マルチプレイ
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第4回
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第6回

 ある日、フリーライターをしている自分にこんな依頼が入った。
後輩F「今度『アサシン クリード リベレーション』が出るんですけど、そのマルチプレイの体験記を書いてみませんか?」
 この依頼をしてきた担当者の編集Fは自分が編集者時代の後輩で、駆け出しのころから見てきた、いわばブラザーフッドである。
俺「俺、『アサシン クリード』のマルチプレイやったことないけどいいの?」
後輩F「そこがいいんですよ。未経験者の新鮮な目で、マルチプレイのおもしろさを書いてほしいんです。それにババさんなら、おもしろおかしく書いてくれるじゃないですか」
 悪い気はしないね。このFという男、なかなか持ち上げるのがうまい。
俺「それならいけそうだけど、そもそも俺、アクションゲームがあまり得意じゃないんだよなあ……」
後輩F「そこがいいんですよ。ゲームがヘタなおっさんが、必死でやっている姿をゲラゲラ笑いたいんです」
 イヤな感じだ。このFという男、こういうところがよくない。とはいえ、仕事としてはとてもおもしろそうなので、請けることにした。

※ ※ ※ ※ ※ ※

 さて、まずは自分と『アサシン クリード』シリーズとの関わり具合ですが、『Ⅰ』と『Ⅱ』はけっこう遊んだものの、『ブラザーフッド』はタイミングが合わず、遊んでいませんでした。
 オンラインゲームに関しては、MMORPGとかは経験者ですが、アクションゲームはそこそこ遊んだことがある程度。それもいわゆる協力プレイがメインで、FPSなどでよくある対戦プレイは、ほぼ初心者に近い状態です。

 といったことをFに伝えると、「まあ、なんにせよ『リベレーション』が出るのはもう少し先なんで、とりあえず『ブラザーフッド』のスペシャルエディションで、マルチプレイを遊んでみてください」。そう言って、ソフトを渡してくれたんです。
 上記の通り、自分はまだ未プレイだったので、「ラッキー!」と思いつつニヤニヤしていると、「マルチメインで」と釘を刺されたり。立派な編集者になっていて安心するとともに、チッと舌打ち。
 そんなわけで、本編を遊びたい気持ちを必死でこらえて、さっそくマルチプレイを遊んでみました。

 ところで、なぜ自分がオンライン対戦プレイをあまり遊ばなかったかというと、やっぱり“アクションがヘタだから”というのが大きかったりします。オフラインのゲームならヘタでも、くり返しやればなんとかなったりしますし、オンライン協力プレイなら、誰かしらがフォローしてくれたりします。オンライン対戦では、“ヘタ”をすごく実感させられます。FPSなどでは、ろくに歩き回ることすらできずに倒されるなんてこともあったりします。

 たぶん、自分みたいな理由で、オンライン対戦を敬遠している人は多いんじゃないでしょうか。もちろんFPSでも、ハンデやフォローがしっかり組み込まれているものもあるので、単純に初心者=すぐ倒されるでもなくなっていますが、そういった初心者コンプレックスみたいのは、なかなか拭いきれないものです。個人戦ならまだしも、チーム戦で足を引っ張ってしまったりするともう、小学校時代とかのトラウマまで思い出したりして、枕に顔をうずめてうなり声のひとつでもあげたくなります。あのときの騎馬戦を、俺は一生であと何回思い出すんでしょうか。

 そんなトラウマのせいもあって、まず最初に選んだのはそれぞれのプレイヤーが暗殺し合う“ウォンテッド”モード。たとえヘタで暗殺しまくられても、あくまで自己責任なので、騎馬戦のトラウマ持ちにもやさしいモードです。見た目で気に入った“死刑執行人”を選び、いざ暗殺の世界へ! さあ、ゲームの始まりです!

 始まって最初の印象は、「人がたくさんいて賑やかだなぁ」でした。本作のオンラインモードは本編同様、AI(人工知能)で動く群衆に紛れて暗殺を行うのが基本なので、フィールドはたくさんの人でごった返しているのです。ゲームをプレイする前は、殺伐としたイメージがありましたが、いい意味で裏切られました。
 自分は、操作にまだ慣れていないというのもあって、とりあえず群衆に紛れて、周囲をお散歩。するとあろうことか、暗殺対象を示すコンパスが、いきなりビンビンに反応しはじめました。
 ドキドキしながら画面をよく見てみると、俺のターゲットである七三分けの男が、前からのうのうと歩いてくるではないですか。なんというビギナーズラック。できるだけ自然な感じで近づき、すれ違いざまに暗殺を実行! 見事はじめての暗殺成功! 誰にも内緒で暗殺なのよ!

 ゲーム開始わずか数十秒で、俺は一躍注目のアサシンになったわけです。こんなこと、開始直後からスパンスパン殺されることもあったFPSではなかった経験です。
 このゲームに求められるのは、銃撃戦のような瞬発力のある行動ではなく、いかにターゲットに気付かれずに近づけるかの持久力ではないかと思いました。
 もちろんそれだけではないのは、すぐにわかることになるのですが、これまでのオンライン対戦プレイとは違うぞというのが、肌で感じられたわけです。

 さて、つぎのターゲットを探すぞーと、調子に乗って走ったり壁に上ったりしながら移動していたら、屋根の上で突然死亡! 待ち構えていたプレイヤーに気付かず、あっさりやられてしまいました。そりゃ、そんな目立つ行動していれば、すぐにバレます。
 浮かれすぎたと反省し、再開してからはできるだけ目立たないように移動。うわ何この緊張感楽しー。ドキドキしながら移動していると、突然上空から現れたプレイヤーによって暗殺! 謎のガスに包まれて暗殺! いつの間にか食らっていた毒で暗殺!

