2010年7月29日に発売されたPSP用ソフト『初音ミク -プロジェクト ディーヴァ- 2nd』。発売後にすでにミクの魅力の虜になっている人も多いだろう。そんな『初音ミク -プロジェクト ディーヴァ- 2nd』が、いったいどのようにして作られているのか? また、どんなところが楽しく、その楽しさを追求するために開発陣がこだわった部分とは? 特集第2回では、そんな疑問をセガの開発スタッフに切り込んでみたぞ。
2009年7月にセガよりリリースされた『初音ミク -プロジェクト ディーヴァ-』。『初音ミク』ユーザーのあいだで人気の楽曲や、ユーザーの描いたイラストなどがゲーム中に収録されるなど、ミク好きが集まって作り上げたゲームという様相を呈した。さらにリズムゲームプレイ時に画面上で流れるPVは、「これでもか」というほどに気合の入った……というよりもミクへの愛が込められた作り込みとなっていた。そんな『初音ミク -プロジェクト ディーヴァ-』を作り上げた開発スタッフというのは、どのような人たちなのか? これまで謎に包まれていた開発陣の中から、ファミ通.comでは、『初音ミク -プロジェクト ディーヴァ- 2nd』のクリエイティブプロデューサー・林誠司氏と、ディレクター・大坪鉄弥氏にお話を伺う機会を得たので、ふたりのこだわりポイントともに、同作の魅力に迫っていく。
前作ではディレクターを務め、本作ではクリエイティブプロデューサーとして、外部クリエーターとのやり取りやゲームシステムまわりの監修、曲の選定などを行う。大坪氏によると“ミク廃”(※重度のミク好きのことを表す言葉。)。
セガ社内で開発している部分や、外部でやっている部分の橋渡しなど、現場の切り盛り役。クオリティーとスケジュールのバランスを取る役回りであり、スケジュールに関してのツッコミ役でもある。
『初音ミク -プロジェクト ディーヴァ-』シリーズといえば、ミクたちの魅力をさまざまな形で引き立ててくれる“モジュール”の数々だろう。多彩なコスチュームや、別のキャラクターなど、数多くのモジュールが用意されており、手に入れたモジュールは楽曲や好みに合わせて自由に着せ替えられるのだ。そんな同シリーズにおける大きな魅力のひとつであるモジュールだが、前作では不満もあったようで……?
『前作では、モジュールを手に入れるために、各モジュールごとに用意された条件をクリアーする必要があった。基本的には各曲をクリアーすることが最低条件になるのだが、この条件をクリアーしようにもリズムアクションゲームが苦手な人にとっては、なかなか難しい条件であることも事実。この不満は解消されたのだろうか?
本作では、リズムゲームクリアー時に“ディーバポイント”(以下、DP)が手に入る。このDPを消費することで、ショップでモジュールを手に入れることができるのだ。難易度“EASY”でもDPは手に入るので、難易度をEASYにして、得意の楽曲を何度もプレイすれば、誰でも好きなモジュールを手に入れられる。
←ミクたちが生活する姿を見られるDIVAルームのアイテムも、購入して手に入れることができる。気になるアイテムを購入して、自分だけのルームを作ろう。
→リズムゲームプレイ時にさまざまな手助けをしてくれるヘルプアイテムが追加された。低価格で購入できるので、ぜひ買っておこう。
↑収録されたモジュールの数は、前作の53種類にさらに53種類を加えた、なんと106種類! しかもデュエット曲などの組み合わせや楽曲との組み合わせを考えると、膨大な数に!!
“水着マラソン”とは、前作で用意された水着系モジュールを手に入れるために、同じ楽曲を何度もプレイしなければならなくなる状態のこと。獲得条件が、ある特定の条件下で、すべての楽曲をクリアーするという条件のため起こった現象だが、正直きびしいッス……。
『2nd』では、モジュール獲得のための条件をなくし、前述したようにショップでの購入によってモジュールを手に入れることができるようになっている。しかも、難度が高いほど、得られるDPも多くなるため、すべてのモジュールをコンプリートしたいという人は、“EXTREME”などの難度で好きな曲をプレイしているうちに、モジュールを一気にゲットできてしまうぞ。
前作のモジュールを基本的にすべて収録したのは、エディットで使えなくなったらユーザーの方も悲しいだろうと思ったのと、新作モジュールも同じくらいの数を作ることで、『2nd』にふさわしいボリューム感を出したかったからです。ポイント制にした大きな理由としては、リズムゲームがうまくなくても、高い点数を出して高い評価にしなければいけないという条件を満たさなくても、がんばってプレイしていればポイントが貯まって、ほしいコスチュームを手に入れられるようにしたかったんです。前作でいただいたご意見というのは非常に両極端だったんですよ。リズムゲームが得意な人にとっては「簡単すぎるよ」、「もっと難しくしてくれ」という意見をいただきました。逆にミクは好きだけど、それほどリズムゲームが得意なわけじゃないという人からは、「ミクが好きでPVが観たくて買ったのに、なんでこんなことをさせるんだ」というような意見をいただいたんです。『2nd』ではどちらの方にも楽しんでもらいたいと思ったので、“EASY”のバランスなどもかなり調整をしまして、ヘルプアイテムも導入して、がんばれば手に入るよ、という風にしました。
