●『Halo』シリーズはどうXbox LIVEに貢献をしてきたか?

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 2011年8月26日〜28日(現地時間)、アメリカ・シアトルにて、『Halo』シリーズ10周年を記念してのファンイベント“Halo Fest”が開催。開催最終日にあたる2011年8月28日には、パネル“Xbox talks 10 years of Halo!”が行われた。こちらは、ユーザーのあいだで“メジャー・ネルソン”として知られるXbox LIVEのプログラミングディレクター、ラリー・ハーブ氏を司会役に、『Halo』シリーズがどうXbox LIVEに貢献をしてきたかを語るというもの。登壇者はというと、ジェリー・フック氏(Xbox LIVEの創設メンバー)、ダッグ・ヒーベンタル氏(初代Xboxに関わった最初の7人のうちのひとり)、エリック・ニュースタッダー氏(Xbox LIVEのオペレーションズマネージャ)、ステファン・トウルース氏(Xbox LIVEのポリシー アンド エンフォースメント ディレクター)と、濃いメンバーが揃った。

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▲“メジャー・ネルソン”こと、ラリー・ハーブ氏。

▲ジェリー・フック氏。

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▲ダッグ・ヒーベンタル氏。

▲“e”こと、エリック・ニュースタッダー氏。

▲ステファン“ステプト”トウルース氏。

 初代『Halo』がリリースされる10年前と言えば、まだまだ家庭用ゲーム機にFPSが根付いていなかったころ。ダッグ・ヒーベンタル氏は「私は承認プログラムを担当していたので、バンジー以外では『Halo』を最初に見たひとりだと思う。誰もコンシューマーでFPSをやっていなかったので興味深かったが、コントローラーではうまくいかないだろうと思っていた。ところが承認段階になってプレイしてみると、誰も期待していなかった不思議な力があることがわかったんです」と語る。バンジー以外で初めて『Halo』の魅力に触れた人とも言えるのかもしれない。そのほかにも、「Xbox LIVEチームで最初にプレイしたゲームが『Halo』のサンプル。オフィスでちょっと遊んでから家に持ち帰ってプレイしたが、信じられないほど素晴らしい経験だった」(フック)、「2001年春にXboxチームに入ったが、その直後に『Halo』を初めてプレイしました。Xbox発売前のこの時期は全員がゲームを家に持ち帰ってプレイテストし、うまくいけそうなものと、そうでないものを判断していたんです。8月にはハードも準備万端、『Halo』もほぼ完成していました。ある週末に開発キットとほぼ完成した『Halo』を持ってスタッフと協力プレイで週末を過ごすことにしていたのですが、何か特別なものがあることはすぐにわかりました」(ニュースタッダー)と、口々に『Halo』とのファーストコンタクトに対する手応えを語る。

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▲ちなみに、エリック・ニュースタッダー氏はゲーマタグ第1号なのだとか。

 一方で、話題はXbox LIVEに及ぶ。Xbox LIVEのサービスがスタートしたのは北米では2002年11月15日だが、本体が開発される当初からオンライン対応を前提としていた。もちろん、それまで家庭用ゲーム機でオンラインというのは、あまり例がなく、「当時PCですら、『Diablo』や『Warcraft』など、誰かとオンラインでプレイするのは接続に問題があって簡単ではなかった。ドリームキャストは道を切り開いてくれて、やってはいけないことをいろいろと教えてくれた」(フック)とのコメントが当時の状況を物語る。

 初代Xboxは、当時主流だったナローバンド(いわゆる電話回線)ではなく、あまり普及していなかったブロードバンド(高速通信回線)のみに対応するという潔さも話題になったが、「当時ブロードバンドは普及していなかった。マーケティングが調査をして、ナローバンド以外は考えられないと言ったが、少人数のグループがゲームの将来はブロードバンドにあると主張した。これで3ヵ月議論しました」(ヒーベンタル)とのエピソードも興味深い。結果として、ブロードバンドへの対応へ舵を切ったことが、Xbox LIVEの大いなる普及を促したことはご存じの通りだ。

 パネルでは、Xbox LIVEの特徴のひとつである音声認識を採用するに至ったきっかけなども語られた。ヒーベンタル氏いわく、「仲間とPCで『リボルト』というレースゲームを遊んでいて、電話でお互いを罵り合いながらプレイしているうちに、音声が必要だと思いました」とのこと。ヒーベンタル氏によると、デベロッパーに配布したXbox LIVEの最初のサンプルゲームは『リボルト』で、開発元が音声をつけて使えるようにしたのだという。

