絶賛発売中のPSP用ソフト『初音ミク -プロジェクト ディーヴァ- 2nd』(以下、『2nd』)。リズムゲームとしての人気はもちろん、充実のエディット機能が多くのプレイヤーの創作意欲を掻きたてている同作。しかし、機能が多彩過ぎて何から手をつけたらいいかわからないという人も多いはず! そこで、今回は前作『初音ミク -プロジェクト ディーヴァ-』(以下、『ディーヴァ』)時代より、エディットモードでさまざまな作品を作り上げ、『初音ミク -プロジェクト ディーヴァ アーケード-』でそのPV作品が採用されている、エディット職人のふたりに、エディットモードでPVを作り上げるコツと、『2nd』でエディットモードがどのように進化しているのかを伺ったぞ!
PV制作はもちろん、譜面の制作をメインで行っているエディット職人。『初音ミク -プロジェクト ディーヴァ アーケード-』では、『ペリコ・スペースシッパー』や『崩壊歌姫 -disruptive diva-』のHARDでPVが採用されているほか、ろく氏とのユニットA-6として、『ナイトメア☆パーティーナイト』のNORMALも採用されている。MEIKO専属の人。
おもにPV制作を中心に行い、カメラワークに定評のあるエディット職人。『初音ミク -プロジェクト ディーヴァ アーケード-』では、『Starlite★Lydian』のPVが採用されている。

『ミク』との出会いからPV制作のきっかけ

――まずは、おふたりがどのような流れで『初音ミク』と出会ったのか、という部分も含めて自己紹介をしていただければ。

ALIN(オルイン) 2009年の8月後半ぐらいに前作の『ディーヴァ』のほうで、初めて『ミク』を知ったんです。ゲーム自体がとてもいいシステムで、すごく気に入ってずっとやり込んでいたら、いつの間にか『VOCALOID』の中のひとりのキャラクターのMEIKOさんに惹かれてしまって、“専属”と自分の名称につけたという流れで。それからはズルズルとニコ厨状態になっていますね(笑)。

――イチバン最初が『ディーヴァ』っていうのも意外ですね。

ALIN けっこう話を聞いてみると、そういう人は多いですね。『ディーヴァ』から『VOCALOID』を知ってニコニコ動画を見てという人も多いですね。

――742号さんは?

742号 僕もじつは前作の『ディーヴァ』が初めてで。ゲームのほうもじつはあまり興味がなかったんですよ(笑)。もともとは模型とかフィギュアとか、そっちのほうを集めていたので。前作の初回特典で『ねんどろいどぷち』が同梱されるということで、それを目的に購入したんです。それでゲームをやってみたらおもしろかったのと、あとは一般の方が作られた曲が多いということを知って、ニコニコ動画を観るようになりました。そうしたら今度はこのゲームでPVを作っていらっしゃる方がいるというので、それも「すごいな」と思いまして、いろいろと観ているうちに、自分でも作るようになったんです。

――PVを作り始めるきっかけって何だったんですか?

ALIN 自分はPVがある状態で譜面がいろんなところから流れてくるというシステムに非常に興味を惹かれて、譜面の流れで何かを見せられないかと思って、譜面に特化したエディットをするようになったんです。自分の場合、円形とか流線形とかが多いんですけれども、譜面を見るだけでも楽しめるようなものを作ってみたかったんです。もともと別のメーカーさんの音ゲーをやっていて、そういうものを作ってみたかったというのも理由としてはありますね。

742号 僕はニコニコ動画でいろんな動画を観ている中で、『スペースチャンネル5』を『ディーヴァ』で再現している人がいまして、それを見て「あ、おもしろいな」って感じまして、それで「自分もいろいろできたらいいなぁ」と思って始めたのがきっかけですね。あとは2ちゃんねるのエディット職人が集まるスレッドがありまして、そこでコンテストのようなものが開かれていたんです。試しにそれに出場したところ、僕に票を入れてくれる人がいた、ということがエディットを続けていくきっかけになりましたね。

――『ディーヴァ』で初めてPVを作るとなると、最初は相当難しかったんじゃないですか?

