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鋼鉄対談!後編

カプコン 北林達也プロデューサー/フロム・ソフトウェア 岡野勇ディレクター×ファミ通Xbox 360 松井ムネタツ編集長

『重鉄騎』の見どころは、Kinectセンサーを使った操作……もとい"操縦"だけではない。大胆な予測&最悪のケースを取り入れて、絶望的な近未来の社会情勢を我々に提示するストーリーも見逃せないポイントだ。前回に引き続いてお届けする、カプコンの北林達也プロデューサー&フロム・ソフトウェアの岡野勇ディレクターと、業界唯一のXbox 360専門誌"ファミ通Xbox 360"の編集長を務める松井ムネタツの"鋼鉄対談"後編では、その世界設定がいかにして生まれたのかを探る! また押井守監督が手掛けるというイメージトレーラーの話題にも言及。押井監督が絶賛する、『重鉄騎』の戦争表現とは? 松井ムネタツによる"鋼鉄コラム"では、2010年の『重鉄騎』発表当時を振り返りつつ、同作のジャンル名"ドラマティック戦場体験"の真意を分析する。

年表まで作って臨んだこだわりの世界設定

松井 『重鉄騎』は近代文明が失われた世界を始め、ストーリーも特徴的ですよね。どういった経緯で今回のような設定が生まれたんですか?

北林 近未来が舞台という設定は最初から決まっていたので、そうなると当然インターフェースも未来的なものにしなければいけません。未来的なインターフェースで、かつKinectを使うとなれば……まず思い浮かぶのは映画『マイノリティー・リポート』であったような空間上を操作するディスプレイのようなものでしょう。でも、Kinectで行う鉄騎の操作にはもっと機械的なものがふさわしいと思ったんです。その考えから始まって、近代文明が失われた未来という世界設定が生まれました。あとは、スタッフの多くが第二次世界大戦の雰囲気が好きだったという理由も、少なからずありますね。

松井 確かに『重鉄騎』の世界は第二次世界大戦の影響が色濃く現れていますよね。鉄騎もロボットと言うよりは兵器という言葉がふさわしい感じがしますし。

北林 我々は『重鉄騎』をロボットゲームじゃなくてミリタリーