●“Halo Fest”は、ファンひとりひとりのためのイベント
2011年8月26日〜28日(現地時間)、アメリカ・シアトルにて、『Halo』シリーズ10周年を記念してのファンイベント“Halo Fest”が開催された。ここでは、その模様をお伝えしよう。『Halo(ヘイロー)』シリーズを取り仕切る、343 Industriesのゼネラルマネージャであるボニー・ロス氏いわく「皆さんひとりひとりがいなかったら、『Halo』のこの10年はなかった。“Halo Fest”はファンの皆さんのために実施したイベントです」という言葉に裏付けられるように、『Halo: Combat Evolved Anniversary』を使ってのゲーム大会やクリエイターによるサイン会、物販、MEGAブロックの組み立て体験など、一般ユーザーが参加できるイベントが充実している“Halo Fest”。中でも注目度が高かったのが、“パネル”。日本では感覚的にトークイベントに近いと思う“パネル”だが、海外で一般ユーザーが参加するゲームイベントなどを取材して実感するのは、皆さん“パネル”好きであるということ。クリエイターのナマの声を聞くことができる貴重な機会としてのニーズが高いのか、それとも人の意見に耳を傾けることが好きなのか……とにかく海外ゲームイベントの“パネル”の充実ぶりには目を見張るばかり。“Halo Fest”も、もちろんその例外ではなく、3日あいだにわたって、都合12の“パネル”が組まれている。ここでは、開催初日に行われた4つの“パネル”の模様を中心にお届けしよう。
●『Halo: Combat Evolved Anniversary』の新情報が明らかに
最初のパネル、“Halo: Anniversary”は、前夜プレスを対象に行われた“Halo Fest Media Preview Event”(⇒記事はこちら)を一般ユーザーに改めて披露する内容。『Halo: Combat Evolved Anniversary』のエグゼクティブプロデューサーであるダン・アイユー氏やプロデューサーのデニス・リース氏らが登壇して、『Halo: Combat Evolved Anniversary』が3D立体視に対応することや、マルチプレイ用の新マップとして、“Timberland”と“Prisoner”が、ファイアファイト用の新マップとして“Installation 04”などが採用されることがそれぞれ明らかにされた。
まずトークでは、『Halo: Combat Evolved Anniversary』を開発することになったきっかけについて言及され、「シリーズが10年目を迎えて何か特別なことをやるのははっきりしていました。そこで、ただのHD化リメイクではなくて、ゲームプレイはそのままに、プレイヤーが感情移入できる経験を提供できるものを目指したんです」(ダン)とコメント。自身PCゲームのシューターだったというダンは、『Halo』に出会って考えかたが変わったと自身の経験談を披露。「10年前に8歳だったプレイヤーなら、いまは18歳になっています。彼らに魅力を感じてもらうために新しいグラフィック導入を考案しました」と続けた。一方のデニスも、「プロジェクトを担当することになり、社内から“ゲーム内容を変えるな”というメールを大量にもらいました。これは、失敗することなくゲームを楽しくしなくては……と思いました」とコメント。名作をリメイクするということで、ユーザーに対しても社内に対しても、想像以上のプレッシャーがあったことをうかがわせた。
また、3D立体視対応については、「すでに3D環境を整えている人たちに、すばらしいゲームを提供したいと思っていました。ほかのゲームの3Dより、『Halo: Combat Evolved Anniversary』のほうが飛び出して見えると言われます。とくに“343 Guilty Spark”は、3Dで見るのにうってつけのマップですよ」(ダン)と3D立体視に対する自信のほどを明らかにした。
