サイゲームスエッジが手掛ける『崩落の国』インタビュー。原案のタイトルは社内コンテスト向けにベテランスタッフがひとりで制作。10年以上温めていた企画を約3時間の凝縮されたゲーム体験に落とし込んだ方法とは?

サイゲームスエッジが手掛ける『崩落の国』インタビュー。原案のタイトルは社内コンテスト向けにベテランスタッフがひとりで制作。10年以上温めていた企画を約3時間の凝縮されたゲーム体験に落とし込んだ方法とは?
 2026年9月3日に配信されたプレイステーション関連の最新情報を公開する“State of Play(ステートオブプレイ)”で、サイゲームスの新ブランド“CygamesEdge(サイゲームスエッジ)”が発表された。
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サイゲームスエッジが手掛ける『崩落の国』インタビュー。原案のタイトルは社内コンテスト向けにベテランスタッフがひとりで制作。10年以上温めていた企画を約3時間の凝縮されたゲーム体験に落とし込んだ方法とは?
 サイゲームスエッジは、小・中規模開発に特化し、大規模タイトルとは異なるスピード感で独創的なアイデアから、コンパクトながらも鋭く刺さるゲーム体験を届けるという。同ブランドの第1弾タイトルとして、アクションアドベンチャー『崩落の国』が2026年11月5日にリリースされる予定だ。対応プラットフォームは、Nintendo Switch 2、プレイステーション5、PC(Steam)。
サイゲームスエッジが手掛ける『崩落の国』インタビュー。原案のタイトルは社内コンテスト向けにベテランスタッフがひとりで制作。10年以上温めていた企画を約3時間の凝縮されたゲーム体験に落とし込んだ方法とは?

 今回、サイゲームスエッジブランドプロデューサーと、『崩落の国』プロデューサーを兼任している濱田修一郎氏にインタビューを行い、サイゲームスエッジを立ち上げた経緯や同ブランドが掲げるテーマ、さらに『崩落の国』の開発秘話などいろいろと訊いた。ぜひ最後までチェックしてほしい。

濱田修一郎 氏(はまだ しゅういちろう)

ゲーム開発会社でプロジェクトマネージャー(PM)やディレクター、映像制作会社で映像ディレクターを経験後、2018年にサイゲームスへ入社。家庭用ゲーム機向けタイトル事業の立ち上げに携わったほか、『グランブルーファンタジー』シリーズの家庭用ゲーム機向け作品で製作アシスタントを担当。『ウマ娘 プリティーダービー 熱血ハチャメチャ大感謝祭!』でプロデューサーを務め、現在はサイゲームスエッジブランドプロデューサーと、『崩落の国』プロデューサーを兼任している。(文中は濱田)

小・中規模開発のゲーム市場に対応するために新たなゲームブランドを設立

――新たなゲームブランドの“サイゲームスエッジ”を設立した経緯を教えてください。いつごろから計画されていたのでしょうか?

濱田
 計画自体は2年くらい前から始まっています。サイゲームスでは、『ウマ娘 プリティーダービー』や『グランブルーファンタジー リリンク』(以下、『リリンク』)のように、大規模な開発体制のもと、数年をかけて最高のコンテンツを追求してきた事例が数多くあります。そういったAAAと呼ばれる大規模タイトルが求められる一方で、個人や小規模チームが手掛けたインディータイトルも人気を博しており、ここ数年は二極化が顕著になってきたと感じています。

 お客様のゲームに対する価値観や遊びかたが多様化していく中で、これまで通り大規模開発は継続して行いつつも、もうひとつの市場にも目を向けていかなければいけないと考えて、サイゲームスエッジを立ち上げることになりました。

 すぐに変化する市場のトレンドやお客様のニーズに対応するためにも、ゲーム作りにはこれまで以上に柔軟な発想やスピード感が求められます。サイゲームスエッジでは、これまでサイゲームスが培ってきた開発力をベースにしつつ、多様なニーズやスピード感に対応するために、これまでとは違った実験的なタイトルだったり、大規模タイトルの中ではちょっと埋もれてしまうようなチャレンジングなアイデアなどにうまくフォーカスして、ゲームを作っていきたいと考えています。

――個人や小規模チームが手掛ける市場に目を向けるために立ち上げたということは、サイゲームスエッジに在籍しているスタッフの数は多くないのでしょうか?

