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雑誌『映画秘宝』にも寄稿する著名映画ライターも絶賛!『重鉄騎』の圧倒的な戦場描写編

プロフィール
青井邦夫(あおい くにお)
イラストレーターであり、おもに戦争・アクション・SF作品を扱う映画ライターとしても活躍。また、ムービーウェポンアナリストあるいは"ピストル番長"を名乗り、映画に登場する武器描写などに関して、豊富な知識を背景とした分析、ツッコミを入れることも。そちらの活動については、雑誌『映画秘宝』での連載企画"珍銃狩り"を参照されたし。

読者の皆様は、押井守監督が手掛けた『重鉄騎』コラボレーショントレーラーはご覧になられただろうか? まだ観ていないという方は、いますぐこちらのページから(※1)チェックしてほしい。同監督ならではの、CGと実写が融合したコラボレーショントレーラーは必見だ。また押井監督は今回のトレーラーを手掛ける中で、『重鉄騎』が映画に向いた題材であることをくり返し強調していた。確かに、戦場のリアルを徹底的に描き切った『重鉄騎』は非常に映画的なゲームとも言える。そこで今回は、戦争や軍事関連にも見識の深い映画ライターの青井邦夫氏を招き、"映画的視点"から『重鉄騎』を論じてもらった。併せて、青井氏がセレクトした、『重鉄騎』を遊ぶうえでチェックしておきたい映画も紹介する。

(※1)トレーラーページへ

 残念ながら僕は最近あまりゲームをやらないのだが、ファミコン(古いね)のころは少しはやっていた。それよりさらに昔、子どものころはまだテレビゲームそのものが少なかった。まず家庭用のゲーム機なんてなかったし、ゲームセンターにあるのもモニターを使ったものではなく、実際に鉄の玉が飛んで、それで鉄板の的を倒すような荒っぽいものが主流だった。要するにピンボール・マシンの変形みたいなゲームだったのだ。

 そのかわり子ども同士の"ごっこ遊び"はかなりマニアックだった。当時人気のあったアメリカの戦争テレビシリーズ『頭上の敵機』に出てくる爆撃機B-17のコクピットを、椅子を組み合わせて再現し、操縦ごっこをやっていたのだ。いまにして思うと、よくあれだけのもので想像だけで遊べたものだと思う。子どものころは想像力だけはいっぱいあったのだろう。 なんでそんなことを思い出したかというと、このキネクトを使った『重鉄騎』の遊び方がちょっと昔の"ごっこ遊び"に似ていたからだ。

 もちろん『重鉄騎』はKinectさえあれば椅子に座るだけでOK。それだけで、凝ったデザインのコクピットが、画面の中にちゃんと用意される。また、鉄騎を動かすまでにそれなりの手順を踏まなくてはいけないのは、このゲームが正しく"ごっこ遊び"を目指しているからだろう。人間は身体を動かしていくうちにだんだんその気になっていくのだ。そういう遊びかたができるのは、Kinectの強みなんだと思う。

 鉄騎のデザインを初めて見たとき、戦争映画をたくさん見てきた僕としては、思わずニヤリとしてしまった。大雑把に言ってしまえば、鉄騎はキャタピラの代わりに足のついた、二足歩行型のいわば戦車だ。しかしその戦車を思わせる部分が意図的に古臭くなっている。ちょうど第二次世界大戦から朝鮮戦争あたりの実際の米軍の戦車の雰囲気が実にうまく活かされているのだ。これは『重鉄騎』の世界では、すべてのコンピューターが使用不能になり技術が後戻りしてしまったという設定になっているからなのだが、それにしても絶妙な取り合わせだと思う。そしてこの鉄騎に乗るアメリカ兵のスタイルも、同じ1950年前後の米軍の装備によく似ている。真面目に考えたら、いくら技術が逆行してもファッションまで古くなる必要もなさそうだけれど、そんな理屈を吹き飛ばすくらい彼らのファッションは鉄騎のデザインと調和している。このメカに乗るのならこのスタイル、というのは確かにあるものだ、と感心してしまった。