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会場がもっとも湧いたのが、マグナム(日本版の名称はハンドガン)の復活がアナウンスされたとき。ハンドガンの復活は前日の記事でも紹介したが、少し補足をすると、日本のユーザーにとっては、「ハンドガンの威力が初代『Halo』同等の強さに復活した」というのがより正確な内容かもしれない。1作目『Halo』ユーザーならばご存じの通り、『Halo』のハンドガンは3発のヘッドショットで敵を倒せる超強力な武器。そのあまりの強力ぶりに、それ以降は敵を3発のヘッドショットでは倒せなくなり、バランスを図るために大幅に弱体化されていたのだ。そこで上級者ユーザーのあいだからはハンドガンの威力の復活を望む声が多く出ていたわけだが、今回初代『Halo』のリメイクにあたり、ハンドガンの威力も復活したというわけ。となると、“キャンペーン”でのハンドガンの威力が復活するのはいいとして、マルチプレイではどうなるのかが気になるところだが、デニスによると「状況によりケースバイケースで威力が変わります」とのこと。“キャンペーン”のときのような絶対性はマルチプレイではないようだが、それでも相当な威力を誇るようだ。それに伴い実施される予定なのが、『Halo: Reach』のタイトルアップデートだ。『Halo: Reach』と『Halo: Combat Evolved Anniversary』とでは、相互にマルチプレイが可能になっているが、今回の『Halo: Reach』では、『Halo: Combat Evolved Anniversary』と整合性を取るための、バランス調整などが行われるようだ。ハンドガンの威力調整などもそのひとつ。さらには、アーマーロックはプレイヤーの残りのエネルギーに応じて吸収するダメージを変化させる、ソードによる攻撃はソードでないとブロックできないといった変更もなされる。「『Halo: Combat Evolved Anniversary』と『Halo: Reach』のユーザーがいっしょにプレイする際に、『Halo: Reach』のプレイヤーが不利益を被ることがないようにしたかった」とはダンの言葉。『Halo』フランチャイズを取り仕切るフランク・オコナー氏も「『Halo: Reach』もリリースから1年近くが経ち、プレイヤーが違った形で『Halo: Combat Evolved Anniversary』スタイルでプレイできればいいなと思っていました。細かいバグ調整も行っています。時間とリソースの制限もありますが、これがベストな妥協と言えるものとなっています。ときには妥協から素晴らしいものが生まれることもあり、ファンの皆さんには今回のアップデートを喜んでもらえると思っています」とのことだ。
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▲Beaver Creekは『Halo 2』のマルチプレイヤー用マップ。2〜8人向き。 |
●コミュニティーリーダーたちが語る、『Halo』との10年
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おつぎのパネルは“Halo Community: Fragging. Forge and Flowers”。熱烈なファンを持つ『Halo』シリーズは、熱心なファンによるコミュニティー活動によって支えられているが、こちらのパネルは、献身的な取り組みを見せるコミュニティーリーダーたちの実像に迫るというもの。“halo.bungie.org ”のオーナー、ルイス・ウーさんや(⇒こちら)、“405th”のアダム・グランボーさん(⇒こちら)、“Grifballhub”のグース・チェッカさんなどが参加し、それぞれの活動を報告した。その多くは、シリーズとの付き合いは1作目『Halo』からという10年選手。『Halo』を遊び始めたときの感想を問われた各氏は、「11歳のクリスマスのときに、親からXboxと『Halo』を購入してもらいました。『Halo 2』のマルチプレイで世界中にオンラインの友だちができましたね」、「当時大学生だったのですが、LANで対戦をするのが本当に楽しかった」、「『スター・ウォーズ』のファンでしたが、『Halo』からも同じような感じを受けました。シューター以上の何かがあると思ったんです。バンジーがゲームに注力してきたものは本当にすごい!」といった思い出話に花を咲かせた。また、10年後のいまを聞かれたあるパネリストが、「一般のゲームコミュニティーと同じように変化してきました。親とプレイをしていた人たちも仕事を持つ大人になり、ゲームは退屈なときに遊ぶものではなくて、ライフスタイルの一部になったのだと思います」と答えていたのが印象的だった。さらに、コミュティーの活発さを保つには、「何でも新しいアイデアを投げてみて、ファンの反応を見る」、「メンバーはよいアイデアが受け入れられるとわかると、いろいろとアイデアを出してくれます。そのあとは有機的に、コミュニティーが育っていきます」との意見も。ファンと『Halo』による、お互いを支えあうシアワセな関係がここにあるのだな……と思った次第。
