで作成可能。

●俺のボストン一夜城〜怒りのドリームハウス

 ハウジング要素について、もう少し補足しておこう。本作における不動産は購入などは必要なく、拠点のエディットモードの要となるワーキングベンチがある場所で、敵を掃討して占領したり、そこの住人の頼みごとを解決すれば、そこから自分だけの砦を築城できるようになる。
 各拠点間に補給路を結ぶことで物資を共有できるだけでなく、マップ内に拠点が増えることでハクスラした荷物を様々な場所に保管できるのがポイント。勧誘用ラジオのビーコンを建設したり、各地で特定のNPCをスカウトしたりして住民を増やし、それぞれ入り口の検問や畑仕事に従事していただくなど、それぞれの拠点で自分だけのコミューンを築くことが可能となっている。

Fallout 4_graygarden

▲拠点にできるのは敵に占領されている場所ばかりでなく、周囲のレイダーやクリーチャーに悩まされながら細々と暮らす人々の小屋や、理性的なグールやMr.ハンディーによって管理されている集落もある。

 もちろん住民の数が増えればベッドも増やさなければならないし、ポンプを設置したり畑を作って食料問題なども解決。電気を通し、見張り台を増設し、既存の家屋に足場を合体させて巨大化など、思い思いの「ぼくのかんがえたさいきょうのようさい」をビルドしまくりたいところ。
 もちろん屋内のデコレートも自由自在だ。ドクロやゴミを配置してウェイストランド民も拒むエド・ゲイン的生活の秘密拠点も作れれば、正反対にカウチソファーにテレビに絵画、ジュークボックスなどでデコレートしたゴージャスな自室だって作れる。筆者的には将来この地に、ウィンチェスター・ミステリーハウスばりの自宅を建設するのが目下最大の目標だったりする(※編注:ウィンチェスター・ミステリーハウスは、カリフォルニア州サンノゼにある有名な屋敷。38年間絶え間なく増改築され、複雑怪奇な構造を持つ)。

 しかし拠点を作っても、そこが平安の約束された地になるわけではない。やはりそこはウェイストランド、定期的にレイダーやスーパーミュータントの襲撃を受けたりもするので、マシンガンタレットの設置やトラップなどの仕掛けも念入りに考えたいところだ。
 また、住民の中にアンドロイドが紛れこむと疑心暗鬼状態になったり、発電機が寝床の近くにあると煩くて寝れないなどの苦情により拠点に設定された幸福度が下がるので、大家としてしっかり管理が必要となるあたり、やたら細かい。

 現在筆者は、サンクチュアリー・ヒルズを一大歓楽街に変身させるべく奮闘中。周辺の倒壊した家を更地に戻し、くず鉄を集め新たな町を築く。気分はもう『北の国から』の田中邦衛だが、そんなことばかりやってるから、ちっともメインクエストが進まないのである。


 まずは駆け足気味(それでも相当な文字数)で『フォールアウト4』の魅力を語ったが、その奥深さからすると、まだまだ玄関で靴を脱いだ程度の段階である。次回後編では、いよいよ凶暴極まりないエネミーの数々、恐怖の自爆ミュータントや緑の粘液に塗れた極悪フェラルグール、怪獣クラスのモンスター相手の実践的な戦闘や名所史跡の数々、冒険者に潤いを与えるコンパニオンを筆頭とするボストンのステキな人々を紹介しよう!
ANYTHING GOES!!!!

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著者紹介
マスク・ド・UH
マスク・ド・UH
 国籍、年齢、職業すべて不詳という設定の自称・洋ゲー冒険家。週刊ファミ通において、ゲームクリエイター須田剛一氏と共に“洋ゲー発着便AIRPORT 51”を連載していたが、2011年4月をもって最終回を迎える。社名を出せば誰もが知ってる某大手海外ゲームデベロッパーの元社員という噂もあるが、本人曰く「オマエの過去は聞かない。だからオレの過去も聞くな」とのこと。座右の銘は「毒蛇は急がない」。Twitterでは<MASKDEUHBADASS>名義で小ネタ&コボレ情報も投下中。ADIOS GRINGO!!!!
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