 鉄騎を動かす手順も簡単にはいかない。幾つかの手順を踏まないとエンジンがスタートしない。これは原子力や電力ではなく内燃機関で動くものだから。しかもひとりの作業ではなく同乗するクルーとの共同作業になる。同乗者がいるのは戦闘時にはとても心強いが、同時に彼ら、彼女らの生命も気にかけなくてはならない。自分の立てた戦術がまずいと場合によっては誰かが死んでしまうこともあるのだ。ゲームを進める上で彼らとのやり取りが何回か用意されているから、彼らを失うと戦友を失った寂しさをちゃんと感じるようになっている。

 鉄騎が無事動き出しても、戦闘が始まると操作はたいへんだ。まずレーダーが無い設定だから敵の位置がはっきりしない。いちばんストレートなのは意を決してハッチを開け、頭を外に出して周囲を見回すことだ。これはKinectセンサーの前で実際に立ち上がらなくてはならない。しかも頭を出せば無防備だから危険だ。あるいは小さな覗き穴(スリット)から見るか、望遠の可能なペリスコープを使うのだが、視野が狭くなって敵を見落とす危険が増える。このへんの臨場感は実物の戦車と変わらない。しかも敵の攻撃が命中するとスリットの防弾ガラスにヒビが入って見づらくなるし、下手をすればガラスが割れ無防備になる。すると敵の弾がコクピットに飛び込んでクルーや最悪自分が死んでしまうことも起きるのだ。そうでなくても被弾して機内に煙が充満したら、すぐさま排煙装置を作動させなければ操作が続行できない。

 しかしこのゲームの臨場感はそれだけではない。大勢の仲間と敵前に上陸する作戦をやるとそれがわかってくる。単純なシューティングのように敵を見つけて撃破するだけではダメなのだ。鉄騎の役割は歩兵戦車のようなもので、あくまでも上陸した歩兵をサポートしなければならない。敵戦車の砲撃で動けなくなった歩兵部隊から救援要請があったら、その敵の戦車や鉄騎を破壊するのが第一の使命となる。そうしないと作戦自体が失敗になってしまう。架空の兵器を扱いながらも、このゲームはかなりその辺の理屈が実戦に近く作られていて、場合によっては戦争映画よりもリアルにできているから驚いてしまった。

 逆にいかにも戦争映画的なシチュエーションもちゃんと用意されている。敵の進行するルートを破壊しないと敵を妨害できないのに、鉄騎の火力だけではルートを潰せない場合があるのだ。そんな時は外に出て爆破装置を作動させなければならない。戦争映画の定番的な展開で、かなりハラハラする。こういうシチュエーションも適度に配置されているので、いつしか鉄騎が実在する兵器に思えてくる。しかもこの鉄騎には自爆装置まで付いている。一体どんなシチュエーションでこの恐ろしい装置を作動させるのだろうか? 自爆装置が有効なシーンもあるのだろうか? そんなことまで想像させる、とてもよくできたシステムだと思う。

ナッ○みたいにならないための

戦場へ行く前に観ておきたい 『重鉄騎』予習映画セレクション!

青井氏も語る通り、『重鉄騎』の戦場は非常に映画的な驚きに満ちており、つまりはとんでもなく恐ろしい! その恐ろしさときたら、ゲームキャラクターのナッ○が錯乱して銃弾の嵐の中へ飛び出してしまうほどだ。そんな事態を避けるためにも、映画で事前に戦場を知っておくべし! 以下の3本は青井氏がセレクトした、『重鉄騎』予習映画とも言えるDVD作品たち。しっかりチェックして、出撃に備えてほしい。

