2024年7月25日に発売を迎えたフリューのNintendo Switch、プレイステーション5、プレイステーション4、PC(Steam)向けアクションRPG『レナティス』。
本作では“魔法”が存在する2024年の東京・渋谷を舞台にした、魔法使いたちの葛藤が描かれる。同調圧力に対するアンチテーゼとして、キーワードである“抑圧と解放”が落とし込まれたゲームシステムとストーリーが見どころだ。
制作陣には『聖塔神記 トリニティトリガー』の礒部たくみ氏によるプロデュース・ディレクションのもと、シナリオライターの野島一成氏や、コンポーザーの下村陽子氏といった、『キングダムハーツ』で知られるクリエイターが参加。
本稿では極力ネタバレをしない配慮のもと、レビューをお伝えする。また、記事後半では攻略情報を載せているので、プレイ予定の方はあわせてチェックしてほしい。
※本記事はフリューの提供でお送りします。見慣れた景色に紛れ込む、異物感【レビュー】
本作の大きな魅力のひとつは、実在する都市、施設を再現した街並み。というのも、我々にとって既知の“渋谷”という街に、未知である“魔法”が融合することで、なかなか魅力的なローファンタジー(現代ファンタジー)が形成されているからだ。
▲馴染みのある景色と、見慣れない物体。
例えば渋谷のスクランブル交差点などは、国内外問わず認知度の高い場所だ。行ったことはなくとも、若者の街として現代日本を代表するようなスポットとして、何かしら見覚えのある人も多いはず。ゲーム内には渋谷の各スポットが再現されているので、街シミュレーターとしての楽しみ方が十分にできる。
そして、馴染みのある都市のなかに、“魔法”という異物が紛れ込んでいる。掲出された広告、アナウンス、取り締まり……これらが登場人物にとっては当たり前な生活の一部としてしっかり溶け込んでいる点が、逆にプレイヤー目線では新鮮で面白く感じるだろう。
なお、作中では“魔法対策法”による外出自粛要請で、街の人通りがまばらになっている。その抑圧感は、コロナ禍による緊急事態宣言を受けた我々現代人にとって想像に難くないもので、設定の妙と言える。
そうした世界のなかでもがく“魔法使い”たちはまさに異物として、苦しい立場に置かれている者も多い存在だ。しかし、本作の魔法および“魔法使い”は、嫉妬、嫌悪、畏怖などあらゆるネガティブな感情を向けられる存在だ。過ぎたる力、普通から逸脱したものを目の前にしたとき、人はそれを抑え込もうとする。人扱いされない魔法使いたちはプレイヤー(現実の人間)とは違い、特別な力を持った存在だが、彼らもまた人間なのだとわかる描写の積み重ねのおかげで、感情移入がしやすい。
とくに特徴的なのは、登場人物のメッセージでのやり取り。現代劇のゲームではお約束となりつつある、キャラクター同士のショートメッセージサービスでの交流が本作にも存在する。しかしながら、“各プレイアブルキャラクターの視点から返信が可能”なところが、珍しい要素だ。
例えば、主人公のひとり、霧積真凛(きりづみまりん)が参加するグループメッセージの一幕では、真凛の問いかけに対して、パーティメンバーのひとりである目黒仁香(めぐろにか)に操作を切り替えて携帯を開くことで、任意の選択肢で返答できる。本作は“個性”を大事にしているからこそ、登場人物ひとりひとりの心の中がプレイヤーと共有できることで、よりその人物を理解できる仕組みだ。
▲「…」でメッセージが止まった場合、該当の人物に操作を切り替えることで会話を進行させることができる。
カッコよさを追求したバトルシステム【レビュー】
突然だが、戦いにおける“カッコいい立ち回り”とはなんだろうか。筆者は、“余裕感”が大事だと考える。アクションゲームにおいてザコ敵とのバトルが発生したとき、キャラクターを敵の近くまであえて歩かせたり、わざわざ攻撃を待ち構えてカウンター技で倒したりすることがあるだろう。ゲーム攻略的にはあまり意味のないことにも関わらず、“格の違いを見せつける”ような立ち回りを、ある種ロールプレイ的に楽しむ考え方だ。改めて書き起こすと少し恥ずかしい。
だからこそ、カッコよく立ち回ること自体がシステム的に意味あるものとして昇華されたゲームは非常に楽しい。
その点において、まさしく『レナティス』はそのひとつだ。
基本的に本作のバトルは、防御的な“抑圧モード”と攻撃的な“解放モード”のふたつを切り替えながら戦う。前提として、解放モードで攻撃をくり出すときはMP(魔法を使うためのポイント)を消費するため、無限に技を使うことはできない。
