飛行機飛び乗って行ってみたら、みんなメチャ楽しげ

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▲デモを体験するために並んでる調査兵団の皆さん。

 VRヘッドマウントディスプレイ“Oculus Rift”のメーカーOculus VRが、先週ロサンゼルスで行われたアニメファン向けのコンベンション“Anime Expo”で、「ソードアート・オンライン」(SAO)と初音ミクを使ったデモをブースで一般公開し、大きな話題を呼んだ。

 SAOのデモについてはすでに紹介記事を書いたのだが、Oculus VRがアニメエキスポで何かすることは事前に察知していたものの、そんなデモを出展するとは記事の元になったツイートを発見するまで知らず、「やっぱ体験したい!」ということで、急遽ホテルと飛行機を予約して、記者が住むサンフランシスコからロサンゼルスに飛び、突撃取材してきた(初音ミクを使ったデモについては別記事を参照)。

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▲キリトのコスプレして体験する人や、猫耳つけたままうまいこと装着する人も。
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▲「うわすっげ」と没頭しているキッズ。オッサンとしては、こんなんどんどん出てくる中を成長できる君らが羨ましい。
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▲使われていた機材は、予約した人にはそろそろ届き始める、Oculus Riftの第2世代開発キット“DK2”。

 出展されていたデモは2種類あり、ひとつはバンダイナムコゲームス制作による、草原でつい寝てしまったアスナが目覚めるまで過ごすもの。もう一本が別の開発チームによる、“ザ・グリーム・アイズ”とのバトルを体験できるというもの。体験時間は1分から1分半程度で、片方のデモが終わると、席を交代してもう片方のデモを体験できるという流れになっていた。

 ふたつのデモは、キャラクターをじっくり眺められる“静”のデモと、アクションの中に身を置くことを主眼に置いた“動”のデモといった塩梅の役割分担になっており、前者は間近で見るキャラクターの魅力が、後者はシーンに飛び込んだかのような感じがあり、それぞれ違った良さがある感じ。デモ的性格が強い以上、これがそのまま何かの製品になったりはしないと思うのだが、もしアニメエキスポ限定だとしたらもったいないことであり、日本のファンもどこかで体験できる機会が生まれるといいな……と思う。

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▲バンダイナムコゲームスによるデモは、野原でスタート。右下に視線を移すと、眠りこけているアスナが!
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▲ディスプレイに写っているのは左側の人の視界。頭の位置のトラッキングにも対応したので、こうやって覗き込むともっと近付ける! でも起きそうになった瞬間、ちょっと視線をそらしてごまかしたくなる。
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▲新鮮なリアクションその1。「俺の手ある?」と確認してみるキャプテンアメリカ。
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▲バンダイナムコゲームスとは別の開発チームによるデモ。いきなりリンクスタート画面!
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▲見慣れたインターフェースからログイン。
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▲言語は日本語を選択。
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▲というわけで日本語メッセージに(デモしてるのアメリカ人だけどアニメファンばっかだから逆にこれでよし!)。βテスト時のKIRITOとかいうデータが残ってるらしい。
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▲通路を進んでいくとザ・グリーム・アイズに遭遇。ちなみに、いずれのデモも移動などの入力は不要で、周囲を見回したり、覗き込んでみたり、自分の頭の動きと視界の連動に集中できるような設計だった。
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▲目の前で攻撃を受け止めるアスナ。
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▲しかし続く攻撃で左の方にふっ飛ばされちゃう。
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▲ゴリゴリ体力削られる中、左を見ると……。
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▲立ち上がってたのでひと安心。ザ・グリーム・アイズだけを見てたらわからないわけで、どこに注視するかで体験が変わってくるのはVRならではの要素。
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▲正面に視線を戻してみると「あ、死んだわコレ」という感じ。
▲でもダッシュしてきて止めてくれた!
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▲そしてフルボッコ。
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▲Congratulations!! 最後は近づいてきてくれる。
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▲新鮮なリアクションその2。「もしかして触れるんじゃね?」とインターフェースを触ろうとする人。残念ながら触れません。(モーションコントロールが進化しない限り、視界がゲーム世界に入ったつもりになっても手の位置の不一致などで一体感に限界が出てくるのは実際に課題)
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▲「でもまじかよ、本当にそこにいるみたいじゃん!」多分すげぇいい奴。
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▲「覗き込んじゃったりしてもいいの?」、「後ろとかも見えちゃう?」実際、「動いていいんですよ」と言わないと身動きひとつしない人もいるけど、どうせならこれぐらいいろいろ見回した方が楽しい。