『プライベート・ライアン』

『重鉄騎』には激しい上陸作戦のシチュエーションがあるが、この元になっているのは多分第二次大戦で連合軍がフランスに上陸したノルマンディ上陸作戦だろう。この作戦を描いた映画としては1962年の『史上最大の作戦』という名画があるが、いま見るとちょっと古いしカラー版もあるものの元は白黒映画だ。それよりもこの上陸作戦について知りたければ格好の作品といえるのがスティーヴン・スピルバーグ監督の『プライベート・ライアン』だ。一家の男の兄弟が全員兵士となり、しかもひとりを残してみんな戦死してしまったライアン家。この事実を知った軍は宣伝のため生き残ったライアン一等兵をなんとしても救うため、ミラー大尉の分隊を差し向ける。映画の冒頭、ミラー大尉たちがノルマンディに上陸するシーンはいきなり凄まじい迫力で展開する。デジタル技術を駆使した映像と音響はもう映画とは呼べないくらいの臨場感で、この映画を見た戦争経験者は辛い記憶がよみがえり気分が悪くなったという。過酷な上陸作戦を知るにはベストの作品だ。クライマックスにはロシアのT34を改造したタイガーI型戦車や実物のマルダー自走砲も登場、ミラー大尉たちとの激しい戦闘を展開するぞ。

『サハラ戦車隊』

『重鉄騎』の主人公の乗る鉄騎は第二次大戦直後の試作戦車のようでもあるが、同時に大戦初期の米軍のM3リー中戦車の雰囲気も感じさせる。これは車体の右前面に大砲が付いているからだろう。M3中戦車は有名なM4シャーマンの元となった戦車で、第二次大戦の中期まで米軍の主力となった戦車だ。どちらかと言えば旧式なデザインだが、主砲塔以外にも車体右側前面に大砲が付きだした姿は勇ましく強そうに見える。実際の戦争はともかく映像作品では見栄えのするデザインだ。スティーヴン・スピルバーグの戦争コメディ『1941』にもダン・エイクロイドが乗って登場するが、このときの戦車と同じルル・ベルという愛称がつけられたM3が1台だけで大活躍するのが1943年のアメリカ映画『サハラ戦車隊』だ。舞台は1942年の北アフリカ戦線。味方とはぐれてしまった1台のM3戦車を率いるガン軍曹は、味方を求めてさすらううちにイギリス軍の生き残りや敵イタリア兵、撃墜したドイツ軍パイロットなどを連れてオアシスに向かう。しかしドイツ軍もこのオアシスを狙っていたため激しい戦闘が開始された。カラー版のリメイク作『デザート・ストーム/新・サハラ戦車隊』もある。

『バルジ大作戦』

公開されたのは1966年とずい分昔だが、いまだに戦車戦を描いた戦争映画の定番中の定番。第二次大戦末期、1944年のベルギー。ドイツ軍は連合軍に追撃されていたが、アルデンヌの森に機甲部隊を集結して最後の反撃を試みる。一応史実に基づいた映画だが、娯楽映画としてかなり大胆に脚色している。そのためリアリティーには問題があるものの、娯楽作品としてはサービスたっぷり。何しろ実物の戦車が多数登場して派手な戦車戦をくり広げるのだ。実際はドイツ軍はタイガーII型、アメリカ軍はM4シャーマン戦車が主に使われたのだが、アメリカ軍はともかくドイツ軍で映画撮影に使えるものは残っていなかった。そこで代わりにアメリカ軍のM24チャーフィーとM47パットン戦車がアメリカ軍とドイツ軍に分かれて戦うこととなった。M47はタイガーに似てはいないのだが、物語に夢中になっていくうちにタイガー戦車のように見えてくるから不思議だ。ドイツ軍の指揮官ヘスラー大佐に扮した名優ロバート・ショーの凛々しい姿も印象的だ。この頃のアメリカ兵のスタイルはまさに重鉄騎のアメリカ兵とよく似た装備。ゲームをやる前にイメージを膨らませるのにはピッタリの映画だ。

