俺「ゴホゴホ……」
後輩F「どうしたんですか?」
俺「いやちょっとカゼひいたみたいで……」
後輩F「伝染されても困るんで、帰ってゆっくり休んでください」
編集者といえども人間、他人をいたわる心を忘れるな。そんなことを編集者時代にFに教えたのは、俺だった気がする。後輩が思いやりのある編集者に育っていて、先輩としてはうれしく思う。
俺「じゃあ、帰っていいかな?」
後輩F「もちろんです。温かくしてください」
俺「体験記も1回休みでいいかな」
後輩F「もちろんダメです。温かくしてゲームして書いてください」
編集者はときに締切の下僕、ライターに対して鬼になることも忘れるな。そんなことを編集者時代にFに教えてしまったのも、俺だった気がしないでもない。容赦のない編集者に育っていて、ライターとなった先輩としては「しまった」と思う。
俺「フラフラするし、うまくできるかなー」
後輩F「“感染”のルールでやれば、ちょうどいいんじゃないですか?」
ライターに強引に書かせる術を教えたのも、俺だったっけ? いまとなっては教えるんじゃなかったと、後悔しっぱなし。
※ ※ ※ ※ ※ ※
ということで今回は、『リベレーション』感染編をお届けします。カゼだけど。
このモードを説明しますと、ゲーム開始時に感染者側に振り分けられたプレイヤーは、非感染者のプレイヤーを倒すことで相手も感染者にでき、そうして全員を感染者にすることが目的になります。逆に自分が非感染者のときは、いかに長く感染者の手から逃れられるかで、得点が加算されていきます。簡単に言うと、どんどん鬼が増えていく“鬼ごっこ”といった感じでしょうか。このルールでは、相手を暗殺することで“感染”が広がっていくのです。
珍しく事前にルールを確認しましたが、やっぱり頭で理解するのと、実体験で身に付けるのでは勝手が違いますな。何はともあれ、今回は何かしらの菌的なモノがはびこるステージへさっそくレッツゴー。
ラウンドが始まると、自分は非感染者状態でスタートしました。ゲーム開始時には、初期状態の感染者と非感染者の数も表示されます。数はちょうど4対4。小学校なら学級閉鎖するぐらいの比率です。
マップの広さやNPCの様子などは、“ウォンテッド”などと変わらない、いわゆるスタンダードなモノ。ただしコンパスは、非感染者の場合は明確な位置が表示されません。近くに来た場合は警告が出るので、それを頼りにすればいいようです。
そのあたりを踏まえ、マルチプレイ時の基本に従うことにします。つまり、自分と同じ外見のNPCを見付け出し、いっしょに行動して感染者を混乱させる作戦。ということで、街角で会話する三つ子のおっさんという体で、同じ顔のいかついおっさんNPCの輪に入ります。
待機していると、徐々にポイントが加算されていきます。非感染者は、感染されていないだけでポイントがもらえるので、暗殺が苦手な人でも確実にポイントがもらえるのがいいところ。また、近くで敵をやり過ごしたりすると高ポイントがもらえます。
この待機時間が非常にスリリング。シレっとした顔で三つ子談義をしているフリをしながらも、周囲の警戒を怠りません。そして、しばらくすると感染者接近の警告が!
よーく見てみると、明らかに不自然な動きのヒゲの紳士がいました。ヤツだ! もちろん、ここで慌てて動いては台なし。あくまでNPCのフリを貫き、ジッとガマン。すると作戦通り、間違えて俺と同じ顔のNPCをヒゲ紳士が暗殺! すぐ近くなので、即座に反撃をしてその場を離脱! すまない兄さんたち!
こんなことをしているあいだにも、戦況は動いています。ひとり、またひとりと感染していくプレイヤーたち。このあたりの感覚、たぶん意識しているでしょうが、ゾンビ映画で周囲がどんどんゾンビになっていく感じです。徐々に仲間が減っていく悲しさを感じつつも、一方で自分だけが生き残っている優越感。悪くないです。自分はカゼもひかずにピンピンしているのに、クラスが学級閉鎖になったような気分です。
当然、感染者の数が増えると、自分を狙っているプレイヤーの数も増えていきます。先ほどと同じように、同じ顔のNPC周辺で待ち構えていると、すぐに警告音が鳴りました。慌てず冷静に行動しようと自分に言い聞かせます。見ると、向こうの方からダッシュでヒゲ紳士が迫ってきます。その横には、もうひとりのヒゲ紳士が! さらに別方向からもヒゲ紳士が迫る! ヒゲ紳士大集合!