約2年前、若き天才の発想にレジェンド達が動いた

 それにしても、初めてOculus Riftを体験した2年前からのことを思うと、実に感慨深い。今年のアニメエキスポでは、集まったアニメファンに合わせて、ちゃんと許諾を取ったメイドインジャパンスタイルのコンテンツでデモをしたわけだが、ほんの2年前、創業者パルマー・ラッキー氏が現在CEOを務めるBrendan Iribe氏に行ったデモは、実に簡素なものだったのである。

 しかし、当時からその可能性に目をつけていた伝説の人物がいた。FPSの生みの親のひとりである、ジョン・カーマック氏だ。独自にVRを研究していたカーマック氏は、その年の春先にラッキー氏からごく初期のプロトタイプを見せられ、協力を約束。6月のE3では独自の改造を施したプロトタイプを用い、当時所属していたid Softwareのブースで一部のメディアに披露。『DOOM 3 BFG Edition』をOculus Riftに対応させる方針を表明する。

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▲2012年8月、Quakecon 2012のプライベートデモで使われていた、ジョン・カーマック氏による試作品(6月のE3から使われていた)。パルマー・ラッキー氏のプロトタイプをベースに、スキーゴーグルのヘッドバンドをダクトテープで強引に移植したりしたもので、現在の形に近付いている。

 そして8月に行ったスタジオの恒例ファンイベント“Quakecon”でも、Oculus VRを出展させるとともに、引き続きメディアへのプレゼンテーションを実施(本誌も参加しリポート済み)。さらに同じくValveでVRを研究していた旧友Michael Abrash氏(FPS史に残るidの名作『Quake』の開発メンバーでもある)を招いて、ラッキー氏とともにパネルディスカッションを行った。

 それから2年弱を経た現在、カーマック氏はid Softwareを離脱してOculus VRのCTO(最高技術責任者)、Abrash氏はチーフサイエンティストであり、このパネルの登壇者全員がOculus VR所属となっている。

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▲2012年8月のQuakecon 2012で、Oculus Riftプロトタイプのデモをするジョン・カーマック氏。Oculus VRのCTOとなる以前のことで、その可能性に魅せられてPRにひと肌脱いだ形だった。
▲2013年3月のGDC 2013でVRの現状の課題と今後について講演したMichael Abrash氏。当時の所属はValve。約一年後、チーフサイエンティストに就任する。

KickStart!! そして世界が広がり始める

 Quakeconの数日前である8月1日、Oculus VRはKickStarterでクラウドファンディングキャンペーンを開始している。
 体験した人の数はまだ少なかったものの、ジョン・カーマック氏をはじめ、Valveのゲイブ・ニューウェル氏、エピック・ゲームズのクリフ・ブレジンスキー氏といった有名クリエイターの後押しだけでなく、その年の3月にDouble Fineが新作プロジェクト“Double Fine Adventure”(後の『Broken Age』)でKickStarterプロジェクトを成功させてゲーム業界からの注目が高まっていたり、キャンペーンの終盤戦に入っていたAndroidベースのゲーム機Ouyaが800万ドル(約8億円)以上を集めることが確定していたといったこともあって、希望額の25万ドル(約2500万円)をその日のうちにクリアー。この勢い自体もニュースとなって話題を呼び、最終的に約240万ドル(約2億4000万円)を集めることに成功した。

 ここで出資した約9500人のうち、7500人近くが開発者用キットを入手しようとした人(おおざっぱに約2000人はそれ以下の特典を選択している)。これに、キャンペーン終了後に予約した人を加えて、2013年3月末に第1世代開発キットが出荷開始される。

 そして入手した開発者によるVRゲームの研究が始まり、アイスランドのCCP Gamesが自社イベント用のアトラクションのひとつとして採用したり(その後、正式プロジェクト化)、日本でも夏に開発者有志による体験イベントOcuFes(ocufes.jp)がスタート(本誌でもリポート)。入手した開発者が何か作り、広めていくというサイクルが始まる。

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▲2013年4月、アイスランドで行われたCCP Gamesのファンイベント“Fanfest”で、余興的に発表されたVRプロジェクト“EVR”のデモの様子。後に正式プロジェクト化され『EVE: Valkyrie』となる。
▲2013年8月に行われた最初のOcuFesで記者が体験している様子。

 それだけでなく、VRゲーミングを前提とした更なる周辺機器や、隣接領域のガジェット開発などにも刺激をもたらしたことは言うまでもない。カーマック氏やAbrash氏が独自に研究を進めていたように、Rift以前にそういう試みがなかったわけではないが、「ゲーマーが入手できる価格帯」、なおかつ「より没入感の高いVRのために設計された」ヘッドマウントディスプレイを目指したRiftが現実のものとなることで、いろいろなものが突き動かされた部分は大きいだろう。