連載企画 イチから始める『重鉄騎』

Vol4 初めてのミッションクリアー

6畳間でKinectを遊ぶ方法を考察

1週お休みを挟んだので、2週間ぶりの登場です。ご無沙汰しております、本特集の担当編集キモ次郎です。少しあいだが空いたので前回までのあらすじをお伝えしますと、自宅を晒すという羞恥プレイの後にいよいよ鉄騎へ搭乗し、チュートリアルで隊員のナッチを「かわいいやつだぜ!」と思ったのも束の間、いざ戦場へ出てみるとそのナッチが敵前逃亡しようとして、テンヤワンヤの末に爆死。これが本連載企画、Vol.3までの流れです。そして今回はいよいよ、最初のミッション"凱旋"をクリアーしてみようではありませんか!まず戦場に出てみて&何回か爆死して、いくつかわかったことと反省すべて点が見つかりました。わかったことは、鉄騎は思ったよりも丈夫ということ。ファーストミッション"凱旋"では、戦場へ降り立った瞬間から、敵歩兵や装甲車からバラバラと弾が飛んできて、コクピット内は"カンカンカンカン!"と非常にカオスなサウンドで満たされるのですが、実際のところこれは大したダメージにはなっていないようなのです。それよりも心配するべきは、敵軍の鉄騎およびトーチカからの砲撃でしょう。これは一撃でも食らえば、何かしらのアクシデント(スリットのガラスが割れる、コクピット内が煙につつまれる、装甲に穴が開くetc……)が起きること請け合いです。

6畳間でKinectを遊ぶ方法を考察

とはいえ、砲撃の命中精度は決して高くないので、動きを止めなければ当たる可能性は低い。つまり、戦場でボーッと立つのは厳禁!当たり前のことですが、周囲の混沌ぶりに惑わされて意外と忘れてしまうことなので、改めて書いておきます。そしてつぎに反省したこと。……これはもう基本中の基本なのですが、作戦内容をちゃんと確認する!プレイ中にスタートボタンを押すと表示できるメニュー画面には、作戦マップとともに敵の防衛ラインや、自軍の進軍ルートがしっかり記されているではありませんか。前回のプレイでは"高台にあるトーチカまで工兵たちの進軍ルートを作ること"というボンヤリした認識しかなかったので、デタラメに進軍し、結果爆死という最悪な結果を招いたわけです。動きを止めない&作戦内容をちゃんと確認する——前回のプレイから得たこの2点を頭に叩きこんでいざプレイしたところ、なんということでしょう、あんなに怖かった戦場がガラっとさま変わりしたではありませんか。混沌とした戦場の中に、攻略ラインのようなものが見える!……気がする!頭の中にある攻略ラインに沿って移動しながら、作戦マップにあった防衛ラインを破壊してくと、アッサリとトーチカを制圧することができてしまいました。

最初のミッションをクリアーしただけですが、『重鉄騎』についてわかってきたことがあります。本作は臨場感たっぷりに戦場を体感するゲームですが、根本的なゲームプレイの部分ついては、最先端のグラフィックとは裏腹に、非常に伝統的なゲーム文法が盛り込まれている。トライ&エラー、つまり死んで覚えるってやつです。

だから、筆者のようにファーストプレイで成すすべもなくやられるのはふつう!(だと思いたい)。一方で、戦死を重ねて攻略方法を"発見"すれば、いままでの苦労はなんだったんだ!? と、驚くほどスムーズにクリアーができてしまうのです。やられるのは恥ずかしいことではない、恥ずべきは失敗から何も学ぼうとしない己である! と、カッコイイことを言ったところで今日は失礼いたします。

……あ、あとぜひお伝えしておきたいことがありました。今回の記事冒頭でお伝えした押井守監督のコラボレーショントレーラー以外にも、『重鉄騎』ではユニークな映像企画が展開されている。その内容は、元傭兵の高部正樹氏が『重鉄騎』に挑戦するというもの。傭兵ならではの冷静な戦場分析、そしてそんな冷静な分析を上回る戦場の混乱に翻弄される高部氏は必見! また、『重鉄騎』の魅力はゲーム映像だけではなかなか伝わりにくいので、プレイしている人の姿も映した本動画は、ソフトの購入を迷っている人にとってかなり参考になると思います。

『重鉄騎』でKinectを始める人はオトクな同梱版がオススメ!

『重鉄騎』の発売を機にKinectデビューを検討している人に朗報。
Kinectセンサーとソフトの同梱版が、数量限定で発売されるのだ。
価格は19800円[税込]。なお、本同梱版には数量限定ダウンロードコンテンツとして 鉄騎の外観を変化させるだけでなく、性能もアップする“特殊迷彩『カーボンアサシンパック』ダウンロード ご利用コード”も封入されている。

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