濱田
 そうですね。サイゲームスエッジという組織自体はおもにプロデュースを担っていて、在籍しているのは数名になります。大きく分類すると、ゲームの開発スタイルは3つありまして、ひとつ目はほぼ完全に内製の小さなチームで開発するスタイルです。

 ふたつ目は、企画のコアな部分だったり、原案やアイデアだったりを我々が担っていて、外部の開発会社さんとパートナーシップを組んで開発していくスタイルになります。

 そして3つ目は、我々がパブリッシングに注力し、外部の開発会社さんのタイトルを販売していくスタイルで、将来的にはそういったタイトルも増やしていきたいと考えていますが、現状はひとつ目とふたつ目で開発を進めています。ですから、サイゲームスエッジの開発チーム自体は少人数で、開発のコアとなるスタッフをピンポイントで採用するような形で動いていますね。

――スタッフはどのような人選で決められているのですか?

濱田
 現状、明確な規定はありません。たとえば、この後お話する『崩落の国』は、社内のゲームコンテストで優秀賞に輝いたタイトルがベースとなっています。そういった経緯があるので、原案者も開発チームに加わってもらいました。
サイゲームスエッジが手掛ける『崩落の国』インタビュー。原案のタイトルは社内コンテスト向けにベテランスタッフがひとりで制作。10年以上温めていた企画を約3時間の凝縮されたゲーム体験に落とし込んだ方法とは?
――ゲームコンテストの優秀作品が実際に商品化されたケースは、過去にもありましたか?
 
濱田
 私が知る限りでは今回が初めてだと思います。もともと商品化を目指して開催していたコンテストではなかったのですが、社内の上層部の人間が『崩落の国』のもととなった作品を気に入って商品化に前向きだったのと、サイゲームスエッジを立ち上げたタイミングがうまく重なりまして、サイゲームスエッジの第1弾タイトルとして開発することに決まりました。

――商品化までのドラマは、後で詳しくお聞きしたいと思います。サイゲームスエッジという名前には、どのような思いが込められているのか教えてください。

濱田
 サイゲームスエッジの“Edge”は、既存の枠にとらわれずに尖ったアイデアを出し続けようという思いを込めています。“Stay on the edge(尖り続けろ)” というブランドテーマは、その姿勢といいますか、意気込みを込めて私が考えました。
サイゲームスエッジが手掛ける『崩落の国』インタビュー。原案のタイトルは社内コンテスト向けにベテランスタッフがひとりで制作。10年以上温めていた企画を約3時間の凝縮されたゲーム体験に落とし込んだ方法とは?
サイゲームスエッジのポーズも濱田氏が考案。両手で“Edge”の“E”を再現しているという。
――ブランドテーマと併せて、3つのコアバリューも発表されていましたよね。
濱田
 はい。ひとつ目の“Speed & Agility”は、少数精鋭の開発体制で発想から検証、リリースまでを素早く開発を進める。そして、変化の速い市場やプレイヤーの期待に、柔軟かつ機動的に応えるために掲げました。サイゲームスといえば、じっくりと時間をかけて丁寧に作り込むというイメージが強かったと思いますし、サイゲームスでは今後もその姿勢を継続していきますが、サイゲームスエッジでは開発期間も予算もある程度限定された枠組みの中で、その制約下における最高のコンテンツを目指すことと、スピード感を重視したいと考えています。

 スピード感を持つことで得られる最大のメリットは、世の中のトレンドに追従しやすいという点にあります。たとえば、5年、10年といった歳月をかけて作られる大規模タイトルの場合、開発の途中で流行がどんどん移り変わってしまうため、途中で新しいトレンドを取り入れるのが難しく、必然的に普遍的な“王道”を目指さざるを得なくなります。

――たしかに、開発期間が長くなるとトレンドの移り変わりには対応しづらくなりますね。

濱田
 とくにここ数年のインディーゲーム市場などを見ていると、非常にトレンディーな作品がめまぐるしく浮き沈みしていますよね。そういった旬のトレンドを、まさに“いま”というタイミングを逃さずにリリースまで持っていけるスピード感。必ずしもトレンドを追うわけではありませんが、その“速さ”はサイゲームスエッジならではの大きな強みになると考えています。

――なるほど。ふたつ目のコアバリューは?

濱田
 “Innovation & Tech”には、新しい技術や開発手法を積極的に取り入れ、ゲーム制作の可能性を広げる。実践から得た知見を、よりよい作品づくりへとつなげていくという狙いがあります。

 ちょっと言いかたは悪くなってしまうかもしれませんが、サイゲームスのような大きな企業となると、セキュリティ面を始めさまざまなリスクを考慮して、検証に検証を重ねたうえでこれなら確実に大丈夫と確認できたものを採用する、というプロセスが一般的ですよね。ですがサイゲームスエッジでは、「検証も実践とあわせて同時にやっちゃおう!」くらいの勢いとフットワークの軽さで開発を進めています。このスピード感と攻めの姿勢も、サイゲームスエッジというブランドの特徴のひとつなのかなと思っています。
サイゲームスエッジが手掛ける『崩落の国』インタビュー。原案のタイトルは社内コンテスト向けにベテランスタッフがひとりで制作。10年以上温めていた企画を約3時間の凝縮されたゲーム体験に落とし込んだ方法とは?
――小規模開発だからこそできる開発スタイルを武器にするわけですね。最後のコアバリューも教えてください。
 