そこで、抑圧モードを活用することが重要になる。抑圧モード中は、敵の近接攻撃が当たりそうになると、スローモーション演出と同時に画面上に魔法陣が出現する状態。このときに回避ボタンを長押しすれば、MPを吸収しながら回避する“回避吸収”が発動できる。
この回避吸収によって、敵の攻撃をギリギリで避けながら反撃を加え、MPを回復することが可能。攻防一体のやり得技となっているため、本作を攻略するうえでは欠かせないものとなっている。操作方法がいわゆる“ジャスト回避”でないこともキモで、回避吸収を発動するコツは“ただ敵の攻撃を眺めていること”。攻撃を見てから、スローモーション演出が出たときにボタンを押すだけで良い。操作のハードルは低いのに大きな爽快感が得られるシステムと言える。
ビジュアル的にも、通常の回避技であるドッジロールに比べると、圧倒的に動きが最小限。抑圧モード中は武器も何も構えていない、一見無防備な姿を晒していることも含めて、カッコいい“余裕感”があふれている。いわば「お前の攻撃、止まって見えるぜ」的プレイ体験だ。
▲暴徒の攻撃を横目に、余裕の回避を決められる。
一方で、強敵とのバトルでは、回避吸収(スローモーション)が狙えない強力な攻撃をくり出される場合がある。そうなると今までの余裕はなくなり、必死な回避行動も必要だ。アクションとしてはもどかしさを感じる瞬間も出てくるが、格の高い敵との戦いの厳しさは、ストーリー上の没入感を高めるエッセンスにもなっている。
また、バトルの気分を盛り上げる要素として、優れたサウンドの存在も大きい。敵との戦いで流れるBGMは壮大で、強敵ともなればイントロから激しい戦いを予感させる。バースト解放時(※)の「ヴゥーーン」という重低音も気持ち良く、MPが満タンになったときにはボタンを押す指にも力が入るというものだ。
※MP満タン時に解放モードに入ることで、一定時間敵の動きをゆっくりにしたうえで急接近する“バースト解放”が発動できる。同調圧力に苦しむあなたに【レビュー】
余談だが、筆者は『Caligula -カリギュラ-』シリーズや『モナーク/Monark』など、近年のフリューが輩出するRPGの傾向が非常に好きだ。刺さる人にはこれでもかというほどグッサリと刺さるチャレンジングなテーマ性に惹きつけられてやまない。
『レナティス』もまた、“抑圧と解放”をキーワードに、同調圧力に苦しむ人々を扱ったテーマ性のある作品。そのなかで、個性としての中二病のカッコよさを突き詰め、現実とファンタジーを融合した、独自のダークな世界観を醸成した群像劇になっている。
筆者は単純に、パーティーメンバーどうしの個性的な掛け合いが楽しく、人となりを知っていく内に全員が好きになっていった。本作は、現代社会でいつの間にか個性をしまいこんでしまった抑圧されている人にとって、背中を押してくれる再出発点のような解放をもたらしてくれるかもしれない。
陰謀渦巻く渋谷で生き抜くために【攻略】
ここからは、ゲームの攻略に役立つ情報をお届け。バトルの基本やプレイアブルキャラ6名のインプレッション、攻略に役立つTIPSを紹介する。
戦闘編:魔法使いの性能を把握しよう
バトルの基本として、一定時間以内に攻撃を連続して当てるとコンボになり、攻撃の倍率が高くなる(50hitで+25%となり、その後も上昇していく)点をおさえておきたい。火力に直結するので、途切れずに攻撃を当てることが重要だ。専用ゲージが溜まると発動できるラストメナスは、広範囲を攻撃できる強力な必殺技。hit数を伸ばして、より高いダメージを叩き出そう。
▲佐理のラストメナス
パーティー編成は最大3人で、バトル中は操作キャラクターを切り換えることが可能。切り換えたキャラクターは少しの間その場に残って一緒に戦ってくれるほか、敵の攻撃を食らって吹っ飛ばされてしまった場合も操作キャラクターを切り換えれば、素早く戦いに復帰することができる。
パーティーメンバーとして活躍する個性的なプレイアブルキャラクターたちは、それぞれ使用感が異なる。特徴をつかんで、強みを活かす立ち回りを考えよう。以下で、各キャラクターのインプレッションを紹介する。
霧積真凛
シャープペンを剣に変形させて戦う真凛は、オーソドックスな動きが多く扱いやすい。通常攻撃は素早い連撃で、hit数を稼げるのでバトルの軸になる存在。初期から使えるスキル“ハウンドアッパー”は敵を打ち上げたり、空中の敵に当てたりしやすい上昇系の攻撃。“ハウンドスラスト”は溜めるとパワーアップし、高威力のダメージを与えられる。状況を問わない多彩な攻めが魅力的だ。