ALIN 最初はやっぱりいろんな機能を提示されている状態で、何を触ったらいいかわからないんですよね。とりあえず1個1個試してみようか、というところから始めました。1作目を作ったときも、「これでいい」とは思わずに、「ここまでできた」と考える。そうして感触をつかんで、つぎのステップに進んでいくという感じでやっていました。最初から全部を把握することは、誰にもできないので、ゆっくりゆっくり手探りでやっていくといいと思います。

742号 僕は最初プレビューの見かたもよくわからなくて(笑)。作ったはいいけど、どうやって観ればいいんだろうって。最初からプリセットカメラが用意されているので、それを使っているうちにエディットの仕方がだんだんわかっていきましたね。

――現在は、カメラは手動でやられている?

742号 手動ですね。

ALIN 最初はプリセットでどういう風に流れるのか、というのを観たあとに、カメラで自分でいろんな風にイジり倒してやっている感じですね。

――基本はまず、用意されたものから試してみて?

742号 最初はそうでしたね。

ALIN いろいろ触ってみる。これはどうなるものなのか、というのを目で見て感じてもらったほうが早いほうがいい気がしますね。

↑エディット時のメインとなるこの画面。小節を移動すると、その小節の頭でどんな映像が流れるのかが瞬時に出るため、どの部分なのかがわかりやすい。この状態から選択している小節の曲を視聴できるのもポイント。

エディット職人が注目する『2nd』での新機能

――『2nd』ではPV作られました?

ALIN 2日前までずっと遊んでました(笑)。

742号 ALINさんはゲームメインですもんね(笑)。

ALIN 自分は譜面を作ったりするほうなので、どんな譜面があるのか、すでに収録されているものを遊んで参考にするんですよね。それをもとにどういうアイデアが浮かぶか、という感じです。もう100時間ぐらい遊んでますね。とりあえず『激唱』だけなんとかしてくださいっていう……EXTREME無理です(笑)。ちょっと話がそれましたけど、いまのところ譜面の“音取り”という作業をしているところです。その前にもいろいろと既存の曲をコンバートして触ったりはしていますけど、なかなかいろいろなことができそうだな、と思っています。

――742号さんはPV作られましたか?

742号 作りかけてはいます。新しい機能がいっぱいあるので、まだ使いこなせてはいない感じですね。

――『2nd』で使いやすくなった点は?

ALIN プレビューの見やすさでしょうね。いままでは実際に再生させないと流れが見えなかったのが、小節ごとに流れがコマ送りで見られるんですね。そういうのがあるとけっこう助かります。

742号 あれはいいですよね。

ALIN それもPVだけじゃなくて、譜面のマーカー部分も全部出てくるので、ありがたいです。見た目ですぐにわかるので、いちいち再生して確認して、また修正して再生して、っていう手間がない。

742号 僕は、前作では各小節が曲のどの部分なのかがわかっていないと、そこを修正したいときに面倒だったんです。今回は、小節を選んだ段階でその小節の頭の画像が背景に出るようになっていますので、自分が作ったところをバッと探して「あ、ここだ」とすぐに見つけられるので、すごく便利ですね。

――そのほか追加された機能でオススメの機能とか、注目している機能はありますか?

ALIN 個人的には目線がイチバン気に入ってますね。目ってPVの中でもインパクトが強い部分なんです。昨日試しに、前作で作ったPVを最初からカメラ目線に設定しただけで、とんでもなくイメージが変わったんです。それで、「これは目線だけでしばらく遊べるな」と(笑)。

742号 あとモーション補間の機能ですね。モーションとモーションのあいだをつないでくれる機能で、現時点では使いにくいという意見が多いんですけれども、ひょっとしたらダンス系の曲でその機能をうまく使えば、何かいいものが作れるんじゃないかな、と期待しているんですけれどね。