濱田
 そして3つ目の“Creativity & Reach”では、ジャンル、表現、開発スタイルに枠を設けず、世界中のプレイヤーへ届ける。小規模タイトルならではの自由な発想で、グローバル市場に新たな選択肢を生み出したいと考えています。先ほどのお話と少し重なる部分もあるのですが、これまでのサイゲームスの作品というと、ユーザーの皆さんが思い描く明確なイメージがあったと思うんです。

 ジャンルでいえば王道のファンタジー、ビジュアルでいえばアニメ風のセルルックキャラクターといったような方向性ですね。それはサイゲームスが持ついい意味での偏りであり、強みだと思っています。ただ、サイゲームスエッジはあえてそこにとらわれません。ジャンルはもちろん、グラフィックの見た目も、ゲーム性の部分においても、枠にハマらないアプローチを取っていきます。

――サイゲームスのこれまでのイメージを、いい意味で裏切っていく、と。

濱田
 サイゲームスではなかなか挑戦しづらい領域や届ききらない部分を、サイゲームスエッジで補完していくイメージですね。そうすることで、これまでのファンに留まらず、より幅広い層のユーザーの皆さんへ魅力的なコンテンツをお届けしていきたいと考えています。ゆくゆくはサイゲームスエッジのゲームからサイゲームスのことを知って、サイゲームスの作品を好きになってもらえたらすごくうれしいですね。

――今後のラインアップ展開も非常に気になります。『崩落の国』のほかに動いているラインはありますか?

濱田
 複数のラインが同時に動いているので、そこまでお待たせすることなく、つぎのタイトルを発表できるのではないかと思っています。もちろん、すべてスケジュール通り進むわけではありませんが、理想としては年に2〜3本ペースでコンスタントにタイトルをリリースしていきたいと考えています。

――サイゲームスエッジでは、「ともに尖ったゲームを生み出す開発会社やクリエイターとのパートナー提携にも取り組みます」と発表されています。提携する開発会社やクリエイターはどのように決めているのでしょうか? 重視しているポイントがあれば教えてください。

濱田
 柔軟にタイトルを作っていくうえで、外部の開発会社やクリエイターとの提携は必須だと思っていて、スピード感を重視しながらも、やはり最高のコンテンツを目指しているところはサイゲームスエッジも変わりません。ですから、限られた期間と予算の中で、最高のコンテンツを目指してくれる方たちと提携したいと考えています。言われた通り作るのではなく、期間や予算の制限があるからこそ、こういったことがやりたいとか、本当にこれは必要なのかとか、忌憚なく伝えてくれる方たちのほうが、うまくお付き合いできると思っています。

――モチベーションが高いパートナーを求めているのですね。サイゲームスエッジの直近の目標はありますか?

濱田
 現在は企画のコアな部分を我々が担っていて、開発は外部に任せるスタイルがメインになっているので、内製の小規模な開発チームをもっと作りたいですし、各タイトルのコアメンバーに若手の人材を登用して、成功体験を経験する場にしてきたいですね。若手の人材がレベルアップすることは、サイゲームス全体にとっても大きなプラスになると考えています。

ベテランスタッフが10年以上温めていた企画から『崩落の国』が誕生

――サイゲームスエッジの第1弾タイトルとして、『崩落の国』が“State of Play”で発表されました。発表後の反響はいかがでしたか?

濱田
 グローバルで反響を追っているのですが、想像以上に好意的な反応をたくさんいただいていて、ホッとしたというのが正直な気持ちです。

 サイゲームスエッジという新たな取り組み自体もそうですし、『崩落の国』というタイトル単体についてもそうなのですが、配信内での限られた時間の中で、「何をどう見せるのか」、「どんな情報を詰め込むのか」は、かなり精査して挑みました。その狙いやメッセージがしっかりと世界中のプレイヤーに伝わっていたことがわかって、本当にうれしかったですね。社内でも上長や担当役員から「まわりからの評判がすごくいいよ」と声をかけてもらえて、非常に手応えを感じています。
サイゲームスエッジが手掛ける『崩落の国』インタビュー。原案のタイトルは社内コンテスト向けにベテランスタッフがひとりで制作。10年以上温めていた企画を約3時間の凝縮されたゲーム体験に落とし込んだ方法とは?
――『崩落の国』の開発はいつごろスタートしたのですか?
 
濱田
 1年半くらい前だったと思います。

――ゲームコンテストで優秀作品に選ばれた作品をベースにしたということで、比較的早く開発できているのでしょうか?

