~前回までのあらすじ~
初の再現物件、ペンション“シュプール”に一応の完成を見た私は、大量の鉄を求めて、フレンドとともに地下へ採掘に向かうことにするが……。(→第2回はこちら)
本格的に発掘開始! 役割分担によるマルチプレイの楽しさが炸裂
……というわけで、ペンションのふもとから地底に向けて大発掘が始まった。地下の大規模な発掘に必要なのは、大量のたいまつと、ツルハシ・ショベル。たいまつは木炭と木で作れるのだが、ツルハシやショベルの柄の部分も木であり、ペンション“シュプール”に負けないほどの量の木が要る。「さて、また苗を植えまくらないとな……場所どうするかな」と考えていたら、先陣を切って掘りに向かったフレンドは、私のワールドに遊びに来る前に自分のワールドで掘りまくっていたらしく、アッという間に階段状に穴を掘り進んでいた。手慣れていそうだったので、とりあえず掘るのは彼に任せて、私はまた伐採に明け暮れることに。
最初は、セッセとツルハシで掘っているフレンドの前を通り過ぎて、しばらくして戻ってきたら随分深い穴になっているのを確認したりしていたのだが、少し遠出した後、ペンション“シュプール”のチェストに入れておいたたいまつが予想以上のスピードで消費されていたので、「一体、この短時間で、どれだけ掘り進んでいるんだ」と見に行くと……。
ふ、深ぇ……。通常、フレンドが居る位置には名前と一緒に体力ゲージが表示されるのだが、それが見えないということは、すさまじい深さに到達していることになる。しかもよく見ると、最初は単なる段々だった穴も、階段が整備されている。これまで、ひとりでノンビリと木造建築をしていただけの私は、フレンドふたりによるハイスピード工事に戦慄した。
『マインクラフト』におけるマルチプレイの醍醐味は、役割分担にある、と思う。地下から地上へ戻ってきたら、潜る前には何もなかった所に立派な休憩所ができていたり、ただの採掘現場だったはずの地下に、地上にもない立派な休憩所ができていたり。現実世界でいうなら、工事現場の前を毎日通り、ちょっとずつ形になっていくのを眺める楽しさのようなものがある。しかも工事スピードはこっちのほうが圧倒的に速いので、見るたびに何かしら変化しているという、だるまさんが転んだ状態。
マルチプレイの遊びかたは人それぞれで、別に必ずしも「役割分担しなくてはいけない」ということではない。フレンドが生まれたての小鹿のようにプルプル震えながら高所で作業しているところへ背後から忍び寄り、ダイヤのツルハシで殴って突き落として火サスを楽しむもよし。フレンドが貴重品を入れておいたチェストの中身をゴッソリ盗んで、そばに「cats eye」と書いた看板を立てるのもよし。フレンドが苦労して作った家のあちこちにTNT火薬を仕掛け、一斉に爆破させて「へっ! きたねえ花火だ」とベジータ発言するもよし。そういった殺伐マルチプレイもできることはできるが、ひとつの目的に向かって数人がかりで取り組み、予想以上のものが次々に出来上がっていく様を見るのは、このゲームならではの楽しさだ。
サテ、地下へ潜りっぱなしのフレンドがさすがにどこまで掘ったのか気になり、地下へ降りてみたところ、“岩盤”と呼ばれるブロックが見える深さまで到達していた。岩盤は、地下の深さの限界点付近に存在するブロックで、これが見えるということは、これ以上掘ることができない“底”を示す。
エスタークでも掘り当てるつもりか? というレベルの深さをこの短時間で成し遂げたことに驚愕したが、フレンドの姿が見当たらない。ウロウロと探していると、長い階段の途中から横穴を掘っており、別ルートでまた岩盤を目指しているようだった。岩盤付近になると溶岩も増えてくるので、あまり深すぎるのもよくないらしい。Windowsメッセンジャーでときどき現状を報告し合っていたのだが、「ダイヤ発見www」「ラピスラズリもモリモリ採れるぜ!」などが聞こえてくると、私もソワソワし始め、「伐採なんかしてる場合じゃねぇっ!」と斧をかなぐり捨て、横穴を掘り始めるのであった。
大空洞との遭遇! 危険に満ち溢れた広大な地下世界の魅力
運がよかったのか、掘り始めて数分で、大きな空洞にぶち当たった。以前にも地下洞窟を見つけたことはあったが、ほとんどが掘り当てたというよりは落下したであり、たいまつもいまほど大量に持ち歩いていなかったので、つねに脱出を考えていたものだ。しかし今は鉄や宝石を求め、貪欲に探索しに来た冒険者。暗闇を恐れず、たいまつを設置しまくりながらズンズン進んでいく。「ズン、ズンズン、ズンドコ、キヨ……」おっと、これ以上はJ○SRACがいけねえ。
これらの写真のように、暗闇による恐怖と溶岩の危険性は常にあるが、怖くも美しい地下世界の魅力もある。鉄や宝石も目当てではあるのだが、だんだんと、こういった未知の地下世界との出会いが楽しみで掘り進むようになってくる。
そんなわけで空洞を求めてガシガシと掘っていると、妙な小部屋を発見。
後にwikiで調べてわかったのだが、これは“スポーンブロック”と呼ばれるもので、敵が出る難易度だと、ここから無尽蔵に敵が出現する装置みたいなものだとか。小部屋内には必ずチェストもあり、ちょっとしたレアアイテムも入っているらしい。しかしこれを初めて掘り当てたころはそんな知識もなかったうえ、敵が出現しない難易度である“ピース”でプレイしていたため、「……これは何だ?」と、本気で謎の存在に。