 2002年11月15日の北米でのサービス開始以降、着実に会員数を伸ばしていったXbox LIVEだが、2004年11月にXbox LIVE対応の本命とも目されるタイトルがリリースされる。言わずと知れた『Halo 2』だ。初代『Halo』はシステムリンクのみで対戦が可能で、その対戦のあまりの楽しさに4台のXboxと4台のモニターを持ち寄って、マルチプレイを楽しんだのは『Halo』ファンにとってはなつかしい話。その楽しさがオンラインで味わえるということで、『Halo 2』を楽しみにするユーザーは多かったわけだが、その期待は裏切られることなく、『Halo 2』の登場によりXbox LIVEのユーザー数は飛躍的に伸びることになる。以下、いささか長くなるが、ステファン・トウルース氏による『Halo 2』発売前夜のコメントを紹介しよう。

 「当時、『Halo 2』がどれくらい成功するかはわかっていませんでした。ファンの期待はとても高かったのですが、このようなゲームはいままでになかったので予想がつかなかったんです。『Halo 2』がリリースされる前の最大同時接続数は43600人でしたので、最大プレイヤー数が50000人、12万5000人、25万人の3つのシナリオでサーバーを増強する予算を立てました。結果として、予算は最大限に数が増加するとの見通しで、許可されました。
 そして『Halo 2』の発売日。発売は東時間で夜中、西時間で夜9時だったのですが、発売後、プレイヤーが家に戻ってプレイをし始めるまでの時間は当時20分ほどで(いまはもっと短くなっています)、私はドキドキしながらプレイヤー数の推移を見守っていました。50000人、70000人、80000人とユーザー数は増えて、サービスは順調に動いていました。3時間ほど経過して、12万人以上が『Halo 2』をプレイしていました。スタッフは、夜中の3時ころに家に帰ることにしたのですが、すべてが順調にいって信じられない思いでいる人もいました。もし、予算が通っていなかったら、最初の12時間で持たなかったでしょう。中断したら復活するにはとても長い時間がかかったはずです」(トウルース)

 当時の状況を伝える興味深い証言と言えるだろう。『Halo』シリーズはXbox LIVEにとっても重要な存在なのだと言える。最後に、ダッグ・ヒーベンタル氏のこれからの『Halo』について語ったコメントを紹介して、このパネルのリポートを締めよう。

 「初代『Halo』が発売されて素晴らしい10年だったが、343 Industriesが『Halo』シリーズを引き継ぎ、これからもすばらしい10年にする努力をしていくでしょう。『Halo』はマルチプレイのゲームプレイで画期的なことが起こるコンテンツ。この秋から、またいろいろとクールなことが提供していけると思います」(ヒーベンタル)

●『Halo: Combat Evolved Anniversary』のマルチプレイを語る

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 おつぎのパネル“Halo Anniversary Multiplayer”は、タイトルそのものずばりで、『Halo: Combat Evolved Anniversary』のマルチプレイを語るというもの。パネルに参加したのは、『Halo: Combat Evolved Anniversary』のマルチプレイに関わる4人、343 Industriesのフランク・オコナー氏、デベロップメントリードのグレッグ・ハーマン氏、デザイナーのチャッド・アームストロング氏、そしてCertain Affinityのマックス・ホバーマン氏だ。パネルは、司会者の質問に対して4人が答えるという形式で行われた。ここでは、そのやりとりに即してお伝えしよう。

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▲フランク・オコナー氏。

▲Certain Affinityのマックス・ホバーマン氏。

▲チャッド・アームストロング氏

▲グレッグ・ハーマン氏。

――マップはどのように選んだのですか?
オコナー すでに完成しているマップ、たとえば“Blood Gulch”などは数々の作品でリメイクされているので、やる必要はありませんでした。『Halo: Combat Evolved Anniversary』に収録されているのは、ほとんどが初代『Halo』からのものですが、『Halo 2』から“Top Secret”が、PC版『Halo』からは“Timberland”が入っています。後は“Reachエンジン”に合致したものです。候補の中から、数を絞るのがたいへんでした。

――すでにリメイクされているものもありますが、新鮮さを保つにはどうしたのですか?
ハーマン 毎回新しいマップを作る気持ちで臨み、フリー形式のブレインストーミングを行いました。とても楽しかったです。

