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『龍が如く0』はなぜ龍ファンから高い評価を受けているのか。Switch2『龍が如く0 誓いの場所 Director’s Cut』新発売を機にちょっとだけ語ってみる

by齋藤モゲ

更新
『龍が如く0』はなぜ龍ファンから高い評価を受けているのか。Switch2『龍が如く0 誓いの場所 Director’s Cut』新発売を機にちょっとだけ語ってみる
 「Nintendo Switch 2が買えないよう」と悲嘆に暮れる方も少なくないなか、本体発売と同日の2025年6月5日、ついに『龍が如く0 誓いの場所 Director’s Cut』がリリースされる。

 『
龍が如く0 誓いの場所』(以下、『龍0』)と言えば、ファン人気の高いシリーズ屈指の名作。そのディレクターズカット版ということで、追加された内容がとても気になるものの、筆者のように「過去に『龍0』は遊んだことがあるから、いますぐディレクターズカット版の違いを味わわなくてもね。本体を買えるまで待つことにしましょうか」と、謎のプレイ済みマウントを取りつつ、ギリギリ溜飲を下げている方もいることだろう。

 昨今『
龍が如く』シリーズの大半はマルチハードで展開しているので考えにくいだろうが、うっかり完全新作がNintendo Switch 2独占だったら憤死していたので、逆にディレクターズカット版でよかったとも思う。
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新要素のカチコミオンラインバトルなども魅力だが、ある種のオマケ要素に留まってくれていてよかった。なお、カチコミオンラインの詳細はファミ通.com関連記事をチェック!
 ただ、シリーズ未経験、もしくは『龍7』以降のRPGになってからの『龍が如く』ファンの方がNintendo Switch 2をゲットしたなら、いちシリーズファンを代表して、勧めないわけにはいかないくらいの名作なわけであることも事実。オリジナル版の段階からすでに、本当によくできたタイトルなので、そのディレクターズカット版なら遊ばない手はないでしょ? ということなのである。

 もちろん、ファーストプレイが『龍0』である場合について、個人的に思うところはある。

 真に『龍0』を楽しむなら、何なら無印の『龍が如く』のプレイ経験もあっていいわけだけれどさすがにそれはきびしいので、できれば『
龍が如く 極』と『龍が如く 極2』、『龍が如く4 伝説を継ぐもの』くらいは遊んでおいたほうがいい。

 でも、初心者(RPG以外の『龍が如く』を遊んでいないという意味合いも含む)にそれを要求するのはハードルが高いし、いきなり『龍0』から遊んでもたぶん95%くらいの楽しさは味わえるから、Nintendo Switch 2がうっかり当たった『龍が如く』未プレイの方は、『龍0』スタートでも悪くない。ただ、やっぱり5%くらいのもったいなさはあり、それがあったうえで初心者に勧めていいのか……? なんていう葛藤もあり。

 筆者がそう思ってしまうのはある種の老婆心的なものなのだが、それはいちファンとして
「マジで『龍0』はいい作品なので、万難を排して遊んでほしい」という想いがあるからこそ、なのである。

 本稿ではそんなシリーズ中でも名作と名高い『龍0』について、その魅力を改めて解説する。

『龍0』が名作と言われる最大の理由はストーリー

 筆者は別に『龍0』原理主義というわけでもないのだけれど、『龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii』までのシリーズ全作品で考えても、『龍0』は『龍が如く8』と並んでTier 1に該当する作品だとは思う。とくに、アクションアドベンチャー時代の『龍が如く』シリーズが好きなファンの中には“唯一無二”といった評価をしている人も少なくないが、『龍0』をプレイした多くの人が「唯一無二はやや大げさかもだけど、その気持ちはわかるぞ」と思っているはず。