ALIN モーション補間を利用して、モーションとモーションをつないで、別のモーションを作れないか、ということなんですけれども、探すのはかなりたいへんです(笑)。あとは、位置の移動とかですかね。位置の移動はデュエットができることでインパクトが出てくるものだと思うので、位置をズラしてカメラだけ引いてるけども、いかにも動いているように見せるとか、機能の組み合わせ次第でどんどん化けるな、と。いま出ているものはすごくインパクトの強いものですけれど、それが今後はスタンダードになってくると思います。

742号 ほかにも、フェードインとフェードアウトとか、あとは黒背景と白背景をつけてくれたのがすごくうれしかったですね。前作では、バグ技みたいな感じで、背景の一部で黒いところを探して、そこをわざわざアップにして黒い背景にしていたんですよ。

ALIN それを利用して作ったエディットを『ドリームシアター』にコンバートしたら、映像がリアルになっちゃって黒くないから、「なんか壁が出てきちゃったんですけど!」って(笑)。

――そのほか、譜面などで注目の機能は?

ALIN ドットで修正する機能が追加されていたのが個人的にはプチ喜び状態で(笑)。いろんなものが作れそうだな、と。

――長押しや同時押しが追加されたことで、違ったものが作れたり?

ALIN ホントに曲を演奏している感じ、歌っている感じをダイレクトに感じられるというのは、散々遊んでイヤっていうほど体験したので、そのあたりはいろいろと考えています。譜面はけっこう難しいんですよね。実際自分でやってみてできなかったりすることもあるので(笑)。やってて理不尽な譜面だと楽しくないですから。

↑前回更新した開発陣のインタビューにもあったが、目線の制御は注目ポイントのひとつだ。カメラ目線にするだけでなく、あえてカメラから目線を逸らせたりなど、使いかた次第でPVの表情がガラリと変わる。
↑選択したモーションとモーションのあいだの動きを補間してくれるシステム。今回から新たに追加されたものだが、若干奇妙な挙動を見せるため、いままでどおりカメラワークでモーションの継ぎ目を誤魔化すというのが、通例となっている。だが、使いかた次第で大化けする可能性も!?

エディット時のこだわり

――実際に『2nd』でエディットをしていて、こういう要素を入れて欲しかったというものは何かありますか?

ALIN 譜面の流れるスピードがBPMとそのまま連動しているんですよ。その流れるスピードと曲のBPMは別々に設定できたらいいな、とおもいました。そうしないと、細かい連打が欲しくてもできないといったことがあるんです。ですから、曲のBPMと流れるスピードを別々にするか、3連符か16部音符に対応できるようになることが譜面を作る人にとっては欲しい要素ですね。ゲームに最初から入っている曲などで、タタタン♪って押すところが出てくるんですが、これがけっこう気持ちいいんですよ。それを自分たちで作れないことがイチバン腹立たしい(笑)。

――PVを作る側としては、何かありますか?

742号 細かい表情の付けかたというか、口パクだったり、顔を一瞬悲しい表情にするといった要素を組み合わせていくとすごく雰囲気を出せるんです。でも、最初にBPMを曲に合わせてしまうので、細かい部分まで作り込めないことがあるんです。いままでは80のBPMのものがあったら、そこを倍のBPMにして表情を細かくしたりということをしていて、それは今回もできるんです。でも、今回容量が増えたことで、PVだけじゃなくて譜面もやりたいな、と思っていて。そうやって譜面を意識しちゃうと、そういう裏技的なテクニックが使えなくなっちゃうかな、と。

ALIN このゲームは、BPMに依存する部分というのが、いろいろあるんですよね。

742号 あとは僕の個人的なことなんですけれども、バラード系の曲が好きなのですが、バラード系のモーションが少ないかな、と感じています。フラメンコとかのモーションをゆっくりにして切り取れば何とかなりそうではあるんですけれども(笑)。初めから専用のモーションがあるとよかったかな、と思いますね。

ALIN 僕も個人的なものなんですが、カメラの操作で開始地点と終了地点は選べるんですが、中継点が選べないんですよ。180度回したくても、回すと必ず上か下を通っちゃうんです。

742号 最短距離を移動しようとするようになっているからですね。

ALIN 中継点を設定できるようにしてもらえれば、ここを経由してグルッと回るといった設定がすごく楽になると思うんです。ということで、セガさん、よろしくお願いします(笑)。

――『2nd』のエディットモードはいかがですか? 楽しいですか?

