『マインクラフトXbox 360 edition』珍物件探訪の記事リンク
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Xbox 360の深淵なる領域、インディーズゲーム
Xbox 360にはインディーズゲームというカテゴリーがある。
そこでは全世界のプログラマーたちが作ったゲームが日々アップロードされており、一応、審査はあるようだが、基本的には同人ゲームのダウンロード即売場のようなもの。なかなかひどいものから、もはやゲームではないもの、プロ顔負けのものまで、ラインナップは幅広い。
そんな中、『Castle Miner Z』という海外産インディーズゲームのセールスが100万本を越えたというニュース(記事はこちら)が報じられた。このカテゴリーで100万本突破というのは他に例を見ない快挙ではあるのだが、このゲームはオリジナリティーを発揮したのではなく、『マインクラフト』のフォロワーでもある。いや、フォロワー……というと聞こえはいいが、実態は「よくもまあ、ここまでストレートにパクりましたね」的な、直球ド真ん中の模倣。基本コンセプトはもちろん、体力ゲージやアイテム欄の位置まで同じなものだから、画面から放出されるコピーオーラが凄まじい。
このゲームは当初の240MSP(マイクロソフトポイント)から80MSPに値下げしており、その安さも魅力になっているのは間違いない。だが、いくら安いとはいえ、本家の劣化コピー作品が100万本もいくだろうか。『マインクラフト』系、と言ってしまっていいインディーズゲームは実はこれだけではなく、軽く確認しただけでも4つあった。その中で唯一100万本を達成したというこのゲームには、何か理由があるのではないか……?
というわけで、実際にやってみることにした。
ナイフと銃でサバイバル! 亜流『マインクラフト』の魅力に迫る
『マインクラフト』との大きな違いは、武器に銃があること。しかも、普通のピストルからアサルトライフル、サブマシンガンまで豊富に取り揃えている。一応、ナイフもある。しかし、遠隔攻撃可能だが有限である銃弾と、無制限に使えるが近距離戦しかできないナイフ……というメリット・デメリットが設定されていることが多いのに対して、このゲームではナイフにも耐久度がある。『マインクラフト』同様、武器は材料を集めて自分で制作するのだが、ナイフ2本とピストルひとつの材料が同じで、弾も作りやすいことから、ほぼ銃一択。
上の写真を見てもわかるように、敵のグラフィックはリアル。『マインクラフト』では、敵も世界もドット絵を立体化したような感じだったが、『Castle Miner Z』では、世界がブロックでできているという共通点はあるものの、ドット絵のニオイはどこにも感じない。「べ、べつにドット絵なんか興味ないし、世界をブロック状にするっていう部分だけオマージュしたんだからね。か、勘違いしないでよね」ということなのかもしれないが、嗚呼、それなら体力ゲージとアイテム欄をもうちょっと……。
さて、このゲームは大きく分けてSurvival ModeとEndurande Mode、2つのモードがある。
Survival Modeは、『マインクラフト』を知っているならあえて語ることもない。ブロックで構築された世界で好きに建造物を作り、生き抜く。フレンドを誘っての協力プレイも可能だ。特に目的が定められていないモードなので、『マインクラフト』同様に地中深く掘り進んで探検、もしくは建造物を作って楽しむくらいしかないが、ブロックの種類は『マインクラフト』よりも遥かに少ないため、建造物に凝るのも難しい。何せ、ガラスブロックがないので、窓が作れない。家の中から外の様子を眺めたいなら、窓の位置をそのまま穴にするしかなく、ほとんど狙撃穴状態。
一方、色代わりに使えそうなブロックは赤・白・茶・黄・グレーくらいなので、ドット絵を作るにも幅が狭い。
……と言いつつ、お約束なので作ってみた。
『マインクラフト』ではおなじみ、破壊神の像。
「おお、異国の地を開拓に来た我々を見守りたまえ……」とか祈りを捧げてたら、突然、ドゴーンと爆音が!
モクモクと煙が上がり、視界が晴れたそこには欠けた像。まさかゲームの壁を越えて、あの緑の破壊神が降臨したのか……!? と思ったら、上空を舞うドラゴンの姿が!
