●『Halo』10年の思い出話が続々
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▲右から、司会者をおいて、クリス・ブッチャー氏、マーティ・オコンネル氏、ジョセフ・スタテン氏、デイブ・ダン氏。 |
2011年8月26日〜28日(現地時間)、アメリカ・シアトルにて、『Halo』シリーズ10周年を記念してのファンイベント“Halo Fest”が開催された。開催2日目の2011年8月27日の最初に行われたパネルは“Bungie:Hatching the Cosmic Halo Egg”。『Halo』シリーズを語る上で、欠かせない存在が開発会社のバンジー。バンジー自体は『Halo: Reach』で『Halo』に別れを告げ、以降のシリーズの開発はマイクロソフト内のスタジオ343 Industriesに引き継がれることになったものの、いわば『Halo』の10年の歩みはバンジーの歩みそのもの。もちろんファンもそのことを知っており、バンジーのクリエイターが登壇して『Halo』シリーズを語るこのパネルは、立ち見も出るほどの大盛況。時折熱心なファンからの「バンジー!バンジー!バンジー!」コールが上がるなど、熱狂的な雰囲気の中でパネルは行われた。登壇したのは、クリス・ブッチャー氏、マーティ・オコンネル氏、ジョセフ・スタテン氏、デイブ・ダン氏という『Halo』を支え続けてきた4名だ。
司会者の「『Halo』の物語と音楽はすばらしいが、“バンジーの全員がストーリーテラー”という意見を聞いたことがある。これはどういうことか?」という質問には、ジョセフが「最初は楽しいゲームを作ればよいと考えていたが、プレイヤーがそこで生きていけるようなワールドを作り出すことが重要だと徐々にわかってきた」とコメントすれば、デイブも「ストーリーには細かいバックグラウンドが必要だ。“この世界観はリアルだ”と、ファンが納得するものでないといけない。ゲームの世界観がリアルに見えるように気を使った」と呼応。ほかのふたりも、「プレイヤーが語るストーリーがいちばんおもしろい。『Halo』の川でのんびりしていたときに、これはプレイヤーがじっくり探索できる世界だと思いました」(クリス)、「私がこのゲームは何かが決定的に違うと思った決定的な瞬間は、ゲームを遊んでいたら後ろから来たAIが、ふつうの人のように“そこをどけ!”と行ったとき。これはリアルだと思いました」(マーティ)と、それぞれコメントした。AIに関しては、「FPSというジャンルは以前からありましたが、フレンドリーなAIを周囲に配置しました。マスターチーフはひとりで戦うことが多いので。AIの存在は大きいです。プレイヤーに人類を救う大きなストーリーの一部だと感じて欲しかったんです」(クリス)とのことだ。
そういった緻密な世界観を構築するために、『Halo』シリーズには電話帳のような設定資料があるようだが、それに関してジョセフは「バンジーのスタッフひとりひとりが『Halo』シリーズのバイブルのようなものです。それぞれ自分が関わった仕事の知識に特化しているので、解釈の食い違いもあったのですが、ノベルやコミックを出すようになって、統一するようになりました」とのことだ。