『2nd』になって、100種類以上用意されたモジュールの数々。楽曲やイラストなどを投稿するコンテンツ投稿サイト“ピアプロ”で募集したコスチュームデザイン案や、新たに作り上げられたコスチュームなど、そのデザインは非常に幅広いものとなっている。そんなデザインの中から開発陣注目のモジュールを数点紹介。「(みくずきんは)イラスト自体もかわいかったんですが、立体になったらヤバいなと思っていました(笑)」と林氏が語るように、開発陣もモジュールが出来上がっていくことに大きな喜びを感じていた様子。しかし反面、「モジュールと楽曲の組み合わせでいろんな問題が起きてしまうんです。何度調整しても解決しなかったのが、ようやくうまくいったときには、“やってやったぞ!”という達成感がありましたね。終盤はそのモジュールの名前を聞くだけで、どっと疲れるようなものもありましたけどね(笑)」と苦労話も絶えない様子。そんな開発陣の想いがわかるエピソードとして「開発の途中で精神的に辛くなってきたときに、ひとまず仕事を忘れて自分の好きなモジュールを選んで、踊っている姿を見ていると心が癒されるんです(笑)」(大坪)といったものも。ミクに悩まされ、そしてミクに癒される、そんな関係の中、製作が進められたのだ。
本作のメインとなるのが、数々の楽曲を“歌うように”プレイするリズムゲーム。画面内に流れてくる“メロディアイコン”のマークが、画面内に配置されたマークと重なったときにボタンを押すだけ、というシンプルなシステムに、本作から“長押し”と“同時押し”の要素が加わり、難度とプレイの幅が広がっている。ただただ、クリアーを目指すだけでもよし、高得点を狙うもよし、プレイヤーごとにその目標設定を自由にできることも、思わず遊んでしまう要因といえるだろう。
リズムゲーム中、必ず訪れるチャンスタイム。前作ではチャンスタイム中にコンボをつなぐほど、1000、1100、1200……と、上限なくどんどん得点が上がっていくシステムとなっており、チャンスタイム以外のところでミスが続いていても、チャンスタイムさえうまくコンボをつなげば、高得点を叩きだせるような状態だった。でも、それってゲームバランスとしてどうなの?
本作では、チャンスタイム時の加点方法が大幅に変更されている。チャンスタイム中はスコアが倍になるとともに、コンボ回数に応じてボーナススコアが追加される。さらに、チャンスタイム中のCOOL+FINEのボタン入力成功率でのボーナス加点もある。ただし、クリアーランク評価がスコアから入力成功率に変わったため、チャンスタイム以外でのプレイの重要性が相対的に増している。プレイ中、つねに集中していないと、高評価が狙えなくなっているのだ。これにより、チャンスタイム以外でのプレイも重要性を増すことに。さらに、コンボを何回つないだか、といった条件がSTANDARDや、GREATといった、クリアー後の評価につながるようになっているため、プレイ中つねに集中していないと、高得点が狙えなくなっているのだ。
↑→チャンスタイム中、どれだけコンボをつないでも、前作のような爆発的なスコアは得られない。しかし、コンボをつなぐ、ということ自体が評価の対象となっているので気を抜かずにプレイしよう。
前作をプレイしていると、ボタンを押すタイミングがぴったりマークが重なった瞬間よりも、若干ズラしたほうが、“COOL”が出やすいと感じた人も多いのではないだろうか? ということは、じつは内部的にボタンを押すタイミングが、マークの少し後ろ側にあるのではないか、と予想。果たして、結果は……?
上記の疑問を開発陣に投げかけたところ、内部的には間違いなくマークの中心に判定のタイミングが置かれているとのこと。実際、こういった声がユーザーからも多く寄せられているとのことで、ジャストタイミングの前後の猶予時間やボタンを押した際のSEの音の立ち上がりなど、いろいろな要素が絡み合い、後ろにタイミングが置かれていると錯覚してしまっているのではないか、と開発陣は考察。システムやタイミングは変えずに、遊んだときの感覚として気持ちよくコンボがつながるように調整を加えたとのことだ。
↑前作では後ろ目に感じていた判定のタイミング。開発陣がいろいろと研究し、原因を突き詰めバランス調整した結果、今回はストレスを感じることのない、直感的な入力ができるようになっているのだ。
前作の反省のひとつが右手しか使わない、という点ですね。「左手を添えるだけ・・・・・・」では物足りないということで、ボタンを操作する同時押しを入れました。それだけでは単に難易度が上がってしまいますが、もうひとつの反省“ボタンを押し続けたいところで押せない”という部分を解消するために長押しも追加しています。長押しは、自分でも前作をプレイしていて声を伸ばすような場面や、シャウトのところなどで、どうしても「押し続けたい!」と思う場面があったんですね。ここは押し続けたほうが歌に感情移入できるんじゃないかな、と。そういった気持ちを形にしたシステムです。2作目ということもあって、スクリプターの力量もグッとアップしていて爽快感のある譜面に進化したと思っています。
新要素のアイコンデザインはものすごくいろんなものを試しました。同時押しは○と→をくっつけたようなデザインを考えたりもしていたのですが、情報量が増えてしまうと逆にわかりづらいんですよね。現状のデザインもこれが最高なのかわからないところではあるんですけれど、我々の考えるイチバンいい形にできたんじゃないかな、と思っています。長押しもふつうのアイコンだとわかりづらいから、帯をつけようと。じゃあ、帯の色は何色にしようか? といったところを、何度も何度もトライ&エラーして、見やすい形にしています。情報量の多いアイコンだとEASYやNORMALだといいんですけれど、HARDやEXTREMEになると色もいっぱいあるし、わかりづらくなってしまうんですね。そこでデザインを何度も再考することになりました。
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