――発売まで約1ヵ月と迫りましたが、現在の開発状況はいかがでしょうか?
鍋島俊文氏(以下、鍋島) ほぼ開発は終了しまして、現在はデバッグ作業を行っている段階ですね。デバッグ作業以外には、プレイヤーどうしで奪い合う領地の数など、オンライン要素に関わる部分の微調整をしています。
――開発の初期から現在に至るまで、紆余曲折あったのでは?
鍋島 約3年にわたって開発を行ってきましたが、何回か大きな節目がありました。最初は、ナンバリングが『5』から『?』に変化したときです。このときに、オンライン要素をもっと厚くしていこうという方針になりました。つぎは、ベータテストを行ったときですね。ベータテストは、家庭用ゲームではあまりなじみがないものですから、どれだけの方に参加していただけるのかと不安だった部分がありました。ですが、非常に多くの方に積極的に参加していただけて、感謝しています。ただ、同時にプレイしていただいたユーザーの方から、ここが使いづらいとか、わかりにくいという意見をたくさんいただきまして、その意見をどう反映させていこうかと会社全体で考えました。きびしい意見も多かったのですが、それだけ期待していただいているのだと思い、それならしっかりとしたゲームにしないとダメだということで、発売を延期して開発することにしたんです。私も経験があるのですが、オンラインゲームのベータテストに参加して意見を出したんだけど、ベータテスト版と製品版で、あまり内容が変わっていなかったということも多いんですよね。もちろん、永遠に作り続けるわけにはいかないので限度はありますが、寄せられた意見を見て、おもしろくなるものなら反映させたいと思って開発をしてきました。
――おもしろいゲームを作るための英断だったわけですね。たくさんのユーザーが参加されたベータテストですが、ユーザーの反応はどうでしたか?
鍋島 "ハードごとに視点が違う"と感じましたね。Xbox 360版のユーザーの方のほうが、アクションや戦術などのゲームに関わる部分への意見が多く、プレイステーション3版では、コミュニケーション部分や、プレイするうえでこういう要素があれば遊びやすいのでは、といったシステム面に関する意見が目立ちました。さまざまな視点からの意見をいただけたので、そういった意味でも、両ハードでベータテストを行ってよかったと思っています。
――今回のベータテストを受けて改良した点は、どのようなところでしょうか?
鍋島 当初から想定していたけれど、ベータテスト版の時点では入っていなかったものも含めてですが、コミュニケーション部分の強化と、遊び応えややり込み甲斐が出るような要素について、いろいろと機能を増やしています。とくに、本作の重要な要素である領地の争奪戦をもっと盛り上げられるような仕組みを入れようと思い、ワールドマップ画面の演出を強化しました。たとえば、プレイヤーが集まっている場所や人がいない場所などが視覚化されるようになっています。また、コミュニケーションの手段としてテキストチャットを追加しています。展開の速いアクションゲームなので、ボイスチャットを使ったコミュニケーションのほうが適しているだろうという前提があるのですが、一方でボイスチャットに慣れていない、または、環境的にできないという方もいると考えていたので、当初から入れる予定はありました。このチャット機能も、より遊びやすいように、当初想定していたよりも機能を増やしています。テキストチャットは戦闘中とメニュー画面とで異なる定型文がいくつか登録されていて、選択することでチャットを行う方式ですが、ソフトウェアキーボードで好きな言葉を入力できるフリー枠も設けてあります。最初から登録してある定型文を書き換えて、登録し直すことも可能です。さらに、チーム内のメンバーがそれぞれ何をしているのかがわかりづらかったので、たとえば、チームメンバーが出撃すると、「○○さんが部隊を作りました」というふうにオートメッセージが表示される機能も導入しています。よりスムーズにコミュニケーションが取れるようになっているのではないでしょうか。
――アクション部分に関するユーザーの意見はどうでしたか?
