フロム・ソフトウェアから2月25日に発売された『ELDEN RING』(エルデンリング)。そのプレイレポートをお届けします。
『ELDEN RING』をAmazon.co.jpで検索本作はシームレスなオープンフィールドを舞台に繰り広げられるアクションRPGで、『ダークソウル』シリーズの進化を目標に制作された作品。数々のダークファンタジーを作り出してきたノウハウに加え、世界設定に著名なファンタジー作家も参加しており、壮大な物語を体験できるタイトルとなっています。
今回の記事では、プレイで見えてきた本作の魅力、基礎的なゲームシステムなどを、ネットワークテスト版と合わせて約100時間プレイした担当ライターが、さまざまな要素を紹介していきます。
なお、今回のプレイにはPS5版を使用しています。
重厚な世界観、広大なフィールド、刺激される探索欲
本作は広大でオープンなフィールドがシームレスにつながっており、エリアの切り替えやダンジョンの出入りにロードを挟まず流れるようにプレイできるのが特徴。このノンストップでゲームにのめり込める没入感は、いまやどんなゲームにも求められる要素ですが、本作もしっかりそれが体験できますまさにこのジャンルの強み。
どのようなルートで攻略するかは、すべてプレイヤーに委ねられているため、探索や戦闘が自由に、そして好きなタイミングで行えるのも魅力のひとつですね。
物語は“狭間の地”と呼ばれる、黄金樹の祝福を受けている大地。ここでは祝福の源である“エルデンリング”という存在が砕けたことにより、その力を求めて大規模な戦争が起こり、その影響で大いなる意志から見放され、祝福を失ったものがいるというもの。その祝福を失った人々は”褪せ人(あせびと)”と呼ばれ、本作の主人公はその子孫にあたります。
祝福のない彼らは”狭間の地”から追放されていましたが、長い年月を経て世界に異変が起こり、かつて失ったはずの祝福に導かれる形で褪せ人が再び“狭間の地”に戻れるように。エルデンリングに見え、王となるために、狭間の地を旅するというのが大まかなあらすじ。ここは、ゲーム開始にも語られます。
最初に訪れるのは“リムグレイブ”という緑豊かなフィールド。ネットワークテスト版では限られた場所を探索できましたが、今回製品版をプレイして、これは全体の10%にも満たない超超超超限定された空間をプレイしていたのだと気付かされました……。
端的に言えば、“狭間の地”はあまりにも広大かつ、要素が膨大。ネットワークテスト版とあわせて累計100時間以上プレイしていますが、まだ“狭間の地”の全貌が見えてきません。マップの端っこに行き着いたのかすら自信がありません。これは僕が寄り道大好きな非効率なプレイスタイルなのも原因ですが、それにしても広い。
ただ広いだけではなく各要素が視認できる距離感で点在しているため、探索欲が尽きないよう設計されているのがうまいなと思います。小さなダンジョンや野営地、教会、廃墟、洞窟などなど。これに加えて天候や時間帯でフィールドの状況が変化する要素もあるため、多彩なパターン、角度からプレイヤーを楽しませてくれます。もちろん気付きにくい意外なところに何かが隠されている……といった、“フロム・ソフトウェア作品あるある”も外していません
同じことのくり返しだと人間は飽きてしまいがちですが、本作では「またこのパターンか……」とは、いっさいなりません。むしろうまくさまざまな要素を、しかもときには謎を残しながら配置されているので、毎回違う味が楽しめるようになっています。根こそぎ拾いたい気質の人にはうれしいのではないでしょうか。
なにより驚いたのは、「最初のエリアでパターンを把握したから、つぎのエリアでも似たようなものかな?」が通用しないことです。リムグレイブのつぎに訪れた、霧がかった水辺と小高い岩山、そして中空に浮かぶ城がそびえる“湖のリエーニエ”では、また違った仕掛けや要素が満載。ロケーションも最高です。
このふたつのエリアを探索し尽くそうと思っただけでも、かなりの時間を有しましたし、楽しみました。というより、まだ全部解明できていません。でも、これは本筋とは関係のない寄り道を含めたらの話。本筋だけなら、もっとスマートに15時間前後で踏破できるのはないでしょうか。
アクションの多彩さと選択肢の多さ
右手に装備した武器よる弱攻撃、強攻撃を基本に、盾によるガードや攻撃を弾くパリィ。背後から強力な一撃を与える致命の一撃。ジャンプ攻撃、回避攻撃、ステップ攻撃、ガードからのカウンター。さらには武器の両手持ちや、左右にそれぞれ武器を持つ二刀スタイルなどなど、アクションの選択肢はとても豊富。
アクションのベースは『ソウル』シリーズにもっとも近く、『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』のエッセンスも取り入れられています。どちらかをプレイした経験のある人なら比較的すぐに順応できると思います。PS5版での操作は×ボタンでジャンプ、○ボタンでローリング、〇ボタン長押しでダッシュ、短押しで回避。