ALIN まだ譜面だけですけど、やり応えはありますよ。いくらでも作ってやろうっていう感じです。ほかの人たちの作っているのを観て、これはすごいなと思うものもあれば、コイツには負けたくないな、というのもありますし。

――焦りはありますか?

ALIN 焦りはないですね。自分が作っているものと同じ系統の方がいないんですよ。譜面を作っている人が出てきたら、そこで初めて焦るんじゃないでしょうか。

――譜面作りでこだわりってありますか?

ALIN つぎの流れが見える譜面。あとはPVとケンカしない、この2点だけは必ず守ろうと思っています。PVを観ていて譜面がキャラクターと重なっていたりすると、すごくイヤなんですよ。俺はめーちゃんを観たいんだと(笑)。ニコニコ動画などで観ている人は、譜面だけじゃなくてPVも観ているので、やっぱりそれが隠れちゃうともったいないと思うんです。流れが見える譜面というのは、たとえば右端に向かっていく譜面で、右端まで到達したあと、つぎに来るターゲットアイコンが左端にあると目が追いつかないんですよ。だから自分の譜面は、難度の高いものもあるんですけど、連打がいっぱいあっても流れが見えるので押しやすいんですよ。

――親切設計なわけですね(笑)。

ALIN やってるとうまくなってるな、って感じがするんですけど、それは目線をこちら側で誘導してるからなんですよね。あとは円形とか流線形といったものをよく使いますね。円形は3作品に1個ぐらいあるぐらい気に入って使っています。

742号 叩いていて楽しいですよね。音ゲーはこの作品が初めてだったんですけれど、ALINさんの作品はけっこうダウンロードしてやっちゃいますね。「楽しい〜♪」って(笑)。

ALIN やっぱり自分でやってて楽しくないと、ほかの人が楽しいとは思わないですからね。そっからまず始めています。

――PVのほうでのこだわりというのは?

742号 ほかの人と比べてどうかという感じなんですけど、僕の中では人間らしい動きというのをなるべく出そうというのはありますね。カメラもカクカク、デジタル的な動かしかたはあまり使わなくて。昔の歌番組とかで歌手が歌っていて、カメラがグーッと寄ったり離れたりという、ああいうのがけっこう好きなんです。あまり歌のイメージを壊さずに、そういう雰囲気を出そうという努力はしていますね。

――ALINさんはPVもけっこう作られているということですが、PV作りでこだわられていることは?

ALIN 必ず作品の元となる曲の歌詞だったり、ニコニコ動画にPVがあるならPVなりを観て、最初に感じたもの、最初のインパクトを反映するということですね。これはおもしろくする、これは悲しくする、これは大人っぽくするとか。いちばん最初に感じたものを重要視しています。元の作品に合ったものを作るのが礼儀だと思うし、作曲者さんに失礼のないようなものを作りたいと思うので。

742号 そうですね。我々は曲を借りている立場なので、曲のイメージは壊したくないですよね。その曲を好きな人が聴いてくれて喜んでもらえるというのがイチバンうれしいです。

ALIN 投コメ(※投稿者コメント)のところに元動画の場所を書いておいて、そちら側を観に行ってもらえたら、それだけで成功です。自分が有名になる必要性はなくて、MEIKOさんの曲を作っている方の支援をしたくてやっていただけなので、俺の動画のマイリス数(※マイリスト数)は増やさなくていいから、そっち側をリストに追加してくれと(笑)。

PV制作はどこから始める?