敵がゾンビばっかりで、『Castle Miner Z』のZはゾンビのZだろうと思ってたところに、まさかのドラゴン登場。あの爆煙の正体はドラゴンが吐いた火炎弾らしく、その着弾地点は石ブロックをも削り取る。クソッ、破壊神を破壊するとは、いい度胸だッ!
早くドラゴンを倒さないと、クリーパー像はもちろんアイテム保管箱が置いてある家ごと壊されてしまいそうな勢い。「チクショウ、早めに強い銃を作っておけば良かった……」と思いながらドラゴンにパァン!……パァン!……と初期装備のピストルで応戦していたが、気づけばゾンビがワラワラ沸いてきて、ドラゴンどころではない事態に。
『バイオハザード』などのゾンビは、こちらが照準を合わせて撃つまでの時間を考慮してか、ゆっくりと迫ってきてくれるが、このゲームは手加減なしで本気で殺しに来る。時には逃げることも戦術の内……ではあるが、敵が近くにいるときはなぜかジャンプが封じられ、段差の激しい地形が多いため、逃げるに逃げられない状況になることがほとんど。弾がなければ確実に死亡。弾があっても背後をとられたらほぼ死亡。弾があって、背後をとられていなくてもリロード時間で死亡。「じゃあ……じゃあ、どうすればいいんですか!」という質問には「夜間の外出はお控えください」としか答えようがない。
地形も変えるほどの攻撃をしてくるという意味では、ドラゴンは『マインクラフト』の破壊神ことクリーパーに相当する敵。得体の知れない四足歩行の謎生物に爆死させられるよりは納得できる気もするが、何かブロックひとつ隔てていれば爆発することはなかったクリーパーに比べると、ドラゴンが見えているときは地上すべてが危険地帯なわけで、なかなかハードな世界。地上のゾンビとのダブルパンチになるのもキツい。
ただでさえ建造物に凝る楽しみがなく、敵の出現をオンにしてゾンビとの戦いに楽しみを見い出すしかないところへ、ダメ押しとばかりにプレイヤーを抹殺にかかるドラゴンの存在は少々やりすぎな気がしないでもない。だが、見方を変えれば大半のFPSにドラゴンはいないわけで、銃でドラゴンを撃ち落とすという稀有なシチュエーションを味わいたい人にとっては貴重なゲーム。ていうかコレ、『マインクラフト』の皮をかぶったFPSかもしれない。ううん、銃大好きっ子のガイジンのやることだから、きっとそう。
さて、一方のEndurande Modeは、PS3のトロフィーやXbox 360の実績のようなゲーム内に用意されたやり込み項目を達成することに特化したモード。「敵を1000体倒す」、「スタート地点からの距離が1000ブロックを越える」といった項目がいくつかあり、最も困難な「アンデッドドラゴンを倒す」という項目が最終目的のようだった。
Survival Modeは正直、『マインクラフト』に勝っている部分を探すのが難しかったが、このモードは『マインクラフト』の弱点でもある明確な目的が存在することになる。『マインクラフト』はよくできたゲームだが、「目的を提供されないと何をしていいかわからない」という層にはオススメしかねるものでもあった。Endurande Modeは、それに対するひとつの解答であり、『マインクラフト』にもこういうモードがあってもいいのでは……とすら感じる。「100万本の理由は、これではないか?」と思い、このモードの攻略に腰を据えてみることにした。
調べたところ、アンデッドドラゴンはスタート地点から約4000ブロック離れたあたりのHellと呼ばれる地域が生息域らしいということがわかった。しかし、そこへ到達するには一筋縄ではいかない理由が2つある。
まず、Endurande Modeではセーブができない。4000ブロックまでの到達は時間がかかるので、1日でのクリアーは現実的ではなく、ほぼ必然的に数日がかりでの攻略になるため、電源つけっぱなしで寝ることになる。
