本記事では、そんなゲーム部門のマスターカテゴリ(※)で日本一に輝いたオオニシ ヒロシ選手へのインタビューをお届けする。
オオニシ ヒロシ
“ポケモンジャパンチャンピオンシップス2026” ゲーム部門 マスターカテゴリ 優勝
2連続“まもる”の成功が敗因に!? 誰ひとり予想できなかった驚愕の結末
まずは決勝戦の内容をおさらいしておこう。試合を丸ごと見返したい方は、以下のアーカイブをチェックしてほしい。
決勝戦はお互いのポケモンたちの技、特性、持ち物、能力補正が分かった状態で戦う(能力ポイントは公開されない)。マスター決勝のふたりがバトルチームに入れたポケモンたちは以下のとおり。

オオニシ選手は使用率の高い強力なポケモンたちを詰め込んだスタンダードなチーム。エルフーンの“おいかぜ”によって味方の素早さを高め、ほかの5匹がいっきに攻め立てる攻撃的な戦術が得意だ。
対するアライ選手のチームは特殊な戦いかたをするテクニカルなチーム。ゲンガーとニョロトノが覚えている“ほろびのうた”は、場の全員が3ターン後にひんしになるというユニークな技だ。控えのポケモンと交代することで効果をリセットできるが、メガゲンガーの特性“かげふみ”は相手の交代を封じる効果を持っている。
もうひとつ、ユキメノコの“あまごい”も要注目だ。こおりタイプかつ特性“ゆきふらし”で天気をゆき状態にして戦うメガユキメノコは、ほのおタイプかつ特性“ひでり”で天気をにほんばれ状態にして戦うメガリザードンYが大の苦手。
しかし“あまごい”を使って天気をあめ状態にすることで、その相性差をひっくり返せるのだ。その驚きの戦術が初披露された対戦も非常におもしろいのでぜひチェックしてほしい。
決勝戦はBO3(2本先取)で行われた。1試合目はアライ選手がゲンガー&ガオガエン、オオニシ選手がフラエッテ(えいえんのはな)&ドドゲザンをくり出すところからスタート。

アライ選手はガオガエンの“ねこだまし”でオオニシ選手のポケモンを1匹ひるませつつ、メガゲンガーの“ほろびのうた”を初手から狙う構えだ。この戦術に対してオオニシ選手が用意したプランが見事だった。
まずはフラエッテ(えいえんのはな)をすぐさまイダイトウ(オスのすがた)へ交代。ドドゲザンは“ねこだまし”を受けて行動できず、メガゲンガーが“ほろびのうた”を使用することに成功したものの、これは織り込み済み。
2ターン目のアライ選手はメガゲンガー&ガオガエンともに“まもる”を使ってターンを稼ぐ。その隙にオオニシ選手はイダイトウ(オスのすがた)をまたも交代。フラエッテ(えいえんのはな)を再度くり出した。ゴーストタイプのポケモンは特性“かげふみ”の効果を受けずに交代できるため、あえてイダイトウ(オスのすがた)で“ほろびのうた”を受けたのだ。

さて、“まもる”は成功したつぎのターンに連続で使用すると成功率が前回の3分の1になる。基本的には連発できない技だ。“ほろびのうた”戦術は、ここでメガゲンガーを攻撃されないように1度交代しつつ、ガオガエンの“すてゼリフ”の効果でメガゲンガーを出し直すのが定石とされている。
しかしアライ選手はここであえて定石を選ばなかった。アライ選手のチームは“ほろびのうた”の一本柱ではない。後発に控えるブリジュラスで勝利するプランがある。オオニシ選手が1試合目にくり出したポケモンのうち、ブリジュラスに大ダメージを与えられるのはメガフラエッテのみ。そのメガフラエッテさえ倒してしまえば、“ほろびのうた”が失敗しても勝てる可能性は高い。
おそらくそうした判断のもと、アライ選手はメガゲンガーを倒される覚悟でメガフラエッテへ攻撃を集中した。しかしその鋭い攻めの一手すらオオニシ選手には届かなかった。メガフラエッテに指示した技は、“まもる”。結果、ドドゲザンがメガゲンガーを倒し、オオニシ選手が大きなリードを奪うターンになった。

