続々配信されるダウンロードコンテンツによって、楽しみがさらに広がる『CV 〜キャスティングボイス〜』。ソフト発売と同時の2014年6月19日には、『アイドルマスター』シリーズの台本(シナリオ)の配信がスタートした。
インタビュー企画第3弾のゲストは、『アイドルマスター』シリーズの総合プロデューサーを務める、バンダイナムコゲームスの坂上陽三氏。『アイドルマスター』の台本を使って、キャスティングモードとアフレコモードをプレイしていただいたほか、日本の声優が持つ技術や、キャスティングするうえで重視していることなどについて語っていただいた。
――声優さんをテーマにした『CV 〜キャスティングボイス〜』に対して、坂上さんは最初にどのような印象を抱かれましたか?
坂上 もともと僕は、「日本の声優文化は、すごいな」と思っていたんです。海外でゲームを展開するとき、海外の声優さんにオーディションを受けていただくのですが、日本の声優さんがすんなり出せる声を、海外の声優さんは出せなかったりするんですよね。たとえばキャラクターが羽交い絞めにされたときに出す、「うっ」とか「くっ」といった声。洋画や日常生活では出すことのない声なので、イメージが湧かないようなんです。最近は違うのかもしれませんが、僕が海外でオーディションをしていたころは、声優さんではなくて、俳優さんや別の職業の方がオーディションを受けることも多くて。ですので、演技指導の際、そのシーンについて細かく説明しなければなりませんでした。
――海外に向けてもゲームを作ってきたことで、日本の声優さんのすごさに気づくことができたのですね。
坂上 安定して同じ声を保つことも、海外の方には難しいようでした。日本の声優さんは自分の中にキャラクターを作って、そのキャラクターの声を安定して出してくださるので、すごいな、と。日本の声優さんは、プロに求められる技術の水準が高いのだと思います。そんなすごい技術を持つ日本の声優さんも、ふだんは影に隠れている存在なので、その存在をゲームの中で表に出すというのは、おもしろい試みだと思いました。
――ありそうでなかったゲームですよね。声優さんを題材にしたゲームは、これまでに存在していなかったわけではありませんが、ひとりの声優さんが、こんなにも多くの役を演じるゲームは初めてです。

坂上 そうですね。僕はこのゲームで、“声優さんが声色をいっぱい持っている”ということを、改めて知りました。若い女の子を演じることが多い方が、とても大人っぽい声を出していたりして、すごく新鮮でしたね。
――ふだんから数多くの声優さんの声を聴いている坂上さんにとっても、新しい発見があるゲームということですね。ところで、坂上さんは長年『アイドルマスター』シリーズに携わっていらっしゃいますが、『アイドルマスター』のキャスティングをするうえで、意識していることは何でしょうか?
坂上 キャラクターのイメージに合うことがいちばん大事です。それから、『アイドルマスター』では、必ずオーディションを行います。セリフや歌唱などいろいろなテストを行って、イメージに合う方を採用しています。結果的に新人の方を採用することが多いですね。
――『アイドルマスター』の場合ですと、声優さんが歌を歌うことが大前提となりますが、やはり歌のうまさも考慮されますか?
坂上 オーディションでは、歌は必ず歌っていただきます。歌声がキャラクターや曲に合っているかを見させていただきますね。かといって、歌が上手ならいいというわけでもないんです。グループのひとりひとりが、何かひとつ特徴を持っていることが大事だと思うので。歌がうまい方もいれば、トークがうまい方もいて、ダンスが得意な方もいる。そのほうが皆さんも共感してくれますよね。
――グループならではのよさですよね。
坂上 オーディションで、その声優さんの生き様が決め手になることもありますよ。この人はおもしろそうだな、って。

――近年は『シンデレラガールズ』や『ミリオンライブ!』で新しいアイドルが誕生していますが、彼女たちの配役を決めるうえで、以前と意識して変えていることはありますか?
坂上 僕たちの意識が変わったというより、世間の意識が変わりましたね。9年間『アイドルマスター』を続けてきたことで、声優業界の方々にも(『アイドルマスター』が)浸透しまして、いまは新人の女の子にとっての登竜門のように捉えていただいているようです。
――なるほど。続いて、『CV 〜キャスティングボイス〜』に収録されている『アイドルマスター』の台本(シナリオ)についてうかがいます。台本には、それぞれのアイドルとの出会いのシーンが収録されていますね。
坂上 『CV 〜キャスティングボイス〜』は新しいゲームですので、その中に『アイドルマスター』のキャラクターたちが登場するなら、そのアイドルがどんな人物なのかをわかってもらえる内容がいいなと思ったんです。『CV 〜キャスティングボイス〜』に限らず、ほかのコンテンツとコラボレーションするときは、そのようなアプローチをしています。
――本作には、『アイドルマスター』で千早を演じている今井麻美さんと、あずさを演じているたかはし智秋さんも出演されています。今井さんやたかはしさんが、ほかのアイドルを演じているのを聴けるのは、貴重な機会ですよね。

坂上 『アイドルマスター』の声優さんたちって、楽屋では、ほかのアイドルのマネをして遊んでいたりするんですよ。下田麻美さん(双海亜美・真美役)はモノマネがお上手なことで知られていますよね。今井さんとたかはしさんは、そういうモノマネを意識しつつも、「自分なら、こういうアプローチをする」と考えて演じられたのではないでしょうか。
――では、『アイドルマスター』を知りつくしている坂上さんに、あえて『アイドルマスター』の台本で、『CV 〜キャスティングボイス〜』をプレイしていただきたいと思います。王道アイドルの春香の台本でいかがでしょうか?
坂上 わかりました。プロデューサーは、『アイマス』ですから、赤羽根くんにします(赤羽根健治さんが演じている声優キャラクター、伴 勇次を選択)。春香は……この鷺洲玲子さんって、今井さんが演じているんですよね? じゃあ、今井さんの春香を聴いてみます。
――いかがでした、今井さんの春香は?
坂上 今井さんと中村さん(天海春香役の中村繪里子さん)は、『アイドルマスター』の初期から、ずっといっしょに出演されてきたので。その今井さんが春香を演じているのは、ものすごく新鮮でしたね。違和感もありつつ(笑)。
――(笑)。では、つぎに、アフレコモードにも挑戦していただきたいと思います。どのアイドルの台本にしましょうか? たとえば、伊織ですとか……。
坂上 でも、伊織は原田くん(バンダイナムコゲームス原田勝弘氏。伊織ファンとして知られる)がやるかもしれないですよね? そのときのために、とっておきましょう。そうですね、雪歩でやってみます。
――それでは、本番よろしくお願いします!

坂上 カミカミでしたね(笑)。あ、いえ、違った、雪歩の口調をマネしたんですよ。演出です(笑)。
――演出だったんですか(笑)。雪歩を演じるのは、難しかったですか?
坂上 いや、カンタンでした! ……ウソです。そもそも異性の声を演じるのが難しいですし、人前で演じるのは恥ずかしいですし。でも、アフレコモードは、ひとりでやるより、誰かといっしょにやるほうがおもしろいですよね。
――友だちとワイワイ楽しめるのも、本作の魅力のひとつですよね。
坂上 誰でも一度は、僕もそうでしたけど、キャラクターを演じてみたいと思ったことがあると思います。その夢を叶えられるソフトなので、ぜひ『CV 〜キャスティングボイス〜』をプレイしてください。『アイドルマスター』シリーズは、最新作『アイドルマスター ワンフォーオール』が発売中で、2014年7月29日には“カタログ第3号”が配信されます。こちらもどうぞよろしくお願いします。