濱田
 予定通り進められていると思いますが、ベースとなったゲームは原案者のスタッフがひとりで作ったものでした。彼はレベルデザイナーなので、ゲームのレベルデザインはよくできていたものの、見た目は本当にプリミティブなモデルというか、リアルなグレーモデルが配置されているような状態だったので、商品化に向けて開発しなければいけないところは多かったです。

――開発にはどのくらいのスタッフが携わっているのですか?

濱田
 開発会社のゼレオさんをメインに、コアメンバーは10名にも満たない少人数体制で進めてきました。もちろん、大量生産が必要なものに関しては外部のパートナーさんにご協力いただいていますが、開発の根幹部分は10名以下のチームで、毎日密にコミュニケーションを取りながら作っています。ゼレオさんは会社が高田馬場にあるのですが、いまはリモートの環境がしっかり整っているので、拠点が離れていても、社内でいっしょに開発しているのとまったく変わらない感覚ですね。

――『崩落の国』でゼレオさんと共同開発することになった経緯についてもお聞かせください。

濱田
 じつは、私が以前携わっていた別のプロジェクトで、もともとゼレオさんにお手伝いいただいていたんです。そのタイトル自体はまだ世に出ていないのですが、当時から「ゼレオさんは本当に優秀で頼りになるな」と感じていまして。自分の中ではまさに“懐刀”というか、「ここなら間違いない」と絶大な信頼を寄せている開発会社さんのひとつでした。

――第1弾のタイトルだけに、安心してお願いできる開発会社さんと組みたかったと。

濱田
 そうですね。ちょうどサイゲームスエッジの立ち上げとともに、『崩落の国』の企画が動き出すタイミングで、ひさしぶりにゼレオさんに連絡を取らせていただきました。そこで「こういう企画があるんですが、どうですかね?」とご相談したところ、ゼレオさん側もすごく前向きに乗ってくださって。そこからはトントン拍子で話が進んでいきました。

――原案者の方も、開発メンバーに入っているのでしょうか?

濱田
 はい。彼にはクリエイティブディレクターをお願いしていて、本職のレベルデザイナーとしても活躍してもらっています。『崩落の国』はレベルデザインがコアのゲームではあるので、彼なしでは成立しませんでした。

――ちなみに、原案者の方の年齢は?

濱田
 私よりも年上なので、50歳前後だと思います。

――ベテランスタッフなんですね。ゲームコンテストに応募されたとお聞きして、イメージで若手スタッフなのかなと勝手に思っていました……。

濱田
 ベテランですが、見た目が若い方なので、私も年下だと思っていました(苦笑)。でも、社内の役員会で企画を通して開発がスタートする前に、私と原案者、ゲームコンテストの主催者の3人で決起集会を行ったんですね。そのときにいろいろお話している中で、彼の経歴を聞いて「あれ、もしかして歳上なのかもな」って。
サイゲームスエッジが手掛ける『崩落の国』インタビュー。原案のタイトルは社内コンテスト向けにベテランスタッフがひとりで制作。10年以上温めていた企画を約3時間の凝縮されたゲーム体験に落とし込んだ方法とは?
――それで年齢がわかったんですね。原案者の方が“崩落”をテーマにした理由を教えてください。
 
濱田
 本人に聞いたところ、彼自身は“落下していくゲーム”に、そこまでフォーカスしていたわけではないそうです。ただ、企画自体は彼が10年近く、自分の中で温め続けていた長年のアイデアだったみたいで、膨大な設定資料が詰まったフォルダを見せてもらいながら、熱量たっぷりに世界観を語ってくれました。彼が最初に思い描いていたイメージは、壮大なスケールで、プレイ時間もかなりボリュームのあるものだったんですね。

 そのアイデアを形にしたのが、ゲームコンテストに出したいわばプロトタイプで、Unreal Engineで組まれたプリミティブなグレーマンと、グレーの背景だけで構成されたようなものでした。その時点ですでに『崩落の国』というタイトルは決まっていて、タイトル画面の段階から、プレイヤーがスカイダイビングのように空中を落下しているような演出が入っていました。

 その画面を見たときに、直感的にわかりやすいし、絶対にいけると確信したのを覚えています。

――プロデューサーとしての直感が働いたと。そこから本格的な企画の具体化がスタートしたわけですね。

濱田
 そこから彼と深く話をし始めたのですが、先ほどお話した通り、そこで膨大な設定資料を見せてもらいながら熱いプレゼンを受けまして(苦笑)。彼の気持ちはわかるものの、サイゲームスエッジから出すタイトルとして、限られた開発期間と予算の中で彼がやりたいことを実現するのは正直きびしい。ゲームのコアとなるおもしろさを損なわずに、どこまでギュッと圧縮できるかが課題でした。

 そこからはプロデューサーとして、私がメインとなって「3時間のプレイ時間の中に最高の体験を凝縮させよう」という目標を定め、彼にとって譲れないこだわりと削れる要素を二人三脚で丁寧にすり合わせながら、最終的な企画として落とし込んでいきました。
サイゲームスエッジが手掛ける『崩落の国』インタビュー。原案のタイトルは社内コンテスト向けにベテランスタッフがひとりで制作。10年以上温めていた企画を約3時間の凝縮されたゲーム体験に落とし込んだ方法とは?
――3時間というプレイ時間は、どのように決めたのですか?
 