西島佐理
剣術と、マントを活用した空中での縦横無尽な立ち回りが可能なキャラクター。遠距離攻撃をジャスト回避すると空中に飛び出すことができ、そのまま着地せずに敵の懐まで接近できる独自の爽快感がある。スキル“レイヴンハック”などの攻撃でも流れるように空中へ行けるので、そこから空中攻撃へとつなぎ、連撃を叩き込める。真凛と同様、バトルの軸にしやすい。
目黒仁香
袖口のリボンによる近接攻撃と、フロッピー(!)を媒介した召喚魔法で戦う。一見するとトリッキーな設定だが、蛇を召喚するスキル“ファミリア”を筆頭に、広範囲を攻撃するものが多く、集団戦で使いやすい性能になっている。場に残る召喚魔法や敵を打ち上げる“サモンアッパー”、そして近接攻撃の組み合わせで、強力なコンボを組むことも可能だ。
深町最愛
手にした日傘をハンマーに変え、重撃を叩き込むパワーファイター。手数は少ないが、一撃の大きさと範囲の広さが魅力的。通常攻撃はハンマーの重さゆえに隙が大きく、よろめいたりコケてしまったりするので、スキル“ラビットスラム”などにつないで隙をキャンセルしよう。ちなみに、バトル中の彼女の言動にも注目。
鵜飼貴一郎
魔銃によるロングレンジ攻撃が特徴的なスタイル。敵との距離をとりながらガンガン攻撃すればダメージ以上にhit数を伸ばしていくことが可能。近づいて来た敵はスキル“アノールフリーズ”を発動することで凍らせることもでき、有利な状況を維持しやすい。なお、その性質からバースト解放で唯一急接近しない。
土合正義
自らの拳を武器に戦う、鵜飼とは対照的な超絶インファイター。得物を持たないためリーチは短く、集団戦では不利もあるが、スキルの性能を含めて単体へのラッシュ力は随一のもの。いかに敵に近づけるかが重要なので、バースト解放による急接近を最も活かして戦いたいところ。
各キャラ、スキルウィザートを2個まで装備でき、アクションを拡張することができる。汎用スキルに加えて、キャラクター固有のスキルもあるので、好みと戦略に合わせて装備しよう。
探索編:マリス濃度を下げよう
マリス(魔法使いへの悪意)濃度が高いと、ウィザートの獲得などに制限が掛かる。メインストーリーを進めるほか、サブクエストをクリアしていくと徐々にマリス値が下がっていくため、積極的に人々のお願いを聞いてあげることをオススメする。サブクエストもこなすことで、この世界のことをより深く理解できるだろう。“方向器キーの上ボタン”を押すことで、すぐにサブクエストの一覧を開くことができるので、定期的にチェックしよう。
ウィザートには力を得られるものもあれば、お金が得られるものもある
メインストーリーやサブクエストの目的地は画面のマーカーに従って進めばたどり着ける。サブクエストの場合、メニューから案内が必要なクエストを選択しておこう。渋谷マップを開けばファストトラベルもできるので、移動時間を短縮可能だ。
そのほか、プレイ中に覚えておきたいことを以下にTIPSとしてまとめた。
- 回避吸収のコツは、あわてて回避ボタンを押さず、スローモーション演出が入るまでどっしり待つこと
- 敵の身体が紫色に光ったら回避吸収ができない攻撃が来る。すぐに距離を取ろう
- 一定時間周りがスローモーションになる、強力な“バースト解放”を心掛けよう。MPがマックスになったときはゲ―ジが光るので、バースト解放のチャンスだ
- 状態異常になる“呪い”は、一度発動してしまうと長時間不利な状態に陥る。呪いを消すことができる“解除薬”は貴重なので、“予防薬”で呪いゲージをこまめにリセットして、呪いの発動を事前に防ごう。
- 渋谷で解放モードになったあとは、すぐにセーフポイントへ駆け込めるように位置をチェックしておこう
- 抑圧モードなら、街にいる人たちへ話しかけることが可能。ゲームの進行にあわせた話題や、人々を取り巻く状況などがわかる。ただし、話題によっては“ストレス”が溜まってしまうことも
- ストレスが溜まった時には、自動販売機で飲み物を買う、お店で食事をする、買っておいたアイテムを使用する、猫と触れ合うなどの方法でストレスを解消できる
- 解放モードでしか見つけられないアイテムも多数存在する。人目が気にならないところでは解放モードにしておくとスムーズに探索できる
- 渋谷の街では、セーフスポットで解放モードになることで、安全に周りを見渡すことができる。“探し物”が見つからないときは、この方法で発見できる可能性が高い
- アイテム購入やスロット開放ができる魔法ショップの場所は、道玄坂小路にある