――PV制作を実際にやってみたんですが、これ難しいですよね。

ALIN 難しいと思うから難しいんですよ。これもゲームのひとつだ、と。パズルゲームのように組み立てていって、答えがないパズルゲームを作っていくっていう感じでやるといいと思います。それでうまくいかなかったときに、何がダメだったかがわかるだろうし、そこでまた新しい答えを探すという永遠に終わらないパズルゲームですね(笑)。

――作るときは、最初どの部分から手をつけるんですか?

ALIN 自分は譜面なんで変り種なんですけど、まず曲を流しながら、どこでボタンを押すかを決めます。自分は“音取り”って呼んでいるんですけど、ボタンを押す場所を全部とっていくわけです。その後にPVのほうの口パクとかカメラ移動、シーン切り替えなどを全部やっていって最後にPVが出来上がったら譜面の配置やマーカーの設定を全部行っていく感じですね。

742号 僕の場合は、曲を選んでから、曲の詩を見たり、曲の元PVを観たりして、最初に全部背景を振ってしまいますね。そのあとはキャラクターを配置していって、カメラのイメージがあるところは、そこを置いていって。背景→カメラ→最後に口パクという感じですね。

ALIN ほかにもカメラを切り替える場所は決めてあるという人もいて、カメラだけさきに作っちゃって、そこに順番にキャラクターを配置したりしていく、という人もいます。だから、人によってぜんぜん違うんですよね。

742号 口パクを最初に入れるという人もいますからね。

――自分なりのこだわりのある部分に関して、まず容量を確保しておいて、ほかを足していくということですかね。

ALIN それもあるかもしれないですけど、自分が最初に触ったときのやりやすさをそのまま維持しているんだと思うんですよ。どういう風に作っていったらいいのかって。

――PV制作をしていて苦労した点や、ぶち当たった壁などはありましたか?

ALIN 前作のころは容量の壁ですよね。『2nd』では容量が30000に増えているんですけれど、前作は8000しかなくて。その中でPVとか口パクとか全部やらなきゃいけなかったんです。それだと、3分〜4分ぐらいの曲で譜面を作ろうとしたら、自分の場合譜面だけで4000ぐらい容量を使っちゃうんですね。そうすると残りの4000でPVを作らなくちゃいけなくなるわけです。『2nd』になったことで容量が増えたので、前作で作ったPVを全部作り直したいぐらい、そのぐらい無理やり削って作っていました。

742号 僕の中では、バラード系のモーションがないというのがやっぱり難しいところでして。ゆっくりした曲に合わせるモーションをどこからひねり出そうというのが課題でしたね。結局ひねり出さずに、既存のものでごまかしちゃっているんですけれど(笑)。あとは、うまい人のを観て衝撃を受けたりして。「わぁ、すごい!」っていうのがたまにありますから。

ALIN これ、自分と同じ『ディーヴァ』じゃねぇよ! っていうのがね(笑)。

――それはどういうところで感じるんですか?

ALIN 見た目のインパクトでガーンと来るものが一瞬でもあると、この人には適わないやって(笑)。

742号 カメラの使いかたの発想がアナログ的ではなくてデジタル的っていうんですかね。それを組み合わせてみたことのない効果を生み出しているっていうのは、びっくりしましたね。たとえばキャラクターを本来は真ん中に置くんですけど、右と左に高速でパパパパッと表示させることで、分身しているように見せたりとか。それをだんだん近づけていって、最後くっついたりという、そういうことをしている人もいるので。今回採用されている50mmさんという方なんですけどね。

ALIN あとはシーン切り替えで手が大きく映し出されるんですけど、手で隠れた瞬間に画面切り替えとか。そういう切り替えのうまさっていうのがやはりインパクト大きいですよね。ここにいないsirakiさんという方のやられていたことなんですけど。

742号 あれはカッコイイですよねー。

ALIN 自分たちにはないものを皆さん持っているので、すごく刺激になりますし、こんなのどうやってやってるんだよって技術的に悩んだり凹んだりもしますしね。スゴすぎて観るとヘコむから、もうこれ観ない……って(笑)。

エディット職人からエディット初心者へのアドバイス!