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▲ゲーム世界を自分の足で歩けるようにするデバイス“Omni”の2回のE3でのデモ。2013年6月(左)にはホテルの一室で社長自らデモしていたのが、翌年の2014年6月(右)には正式ブース出展でデモ用のスタッフも(社長は後ろに写っている)。
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▲2014年1月、ラスベガスのCESでのモーションセンサー&モーションコントローラー“STEM System”のデモの様子。VRに合った入力方法がないのは今後の検討課題で、こうしたモーションコントロールも選択肢のひとつ。
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▲正確にはVRではないが、網膜投影ヘッドマウントディスプレイ“Glyph”のデモの様子。2014年1月のCES(左)では映像視聴などがメインだったが、6月のE3(右)ではプレイステーション3を使ったヘッドトラッキングのデモを披露。

ソニー、フェイスブック……大手もVRに本格参入し始めた

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▲2014年3月、GDC 2014で“Project Morpheus”を発表する吉田修平氏。

 しかしここまでの流れはPCベースで、どちらかと言うと、開発者やガジェットや最新技術好きを中心とした「わかってる人」向けのもの。現状では、誰もがフルHDで秒間60フレームのCG世界を出せるマシンを持っているわけではない。パルマー・ラッキー氏が目指すのは、もっと当たり前に、誰もがVRを手に取れる世界だ。

 それでも流れを生み出せば、時代は変わる。2014年3月のGDC 2014で、ソニーがプレイステーション4向けのVRヘッドマウントディスプレイのプロトタイプ“Project Morpheus(プロジェクト・モーフィアス)”を発表。家庭用ゲーム機でもVR体験できるというのは、コンテンツ開発などのVR業界全体の拡大を考えれば大きな助けとなるわけで、実際Oculus VR側も敵対する競合とは見なさず、歓迎するコメントを出している。
 記者はこの発表を現地で聞いていたのだが、Oculus Riftの登場以前から研究を進めてきたことを前置きしつつ、Oculus VRやValveの先行する研究を尊重し、また内容面でも踏まえたものとなっていたのが驚きだった。

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▲実はOculus Riftの登場以前から内部で試行錯誤が続けられていた。

 2014年前半はそれ以外にも、1月のCESでOculus Riftの試作機“Crystal Cove”がごく一部に公開され、後のGDCではそれを土台にしたDK2を出展。また1月中旬に行われたValveの開発者向けイベントSteam Dev Daysでも、SteamのVRゲームサポートの内容が発表される一方、Valve版のVRヘッドマウントディスプレイも少人数に披露されたという。

 そしてGDCの翌週、FacebookがOculus VRを20億ドル(約2000億円)で傘下に収めたことが発表される。Facebookにとっては既存の映画やゲームを超えたVR空間が次世代のコミュニケーションの土台になり得る可能性、Oculus VRにとってはFacebookの資本力によって将来的にやってくるであろうCV(市販バージョン)の大量生産と広範囲な展開が一気に可能になるという部分が魅力となった形だ。

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▲2014年3月のGDC 2014では、使用機材がDK2へ。直後にFacebookからの買収が発表された。
▲2014年4月のPAX EASTでのブースの様子。フツーにパルマー・ラッキー氏がいるのが信用できすぎる。

 ……と、このように2年間の流れを振り返って、最新情報を全部チェックするようなハードコアゲーマーやガジェット好き以外の人が多いアニメエキスポの参加者にアプローチするにあたり、(ラッキー氏本人がアニメ好きだとしても)日本の版権モノをチョイスし、許諾を取ったデモをパートナー企業に開発してもらって出すというのは、それ自体新たな試みだし(これまでのデモはパートナー企業による既存IPが関わらないデモだったり、開発中のゲームだったりした)、必ずしもゲームに限らないVR体験の展開の先取りでもあるし、草の根的に展開されてきた日本のシーンの手法が応用されたデモが逆上陸というのもすごいし、歴史的出来事なのだ。

 というわけで、最新ゲームをあんまりやらないアニメファンも含めて、もっといろんな人があのデモを体験できるようになるといいなぁ……と、さっきと同じことを繰り返してこの長いリポートを終わりたい。(文・取材・写真・映像:ミル☆吉村)

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▲「Riftは本格的なVR時代へのスタートに過ぎない」GDC 2013でのAbrash氏の講演スライドより。DK2ですら開発者用キットでしかなく、一般消費者に向けたCV(コンシューマーバージョンを略した仮称)までの道のりすら、まだまだこれから。