ゲーム序盤に細かな要素を説明&試せるチュートリアルポイントがあるため、これまでに“ソウルライク”のゲームを遊んだことがないプレイヤーは必ず訪れるのがいいと思います。
ジャンプで崖際に捕まるようなパルクールの動作こそありませんが、『ソウル』シリーズをベースに考えると縦の動きを戦闘や攻略に使うのは新鮮な気がします。そのためか落下ダメージがかなり軽減されており、これまでの感覚ならダメージを受けてしまいそうな高さも、案外平気なことは多かったです。
装備品は武器が右手、左手に3つずつ。防具が4種類、アクセサリが1枠、消費アイテムが10枠。ただしアクセサリはゲームを進めることで枠が増えていき、消費アイテムはショートカット機能を駆使すればさらに6種類追加できます。アクションゲームにしては装備品がやや多めかもしれません。裏を返せばさまざまな武器やアイテムを装備でき、持ち込めるため、対応力やトライアル&エラーを試していくことがおもしろいゲームでもあります。
武器には“戦技”と呼ばれる特殊技が備わっており、通常の攻撃よりも強力です。本作では“戦灰”というアイテムを使用することで、武器種に合ったものであれば自由に“戦技”の付け替えが可能です。たとえば打刀の“戦技”は居合ですが、これを突き攻撃を行うものを始めとした、さまざまなものに変更できます。
付け替えと表現したように、もとの居合の“戦技”に戻すことも可能で、また“戦灰”は使用しても消費されません。これにより、同一の武器でありながら気軽に攻撃の選択肢を広げることができるようになっています。
また、この“戦灰”の使用においては“戦技”を付け替えだけでなく、武器に属性を付与することもできます。たとえば炎属性の打刀にすることも。武器の攻撃力はベースとなる攻撃力には自キャラの能力値に応じて補正値が加わる仕組みになっており、お気に入りの武器を自分の能力値と相性のいいものに変えることもできます。
敵を倒した際などに得られるルーンを消費してレベルアップすることで上げられるのは能力値で、さまざまな能力値や装備から算出された値が最終的なステータスとなる仕組み。レベルアップ時に上げる能力値はプレイヤーが自由に選択可能で、能力値には筋力や知力など複数の項目が存在します。
たとえば筋力なら、筋力補正のある武器の攻撃力が伸びるだけでなく物理防御力にも影響するなど、細かな要素があります。
なお、武器や魔術・祈祷には使用するために必要な筋力や知力が設定されており、この値以上でないと本来の性能を発揮できません。そのため、使いたい武器やプレイスタイルに応じて自由に能力値を振り分けて、自分だけのキャラクターを作ることができるのが本作の魅力であり、ポイントと言えますね。
『ソウル』シリーズで見たことのある“戦技”や魔術がいくつかあり、なつかしさと安心感を覚える一方で、まったく新しいものも多数登場しています。とくに“戦技”は、武器固有のものが格好いい! 魔術や祈祷もユニークなものが多く、新しいを見つけたときのワクワク感はいままで以上かもしれません。
ベースパターンが豊富なこだわれるキャラメイク
ネットワークテスト版の記事ではお伝えできなかった部分に、キャラクターメイキングがありました。初期能力値と装備品が異なる、全10種類の素性の中かからひとつ選んだあとで、自キャラの顔や身体を好みに変更できます。
髪型の変更は当然のこととして、輪郭や目の大きさ、鼻の幅など、非常に細かな部分を調整可能。キャラメイクが苦手なかた向けに外見のベースがいくつか用意されています。銀色の血を持つ夜人というファンタジーっぽい見た目のものから、日本人っぽさ全開の葦の地顔なんてものまでありました。
とにかくキャラメイクの項目だけでも膨大でした。眉ひとつとってもゲーム画像からわかる通りの細かさ。僕はキャラメイクが苦手なので、ベースの外見を少し変更するくらいで済ませてしまいましたが、とにかく微細に調整できるため、ここだけで数時間かけるプレイヤーも多くいると思います。
ちなみに、キャラメイクは比較的序盤で再編集できるようになるので、気軽に作っても、あとでかんたんにやり直しができます。
またこのキャラメイクには“形見”という項目があります。好きなアイテムをひとつ持ち込める要素で、『ソウル』シリーズではおなじみ。持ち込めるアイテムは下の画面の通り。
HPの最大値を上昇させられる装備品から、何かに使える“石剣の鍵”。そして、あまりにも異質な“ゆでエビ”などなど。ここでしか手に入らないものはなく、あくまで序盤を有利に進めるためのアイテムなので、直感で選んでもいいかなと思います。
小さな助け合いが積み重なるオンライン要素