 ……もちろん全部されたほうですよ。暗殺のしかたにもいろいろあるんだなと、やられながらも感心していると、ようやく久々にターゲットを視界に捉えることができました。しかし、ここで大問題が。レーダーが指し示す先には、同じ顔をしたセクシーなお姉さんがふたりいるではないですか。さりげなく近寄りながら、よーく観察してみるんですが、どちらがプレイヤーか判断できません。
 しかし、あまり躊躇していてはこんどは自分が危険になります。意を決して近づき、勘で片方のお姉さんを暗殺! 間髪入れず、もう片方のお姉さんに襲われて死亡! 何この騙し合い! 女って怖い!

 こんな感じで、しばらく時間を忘れて遊んでいるうちに、どうやらガスや毒などは、経験値で得られるアビリティーだとわかってきました。お姉さんのように、周囲に自分そっくりのキャラクターを作れるというアビリティーもあるようです。
 アサシン格差社会に若干の憤りを感じつつも、いつか自分も覚えてやると心に誓います。こればかりは、自分のような新米アサシンは指をくわえるしかありません。
 ただ、確かに所有するアビリティーの差での有利不利はありますが、やはり使いこなすにはそれなりにプレイヤースキルも高めないといけないようです。つまり、自分のような新米アサシンが最初から使えても、うまく使いこなしきれずに、逆に危険な目に遭ってしまうということ。現に最初に覚えたアビリティー“変装”を、嬉々として使ったら変装した顔が乾かないうちに殺されてしまいました。使う場所やタイミングを考えないと、アビリティーもリスクをともなうようです。

 あと、これは個人的な感想ですが、FPSなどの対戦よりも、本作では殺されても「悔しい!」とムキにならずに済むがしました。もちろん悔しくはあるんですが、たとえば思いもよらない場所から暗殺されたり、華麗なテクニックを見せられたりすると、してやられた感というか、「スゲエ!」ってなっちゃうんですよ。
 もちろんFPSなどでもそう思うことはありますが、近接戦がメインの本作では、それがより直接的に感じられるというか。直に見られるので、すぐに自分のプレイにも応用できるのもいいですね。もちろん、使いこなせるかは自分次第ですが。

 ということで、遅咲きなデビューではありますが、『ブラザーフッド』のマルチプレイに夢中になっている俺です。聞けば『リベレーション』では、さらに新たなモードや新要素が追加されているらしいので、いまから楽しみです。

※ ※ ※ ※ ※ ※

俺「……ってな感じで、スゲー楽しんでるよ」とFに伝える。
後輩F「でしょ? ヘタな人でも楽しめるから、ババさん向きだと思ったんですよ」
 このFという男は、ひと言多い。
俺「ということで、『ブラザーフッド』本編も遊びつつ、『リベレーション』楽しみにしてるよ」
 後輩F「あれ言ってませんでした? この連載、しばらく続きますよ」
俺「マジで?」
後輩F「だから本編やっちゃダメです。『リベレーション』が出ても、基本禁止です」
 このFという男は! 男は!

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 そんなわけでこの体験記、しばらくおつきあいください。
 次回(2011年12月1日更新予定)は『ブラザーフッド』チーム戦編を予定。俺は騎馬戦のトラウマを乗り越えられるのか!? ご期待ください!

●今週の一枚

▲とりあえず自分にそっくりなNPCを見つけて、できるだけいっしょに行動することから始めてみました。わりとこれ、基本的な作戦みたいです。
外見を選択
まずはプレイヤーの外見を選択。フィールドでは同じ姿をした人物の近くにいれば、敵に見付かりづらくなる。
対象に接近
画面中央に表示されているコンパスをよく見て、ターゲットとなる敵を捕捉。群衆に紛れて暗殺対象に接近しよう。
敵を暗殺
ターゲットを暗殺すれば、ポイントを獲得。ゲーム終了時にもっとも多くのポイントを得たプレイヤーが勝利。
個人用モード
●ウォンテッド
追っ手から逃れつつ、指定されたターゲットを暗殺
●デスマッチ
コンパスが制限され、プレイヤーと同じAIキャラが出現しないウォンテッド
●アサシネーション
プレイヤー全員がターゲットで追っ手となるモード
●秘宝強奪
マップ上に置かれている秘宝を奪い合うモード
●感染
感染者がほかのプレイヤーを倒すと感染者を増やせる。ほかのプレイヤーは感染者から逃れる
チーム用モード
●マンハント
攻撃ラウンドでは敵チームを倒し、防御ラウンドでは敵チームから逃れる
●キャッチ・ザ・フラッグ
お互いの陣地にあるフラッグを奪い合うモード
●宝箱争奪戦
攻撃ラウンドでは宝箱を奪い、防御ラウンドでは宝箱を護衛
●エスコート
攻撃ラウンドではVIPを倒し、防御ラウンドではVIPを護衛
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※画面は開発中のものです。
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