続く2試合目はアライ選手がプランを大きく変更。オオニシ選手のチームにもっとも有効なブリジュラスを活躍させるため、ほかのポケモンたちは全力でサポートに徹していた。

けっきょく、2試合目でオオニシ選手はこのブリジュラスを最後まで倒しきれなかった。途中、ニョロトノの“さいみんじゅつ”が猛威を振るう展開もあったが、問題はそこではないという。「“さいみんじゅつ”は避ける前提で強気に動かしていたので、何度かは当たるだろうと覚悟していました。それよりも僕が明確なミスをしたことが直接的な敗因だったと思います」と反省の表情で話した。
具体的には試合中盤のシーンを指して「アライ選手のブリジュラスとヤバソチャが並んだタイミングで僕はヤバソチャ側を集中攻撃し、“まもる”で防がれてしまいました。あそこは絶対にブリジュラスを攻撃しておくべきだったと思っています」と振り返った。

2試合目はアライ選手が取り返し、日本一を懸けた決勝戦は3試合目に突入。お互いの選出は2試合目とまったくおなじだった。1ターン目の行動も2試合目の再現。メガユキメノコが“オーロラベール”を展開するも、メガフラエッテとドドゲザンの集中攻撃を受けて倒れる。ブリジュラスは“ラスターカノン”でメガフラエッテのHPを大きく減らす。
ポケモンの残数は3対4でオオニシ選手がリードするも、盤面状況はアライ選手に分がある。そしてこのつぎのターン、オオニシ選手が大勝負に出た。メガフラエッテとドドゲザンの攻撃を、今度はブリジュラスに集中させたのだ。
この選択についてオオニシ選手は「2試合目はメガフラエッテを温存して慎重に戦う姿勢を見せました。その印象を逆手にとって、序盤から大きなリスクを取って攻めることにしたんです」と説明してくれた。
ドドゲザンの“ふいうち”+メガフラエッテの“はめつのひかり”。“オーロラベール”がなければ確実に倒しきれる超火力の攻撃だが、果たして……。

ブリジュラスはHPをわずか4だけ残して耐えてみせた。特防に多くの能力ポイントを割いていたからこその結果だ。メガフラエッテは“はめつのひかり”の反動ダメージで倒れ、ドドゲザンもニョロトノとブリジュラスの反撃によって倒された。これでポケモンの残数は3対2と逆転。オオニシ選手は窮地に立たされた。
オオニシ選手のポケモンは残り2匹。もう交代はできない。となれば、あの技が真価を発揮する。

そう、“ほろびのうた”だ。3ターン後にオオニシ選手のポケモンは2匹とも倒れることが確定した。ニョロトノも3ターン後に倒れるが、もし残りのポケモンが全員おなじターンに倒れた場合、最後まで場に残っていたポケモンのトレーナーが勝利となる。倒れる順番は、行動順とおなじ。つまり基本的には素早さの高い順となる。そしてエルフーンとイダイトウ(オスのすがた)より、ニョロトノは素早さが低い。
この時点でオオニシ選手は、3ターン以内にアライ選手のポケモンをすべて倒さなければ負けとなった。幸い、ブリジュラスをこのターンに倒せたので、残りはニョロトノとヤバソチャの2匹のみ。
しかしオオニシ選手にとって状況はかなり絶望的だ。残り3ターンもあるように見えるが、実際は1ターン目と3ターン目は“まもる”でやり過ごされる。つまり攻撃が通るのは2ターン目のみ。そして“オーロラベール”の効果があと2ターン残っている。攻撃が通る2ターン目はギリギリ効果が持続している。よしんば“オーロラベール”がなくとも、エルフーンとイダイトウ(オスのすがた)には1ターンでニョロトノとヤバソチャ両方を倒しきる手段はない。
オオニシ選手も、もうダメだと思っていたという。仮にこれがふだんのランクバトルなら、降参ボタンを押していたのかもしれない。しかし日本一の称号がもう目の前まで迫っている状況で、諦めるなんてことはできなかった。「何かないか」と逆転の手を考えて、考えて、考え続けた……。そして、ある劇的な勝ち筋に気づいた。


