●日本人クリエイターの戸島壮太郎氏の参加も明らかに
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▲『Halo 4』のパネルのみ、“Halo Fest”の会場近くにあるパラマウントシアターで行われた。歴史を感じさせるシアターには、たくさんの『Halo』ファンが詰めかけた! |
2011年8月26日〜28日(現地時間)、アメリカ・シアトルにて、『Halo』シリーズ10周年を記念してのファンイベント“Halo Fest”が開催された。開催最終日にあたる2011年8月28日に行われたパネルはずばり“Halo 4”。343 Industriesのクリエイターがファンの前に姿を見せて、『Halo 4』を語るというものだ。E3で衝撃的に発表された最新作の『Halo 4』だが、現時点で明らかになった情報はあまりにも少ない。クリエイターのディスカッションから『Halo 4』の片鱗に触れようと、当日はたくさんのファンが会場に詰めかけた。登壇したクリエイターはフランチャイズデベロップメントディレクターのフランク・オコナー氏、クリエイティブディレクターのジョシュ・ホームズ氏、エクゼクティブプロデューサーのキキ・ウルフキル氏、アートディレクターのケネス・スコット氏、そしてオーディオディレクターの戸島壮太郎氏の5人。パネルは、司会役の方が気になるトピックを質問していくというスタイルで行われた。以下、その模様を再現していこう。
まず言及されたのが343 Industriesについて。ご存じの通り、『Halo』シリーズの開発はバンジーから343 Industriesに移行されているが、これについてフランク・オコナー氏は、「『Halo』のフランチャイズを継続するスタジオを必要とすることがわかっていたので、ここにいるチームといっしょに343 Industriesをスタートさせました。現在は200人ほどで『Halo 4』の開発を行っています。開発は約2年間続けていますが、情熱を持って仕事をしている人が多く、プロジェクトを秘密にしておくのは大変でした。今日はスタジオのデビューと言えます」とのこと。
343 Industriesに求められていたのは、技術的創造的専門技術を持ち合わせた人材で、「今後10年の『Halo』シリーズを展開していくための成熟した人間であり、ガッツも必要です」とキキ・ウルフキル氏。さらに、「スタジオとしては、奥の深い才能を持ち、長期にわたってお互いにコラボレーションしていける精神力。そして、いままでの『Halo』とこれからの『Halo』に対する情熱も求められました」(ウルフキル)という。『Halo 4』には日本人の戸島壮太郎氏がオーディオディレクターとして参画していることが今回明らかになったが。まさに戸島氏がそれを体現しているのだとか。
また、343 Industriesではゲームだけではなく、書籍やトイなども手がけているが、それはノベルでもフィギュアでも、すべて直接的にゲームを育むものとの判断から。たとえば、SF作家であるグレッグ・ベアの書いた『Cryptum』も、カレン・トラヴィスが書く『Glasslands』も、すべてのストーリーがゲームにつながっているのだという。『Cryptum』の表紙は343 Industriesに所属するスパルタンの担当アーティストが描いたものだが、『Halo 4』のコンセプトワークから来ているのだとか。「ファンはこうした形でフランチャイズが広がっていくことを好んでくれているので、ノベルの内容にはきちんと意味があるようにしている」とオコナー氏。それだけ作り手が『Halo』の世界観を大切にしているということだ。
そしてパネルはテーマのテーマとなる『Halo 4』の話題へと。『Halo 4』は、新たなる三部作として構想されているが、3つのゲームを開発していくことについて問われたクリエイティブディレクターのジョシュ・ホームズ氏は、コミュニティー(ファン)に対して、「ストーリーを語り続けていく!という我々の意図を伝えるのは大事なことでした」とした上で、『Halo 4』の開発が始まった約2年前から、どんなストーリーを語りたいかははっきりしていると明言。「新たなる三部作では、マスターチーフというキャラクターをさらに深く追求していくことになりますが、彼を再登場させることの意味を知り、これまでのゲームにはなかった形で、このキャラクターに近づくことになるでしょう」とのこと。「ジョン(マスターチーフの本名)は奥の深いキャラクターであり、彼の旅路を描いていくことになる」(ホームズ氏)とのことだ。
「『Halo 4』のビジュアルスタイルには、どのようにアプローチしたか?」との問いには、「私たちは『Halo』ユニバースが持つ奥の深いフィクションに惹かれて集まってきているわけですが、それをアートにも生かせばと思っていました」とアートディレクターのケン・スコット氏。一方で、10年間『Halo』シリーズに親しんてきた人たちも10年分成長しているわけで、「アートも同じように成長していかなければならない」(スコット氏)との判断もあるようだ。