濱田
 与えられている開発期間や予算などを総合的に判断した結果、3時間が凝縮されたゲーム体験を楽しめるボリュームであると判断しています。

アクションを通して体験してもらいたかったのは“チ●さぶ感”!?

――『崩落の国』ではどのようなアクションが体験できるのか、見どころやこだわったポイントを教えてください。

濱田
 アクションでいちばんフォーカスしたのは、降りていくところです。これをどのように体験してもらうのか。開発チームでもかなり議論をして、よくない表現なのですが、内部では“チ●さぶ感”と表現していました(苦笑)。

――ジェットコースターなどで落下するときに、股間が“スッ”と浮くような感覚ですよね。肝が冷えるような。

濱田
 そうですそうです。肝が冷えるような、あのゾクゾクする感覚をいかにプレイヤーに味わわせるかという点は、かなり試行錯誤を重ねましたね。長時間プレイしているとどうしても身体が慣れてくる部分はありますし、最初に感じた衝撃をずっと維持するのは難しい側面もあるのですが……。
サイゲームスエッジが手掛ける『崩落の国』インタビュー。原案のタイトルは社内コンテスト向けにベテランスタッフがひとりで制作。10年以上温めていた企画を約3時間の凝縮されたゲーム体験に落とし込んだ方法とは?
――落下に対する恐怖感や緊迫感を維持するために、どのようなアプローチを取られたのでしょうか?
 
濱田
 初期段階のプレイヤーが操作する挙動は、かなりカッチリとしたアクションゲーム寄りに作っていました。ゼレオさんはアクションゲームの開発が得意なので、メインのプログラマーさんとディレクターさんが組んで、いわゆるアクションゲームの“王道のお作法”にならって、気持ちよく動く操作性を構築してくれました。

 ただ、その仕様だとどれだけ難しい足場を用意しても、小回りが利いて軽快に渡れてしまうので、「うわっ、落ちる!?」といったヒリついた恐怖感が薄れてしまったんですね。開発現場では、「簡単すぎない?」、「思ったほど怖くないし、これで3時間持つかな?」という議論が巻き起こりました。

――レスポンスがよすぎたことで、落ちる恐怖を削いでしまったと。

濱田
 そこで試行錯誤を重ねた結果、あえて意図的に“生身の人間っぽい重み”を感じさせる挙動に変更したんです。ブレーキがすぐには効かないので、アクションゲームの基準でいうと、少しモッサリとした動きに感じられるような重厚感を持たせました。すると、コースのレベル自体は変えていないのに、同じコースを遊んでみたときのプレイ体験が大きく変わったんです。

 開発の中盤あたりでこの答えにたどり着き、そこから一気に磨き上げていきました。ただ、社内テストではかなり賛否両論がありましたね。「これがいい」という人もいれば、『リリンク』のようなキビキビ動くアクションゲームを基準に考えている人からは、「動きがモサッとしている」というフィードバックが返ってきたりもして。

――アクションゲームとしての爽快感を求める声とのバランス調整は難しそうです。

濱田
 正直、「『リリンク』と比べないでよ」とは思いましたが(苦笑)、最終的には私の判断で、モッサリとした重めの挙動で開発を進めています。その結果、開発の終盤に意図しない場所で足を滑らせて落下してしまう事故が多発してしまったので、そこは理不尽なストレスにならないよう、細かなケアを徹底的に施しました。

――具体的にはどのようなフォローを入れたのですか?

濱田
 たとえば、崖のギリギリを跳んでつかまる判定の範囲を少し広げてあげたり、崖から滑り落ちそうになった瞬間に逆に入力して踏み留まる操作を行うと、一瞬スローモーションがかかってギリギリの体勢で持ち堪えるモーションを追加したりしています。

 ベースとなる重厚な挙動とレベルデザインは変えずに、“意図せず落ちてしまうストレス”だけを丁寧に取り除いてあげた形ですね。このスリルとプレイのしやすさを絶妙に両立させているところは、本作のアクション体験としてぜひ楽しんでほしいポイントです。
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――アクションゲームが苦手な方でもクリアーできる難易度になっていますか?
 