――個人的にどうしても入れて欲しかったマップはあります?
アームストロング “Turf”はどうしても入れて欲しかったのですが、外されました。

ホバーマン “Terminal”を入れたかったのですが、これも外されました(笑)。

オコナー チャドが“Terminal”を入れたくなかったんです(笑)。“Terminal”はチームスレイヤーには適していないとの判断ですね。

ホバーマン 私は“Timberland”が好きです。実際には、このマップの1バージョンが『Halo 2』に入るはずだったのですが、ボツになったという経緯があります。とても楽しいマップだったので、今回ぜひ入れたいと思いました。

オコナー 私は“Colossus”を入れて欲しかったですね。

――往年と同等の威力を持つハンドガンをマルチプレイヤーに入れることにしたのは、誰のアイデアですか?
アームストロング これは私たちがやりたいことのひとつでした。新しいマップのリメイクがあり、『Halo』のキャンペーンもすべて入るので、タイミングがいいと思ったんです。『Halo 3』のときにバンジーでも考えたことだったのですが、ハンドガンは威力が大きいだけに簡単な解決策が見つかりませんでした。今回グレッグといっしょに仕事を進めてきて、すべてのマップで使えるようにしました。『Halo 2』のときからずっと、初代『Halo』 のハンドガンを入れようとしていました。

ハーマン クラシックマップでクラシックなゲームプレイが楽しめる、『Halo: Combat Evolved Anniversary』のハンドガンは、完璧なアイテムだと思います。

――どうやって、往年のハンドガンの感覚を出したのですか?
アームストロング じつはまだ調整中なんです。“Halo Fest”では、『Halo: Combat Evolved Anniversary』のスレイヤーをプレイしてもらい、フィードバックをもらっています。もちろん、きちんと調整しますが、犠牲にしなくてはならないところもあります。インターフェースを調整する時間がなかったので、設定は同じですし、『Halo: Reach』からマガジンのサイズも変えていません。とはいえ、できる限りのことはしました。

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 また質疑応答では、今後もマッチメイキングを通して『Halo: Reach』 をサポートしていくことや、ファンの反応によってダウンロードコンテンツのリリースもあり得るとの可能性を示唆。エリートのカスタマイズは候補に上がっていなかったが実現しなかったものの、将来は可能性があるといったことが明らかに。さらに、今後は『Halo: Reach』をプレイしていて『Halo: Combat Evolved Anniversary』を購入したくない人は、マルチプレイヤー用のマップだけをDLCとして購入できるようになるとのこと。「日にちは決まっていないのですが、長く待つことはないと思います。少なくとも半年後……ということはありません。『Halo: Combat Evolved Anniversary』をリリースするにあたって気を付けたのは、コミュニティーで『Halo: Reach』といっしょにプレイできること。買いたくないものを押し付けることはしたくなかったんです」(オコナー)。

●“Halo Fest”でいちばん人気、パロディー映像“Red vs.Blue”の朗読会

 “Halo Fest”の掉尾を飾るべく行われたパネルは“Red vs. Blue Table Read”。Xbox LIVE マーケットプレースで配信されているのでご覧になった方もいるかと思うが、ご存じでない方のために補足説明をしておくと、“Red vs.Blue”というのは、『Halo(ヘイロー)』シリーズの映像に独自のセリフなどをつけて物語が展開されるパロディー作品。Rooster Teethが制作しており、本国アメリカではDVDも発売され、大人気を博している。その“Table Read”というのは、朗読会くらいの意味で、おそらく日本のイベントに当てはめればナマアフレコくらいの意味であろう……などと思いながら、記者が会場に足を運んでみると驚いた! メインステージは立錐の余地もないほどの人の波で、“Halo Fest”会場のメインステージで開催されるパネルとしては、間違いなくこれまでで最大の観客数。壇上に座った数名の男たちが役柄に成り切って、脚本を読み上げるのを、皆さん熱心に見つめているのです。当日はファンサービスの一環としてなのか、参加者を募って一般のファンも飛び入りで加わっての朗読劇を披露。登壇者たちのやり取りに、「アハハ」「ガハハ」と笑いが絶えないのでした。モニターにビジュアルが映しだされるわけでもなく、ただ淡々と朗読が続く様子を、記者は「なんとも地味だなあ」と思いつつもシャッターを切りつつ、来場者の皆さんの楽しそうな笑顔に仕事の疲れも吹っ飛んだ次第。こうしたパロディーが楽しまれるのも、『Halo』コンテンツの広がりを示すものなのかも……と妙に実感しつつ、“Halo Fest”の取材を終えたのでした。

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