E3のトレーラーとともに電撃発表された『Halo 4』だが(⇒記事はこちら)、「E3のトレーラーではよくわからなかったが、マスターチーフとコルタナはどんな場所へ行くことになるのか?」との質問に対しては、「フォアランナーがどんな姿だったのかにフォーカスします。これまでの三部作では10年間でフォアランナーを経験してきましたが、これからどう進むのか、どうミステリーの味付けをするのか、いろいろとプレッシャーがあります」とスコット氏。なお、E3に出てくるマスターチーフは最終的な姿ではなく、「マスターチーフの姿がこのユニバースの中でどれだけ重要かは理解しているので、これまでのベストになるように努力しています。プレイしていて自分がマスターチーフだと実感してもらえるようにフォーカスしているんです」(スコット氏)とのこと。『Halo 4』でマスターチーフが最終的にどのような姿になるのか、興味深いところだ。
ちなみに『Halo 4』のおけるコルタナの役割については、「コルタナは重要な役割を演じることになります」とホームズ氏。「『Halo 4』はチーフのストーリーですが、このふたりがユニバースの中心となります。これまでの10年間のふたりの関係も展開していきたいと考えています」(ホームズ)とのこと。キキ・ウルフキル氏も「このふたりはほかのゲームにはないユニークな関係にあります。この関係を追求していきたい」とのこと。
さて、パネルの話題はサウンドへと。さきにも触れた通り、『Halo 4』では日本人のクリエイターとして戸島荘太郎氏が参加している。戸島氏は、どのようにサウンドを練りあげていくのか……。戸島氏のコメントは以下の通り。
「『Halo』シリーズは10年間すばらしい音楽を提供してくれました。私も長年『Halo』シリーズに魅せられてきましたが、『Halo』ユニバースで仕事をしたかったのはそのためです。今回のチャレンジにはとてもワクワクしています。『Halo』の音楽は奥深いストーリーと密着しています。オーディオ制作にあたっては、まずはストーリー全体を通じてのプレイヤーが抱くであろう“感情の流れ”を書きだしました。特定のパートの音楽を作る際、そのときのプレイヤーの感情とぴったり合うように音楽を作ったんです。ストーリーとオーディオを強く結びつけることで『Halo』シリーズを愛してやまない人たちの気持ちを動かすことができればとても誇りに思います」(戸島氏)。
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▲さまざまな場所で音録をしている模様が映像で紹介された。 |
また、『Halo』シリーズのような現実とはまったくの別世界でありながら、リアリティーのある音楽はどうやって作るのか? その点に関しては、オーディオチームはつねに何かユニークなものを作ることにフォーカスしており、リアリティーがありながらも、聞いていてワクワクさせられるようなサウンドを提供したいと考えているとのこと。「マスターチーフが経験する“音”は、ふつうにある音とは違うはずです。宇宙の音を録音しようと思ったが、資金を集めるのが難しかったです(笑)。変わっていて、しかもステキな音を探し求めました」と戸島氏。氷や火の中といった、人間には耐えられない状況下や、タスマニアなどのユニークな場所でも録音が行われたのだとか。ときには、危険な状況で仕事をしたこともあるのだという。『Halo 4』はサウンド面からのアプローチも見逃せないことになりそうだ。
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おつぎはプレイ感覚のお話へと。それに関してはクリエイティブディレクターのジョシュ・ホームズ氏が、従来の『Halo』シリーズの感覚を大事にしつつも「同時にリスクを背負、ゲームプレイの感覚を進化させる勇気を持つことも大事だと思いました」との踏み込んだ発言も。いま、いままでの『Halo』らしいプレイ感覚のコアな部分と、武器やアビリティーなど、新たに付け加える部分とのバランスをどう取るか、検討し続けているのだという。もちろん、『Halo』シリーズのコアとなる部分の重要性はホームズ氏も大切にしているようで、『Halo』シリーズのような“サンドボックス”(いわゆるオープンワールド)の持つ性格はきちんと維持しつつ、プレイヤーが問題にぶつかったときにはひとつの解決方法だけではなく、いろいろな選択を提供できるようにしたとのことだ。