次に、復活地点の問題。敵に倒されて死んでしまった場合、『マインクラフト』では最後に眠ったベッドの位置が復活ポイントとなるが、『Castle Miner Z』ではスタート地点のみとなる。ただし、ふたりでプレイしている場合は、片方が死ぬと、もう片方のプレイヤーがいる場所に復活する。ノーセーブで4000ブロック地点付近を目指し、強力なボスを倒すことを最終目的とするだけに、この復活地点の違いは大きい。最低ふたりいれば、同時に死なない限りは4000地点付近で復活し続けられるが、ひとりプレイで死んだら、また4000ブロック分の距離を歩かなければならない。
……というわけで、『マインクラフト』珍物件探訪の記事でも駅職人としてお世話になった知人に協力を要請して、ふたりで挑むことにした。毎度、お世話になります。
Endurande Mode開始! 果てしなき4000ブロックへの道
開始してみてから気づいた誤算としては、進むにつれて敵がどんどん強くなることだった。こちらの体力は時間経過で回復するし、最初は敵の移動速度も遅いため、銃で遠くから慎重に戦っていれば、まず死なない。しかし、到達ブロック数が大きくなってくると、敵はスピーディーになるわ、こっちが二撃で殺されるほどの攻撃力になるわで、手がつけられなくなってくる。この状態で4000ブロックという距離を進むのは、かなり困難といえる。
そこで、進行自体は遅くなるが、地中にトンネルを作りながら進むのがベストではないか、ということになった。『マインクラフト』同様、たいまつ等で明かりを確保した場所には敵が出現しない様子で、たいまつを設置しながらトンネル状の通路を作りながら進めば、敵に遭遇せず安全に進行できる。地上だと、たまにドラゴンが空中から火炎弾を吐いてくるため、ドラゴン対策としても良い案だった。
1ブロックずつザクザクと掘り進めていくとなると4000ブロックは遥か彼方ではある……が、この戦法は正解だった。アンデッドドラゴンに遭遇できたとしても、倒せなければ意味がないわけで、強力な銃と豊富な弾は必須。それらを作るためにはレア鉱石である金とダイヤが不可欠なのだが、地中を掘り進む過程で、かなりの数を確保できたのだ。
そんなこんなで、かなりの距離を進んだが、最初の拠点に残してきたアイテムが気になっていた。持ち運べるアイテムは40個なのだが、死んでしまうと、画面上に常に表示されている8個以外はすべてロストする。トンネル作戦による安全進行であっても、空洞に出くわしたときに敵に襲われて死んだり、足元に穴があるのに気づかないで落下して死亡することもあり、基本的に8個以外は怖くて持ち歩けない。
それでも最初の1000ブロックくらいは徒歩で戻っていたのだが、往復で2000になるので、ちょっと時間的に苦しい。実際に計測してみたところ、1000ブロックをノンストップで歩くと約5分、往復で10分……。今後、2000、3000といった区切りで資材を取りに戻るとしても、ただ歩くだけの時間が20分、30分と増えていくのは参る。
何かないものか……と調べていると、作成できるアイテムにTeleporterというのを発見。どうやら現在地点を記録しておき、どこからでも戻ってこれるようにするアイテムらしい。「なんだよなんだよー。やっぱ、そういうアイテムあるよなー、徒歩で数千ブロックはキツいぜー」と思って早速作って使ってみたら、アイテム欄からテレポーター消滅。え、まさか1回限りのアイテム? 作るのに貴重品のダイヤ使うんだぜ、これ? 何かの間違いだろうと、いくつかダイヤを犠牲にして調べてみたが、どうやらマジで1回ポッキリのアイテムらしかった。さすがにこれは使ってられないということで、我々はまた黙々と一本道を掘るのだった……。
そして3600ブロックへ……忍び寄る最終決戦の足音!