“アンコール”だ。相手が直前に出した技しか使えない状態にする。ニョロトノが直前に使ったのは、もちろん“まもる”。あえて説明をくり返そう。“まもる”は成功したつぎのターンに連続で使用すると成功率が3分の1倍される。1度目は100%、2連続は約33%、3連続は約11%でしか成功しない。
つまりオオニシ選手の見つけた勝ち筋はこうだ。“アンコール”でニョロトノに2連続“まもる”を強制し、約33%を引いて成功してくれれば、つぎのターンは約89%の確率で“まもる”が失敗し、大逆転勝利となる。
アライ選手もその狙いを瞬時に理解し、手を合わせて祈る。ニョロトノのトレーナーであるアライ選手が失敗を願い、対戦相手であるオオニシ選手が成功を願う。そしてニョロトノに行動順がまわってくる……。


2連続“まもる”が成功。そして崩れ落ちるアライ選手。ポケモンバトルにおいて2連続“まもる”成功は本来うれしいことのはずなのに。この瞬間だけは、望まれていなかった。
そのあいだにイダイトウ(オスのすがた)が“おはかまいり”でヤバソチャを倒し、残りはニョロトノ1匹となった。もちろんまだ決着ではない。約11%を引いて3連続“まもる”が成功すれば、アライ選手の勝ちなのだ。
しかし運命の女神はオオニシ選手に微笑んだまま。最後の“まもる”は失敗に終わり、ニョロトノが倒されてオオニシ選手の勝利となった。

勝利の瞬間についてオオニシ選手は「10年近くポケモンバトルをやってきましたが、あんな勝ちかたは見たこともありません。あまりにも非現実的な勝ち筋で、自分でも通るわけがないと思いました」と語る。
オオニシ選手だけでなく、誰もが予想し得なかった結末だっただろう。この劇的な試合が『ポケモンチャンピオンズ』1年目に起こったことも含めて、間違いなく伝説として語り継がれるはずだ。

インタビュー本編/積極的なプレイが幸運を引き寄せる
――“PJCS2026”優勝おめでとうございます。いまの率直な気持ちを教えてください。
――日本一になったことで身のまわりに変化はありましたか?
――決勝戦以外に、印象的な対戦はありましたか?

もうひとつは、自分の積極的なプレイスタイルが大会に向いていることだと思います。大会となると緊張してプレイが硬くなってしまう選手が少なくない中、僕は大会こそ伸び伸びと強気に行動するようにしています。僕はポケモンバトルにおいて運がいいと感じることが多いのですが、それは積極的に行動しているからこそなのかなと。
――と、言いますと?
――日ごろから情報収集を熱心にされていて、大会前は環境考察をかなり深くまでされている印象があります。ここもオオニシ選手の強みなのでは?
また、対戦中の情報処理能力や技術的な面では僕よりレベルの高いプレイヤーはたくさんいます。彼らと対等以上に戦うために、僕は対戦に関わる情報を事前に整理しておく必要があると考えています。
――オオニシ選手の活躍を見てダブルバトルを始めた人も多いのではないかと思います。上達のためのアドバイスがあれば教えてください。
インタビュー本編/ドドゲザン使いの男性はドドゲザンを使うのが苦手
――ポケモンとの出会いについて教えてください。
――好きなポケモンも教えてください。
――テレビのニュース番組では“ドドゲザン使いの男性”として紹介されていましたが、ドドゲザンへの思い入れはどうですか?
――自信を持って名乗れるようになるのを楽しみにしています(笑)。ところで、ダブルバトルに興味を持ったのはいつからですか?
――公式大会に参加するきっかけは何でしたか?
当時はそれっきりで対戦もやらなくなってしまったのですが、大人になってからも昔の知り合いが公式大会で活躍する姿はたまに見ていて、うらやましい気持ちがどこかにあったんだと思います。それで『ポケットモンスター ソード・シールド』の途中から復帰して本格的に大会出場を目標にするようになりました。
――2021年から“PJCS”に参加されているということは、再開されてけっこうすぐですよね?
――過去の積み重ねがあったとはいえ、半年でTop20に入れるのはすごいです! しかもそこから“PJCS”にはコンスタントに出場し続けていますよね。“ポケモンWCS”は今回で何度目ですか?
――それでは“ポケモンWCS2026”の意気込みをお願いします。
