濱田
メインストーリーは、ふだんからゲームをプレイされている方なら、3時間から3時間半ほどでクリアーできる難易度とボリュームになっています。ふだんアクションゲームを遊ばないという方でも心配はいりません。メインストーリーのアクションの難易度自体は決して高く設定していませんし、序盤からしっかりと操作に慣れていけるラーニングカーブを意識して設計しています。少し手間取っても、順番に進めていけば4~5時間ほどでエンディングにたどりつけると思います。

――ストーリーやキャラクターの見どころ、こだわったポイントについても教えていただけますか?

濱田
キャラクターのドラマに関しては、原案者が長年大切に温めてきたテーマが根底にあります。主人公の兵士の男は、いろいろな事情があって娘を失ったのですが、旅の中で出会う“忌み子”という存在に失った娘の面影を重ね、感情移入しながらともに過酷な世界を進んでいくことになります。ふたりのあいだに生まれる疑似親子のような絆を描くことにフォーカスしていますね。

 奇をてらった大どんでん返しがあったり、誰も見たことがないような展開があったりするわけではないのですが、シンプルだからこそ深く印象に残るようなストーリーを目指しました。それと大きな特徴として、作中のセリフはすべて独自言語で展開されます。
サイゲームスエッジが手掛ける『崩落の国』インタビュー。原案のタイトルは社内コンテスト向けにベテランスタッフがひとりで制作。10年以上温めていた企画を約3時間の凝縮されたゲーム体験に落とし込んだ方法とは?サイゲームスエッジが手掛ける『崩落の国』インタビュー。原案のタイトルは社内コンテスト向けにベテランスタッフがひとりで制作。10年以上温めていた企画を約3時間の凝縮されたゲーム体験に落とし込んだ方法とは?
主人公の兵士と忌み子。
――確かに、強いこだわりを感じますね。
 
濱田
 そうなんです。主人公は自身が住む国とは異なる、世界樹の上の国の言語で話しています。そして忌み子は、厳密には人間ではないため、何かを話してはいるのですが、主人公と直接言葉でコミュニケーションが取れているわけではありません。だからこそ、言葉を超えた身振りや行動によるコミュニケーション、そしてふたりの絆という部分がより引き立つようになっています。

――原案者の方の中で、その独自言語の体系やルールなどもきっちり構築されているのでしょうか?

濱田
 彼はすごく器用な方で、自分でスクリプトを組んで“日本語のテキストを入力したらカタカナの独自言語に変換されるツール”まで自作しているんですよ(笑)。それを使ってセリフを作成しています。

――独自言語も見どころですね。

濱田
 本作は、そもそもテキスト自体がかなり少ないゲームなのですが、私のプロデューサーとしてのこだわりもあって、さらにセリフを削ぎ落としています。最近のゲームの主人公って、ちょっと独り言が多すぎるなと思っていて。「そこは独り言を言わないだろう」というところは、セリフを削っています。あえて多くを語りすぎないほうが、プレイヤーの皆さんに世界の背景や物語の余白を自由に想像していただけますからね。

 手取り足取り説明する現代風の親切設計とは少し違うかもしれませんが、世界の謎を考察したり、雰囲気に没入したりするのが好きな方には、間違いなく刺さる作品になっていると思います。
サイゲームスエッジが手掛ける『崩落の国』インタビュー。原案のタイトルは社内コンテスト向けにベテランスタッフがひとりで制作。10年以上温めていた企画を約3時間の凝縮されたゲーム体験に落とし込んだ方法とは?
――あえてプレイ時間を“3時間”に設定したことで、苦労されたことやたいへんだったことはありましたか?
 
濱田
 ゲームにおける3時間って、意外と短いんですよね。

――集中してプレイしていたらあっという間の時間です。

濱田
 それに“3時間でサクッと遊んで終わらせられる”というのは、ユーザーにとってメリットである反面、“たった3時間で終わるなら買わなくてもいいかな”というデメリットにもなり得ます。だからこそ我々が目指したのは、“プレイ時間は短くても、心から満足できる作品”にすることでした。

 私自身もそうなのですが、年々ゲームをガチでプレイできる時間は限られてくるじゃないですか。世の中には魅力的なエンタメが溢れすぎていて、映画やアニメも観たい、マンガも読みたい、ゲームもやりたい、でも仕事や生活もある……。「時間が足りない!」ってなりますよね(笑)。

――大人になってお金はある程度自由に使えるのに、コンテンツを消費する時間が足りませんよね(笑)。

濱田
 いまの時代、50時間、100時間かかる大作をクリアーまでプレイするのは、正直、かなりエネルギーが必要だと思います。もちろん、ハマるゲームに出会って何百時間も無心で遊ぶこともありますが、しっかりと最初から最後まで遊び切ってクリアーしたときの達成感を味わうという体験は、減ってきたなと感じていて。それなら“3時間”という枠に絞り込んで、その中で密度の高い満足感を提供できれば勝算はあると考えました。