鍋島 操作のしかたやアクション要素については、やり込んでいくことでテクニカルなアクションを楽しめるという、これまでの『アーマード・コア』らしさを残しつつ、よりイージーに操作できるようにしたいというコンセプトがあり、かなり大きく変えています。本作は、こういったアクションゲームとしての基本的な部分も、従来のシリーズとは異なるものにしているので、ベータテストの段階で、この変化を受け入れてもらえないかもしれないと危惧していました。「こんなの『アーマード・コア』じゃない」と言われたらどうしようかと。幸い、そこに対しては肯定的に受け止めてもらえたのかなと感じています。本作で大きくゲームを変えた理由のひとつに、『アーマード・コア』をブランドとして、新しく、一段上のタイトルにしたいという目標があります。オンライン要素の強化といった大きな変化を行ったのは、そのためなんです。もちろん、変化を入れつつも、シリーズファンの方や、過去にこのシリーズをプレイしていた方にも楽しんでもらえるゲームにしなければいけないので、そのバランスがいちばん苦心したところですね。
――今回紹介させていただいた新要素についてお伺いしたいと思います。
●オフィシャルパートナーシップ
鍋島 これまでもタイトルごとにオフィシャルのサイトはありましたが、オフィシャルパートナーシップは『アーマード・コア』シリーズユーザーすべての方が交流できるようにと、2010年にオープンしたコミュニティーサイトです。『AC?』はチームでゲームを進めていくので、こういう交流の場があれば、ゲームがより盛り上がるだろうと考えているんです。『AC?』が発売する前からチームを作っていただいて、お互いにコミュニケーションを取っていただけるようになれば理想的だと思っています。ソーシャルネットワークサイトのような機能があるので、ゲーム内に加え、このサイトを活用してユーザーの方どうしで交流を深めていただければうれしいです。
●オーバード・ウェポン
鍋島 つぎにオーバード・ウェポンですね。開発の初期は、これが売りの要素のひとつとしてあったのですが、そこから2年、ようやく発表できました。設定としては、オーバード・ウェポンは正規の規格に沿って作られていないパーツという位置付けになっています。それを、無理やり機体に装備させているんです。規格外のパーツなので、どんな機体も、オーバード・ウェポンの攻撃を食らえばほぼ確実に破壊されるほどの攻撃力を持っています。また、機体の制御を外部からハッキングしているので、エネルギーの出力が大幅に向上したりといった、ほかのパーツにはない特殊な機能が備わっています。ですが、そういったイレギュラーなユニットなので、コンピューターが正確に認識できず、画面が乱れたり、使用できる時間が限定されているなどの制限もあります。そうしたデメリットと引き換えに強力なアクションが使えるようになる、というのが、オーバード・ウェポンなんです。
――ロボット好きな男性に好まれそうな武器パーツですね。
鍋島 はい(笑)。オーバード・ウェポンもアセンブルで装備するのですが、厳密に言うと装備しているのではなく、単純に背中に背負っている状態なので、それを戦闘中に強引に接続するというアクションを行います。通常のパーツは整ったカッコよさなのですが、オーバード・ウェポンは、実験兵器のような、乱暴なカッコよさをコンセプトとしています。
●巨大兵器
鍋島 特殊なイベント扱いで出現する強敵です。領地戦とは関係なく、ワールドマップに突然出現して戦えるようになります。
――かなり手強そうですが。
鍋島 『AC?』には、初心者でも遊びやすいような仕組みをいくつも導入していますが、この巨大兵器については真逆で、コアなシリーズユーザーの方に向けた要素になります。倒せるものなら倒してみろという我々からの挑戦状です(笑)。開発のスタッフにも、「絶対に倒させるな」というくらいの大げさなオーダーをしていますよ。
――この巨大兵器は、ひとりでも倒せるのでしょうか?
鍋島 ゲームの仕様的にはもちろん可能ですが、かなり難しいのではないでしょうか。それだけに、いつか、すべての巨大兵器をひとりで倒してくれるユーザーの方が現れることを期待します。この巨大兵器は本当に不定期に出てくるので、現れたらユーザーの方が一致団結して攻略法を考えて、「ダメだった」、「じゃあ今度は俺たちが行く!」というふうに盛り上がっていただけるとうれしいですね。ストーリーミッションでも、これまでのシリーズ同様に同じような巨大兵器が登場するので、オフラインでプレイされる方も、ぜひ巨大兵器との対戦を楽しんでいただきたいです。
●武器の性能変化
鍋島 これはいちばん最後に発表しようと思っていた要素です。腕に搭載する武器のほとんどが対象なのですが、使っていくうちにパラメーターに変化が起こります。使い込んでいくうちにこなれていって、本来の性能が発揮されるというイメージです。性能が変化した武器は通常の武器とは異なる扱いになり、売却すると、性能変化した武器を専門に取り扱うショップに流通し、他のプレイヤーがそれを買えるようになります。ですので、ラインアップはつねに更新されていって、古いものは消滅することになるのですが、購入された数が多いものは"人気パーツ"として、別途ラインアップに残るシステムになっています。いままでのシリーズでは、パーツのパラメーターは固定されていて、それを組み合わせて機体を構築してきましたが、これで無限とも言える組み合わせを楽しんでいただけるかと。それから、性能変化の対象になるパーツは、購入する際にパーツの正規の名前とは別に、刻印を付けることができます。ですので、自分のパーツが人気になると、それがわかるようになっています。人気になるようなパーツをつぎつぎと生み出して流通させるような、伝説の鍛冶屋みたいな人が出てきてくれるとうれしいですね。
――ロボット好きなユーザーの琴線に触れる新要素が満載ですね。最後に本作の発売を心待ちにしているファンに向けて、メッセージをお願いいたします。
鍋島 ベータテストで頂戴した意見を反映して完成した『AC?』の一部を、体験版として配信させていただくことが決定しました。ベータテストで体験できた内容は、本当にこのゲームの一部でしかありません。ぜひ、この体験版をプレイしていただいて、『AC?』の真の魅力を体験していただきたいです。たいへん長い期間お待たせしてしまいましたが、その開発期間に見合うだけのおもしろいゲームになっています。まずは体験版をプレイしてみてください。体験版を気に入っていただけたら、ぜひ製品版もプレイしていただけるとうれしいです。