 なぜそこまで『龍0』が評価されているのか? それをここから語っていく。まず、最大多数の意見と思われるのがストーリーだ。

 『龍が如く0 誓いの場所 Director’s Cut』が発売されるタイミングでわざわざネタバレをするつもりもないが、『龍0』のストーリーは本当に絶品だった。

 そもそも、日本のバブル期というほかのゲームではなかなか味わえない時代が舞台となっている時点でかなり秀逸。そして、これはある程度プレイしてから気付くのだが、その舞台背景がゲームサイクルの中でもうまく機能しているのがマジですごい(これも後で詳述します)。
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シリーズ通して人気キャラクターの真島吾朗は、現代でほぼ見かけることがなくなった“キャバレー”の支配人をやっていたりする。「あれ? 極道じゃなかったの?」みたいな感じになりますよね?
 そして、ストーリーでシリーズ主人公である桐生一馬と真島吾朗の若き日が描かれるわけなのだが、その話がまあ、すばらしい! 『龍が如く』らしい裏社会や極道を描く感じではあるのだが、そこに桐生と真島というそれぞれに友情や言葉を超えた信頼関係、拳で語るとはどういうことなのか……みたいな、グッとくる話、アツいエピソードが盛り盛り。

 ゆえに、すでに『龍0』をプレイしたファンも、ディレクターズカット版で追加されることになったエピソードがメチャクチャ気になっているわけである。分量もけっこうあるし。

 で、そんな桐生と真島の物語が、ひとつの大きな物語の柱の周辺で付かず離れずの螺旋を描くような全体の構造になっているというか。ネタバレなしでうまく説明するのは困難なのだけど、要するに『龍が如く』のナンバリングタイトルの中で屈指のデキなのである。
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ディレクターズカット版で追加されたワンシーン。久瀬(左)と桐生(右)のあいだでなにが語られるか知らないので、早く知りたいです! 
 ちなみに、「桐生さん、真島さん初めまして!」というシリーズ初心者が本作を遊んでも、ドラマに対する評価はあまり変わらないだろうと思う。

 ただ、ほかの『龍が如く』作品を遊んでいた場合にのみわかる小ネタがあったり、過去作を知っているからこそ彼らの一挙手一投足に深く感じ入るところがあるのもまた事実。先にも述べたが、本作から『龍が如く』シリーズで遊び始めるのを勧めることにちょっとモヤったりもするが、それはシリーズファン視点で、“初心者がいきなり本作を遊ぶとスルー必至の感じ入るシーンがある”とわかっているからこその老婆心なのかなあ、とも思う。
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『龍が如く』や『龍が如く 極』を遊んでいないと、錦山彰も「初めまして」になっちゃうんです。それをよしとするかどうか……でも『龍0』から遊んでもおもしろいとも思うし……。どっちもやったことあるファンならわかってくれるよね!?
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最近ネットミーム的に「もう殺すしかなくなっちゃったよ」が使われるようになったけれど、その佐川司が出てくるのも『龍0』。なんで急に流行ったんですかね……?

発売時は真島を操作できることが絶賛されていた

 もちろん、単に物語がいいだけでは名作とまでは言われない。いくつものよさが複合しているから名作なのであり、その“よさ”のひとつとして挙げられるのがバトルだ。

 現在は直近で『龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii』がリリースされたので意識の外側にあるかもしれないが、当時は“人気キャラクターの真島を操作して戦える”という部分も、『龍0』の強烈な魅力のひとつだった。複数主人公という新たな扉が開いた『龍が如く4 伝説を継ぐもの』以降、真島を操作するということは、『龍が如く』ファンからすればまさに“待望の”というヤツだったのだ。
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トリックスターの真島らしい、これまでの『龍が如く』シリーズにないバトルアクションが楽しめたことも印象深い。
 また、バトルシステムの面でも本作は優れていた。そもそも『龍が如く』シリーズのアクションというのは、当初から適当にボタンを連打しているだけでも十分に楽しめるケンカアクションの爽快感が魅力。それは「普段ゲームを楽しまない人でも楽しめるように」というコンセプトもあったからこその仕様であり、ゆえに多くのプレイヤーに受け入れられたわけだ。

 そんなバトルシステムは、初代からナンバリングを重ねるたびにさまざまな調整が施されていく。主人公に応じたバトルスタイルの魅力が生まれたり、主人公が複数のバトルスタイルを持ち、それを切り替えられるようになったりとシステムが進化した。
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『龍0』では、桐生と真島それぞれに3つずつバトルスタイルが存在している。桐生の場合、チンピラスタイル(バランス型)、ラッシュスタイル(スピード型)、壊し屋スタイル(パワー型)の3種類。写真は壊し屋スタイル。
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真島の場合、喧嘩師スタイル(バランス型)、ダンサースタイル(スピードというか広範囲型)、スラッガースタイル(パワー型)。写真は喧嘩師スタイル。
 そうして試行錯誤、熟成を重ねた末にたどり着いているのが本作のバトル。初心者からベテランまで幅広く楽しめるようになっている。