――PVをこれから始めようという初心者の方に向けてアドバイスがあれば。

742号 とりあえず作ってみるというのがイチバンですかね。作ってみて気に入らないところは修正して、ということをくり返すと、だいたい自分好みのものができてきます。最初から曲が入っているので、まずは入っている曲からやると、エディットがどんなものかがわかると思います。

ALIN あとは自分の作った作品をアップしている人もいるので、ダウンロードしてみてどうやって作ってるのかを研究してみるのもいいかもしれませんね。

742号 表現の部分でうまくいかなければ、映画とかアニメとか何でもいいので、気に入ったシーンを真似してみるとか、そうしたことをしていくうちに自分好みのものが出来上がっていきますね。

ALIN ゲームの中だけに閉じこもってしまうと、どんどん視野が狭くなっちゃうので。いろいろなものを観て、映画を観るだけでもいいですし、歌番組を観るだけでもすごく参考になりますよ。

――ちなみに、エディターさん界隈は横のつながりが広い感じなんですか?

742号 いまはTwitterが広まって、Twitterの中でつながっている人たちが、僕らの中では多いですね。

ALIN Twitterもありますけど、ニコニコ動画のチャンネルでエディターのコミュニティがあるんですよ。そこに質問しにいく、というのもありだと思いますけどね。初心者の方は。初心者向けのニコ生をやろうか、なんていう話も出てるぐらいなので。どんどん我々としてもエディットをする人が増えてくれればいいかな、と思っているので。そういうのを観て、参加してもらえるとうれしいですね。でも、ここ半年ぐらいですかね。いまみたいに横のつながりが広がっていったのは。それまでは2ちゃんねるで名前も知らないどうしでしゃべってるような感じでした。

――皆さん、ひとつ作品を作るのにどれぐらいの時間をかけていらっしゃるんですか?

ALIN 自分の場合はPVだけでも譜面つきでも、だいたい30時間ぐらいかかっていますね。作っていてノってくる時間っていうのがあって。1時間ぐらいぼーっとやったあとに、急に目醒めてババババッと作ることが多くて。だいたい1週間のあいだに30時間ぐらいやって制作しています。

742号 僕は1日2〜3時間ぐらいで、2週間〜3週間ぐらいですかね。だんだん作り込んじゃって制作期間が長くなってしまっているということはありますね。

――それでは最後に、今後どんなPVを作っていくか、ということを伺えれば。

ALIN 最終目標としては譜面とPVが融合した、どっちが欠けても成立しないようなものが作れれば。これは自分の最初の目標だったんですが、まだ完全にそこに到達はしていないかな、と感じています。譜面とPVがあって初めて完成するような、このゲームじゃないと作れないものを作れればと思っています。その作品を見て、セガさんから「ぜひ使わせてください!」って言われたいですね(笑)。あとは、本当の最終目標としてはMEIKOさんで100作品、作るということですね。まだ36個しか作れてないですから。作り終わったら引退かな(笑)。

742号 僕のほうは、今回ダンス系のモーションがたくさん増えているので、それをうまく使ったダンス系のPVが作れるとおもしろそうかな、と思っています。あとはやっぱり譜面も置いて、楽しいものができたらな、という想いがありますね。

さてさて皆様、全4回にわたる『初音ミク -プロジェクト ディーヴァ- 2nd』特集いかがだったでしょうか? 開発陣のインタビューでは、『初音ミク』好きのスタッフたちによって、この魅力的なゲームが作られていることを実感し、今回お届けしたエディット職人さんたちのインタビューでは、プレイしているユーザーさんの生の声を聞くことができました。そうしてお話を聞くことではっきりとわかったことは「みんなミクが好きなんだな」ということ。だからこそ、『初音ミク』は知っていても楽曲に関してはほとんど知らないという人がプレイしても、どっぷりとハマれる作品になっているのではないでしょうか? 『初音ミク』が好きという人も、どういうものかあまり知らないという人も、今回の特集で、その魅力の一端に触れてみてください!
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