●“Halo Waypoint”はこの11月にリニューアル
パネル“What’s Next for Waypoint”は、『Halo』シリーズの情報発信チャンネル“Halo Waypoint”(⇒こちら)の今後に迫るというもの。北米では、Xbox 360上やWeb、Windows Phone上で閲覧できる“Halo Waypoint”だが、2011年8月2日からは、運営がバンジーから343 Industriesに移行。11月からはビジュアルを一新し、コンテンツも増やすとのこと。新しい統計データなども加えられるらしい。“カスタムチャレンジ”の実装により、たとえば、“ファイアファイトで200人の敵を倒せ”というチャレンジを友人に送り、その履歴を追いかける……といったことも可能になるのだとか。“Halo Waypoint”もさらに洗練されたものとなりそうだ。
●声優さんが集結したパネル“Halo Universe”
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▲マスターチーフ役のスティーブ・ダウンズ(左)とコルタナ役のジェン・テイラー(中央)。右はコンポーザーのマーティ・オコンネル氏。 |
折に触れ、『Halo』シリーズの取材に関わってきた記者だが、英語版マスターチーフとコルタナの声優さんを見るのは初めて! しかも、『Halo』シリーズの音楽を担当するマーティ・オコンネル氏によると、「マスターチーフとコルタナ(の声優さん)が実際に会うのは今回が初めて」とのことで、まさに、『Halo』10周年を記念してのレアな機会となった。これは、初日最後のパネル“Halo Universe”のひとこまで、会場には、マスターチーフ役のスティーブ・ダウンズ、コルタナ役のジェン・テイラーのほかに、ジェイコヴ・キース艦長役のピート・スタッカーと343 Guilty Spark役のティム・ダダボが参加。各自のボイス収録時の音声などもふんだんに紹介され、ファンにとってはまたとないひとときとなった。音声データでは、各声優さんが冗談で演技したボイスなども収録されており、笑いの絶えないパネルとなった。
司会役からマスターチーフというキャラについて問われたスティーブは、「マーティから、マスターチーフは言葉の少ない『ダーティー・ハリー』テイストのクリント・イーストウッドのようにしてくれと言われた」との興味深いコメントも。さらに「マスターチーフはセリフ量が少ないので感情を込めるのが難しいが、自然に進化していったと思う」(スティーブ)とのことだ。また、コルタナ役のジェンに対する「コルタナは、AIでなおかつ人間的な役柄だが、難しくはなかったか?」との質問には、「ぜんぜん気になりませんでした。コンピューターではない、自然な感じで演じています。マーティからは、微妙にヨーロッパテイストにしてほしいとも言われましたね」(ジェン)とのことだ。それに対しては、音響監督を担当したマーティ・オコンネル氏も、「ジェン=コルタナになっているね」と手放しの絶賛だった。さらに、この10年の意義を問われると、「世界中で違う言葉でプレイしている人たちがいるわけですが、その世界の一部になれてとてもうれしいです。『Halo』の開発者たちはつねに高いレベルへ到達しようと努力しており、その一部になれるのは最高にクールなことですね」(ピート)、「『Halo』ユニバースの一部になれてとても光栄です。ファンのリアクションが本当に素晴らしいし、このような仕事に関われて、自分はとても恵まれていると思います」(ティム)と、それぞれ感慨深げだった。
▲まさにハリー・キャラハンといった趣きのスティーブ・ダウンズさん。本人はいたって気さく。 |
▲見た目はコルタナの印象と微妙に異なるジェン・テイラーさん。 |
▲左がキース艦長役のピート・スタッカーさん。右が343 Guilty Spark役のティム・ダダボさん。 |
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※『Halo(ヘイロー)』シリーズ10周年を記念しての“Halo Fest”が開催、新発表も続々と