~前回までのあらすじ~
意外に低かった空の限界。地底と空を制覇して、そこそこやりきった感のある我々だったが……。(→第4回はこちら

拝啓、『バイオショック』! 恐縮ですが、海中トンネル掘らせて頂きマンモス!

 空中庭園を案内し終え、「次、何作るの?」「さすがに疲れたよ」といった会話をしていたとき、フレンドが不意に放ったひとことが、次の物件決定の狼煙となった。

「俺、『バイオショック』みたいな海中トンネル作りたいんだよ」


【『マインクラフトXbox360 edition』珍物件探訪】第5回:拝啓、『バイオショック』――海中トンネルを開通せよ!_17

<『バイオショック』とは……>
乗っていた飛行機が墜落し、海に投げ出された主人公。阿鼻叫喚の海上を泳ぎ、灯台のような建物を発見して中に入ると、地下へのエレベーターのようなものがあった。かなりの深さまで降り、扉が開くと、そこは強化ガラスで覆われた水族館のような風景。そこは、元は人間だったと思しき異形の者たちも跋扈する、謎の海中都市だった……という導入のゲーム。

FPSとアクションRPGを融合したようなシステムで、海中都市がとにかく怖くてワクワクする、フレンドも私も大好きな1作。


 
 地底と空中を堪能しまくり、「もう、探検という意味では未知の秘境はなくなってしまったか……」と思っていたところへの海中トンネル作りたい宣言は、「なるほど、まだ海があったか!」と、新たな目標として設定するには良い題材だった。『バイオショック』は私も大好きだったし、あんな風に、ガラス越しに海中を眺めながら歩けたらステキやん……というわけで即決定。しかし言うのはラクだが、作るのは空よりもかなりたいへんだ。

 まず、水中では呼吸制限がある。数秒に一回、必ず水面に出て呼吸をしなければいけない。次に、海中は意外と暗い。真昼間であっても、ちょっと潜っただけで暗闇の世界だ。この辺りは現実世界の海中にも通ずるものがあり、ブロック単位で構成されたドットのような世界ながらも、リアルな恐怖に満ちている。

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▲陸付近で、底が浅そうな海も……。
▲2~3マス潜るだけで、この暗さ。正直、ブロックを設置しようにも見えないという……。

 しかも水中にはたいまつを設置できないため、明かりは死活問題だった。“光石”は水中でも置けるらしいということを知るが、これは暗黒界にしかない。ならば暗黒界へ行こうじゃないか……と、まずは暗黒界への扉を開くべく、黒曜石の入手に向かった。幸い、地下発掘で溶岩源は腐るほど見つかっているので、バケツで水をかけてやるだけで容易に入手できた。

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▲黒曜石をこのように2×3で並べて火打ち石で着火すると、ゲートが開く。
▲ゲートを抜けると、空がなく、溶岩に満ちた地獄のような別世界が広がる。天井にポツポツとくっついているのが光石。

 なお、暗黒界では、ベッドで寝て復活地点を設定することにより、場合によってはオモテの世界に戻れなくなることを考慮してか、ベッドを設置して寝ようとした瞬間にベッドが爆発するというダイナミック仕様になっているので注意だ。

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▲ベッド自体は持ち込めば設置はできるのだが……。
▲寝た瞬間、爆発、死亡する。寝るな! 寝たら死ぬぞ!

 光石も入手できたところで……では、どこからどこまでのトンネルにするのか。水中では前述の通り、動きがかなり制限されるため、長距離になると苦しい。とりあえず、近場で近距離がよかろう……ということで最も近い海へ向かうと、チュートリアルワールドに最初から存在する灯台が見えた。

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▲向こうに見えるのが灯台。灯台のある場所は孤島で、灯台内部には階段・ハシゴの類がなく、のぼれない。住人の居ないこの世界では、ミステリアスな建築物のひとつになっている。

 距離的にも、近すぎず遠すぎず、ちょうど良い。しかも灯台なんて、ますます『バイオショック』のオープニングぽくて良いじゃない。というわけで、こちら側の砂浜から灯台まで海中トンネルを開通させることになった。トンネルの壁面はガラスで作る予定だったので、砂浜を削ればすぐ調達できるのも好材料。早速、砂浜に隣接した岩山を削り、ベッドと作業台とかまどを設置して新たな拠点が完成!