 ユーザーの皆さんがゲームに求めるコスパの基準は本当にすごくて、価格は抑えめでも膨大なボリュームが求められがちです。それでも私は、むやみに引き延ばされたプレイ時間よりも、ギュッと濃縮された体験のほうが圧倒的に魅力的だと思えるし、そう感じているプレイヤー層は確実に市場に多くいるはずだと確信しています。だからこそ3時間のプレイの中でダレさせず、途中でネタ切れさせることもなく、どう波を作って盛り上げていくかという調整は本当に苦労しましたね。

――実際に遊ばれたプレイヤーの評価が楽しみですが、制作側の手応えとしてはどのような感触でしょうか?

濱田
 じつは、毎日プレイしすぎているせいもあって、「メインストーリーはちょっと地味かもしれないな……」と、以前は不安に思っていました(苦笑)。開発期間と予算の制約の中で、最大限のクオリティーを出してはいるものの、AAAタイトルと比べると、「本当はもっとこうしたいのに」というプロデューサーとしての葛藤やフラストレーションも少なからずありましたから。

 さらに原案者の強いこだわりとして、「これは純粋なアクションゲームではなく、アクション“アドベンチャー”ゲームなんだ」という譲れない定義があって。彼の考えるアクションアドベンチャーゲームの美学があるのですが、ほかのスタッフからは困惑する声も出たりしました。

――クリエイターどうしのせめぎ合いがあったわけですね。

濱田
 昨今のトレンドに合わせて、「もっと歯応えのある高難度のアクションに振ってもいいのでは?」という意見も挙がったものの、最終的には原案者の意思を最大限に尊重しました。メインストーリーは、世界観や物語体験を深く味わってもらうものとして研ぎ澄ませる。その代わり、クリアー後にこのゲームのメカニクスを使って、本格的なアクションを何度もやり込めるチャレンジコンテンツを別で用意して切り分けよう、という着地点になりました。

 完成に近づいた段階で社内レビューを実施したり、海外支社のメンバーにもプレイしてもらったりしたところ、私の不安をよそに、「メインストーリーがよかった」というポジティブな声がたくさん返ってきたんですね。「私がひとりで心配しすぎていただけだったんだ」と、肩の荷が下りました。いまではしっかりと自信を持って、“濃密で心に残る3時間の体験”を皆さんにお届けする準備ができたと思っています。

――高難度のマップやタイムアタックといった、チャレンジコンテンツのプレイ時間やボリューム感を教えてください。

濱田
 高難度のエクストラマップは2種類用意していて、私が初めてひとつ目のエクストラマップをプレイしたときは、急ぎ目でゴールを目指してクリアーするのに20分くらいかかりました。ふたつ目のマップも、初見プレイで20分ほどあればクリアーできる調整にしています。どちらのマップもタイムアタックに挑戦でき、レースゲームのように“いかにショートカットできるか”を突き詰めていく設計になっていて、プラットフォームのオンラインランキングで世界中のプレイヤーとタイムを競い合うこともできます。
サイゲームスエッジが手掛ける『崩落の国』インタビュー。原案のタイトルは社内コンテスト向けにベテランスタッフがひとりで制作。10年以上温めていた企画を約3時間の凝縮されたゲーム体験に落とし込んだ方法とは?
――何度もくり返しプレイしてタイムを縮めていく、アーケードライクなやり込みが楽しめそうですね。10月16日17時(※日本時間)より、Steamにて『崩落の国』の体験版が配信されるそうですね(※本インタビューは体験版配信前に行っています)。体験版にはどのような内容が収録されているのですか?
 
濱田
 体験版は、各種アクションを解放した状態で挑む、“降りていく”ゲーム体験に特化した高難度の内容となっています。プレイ時間は15~30分程度を想定していて、ストーリー要素は入れていません。

――体験版にストーリー要素を入れなかった理由を教えてください。

濱田
 メインストーリーは3時間でクリアーできるので、体験版として切り出すのが難しかったからです。体験版に30分収録すると、製品版で楽しめるのは2時間30分のボリュームになってしまいますよね。それに本作は世界観重視のアクションアドベンチャーゲームになっていて、うまく切り出せたとしても、フックにするにはちょっと弱いかなと。それなら“降りていく”というアクションにフォーカスしたほうが、ゲームの魅力がストレートに伝わるのではないかと考えました。
サイゲームスエッジが手掛ける『崩落の国』インタビュー。原案のタイトルは社内コンテスト向けにベテランスタッフがひとりで制作。10年以上温めていた企画を約3時間の凝縮されたゲーム体験に落とし込んだ方法とは?
――ほかのプラットフォームでも体験版を配信する予定はありますか?
 
