カーソルでゲーム画面を調べ、フラグを立てるアドベンチャー。

自らを省みるに、シナリオとシステムとの間に必然性の感じられるゲームを好むらしく、両者が分かちがたく絡みあっているYU-NOは一つの理想形です。

この作品のようにマルチシナリオであればもちろん、そうではなくてもゲームである以上、そこにパッケージングされているのは極小の多世界解釈的平行世界な訳ですが、そのこと自体がYU-NOの主題となっています。

ありうる可能性の全てを実現している異なる宇宙が、無数に並んでいる平行世界。
隣り合っていながら行き来はおろか、認識さえ出来ないはずの、「ここ」とは別の可能性を実現している世界へと踏み込むアイテムを、主人公は手にします。

「今」「ここ」にそのアイテムを置けば、いつでも「その時」「そこ」に戻れる、ということは、ある可能性が実現した結果を知ったうえでやり直せることを意味し、枝分かれしてゆく平行世界の知覚さえ出来るようになります。
それは、セーブ、ロードを行い、フラグを立て直し、オートマッピングされた物語の分岐図を見るプレイヤーの操作そのものです。

その同調のもとに主人公とプレイヤーは、いくつかの悲劇を見、それらを回避すべく努力することになります。

しかし、たとえ平行世界を行き来し、どれほどハッピーエンドを蒐集したところで、結局一人の人間が選び取れる運命は一つしかないということを思い知らされ、そして物語は最終局面へ。

ゲームである必然とやり応えと読み応えとをあわせ持ったゲームシナリオ、それがYU-NOです。