何せ、このスポーンブロック、檻の中で火だるまになったブタが高速回転しているのである。フレンドも呼んでいろいろ調べたものの、周囲を掘っても、檻を叩いても無反応。
「もしかしてこれ、閉じ込められて火をつけられてしまったブタを救うイベントなんじゃね?」
「なるほど! しかし、何をどうやっても進展せんな」
「待てよ、火……そうだ、水だ! 水をかけて鎮火してやるんだよ!」
「な、なんだってー!?」
「見ろ、あんな近くにこれ見よがしに地下水が……!」
「お前、頭いいな!」
そんな流れになり、早速、採れた鉄を加工してバケツを制作。水を汲んできて、ブタの真上に放水する。「決まったな……」と思っていると、小部屋全体に水が満たされ、ブクブクと溺れ始める我々。我々の呼吸がキマりかけたが、檻は完全に水中に沈みつつも、ブタは水中でも元気に高速回転したままだった。「もう、何なんだよ!」とツルハシをズーッと振っていると、いつの間にか檻は壊れたが、ブタも消えた。
「我々にお礼を言うのも忘れて、あの地獄のような檻からの解放を喜んでいるんだよ」
「いつかどこかで、ブタの恩返しイベントが発生するに違いない」
「フラグ立ったな」
「鶴の恩返しに倣って、美少女化も有り得る」
「でもこの世界のキャラ的に、美少女も目が互い違いなんじゃないか……」
そんなどうでもいい心配をしながら、我々はまた探索に戻る。しかし変に寄り道したせいか、「……あれ? どっちから来たっけ」と方向感覚を失ってしまった。いつの間にかたいまつは残り少なくなり、ツルハシの耐久度もヤバくなっている。「おっと、イカンイカン。ちょっとマジになって、一度、地上へ戻るか……」と、真剣に道を戻り始めるが、しばらくウロウロしてみて気付く。迷ったと。
何の規則性もなく無計画に掘り進んだ結果、地下空間はもはや大迷宮と化していた。空洞を見つけたとき、ところどころ飛び降りながら進んでいたこともあり、横だけではなく縦方向にも迷宮は展開され、もはや完全に位置がわからない。しかも、フレンドを含めた三人ともが同様に迷子になっていた。
私はツルハシも壊れ、たいまつも尽きてどうしようもなくなっていたが、幸い、近くに居たもうひとりのフレンドと合流できたので、フレンドの持つツルハシ頼りに、地上を目指すことに。このときの不安は凄まじかった。嗚呼、せっかく掘り集めたダイヤや鉄を捨て、データロードするしかないのか……? と、帰りたいだの帰れないだのラブソングみたいなことを言いながら「もうダメかもわからんね……」と思ったとき、フレンドが掘り進めていた天井から、ポコッと明るい光が!
地下世界も、たいまつの明かりで暗くはなかったのだが、いざ外に出てみると、やはり明るさの質が違うのだということに気付く。「ああチクショウ、太陽っていいなぁ」と青春ドラマみたいなことを言いながらプチ反省会。今回はなんとか戻れたものの、長時間さまようことになったので、「看板を使って道を分かりやすくしよう!」ということに。しかし看板には半角英数しか使えないので、「konoue deguchi」など、微笑ましい看板に。
迷いやすい位置に看板を立て終えたころ、迷宮と化しつつあるエリアの入口付近にフレンドがオブジェを作っていた。
先生! 先生じゃないか! “先生”はゲームボーイの名作『Sa・Ga2 秘宝伝説』の序盤で頼もしい強さを発揮してくれるNPC。主人公の学校の先生……なのだが、なぜか一つ目のスライム族という異色さがトレードマークの人気キャラだ。オープニングの旅立ちのシーンで「頑張れよ!」と見送った直後に「やっぱり私もいっしょに行こう!」と同行してくれる。
ゲームボーイ版のドット絵はどうしても一つ目に見えなくて、いつもニコニコしてる顔なのかと思っていた時期もあったのだが、このオブジェは、ニンテンドーDSでリメイクされた『サガ2秘宝伝説 GODDESS OF DESTINY(ゴッデス オブ デスティニー)』でわかりやすくなった先生の姿をゲームボーイのドット風に作り直した、愛溢れるデキになっている。
フレンドがなぜこれを作ったのか、わかる気がした。大迷宮への旅立ちに位置する場所に、このオブジェ。旅立ちといえば、先生だ。『サガ』シリーズファンからすれば、もう先生しか居ない。ああ、できれば、誰かにいっしょに行ってほしい……という、心細さを払拭するナイスオブジェ。そう、我々も見つけたのだ。ふだんは当たり前だと思っている太陽の光。そして、フレンドという、かけがえのない秘宝を……。
そんな感じでスタッフロールが下から上がってきそうな気分に浸っているとフレンドが、
「帰り道をサガして散々迷ったからな。……サガだけに」
聞かなかったことにした。
次回予告:地の底の限界点である“岩盤”を見た我々は、今度は空の限界点を知るため、塔の建設に入る。地下と違い、落下死という危険がある空中での建設はスリル満点。果たして、バベル計画は成功するのか……。(第4回はこちら)
■著者紹介 夢崎
ファミ通Xbox 360で実績システムについて書いたり、二次元ドリームマガジン(キルタイムコミュニケーション刊)で変なゲームの記事を書いたりしているフリーライター。最近は『マイクラ』のやりすぎで、家の壁を見ると「あの色なら砂岩でいけるな……」とか無意識に考えてしまう。