そこで出たのが、『Halo』を『Halo』足らしめるコアな部分と、新しい部分のぶつかり合いの中で、「自分のアイデアを我慢しなければならないことがあるのか?」との興味深い問いかけ。それに対してはホームズ氏が「チームはゲームのファンなので、最初からどこまで『Halo』に忠実に行き、どこまでプッシュできるかで悩みました。『Halo』ユニバースの中心であるファンやコミュニティーの考えかたはとても大事に思っていて、おそらくソフトがリリースされるまで苦労し続けることになると思います。『Halo』は非常に偉大なことをやり遂げてきたので、私たちもさまざまなアイデアを練り、ベストな選択をしています」とのことで、超期待作であるがゆえの悩みは尽きないよう。オコナー氏によると、『Halo 4』の開発にあたっては、プロトタイプの段階で、ゲームとしてはよくできていたが、『Halo』らしくないという理由で却下されたアイデアもたくさんあるという。
質問は、『Halo』シリーズの大きな魅力とも言えるマルチプレイへと。『Halo 4』のマルチプレイは、コアなプレイヤー向けになるのか、カジュアル向けになるのかとの問いには、「『Halo』コミュニティーは非常に範囲が広いです。いろいろな見方の人がいて、それぞれの経験をコミュニティーに持ち込んでくれます。従って、こうしたすべての見方やプレイスタイルに対応できることが重要です。プレイヤーが求めている異なる経験を提供できるようにしなければならないと思っています」とホームズ氏。ウルフキル氏も「コミュニティー同様、チームの中にもいろいろな見方があり、さまざまなフィーチャーについて健康的な熱い討論がありました」と続ける。すべてのユーザーが納得できるようなマルチプレイを実現できるのか? 『Halo 4』がどのようなアプローチを取るのか……気になるところだ。
パネルのあとは質疑応答へと。『Halo 4』への興味は尽きないようで、たくさんのファンが質問をするために殺到した。熱心なファンが集まるようで、βテストや“フォージ”など、気になる話題が飛び出している。以下におもなやりとりを紹介しよう。
――どんなストーリーになるのですか?
オコナー 『Halo 3』の直後の話になりますが、ジョンとコルタナとの関係を中心に考えています。これまでの『Halo』と同じように、壮大なスケールのストーリーです。贅沢にも3年間考える時間がありました。
――ジョンの会話は増えるのですか?
ホームズ ジョンの心中に触れる機会はあります。プレイヤーとキャラをつなぐ(結婚させる)のは、つねにチャレンジですが、このゲームで大きく変わることはありません。プレイヤーがジョンになって経験できるように気を使いました。
――『Halo: ODST』のようなサイドストーリーの計画はありますか?
オコナー いまは『Halo 4』にフォーカスしています。これから10年間のプランは立てていますよ。
――『Halo 4』のマルチプレイヤーβテストは『Halo: Combat Evolved Anniversary』でできますか?
オコナー 答えは“ノー”です。βテストについては、きちんと発表します。
――声優は同じ人たちが出るのですか?
オコナー 今日はストーリーやオーディションについては話せません。声優さんたちとはよい関係を持っています。キャスティングについては将来発表するので、いまはご勘弁を。
――“フォージ”の新しいアイデアは入りますか?
オコナー “フォージ”はコミュニティーの核を担っているので、『Halo 4』でも引き続き展開していく予定です。
――バンジーから343 Industriesへ移行する際にたいへんだったことは?
ホワイトキル 開発チームは25〜30社のスタジオから集まってきた人たちですが、『Halo』をいっしょに作るという目標があるのでスムーズに動いています。もちろん異なるスタジオで働いていた人たちなので、ひとつのグループにまとめるのはたいへんだった一面もありますが、彼らの持つ力を引き出せていると思います。
オコナー 200人のほとんどは、ひとつの仕事というよりも、『Halo』を作りたくて343 Industriesに来ています。
ホームズ バンジーからの移行がスムーズに行った理由は、両社とも『Halo』コミュニティーを守るためのベストな方法を目指してきたからですね。
――『Halo 4』ではジョンのストーリーが展開されるのですか?
オコナー 800万人のプレイヤーの中には少年時代のジョンが誘拐され、彼の腕に何が起きたかなどのストーリーを知らない人もいます。彼は悲劇的ストーリーの主人公であり、これからも展開していきたいです。
ホームズ 『Halo 4』の背景となるストーリーはとても魅力的です。
最後にファンへのサービスとして、『Halo 4』を定義付けるアートコンセプトが公開された。その美麗なグラフィックは、観る者をわくわくさせずにはおかないもの。シリーズの新たなる10年を飾る超大作『Halo 4』に期待しないわけにはいかない。
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