 そういう意味では『
龍が如く7 光と闇の行方』や『龍が如く8』からシリーズを遊び始めて、まだバトルがアクションの『龍が如く』を未経験の方が本作でアクションバトルを体験するというのはそう悪くないことかもしれない。

 もちろん、かつてアクションの『龍が如く』で楽しんでいた勢として見れば、ある種のリメイク作ではあるが、外伝以外で久しぶりにアクションを楽しめる魅力的な作品でもある。

カネが乱れ飛ぶバブル期ならではのゲームサイクル

 『龍が如く』シリーズは基本的に現代劇。リリース時の世相や流行を反映した作品がそのほとんどを占めている。

 しかし、先に述べた通り本作の舞台となるのは1988年。いわゆるバブル期の日本で、いまよりも少しだけテクノロジーは劣っていたし街も小汚かったりしたけれど、バカみたいに景気がよく人々は活気づいていた、現代から見ると伝説のような時代だ。
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1988年の神室町と蒼天堀。蒼天堀は「言われると違うよね」という感じかもしれないが、神室町はひと目でわかるほど違う。
 その伝説の時代をゲーム性に落とし込むという部分でも、とてもうまくやっていたのが『龍0』だった。ある意味、奇跡的なマッチングだったかもしれない。

 大金を稼いでキャラクターを育てれば、どんなにアクションが苦手でもなんとかなるゲームバランス。その大金を稼ぐための要素としてキャバクラや不動産会社の運営などのプレイスポットが用意された。このあたりに不自然さがないわけだ。そして、時代背景もうまく利用しながら、そういったプレイスポットで楽しむことが本編の攻略にも役に立つというゲームサイクルを作り上げたことが白眉だった。

 それまでのシリーズ作もプレイスポットでの遊びが巡り巡って本編に役立つということはあったが、ここまで舞台や背景がゲームシステムに噛み合っているのは『龍0』がトップクラスだと思う。
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桐生は不動産屋として各エリアの店舗を買収し、マネージャーやガードマンを雇って店舗収益を上げて儲ける。
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真島はキャバクラを運営。キャストのスカウトや管理、店でどの客に誰をつけるかの判断などを行っていく。
 また、ディスコやテレクラなど、当時感を味わえるいい意味でくだらないプレイスポットがたくさん用意されていた点も秀逸。そのひとつひとつの食い合わせが異常にいいのだ。

 女子プロレスのような“キャットファイト”などを見ても「ああ、まだ当時はダンプ松本の極悪同盟とかあったよねえ」となるし、シリーズではおなじみのボウリングやビリヤードといったプレイスポットを見ても「1970年代にあったらしいボウリングブームの残り香かもなぁ」とか「プールバーって1980年代に流行ったもんなあ」なんて思ってしまうほど。

 このあたりが、“奇跡的なマッチング”と述べた部分なのだ。
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当時感のあるプレイスポットが目白押し。

まとめ:Switch2が買えたらこれもマストバイ

 『龍0』の魅力を大きな柱で語るならば、上の3要素について多くの人が挙げるのではないかと思う。ほかにも、「芸能人キャストのラインアップが半端じゃないよ」とか、細かく挙げるとキリはないのだが、少なくともゲームとして超重要な部分がメチャクチャよくできていたからこそ、『龍0』は名作として語られるにいたったということなのだ。

 そんなわけで『龍が如く』シリーズファンのあいだでは(少なくとも筆者は)Tier 1とされている『龍0』。Nintendo Switch 2が買えたなら、本作はマストバイ的に勧めたいのだが、本体が買えなかった人も、むしろ買えるまでの期間を好機として、シリーズ初心者の方はひとまず『龍が如く 極』や『龍が如く 極2』などをプレイして、本作で遊べるようになるのを待つのも手だろう。「いやいや『龍が如く』シリーズはもう全部遊んでいますが? もちろんまだNintendo Switch 2は買えていませんが」みたいな方は……マジで天に向かって祈るしかないかもです。
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