NeverAwakeManのおすすめゲーム
『Trepang2』
- プラットフォーム: PC(Steam)
- 発売日:2023年6月22日
- 発売元:Team17
- 開発元:Trepang Studios
- 価格:3499円[税込]
- 備考:海外ではプレイステーション5版とXbox Series X|S版も発売(日本語は未対応)
- 一昔前のシングルプレイFPSが好き
- ショットガンが強いFPSがやりたい
- 自分の強さに酔いしれたい
昔々、はるか彼方のゲームジャンルで……
たとえば、『コール オブ デューティー4 モダンウォーフェア』。あるいは『バトルフィールド バッドカンパニー2』。または『Halo: Reach』。いまでも語り草になるような名作が毎年のように登場していた黄金時代だ。
これまでの主戦場だったPCに加えてコンソール機でも遊べるFPSが増えたこともあり、一人称視点ならではの深い没入感や、ゲームの進行と連動した派手な演出が一世を風靡した。「まるで映画のような」とは、いまも昔もゲームを褒めるときの枕詞だけれど、この比喩に正しく実感が伴ったのはちょうどこのころだったように思える。
一般的には“圧倒的に暴力的”なジャンルが”非常に暴力的”になった程度の変化だったかもしれないけれど、充実したシングルプレイを備えたFPSは、いまでいえばソウルライクくらいの一大ブームだった。
当時の俺は薄暗い部屋で不気味に笑いながらFPSばかり遊んで、溢れんばかりの若さをドブに捨てていたものだ。そして、俺の薄暗い部屋をいっそう暗くしてくれた傑作FPSこそ『F.E.A.R.』シリーズだった。読んで字のごとく、本作のウリは恐怖(フィアー)である……というのは半分合っていて、半分間違っている。
というのも、『F.E.A.R.』が高く評価された理由は恐怖演出だけではないからだ。本作には情け容赦ないゴア要素や、スローモーションを活用したヒロイックな銃撃戦、そして2024年現在から見てもやたらスマートに動く敵AIなども揃っていた。要するに、怖さと爽快感を高いレベルで両立したゲームだったからこそ、本作はユニークかつおもしろかったのだ。
ようやく本題。そんなカルト的人気を誇るホラーFPSの精神的続編といえるゲームが、今回紹介する『Trepang2』である。『2』と名付けられているものの1作目は実質的に存在しない(いろいろと事情があるらしい)ので、安心して本作から遊んでほしい。
ショットガンが強いFPSにハズレなし
『Trepang2』でもその点は変わらないどころか、戦闘はさらに過激さを増している。オープニングから10分もせずに使えるようになるショットガンを手に取り30秒ほど戦ってみるだけで、本作の過激さはすぐに理解できるはずだ。
「ショットガンが強いFPSにハズレなし」というのはあらゆるゲーマーが認める真理なわけだけれど、このゲームで使えるショットガンはズバ抜けて強い。少し離れた敵もやすやすと怯ませられるし、頭に当てれば胴体とお別れさせてやれる。
それどころか、敵の超至近距離でショットガンをブッぱなしてやれば、なんと身体をまるごと血煙に変えてしまえる。どういう原理か、骨すら残さず敵を爆発四散させてしまえるのだ。ショットガンをリロードしたとき、かろうじて残っているのはおびただしい血飛沫と臓物だけだ。
この明らかな過剰火力をブン回しながら、スローモーションを駆使して敵を駆逐する。これこそ『F.E.A.R.』から連綿と受け継がれる銃撃戦であり、『Trepang2』は現代でもそれが通用しうることを力強く示してくれている。
クロークで敵を翻弄せよ
敵AIはしっかり洗練されていて、最後にプレイヤーを発見した位置を囲い込むように索敵するし、遮蔽物には積極的にグレネードを投げ込んでくる。なので、遠くの物陰から狙い撃つというのは得策ではないし、そもそも本作は銃の命中精度が全体的に悪く、チマチマした遠距離戦がやりにくいようにできている。かといって、猪突猛進に突っ込んでいくだけのプレイも分が悪い。集中砲火を喰らってしまうし、プレイヤーを追いかけて自爆する厄介な敵もいるからだ。
うまくヒットアンドアウェイをするために活用すべきなのが、スローモーションに続く第二の能力”クローク”だ。クロークはいわゆる光学迷彩で、発動すると束の間だけ透明になれる。
ゲーム内では「敵に発見されないようにクロークを使え!」などと説明されるものの、実際は敵の目の前で使ってもステルス状態に即移行できるので、銃撃戦の最中でもガンガン使える超優秀な能力だ。ちょっと強引すぎる気がするけれど、敵を血煙にできるゲームでそんなことツッコむほうが野暮というものだろう? クロークが続くあいだに敵の視界から離れて、有利な状態で仕切り直しだ。
圧倒的"捕食者"体験
とにかく『Trepang2』はひっきりなしに撃たれるゲームなので、肉盾があるのとないのとでは生存確率がまるで違ってくる。言い換えるなら、目の前にいる敵は第二のHPでもあるということだ。さらに、つかまえた敵をグレネード代わりに放り投げてまとめて爆殺するというようなアクション映画さながらの攻防一体のアクションもできる。
字面こそ地味なものの、本作を『F.E.A.R.』以上にアグレッシブなゲームにする上でつかみは非常に重要な役割を担っている。これがあるおかげで敵にあえて近づくモチベーションが生まれるし、ヘッドショットを狙わなくても怯ませられればOKという高速ラフプレイが可能になっているからだ。
ホラー要素こそ若干キレがないものの、バイオレンスさにおいて『Trepang2』は『F.E.A.R.』シリーズの正統後継者を名乗るのに十分ふさわしい出来となっている。なにかといえばマルチプレイをさせるFPSが多い今日この頃、こんなに圧倒的なパワーファンタジーを味わわせてくれるシングルプレイFPSはじつにありがたい。
ノーマル難易度でプレイする分には10時間もしないうちにサクッと終えられるコンパクトさが魅力的な本作だが、ボリュームを求める人には先日発売されたDLCもおすすめだ。新しいマップで追加ミッションが遊べるほか、超カッコいいリボルバーとこれまた超カッコいい刀(しかも刃が光る!)など新しい武器が使えるようになる。体験版も配信されているほか、セールを狙えば2000円ちょっとで本編とDLCが揃うので、ぜひとも手に取ってみてほしい。