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▲さすがに慣れたもので、ペンションに資材を取りに行って、戻ってきたらもうできていたという……。
▲奥には私とフレンドふたり用のベッドが置かれた寝室まで完備。

 新拠点へ、必要な資材をペンションから移動させていく。これまでに集めた大量の資材は、おもにペンション・シュプール内に置かれた複数のチェストに保管していたが、近場とはいえ、何度も歩いて往復していると結構遠い。ペンションと砂浜の間には山があり、かなりの段差をジャンプしながらの移動になっているので、余計に距離を感じてしまっているように思えた。

 「せめて一直線に歩けたらなあ……」と思ったが、すぐに「いや待てよ、山に穴掘れば一直線に移動できるじゃん」とマイクラ発想。また富樫の顔が空に浮かんだ(→第2回の男塾名物、直進行軍を参照)が、海中トンネルに取り掛かっていたフレンドが「どうせ掘るならトロッコ地下鉄作ろうぜ!」と発言。

 地下鉄……! ある種、ファンタジックな世界観のゲームだったので、急に現代的な単語が出てきて戸惑ったが、地底探索で鉄は充分に集まっていたし、トロッコ鉄道はいつかレールを敷こうと思っていた。そう、いまがまさにその時ではないのか……というわけで私は「んじゃ俺、トロッコ用の地下鉄トンネル掘るよ!」と担当することに。

 もうひとりのフレンドは「んじゃ、俺は駅作るよ!」と、海中トンネルスタート地点に地下鉄駅の制作を開始。

 「んじゃ、俺は海中トンネル作るよ!」と、すでに着工していたフレンドも答えたが、私ともうひとりのフレンドに見事な「どうぞどうぞ」をくらい、海中に向かって孤独のランナウェイをくり返すことになった。

文字通り、“死ぬほど”たいへん!? 海中に引きずり込む魔の潮流

 海中トンネル作業が本格的に始まると、フレンドが「これはムズい! らめえ! 死んじゃう!」と弱音を吐き始めた。「たいへんなのはわかっていたことじゃないか!」と言うも、どうも様子がおかしい。……死ぬ? 死ぬの?

 説明を聞いてみると、こういうことだった。まず、水中に潜ると、体力ゲージの横に泡のマークで“呼吸ゲージ”が出現する。これは一定時間ごとに減っていき、ゼロになると溺れ始める。以後は少しずつダメージを受け、体力が削られていく。ここまでは、私もウロウロと冒険していたときに知っていたことだった。

 しかし、呼吸マークが尽きた状態で水面に上がろうとするとき、ダメージを受けることで、水中へのノックバックが発生する。つまり、上がろうとする→ダメージ→水中へ押し戻される→上がろうとする→ダメージ……という、一種のハメ状態になるというのだ。同じ水中でも水面近くの水中では比較的浮力が強く、ダメージを受けながらでもなんとか水面に戻れるのだが、ある一定以上の深さになると、明らかに浮力が弱い。そこで呼吸マークが尽きると、どれだけもがいて水面を目指しても、3歩進んで4歩下がるみたいなことになり、もはや死を待つのみとなる。

 海中で死んだ場合、持っていたアイテムは海中にバラ撒かれてしまう。こうなると、海中の暗さもあって回収はほぼ不可能だ。そこで彼は死ぬことを前提に、持ち物を最低限に絞り、海中にガラスを設置しては溺死→復活地点からガラスを持ってダッシュ、という、すさまじい建設をしていた。その命、プライスレス。

 そんな彼の死亡遊戯を見届け、私もトンネル掘りへ戻る。こっちはこっちでけっこうな距離があり、ただ掘るだけでもかなりの作業だった。まだ地図に座標が表示されなかったころだったので、何箇所か途中で地上まで掘ってみて現在位置を確認したり、膨大な量のツルハシとたいまつを作るために、作業の合間に植林作業をしたり。しまいには、掘る際に使う右トリガーを押さえ続けすぎたため、右手の人差し指だけ筋肉痛みたいになってくる有様だったが、海中トンネル作業よりはマシだ。だって、死ななくていいもの……!

地下鉄トンネル、地下鉄駅、海中トンネル……それぞれの物件が完成を迎える!

 ペンションの地下辺りから掘り始めたトロッコ用地下鉄トンネルが、ついに開通。レールを敷き詰めていき、私の担当だったトンネルとトロッコ鉄道が完成! テスト走行してぶじに到着した先には、立派な地下鉄駅もできあがっていた。

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▲ヒャッホー! 写真では伝わらない、この疾走感!(※トロッコが高速で走っています)
▲石がみごとにコンクリートっぽくて、かなりの地下鉄臭を醸し出している。

 よく駅に広告などが張ってある感覚で飾られている絵が、またいい味を出している。よりによってクリーパーの絵だが。海中トンネルも見せてもらったが、フレンドはとにかくトンネルを灯台まで繋げることで力尽きた感があり、肝心のガラス越しに見える景色に微調整が必要と感じたので、若干の改修を試みることに。しかし、自分でやってみてわかったが、なるほど、これは死ぬ。「嗚呼、君の言っていたことがわかったよ……」とヒイヒイ言いながら改修していると、海中トンネルで四苦八苦していたフレンドから「水中テクを伝授しよう……」と天の声。

 海中に土ブロックなどを置いてからそれを壊すことで水流が変化し、土ブロックを置いたところに呼吸ができる空間が生まれることがあるというのだ。やってみると、できるときとできないときがあり、複雑な水流の仕組みを完全に把握しないと難しそうではあったが、ひとつでもその空間ができれば、そこを中心とした周囲のガラス設置作業は格段に捗る。

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▲上手くいくと、こんな感じになる。この空間が作れれば、しめたもの。

 ほかにも、水中に設置したサトウキビの場所では息ができる……といったテクもあるらしいのだが、この頃のチュートリアルワールドにはサトウキビが存在しなかったため、不可能だった。ちなみに水中にドアを設置すると、そこでは呼吸が可能なのだが、このときは3人とも知らなかったのである……。こんなんばっかりや。

 そしてついに完成したのが、こちら!