本作はオフラインとオンライン、両方のプレイに対応していますが、オンラインプレイだからといって、つねに誰かとのマルチプレイをするわけではありません。オンラインプレイの特徴をひと言で表すと“ささやかな助け合い”と言えるかと思います。ときおり見える透明な白い影は“幻影”と言い、近くでプレイしているプレイヤーの動きを再現してくれています。自分はひとりじゃないんだ、と勇気をもらえることがあれば、戦っている姿の幻影を見て警戒するなど、攻略に役立つ場面もあります。
地面に置かれた白い文字メッセージには「この先に○○があるぞ」、「○○の時間だ」など明確ではありませんが、ヒントになる言葉が書かれています。これはプレイヤーが任意の地面に書くことができ、意外なところに置かれていたりして攻略のヒントになることもしばしばあります。……まれにウソ情報が書かれていることもありますが。
ときには「心が折れそうだ……」と苦しさを吐き出すメッセージもあったりしますが、メッセージが評価されるとHPが回復する効果があります。そのため、メッセージシステムは誰かを助けるだけでなく、自分にも返ってくるユニークな要素。この密接に関係していない、ゆるい繋がりがオンラインプレイの魅力ですね。
もちろん、マルチプレイで協力プレイをすることも可能です。協力マルチプレイは誰かが書いた召喚サインに触れることでその人を仲間として呼び出し、ともにエリアのボスを倒すのが目的という流れ。フィールドで召喚したら小さなダンジョンに出入りできず、また反対にダンジョン内で召喚したらフィールドに出られません。
マルチプレイ中はファストトラベルや騎乗など、いくつかの要素が使用不可になるものの、戦闘はグッと楽になります。しかし、マルチプレイ中はプレイヤーの誰かが侵入者として邪魔しにやってくるかもしれないので要注意です。
マップデザインのうまさと秘められたエッセンス
広大なフィールドを探索し尽くそうとして、途中で心折れてしまうのはゲーマーにありがちなことだと思います。しかし『エルデンリング』は、要素の配置のさせかた、距離感がうまく、むしろどんどんつぎを見てみたくなる。そんな気持ちにさせてくれます。
単純な地続きで森から沼へと環境が変化していくだけでなく、ときには落下して道を見つけたり、遠回りでないと発見できなかったり、かつて大戦があったことを想起させたりと、誘導の仕方がとてもうまいんです。没入感がある。
もはや“見える範囲に行ける”のはオープンフィールドの基本となる魅力ですが、その先に待ち受けている存在の異質さ、巨大さ、そしてときたま出会う強烈な敵意など、ロケーションとそこに用意されたさまざまな要素があまりにも魅力的。輝く黄金樹のふもとには何があるのか。はるか頭上にそびえる城にはどうやって行くのか。突き刺さった剣の墓場の意味。謎がいたるところにあります。だから探索が止められないし、続けたくなる。
道中にはノンプレイヤーキャラクター(NPC)もいます。主人公と同じ褪せ人から亜人、魔術師、そして壺。主人公と同じ目的の者もいれば、別の思惑で動いているキャラもいます。出会った段階では謎だった言動が、後に伏線になることもあり、そういった謎のエッセンスがまた心地いいですね。
時間の概念も冒険に未知なるドラマ性をもたらしてくれていました。とくにフィールド上では夜にしか出現しない敵や朝だと霧がかかるなど、さまざまな変化が現れます。何十時間と探索していますが、まだ出会えていない要素があるのかもしれません。
本作のおもしろさのひとつは、ある意味“知らないこと”も含まれていると思っていますので、明確な情報はあえて省きました。それでもどうにか魅力を伝えたくて、情報の外側だけをお伝えしました。ハッキリしない点に歯がゆさがあったかもしれませんが、確実に言えるのは、フィールドの情報量や世界観全体のボリュームは想像をはるかに、それも圧倒的に越えてきます。
また、『ソウル』シリーズをプレイしていなくてもまったく問題ありません。敵の行動パターン分析やボス攻略においてはシリーズのプレイ経験が活きることもありますが、完全初見プレイでしか味わえない衝撃や感動が体験できるので、思い切って飛び込んでみてください。
一方で、『ソウル』シリーズに限らずフロム・ソフトウェア作品を遊んだことがある方なら、フレーバーテキストを読むことがオススメ。本作と過去作品とで、物語に関連はないと思いますが、素性“侍”の初期装備が“葦の地の鎧”だったりするので、きっとファンの心をくすぐる内容になっていると思います。
今回の記事にあたっては製品版を約80時間ほどプレイしたのですがても、底の見えない世界にまだまだ没頭したい気持ちでいっぱいです。それでは皆さん“狭間の地”で会いましょう。褪せ人たちに祝福のあらんことを。
(Text by シュー)
※本レビューは2022年2月24日に電撃オンラインで掲載されたレビューの再録になります。