毎日ちょっとずつ確実に歩を進め、4日目には3600ブロックに到達。結局、幾度かに渡る資材運びは徒歩で行った。海外のwikiを見ると、アンデッドドラゴンが発見された最低ブロック数が3600前後のようで、そろそろ生息域に入ってもおかしくない。「ついに、ここまで来たか……」という達成感と、アンデッドドラゴンがいつ現れるかわからない緊張感に打ち震えていたが、ここへ来て、ひとつの問題が浮上した。
これまでは地中に穴を掘りながら進んできたわけだが、3000を越えたあたりから地形がほとんどブラッドストーンという、このゲーム中でもっとも硬いブロックになってくる。これまでは周りが石ブロックだったので掘り抜いてこれたが、このブラッドストーンは掘りづらいったらありゃしないブツで、トンネル作戦の続行は厳しい。しかも、石ブロックはトンネル外の近場から調達していたのだが、もはや周囲がブラッドストーンだらけになってしまったため、石ブロックを確保するには、3000以前まで戻る必要があった。
これらの事情から、ここからはトンネルではなく空中に橋を架けていくのはどうか、という話に。
最初は、これまでと同じく通路をグルリとガードしたトンネルを空中に作っていたのだが、石の節約もあって、橋になった。トンネル戦法は外の様子がわからないというデメリットもあったため、ほかのドラゴン同様、空を飛んでいると思われるアンデッドドラゴンを発見するには、むしろ橋のほうが都合良くもある。
ただ、『マインクラフト』では、このように高所に橋を作っていく際、絶対に落下しない操作法があったが、このゲームにはそんな軟弱な機能はないらしく、崖っぷちでプルプル震えながら、ひとつひとつ慎重にブロックを置いていくことに。このせいでただでさえ遅い進行が、さらに遅く……。
1ブロックの幅しかない橋の上に長時間いるというのは落ち着かないもので、ところどころ、橋の上に見張り台を作って休憩していたところ、あるとき、空にドラゴンらしき影が見えた。
「ついに出たか!?」と興奮したが、近づいてくる気配がなく、しばらくしたら完全に見失ってしまった。結局、その日は3900まで進めたがドラゴンは現れず。深夜をまわり、さすがに目がショボショボしてきていたこともあり、眠ることにした。
明日は確実に4000ブロックを越える。そうなれば、そろそろアンデッドドラゴンも出てくるだろう。決戦は明日。眠くはあったが、どこか、遠足の前日のようなワクワク感もあった。
──午前2時。聞き慣れない音楽で目が覚めた。ゲーム用に使っているスピーカーの電源を落とすのを忘れていたようだった。
しかし、『Castle Miner Z』は基本的にBGMがない。夢と現実の狭間で「この音楽は何だ?」と考えていたら、信じたくないひとつの可能性に思い当たった。そう、たしか……このゲーム、タイトル画面では音楽が流れていた。眠い目をこすりながら起き上がってモニターの前に行き、電源をつけると……。
まずい。勝手にタイトル画面に戻るような事態は、ひとつしか考えられない。ホスト側である私の回線落ちだ。「しかし、まだ何か……まだ何か、そうではない可能性が……」と、すがるようにデータロードしてみたが……最初からだった。
──こうして、4日間に及ぶ冒険は水泡に帰した。
協力してくれていた知人も「そうなる可能性は元々あったし、回線が切れたときに覚悟はしていたから、そんなに精神的なダメージは……」とは言ってくれたが、やはり申し訳ない気持ちが先に来る。
やり直すこと自体は不可能ではないが、気力の問題が深刻だった。「さすがに、しばらく考えたくないな、これは……」という精神的疲労と、もうひとつ。もう一度挑むにしても、今回のような回線落ちの可能性はついてまわる。「また落ちたら……」という恐怖に耐えられるのだろうか。
我々の世代だと、母ちゃんの掃除中に掃除機が机に当たって、その微震でファミコンが止まり、リセットして再開したら「おきのどくですが ぼうけんのしょ1ばんは きえてしまいました」の音楽が……といったエピソードには花が咲くものだが、これに例えるなら、周囲には常に4~5人の母ちゃんが掃除機をフル稼働させながら舞っているようなものだ。ドキドキハラハラではなく、ただただ純粋に心臓が締め付けられる。これって……恋? それとも心筋梗塞?
──数日後。
「どうしようかなー……」と思っていたとき、知人が妙案をひねり出したようで、こう言ってきた。
「地上を一気に4000ブロック走破する……!」
~後編(近日公開予定)につづく~
■著者紹介 夢崎
ファミ通Xbox 360で実績システムについて書いたり、二次元ドリームマガジン(キルタイムコミュニケーション刊)で変なゲームの記事を書いたりしているフリーライター。インディーズゲームは思わぬ掘り出し物があるので、時々覗いてみるのをオススメ。