この時初めて気がついたんですが、感染者は皆同じ外見になります。さすがに3人では相手にならず、あえなく倒されてしまいました。薄れゆく意識の中、新たな非感染者を求めて走り去る、“ヒゲ紳士ーズ”の姿が見えました。
目が覚めると、立派なヒゲ紳士に生まれ変わっていました。これが私? さようなら、いかついおっさんフェイス! もはや感染におびえていたひ弱なボクじゃない! そうさ俺は感染者、ターゲットに向かって猛ダッシュだ! 伝ー染ーしーちゃーうーぞー。
見れば周囲の屋根や壁には、俺と同じ感染者たちが走り回っています。何の菌だかウィルスだかわかりませんが、いつの間にか俺の中に兄弟意識が芽生えています。兄ちゃんたち、みんなでいっしょに感染させようぜ!
さすがにこのあたりまで来ると感染者の数のほうが多いので、自分が非感染者にたどり着くことなく決着を見てしまいました。
このルールでは3ラウンドで行われるので、すぐにつぎのゲームが始まります。またも自分は非感染者です。
慎重に、ときに大胆に隠れていると、なんとこのゲームでは、俺がただひとりの非感染者になるという状況に! もうこうなると、向こうもこっちも隠れたりしているヒマはありません。美しい町を舞台にくり広げられる、壮絶な鬼ごっこ。
この全員に追われるというのが、正直ものすごく怖いです。どっちを向いても猛ダッシュのヒゲ紳士。逃げても逃げてもヒゲ紳士。
自分の腕ではカウントダウンまで逃げ切れることもなく、最終的には道の真ん中でヒゲ紳士に囲まれてあえなく終了。もはやちょっとした悪夢です。
3ラウンド目では、最初から感染者でスタート。どういう風に行動したもんかなーと考えていると、周囲の感染仲間たちはけっこう序盤からダッシュですっ飛ばしていっているようです。
このあたり、もちろん人によってプレイスタイルは違うと思うんですが、当然このルールでも暗殺に成功したほうが得点を稼げるわけですから、非感染者の数が限られている以上、感染者は急いで行動するのが基本なようです。感染者は仲間であると同時に、ライバルでもあるわけです。自分もそれに見習い、猛ダッシュで探索を開始。
ほかに誰も狙っていない非感染者をターゲットに決めると、距離が近づいたところで慎重に探索を開始。狙うはセクシーお姉さんフェイスのプレイヤーです。
ゆっくりと近くまで迫っていくと、そこには三つ子のセクシーお姉さん集団が、井戸端会議をしている姿がありました。皮肉なモノです。先ほど自分が取った作戦を、そのまま返されたわけです。見た目はだいぶ違いますが。
3人の中から当たりをつけロックオンし、とりあえずナイフを投擲! ハズレ! 即座に横のお姉さんが俺に近づき、反撃をかまして走り去っていきます。くそう、いまに見てろよお姉さん! ぜったい伝染してやるからな!
そんなこんなで伝染したり、伝染されたりしながらで3セットが終了しました。
“感染”ルールの特徴は、立場の違いによる攻守の差だけではなく、敵、あるいは味方の数がどんどん増えていくことにあります。短時間で攻守のバランスが、激しく変動するようになっているんですね。これはちょっと、ほかのルールにはないおもしろさです。
とくに、最後の非感染者になったときの緊張感はヤバいものがあります。それは、もはや恐怖といってもいいものでした。
緊張感のある逃走と、猛ダッシュの追撃。それらを同時に味わえる“感染”は、スピーディーな駆け引きを求める人に、断然オススメです!
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俺「ゴホゴホ……“感染”ルールも、また独自の楽しさがあっておもしろかったよ」
後輩F「お疲れ様でした、帰ってゆっくり休んでください」」
俺「立場で動きがぜんぜん変わるのがよくできてるよねゴホゴホ」
後輩F「そうですね、帰って休んでください」
俺「なぜそう帰りたがらせるゴホ」
後輩F「年末の忙しい時期にカゼを伝染されたら困りますから、帰ってください」
俺「お前をカゼにしてやろうか!」
後輩F「帰れ」
俺「はい。治らなかったら次回は……」
後輩F「もちろんあります」
この無情さを教えたのは、たぶん俺じゃない。
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次回(2011年12月22日更新予定)はマルチプレイのさまざまな要素を紹介する予定! 皆様もカゼにはお気をつけて。
●今週の一枚