最後に各自は、「プレイヤーが遊んでくれる限り『Halo』がなくなることはない」(クリス)、「最初から『Halo』シリーズの経過を見てきて、このようなムーブメントが再度起こる可能性は非常に低いように思うが、できれば再び取り組んでみたい。今後バンジーからは、クールな作品が出続けるので楽しみにしていてほしい」(マーティ)、「こんなに大きなものになるとは思ってもみませんでしたが、『Halo』はこれからもさらに強く生き続けます。4〜5年前から、『Halo』はバンジーのものではなくて、ファンのものになっています。これからも『Halo』を愛し続けてほしいです」(ジョセフ)、「皆さんが『Halo』シリーズを理解して評価してくれることに感動しました。『Halo』は一生懸命作りましたが、評価してもらえたのはとてもうれしいです。どうもありがとうございました」(デイブ)とコメントし、パネルは終了した。
バンジーのスタッフの『Halo』に対する愛が、ひしひしと感じらえるパネルとなった。なお、ファミ通.comでは後日改めて、こちらのパネルの詳報をお届けする予定なので、楽しみにしていてほしい。
●トッド・マクファーレンらが、『Halo』トイのこだわりを語る
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▲右から、トッド・マクファーレン氏、アンドリュー・スパーク氏、ジェイソン・レイ氏、テイラー・ジェファース氏。 |
おつぎの“Halo: Building a Universe of Toys and Collectibles”は、『Halo』のトイ関連にフォーカスをあてたセッション。『Halo』くらいの作品ともなると、当然数多くの関連グッズがリリースされているが、ここでは、マクファーレン・トイズのトッド・マクファーレン氏、MEGA Bloksのバイスプレジデントであるアンドリュー・スパーク氏、NKOKのディレクター・オブ・ライセンスディベロップメントのジェイソン・レイ氏、343 Industriesのテイラー・ジェファース氏らが参加。新商品の紹介などを行った。『Halo』シリーズのトイの制作にあたっては、各自相当なこだわりを持って取り組んでいるわけだが、「バーチャルワールドを現実の世界に持ってくるので、リアルに見えるように努力しています。実際に飛べるものもありますよ。ずっと興味を持ち続けてもらえるようなものにしたい」(ジェイソン)、「トイは素材や安全基準が違うので、フィクションの内容が100%実現しないこともある。そのへんは調整が必要だが、その調整が大切」(トッド)といった意見が聞かれた。トッドによると「ターゲットやウォルマート(北米の量販店)では、従来よりもテレビや映画のグッズに比べ、ゲーム関連商品には店頭スペースを割かないことが多かったが、『Halo』に関しては別。売上の数字を見て認識を改めたようだ」とのことだ。それも、『Halo』というコンテンツそのものの持つ魅力と、「『Halo』に関しては、35のパートナーと約500の商品を手がけている。すべての商品がブランドに見合った価値のあるものになるようにしています」(テイラー)という、ふだんからのたゆまぬ努力にあるのかもしれない。
▲マクファーレン・トイズからは、『Halo: Combat Evolved Anniversary』の関連トイもリリースされる模様(左)。『Halo』関連の商品はなんと約500。高い人気がうかがえる(右)。 |
ちなみに、アメコミの傑作『スポーン』の作者としても知られるトッド・マクファーレン氏はめちゃくちゃアグレッシブなお方。記者にとっては、“Comic-Con International 2010”で壇上に登ってゲームプレゼンをしたトッドが印象に残るが(⇒記事はこちら)、今回も見ぶり手振りを交えてトイの制作過程を説明。周囲を唖然……もとい感心させた。本人はいたって気さくなお方のようで、パネルに先立って行われたサイン会では、ひとりひとりと楽しそうに握手しているのが印象的でした。
●『Halo』シリーズのノベル化やコミック化の難しさは?