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▲海中に、果てしなく続く線路。
【『マインクラフトXbox360 edition』珍物件探訪】第5回:拝啓、『バイオショック』――海中トンネルを開通せよ!_08
▲夜間、灯台から見下ろした景色。美しい……。

 海は予想以上に暗かったことと、別に魚などが泳いでいるわけではないので、残念ながら『バイオショック』のような美しさは得られなかったが、せっかくなので「真っ暗よりはマシか」と、両サイドに絵画を並べてみた。

【『マインクラフトXbox360 edition』珍物件探訪】第5回:拝啓、『バイオショック』――海中トンネルを開通せよ!_09
▲見てる……ヤツが見てる……。

 けっこうな距離にわたりこれがズラーッと並んでいるので、まるで邪教の神殿にでも向かうような不気味な海中トンネルになってしまったが、灯台の真下に到達すると、景色は一変する。

【『マインクラフトXbox360 edition』珍物件探訪】第5回:拝啓、『バイオショック』――海中トンネルを開通せよ!_10
▲海中トンネルの終着点となる、灯台地下駅。水越しに見える太陽がイイ感じなのだが……写真では伝わりにくい!

 こちらは、駅職人の名をほしいままにしていたフレンドの手による、灯台地下駅。周囲を水のカーテンが取り囲んでいるのだが、このカーテンのおもしろいところは、飛び込めばそこは海中であるということ。このゲームにおける水流の性質を研究して作られたもので、仕組みとしては、モーゼの十戒のように、この駅の部分だけ海水が避けている感じになっている。奇しくも、海中トンネルを作っていたフレンドが命を投げ打って見つけ出した“水流変化による呼吸場所確保”の応用といえる。無論、これが完成するまでフレンドは水流の特性に翻弄され、何度も駅内が水浸しになったが……。

 しかし、これを発展させれば、ガラスを使わない海中トンネルも可能になりそうだ。ガラス設置式ですら死ぬほどたいへんだったので、そっちはもっとたいへんだと思うが、何はともあれ、現実世界では作れない、このゲームならではのおもしろい駅に仕上がっている。この駅は私やフレンドにも「テラ涼しげwwwww」「エンドレスサマーwww」と大好評。海中トンネルともども、ひとりで作っていたのでは思いつきもしなかったアイディアを見せられて、満足感を得られた。

 子どものころ、砂場で山を作り、トンネルを掘って向こう側と開通させた経験は誰しもあると思う。あれは子どもどうしの遊びにおいて、けっこう重要なものらしい。共同作業の楽しさや達成感の共有を考えるとナルホド納得だが、『マインクラフト』はネット上でそれを実現する、新時代の砂場遊びといえる。

 砂場の山に作られたトンネルが開通して、お互いの手が触れ合う瞬間というのは、違う方向から同じ目的に向かった者どうしがゴールに到達することで、おそらくは生まれて初めて、家族以外の者と絆を感じる瞬間なのではないだろうか。そして時を経て成長し、住むところも育った環境も異なる3人が、遥か子ども時代の記憶に懐かしさを覚えながら、また同じ目的に向かって進み、達成する。日々の生活に疲れきった大人も、いまだけはあのころのように純真な子供。トロッコに乗って高速で流れていく風景を眺めながら、思う。いつしか、この景色のように毎日がすごい速さで過ぎていき、振り返ることもなくなってしまったけれど、たまには思い出という名の駅に停まり、ちょっとだけ童心に帰ってみるのもいいんじゃないか。あのころと比べて格段にテクニカルになった、デジタルな砂場遊びで……。

 おお……素晴らしい、ブラボー……ブラボー……というようなシメはどうか、という話をしていたら、「そういや『き・ず・な』ってエロゲーあったよね」と返され、「ああ、アクトレスの」と即座にメーカー名を答えてしまう。

 ……残念ながら、俺たちやっぱり大人だったよ……ちょっと残念な方面の……。

次回予告:M(マイクラ)列車で行こう
「せっかく地下鉄と駅を作ったのだから、他にも駅を作って利便性を高めたい!」
 トロッコを知ってしまった体から出た、そんな自然な欲求に誰が逆らえようか。ワールドの中心にターミナルとなる駅の建設を開始し、駅のシンボルには、あの緑色のライバルのオブジェが……。

■著者紹介 夢崎
ファミ通Xbox 360で実績システムについて書いたり、二次元ドリームマガジン(キルタイムコミュニケーション刊)で変なゲームの記事を書いたりしているフリーライター。最近は『マイクラ』のやりすぎで、公園の木を見ると右手が疼き出す。