濱田
 まずはSteam版のみの配信になりますが、発売後にNintendo Switch 2とプレイステーション5でも体験版を配信する予定です。

――ゲームファンとしては価格も気になるところです。まだ発表されていませんが、想定されている価格帯や、おおよその目安などがありましたらお聞きしたいです。

濱田
 価格は……、なんと、税込1100円です!

――えっ! 想像していたよりも安い。2000円前後になるかなと思っていました。

濱田
 日本はもちろん、北米や欧州を始めとしたグローバル市場での展開を大きく意識していたこともあり、海外市場向けに“9.99ドル”、“9.99ユーロ”というキャッチーな価格を目指していました。いまの為替で日本円にすると、大体1500~1800円くらいになりますよね。私自身は、1200~1500円のレンジで収めてほしいと思っていましたが、セールス側に多角的に検証してもらった結果、「1100円がちょうどキリがよくてベストです」と提案してくれて。社内でもいろいろと検討を重ねて、この価格を実現できました。

――1100円ならコスパがいいと感じますね。

濱田
サイゲームスエッジとして初の試みなので、どうのように評価されるかは未知数ですが、ユーザーの皆さんが求めるバリューやプレイ時間、クオリティーのバランスを総合的に判断して、いますごく理想的な価格に落ち着いたと感じています。

――価格だけではなく、対応言語からもグローバル展開を意識していることがうかがえます。

濱田
 国内市場を軽視しているわけでは決してないのですが、PC市場、とくにSteamの規模感は世界的に見ても非常に大きくなっていますし、企業としても絶対に無視できない領域です。だからこそ、英語やアジア各国の主要言語を最初からカバーすることで、国境を越えてより幅広いユーザーへお届けすることを目指しました。

――海外のユーザーからの反響は感じていますか?

濱田
 じつはSteam ウィッシュリストの登録傾向をみると、欧州エリアで非常に高い伸びを示しています。欧州エリアには作風や世界観に波長が合うプレイヤーが確実にいらっしゃるんだなと実感しています。今後、特定の国や地域で売り上げが伸びているといった動きがあれば、アップデートで対応言語を増やすといった柔軟な対応も視野に入れています。

――先ほどセリフを減らしたというお話もありましたが、ローカライズのしやすさにひと役買っていそうですね。

濱田
 ご想像の通り、テキスト量が最小限に抑えられているぶん、ローカライズにかかるコストや工程もかなりコンパクトに抑えられました。

――プレイスタイルに関して、ひとつ気になる点があります。プレイ時間が約3時間となると、ゲーム実況や配信でネタバレしてしまうリスクも懸念されますが、配信ガイドラインなどで制限をかける予定はありますか?

濱田
 現時点では、プロモーションチームとガチガチに制限を設けるような方針は立てておらず、私としては自由に配信していただいて問題ないと考えています。プレイ時間もコンパクトで、価格も1100円とお手ごろですから、実況を見ておもしろそうだと思ったら、自分で買ってプレイしてくれるユーザーがある程度はいると思うので。むしろ下手に配信制限を設けるほうが、機会損失になりますしね。

――配信者と視聴者のあいだで、「こんな落ちかたをした」、「とんでもないショートカットを見つけた」といったような盛り上がりも期待できそうです。

濱田
 そうですね。とくにタイムアタックに関しては、プレイヤーごとにさまざまなドラマや攻略ルートが生まれると思うので、配信を通してコミュニティー全体で盛り上がっていただけるとうれしいです。
サイゲームスエッジが手掛ける『崩落の国』インタビュー。原案のタイトルは社内コンテスト向けにベテランスタッフがひとりで制作。10年以上温めていた企画を約3時間の凝縮されたゲーム体験に落とし込んだ方法とは?
――それでは最後に、本作の発売を楽しみに待っている読者やファンに向けてメッセージをお願いします。
 
濱田
 『崩落の国』は、“地上を目指してひたすら降りていく”という、シンプルでありながら、緊迫感にあふれたアクション体験を追求したタイトルです。足場を見極め、風を読み、みずからの落下を緻密にコントロールしていく唯一無二の操作感をぜひ楽しんでいただきたいです。サイゲームスエッジの記念すべき第1弾タイトルとして、皆さんのご期待に応え、そして期待を超えていけるよう、最後まで一切の妥協なく丁寧に作り込んでいます。2026年11月5日の発売日を、ぜひ楽しみにお待ちください!
サイゲームスエッジが手掛ける『崩落の国』インタビュー。原案のタイトルは社内コンテスト向けにベテランスタッフがひとりで制作。10年以上温めていた企画を約3時間の凝縮されたゲーム体験に落とし込んだ方法とは?

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