引き続き行われた“Halo Univers Fiction”は、ノベルやコミックなどの『Halo』の広がりを紹介するパネル。『Halo』のノベルを担当したグレッグ・ベア氏やカレン・トラヴィス氏、コミックを手がけたブライアン・リード氏、イラストレーターのエリック・グエン氏といったそうそうたるクリエイターが参加してのディスカッションが行われた。グレッグ・ベアと言えば、ヒューゴー賞やネビュラ賞を受賞した『ブラッド・ミュージック』などでおなじみの人気SF作家。『Halo』関連では、フォアランナーを扱った『Halo: Cryptum』を2011年1月にリリースおり、コミコンでの『Halo』関連のセッションにも姿を見せている(⇒2010年)、(⇒2011年)。『Halo: Cryptum』に関しては、「ストーリーを書いていて困ることがあっても、チームに問いかければすぐに答えがかえってくる。まさにコラボレーション経験をしている。フォアランナーはミステリアスで神のような存在。ギリシャ神話のように彼らが作ったものやスタイル、彼らが犯した過ち、戦略などから探った」とゲーム制作サイドとの関係も極めて良好だったようだ。
一方、『ギアーズ オブ ウォー』シリーズの小説などを手がけ、2011年10月に『Halo: Glasslands』をリリースする予定のカレン・トラヴィス氏は、「つねに、これは本当のことだという態度で臨んで書いている。戦争後のストーリーはすでに実際の世界でよく起きることであり、キャラクターをそこから形作っていく。私はジャーナリストの経験があるので兵士が何を考えているか、政治的問題などを理解している。ミリタリー・フィクションはヘリコプターから眺めたような書きかたが多いが、私が手がけた『Halo: Glasslands』は、時間が経過してからの見かた。戦争の真っただ中では視点はもっと低いところにある。自分はキャラクターの視点で語るようにしている」とコメントした。
また、エリック・グエン氏からは「『Halo:ODST』をイラスト化にする際には、時間が限られたなかでさまざまな決断をしなければならず、ストレスが貯まりました」、ブライアン・リード氏からは「20ページのノベルを感情移入ができる形でふたつのパネルにまとめるのは大変でした。まるで本を映画にするような感じですね」とのコメントが聞かれた。
●『Halo: Combat Evolved Anniversary』にもスカルが実装
開催2日目最後に行われた“Halo Anniversary Campaign Discussion”は、最新作『Halo: Combat Evolved Anniversary』のキャンペーンモードを紹介するパネル。『Halo』シリーズのフランチャイズマネージャーであるケビン・グレース氏、『Halo: Combat Evolved Anniversary』のエグゼクティブプロデューサーのダン・アイユー氏、プロデューサーのデニス・リース氏、デザイナーのチャド・アームストロング氏、アートディレクターのベン・カラマノ氏、オーディオディレクターのクリストファー・メルローズ氏らが登壇して、開発への注力点などについて語った。
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▲まずは、キャンペーンモードのデモプレイが披露。 |
セッションによると、『Halo: Combat Evolved Anniversary』のビジュアルスタイルには4つの柱があるとのこと。それは、全体を俯瞰した眺めの“景色”、クリーンで活き活きとしたサイエンス・フィクションの世界を実現する“美学”、そして、“オーディオとビジュアルの一体化”、“象徴的なイメージ”の4つ。最後の“象徴的なイメージ”について補足すると、これぞ『Halo』と思わせるような、印象的なビジュアルに仕上げるのだという。たとえば、フラッドやコヴナントなどはひと目観たら『Halo』と分かるようになっているが、それは『Halo』という世界観でも統一が取れているためだ。
またセッションでは、『Halo: Combat Evolved Anniversary』にもスカルが実装されることが明らかにされた。『Halo 3』のように、マップ上に散らばっているスカルを集める形になるようで、わかりやすい場所にも探しにくい場所にもあるとのこと。やり込み要素が増すスカル集めは、1作目『Halo』を遊び込んだユーザーにもうれしい仕様と言えるだろう。ちなみに、スカルを集めると、グラントをヘッドショットで倒すとクラッカーのようになるおなじみの“グラントバースデーパーティー”のほかに、スポーンするとHUDのひとつが失われるものなどもあるようだ。
一方、オーディオについては、「もっとも好きなゲームなので、『Halo: Combat Evolved Anniversary』を担当することになってワクワクしたと同時に怖かった」とオーディオディレクターのクリストファー・メルローズ氏が心情を素直に吐露。とくに、音楽の扱いには相当気を使ったようで「お祝いやラブレター、尊敬という気持ちでアプローチした」とのことだ。資料のたぐいは一切なかったので、耳を頼りに楽譜を書き起こしたようだが、象徴的な作品なので、新しい音楽は一切入れていないという。一方で、オリジナル版が作られた当時はなかったサウンドなども使って、音に厚みを増しているとのこと。なお、『Halo: Combat Evolved Anniversary』の2枚組のサウンドトラックがリリースされるとのことで、ファンにとっては楽しみと言えるだろう。日本でも展開も期待したいところだ。
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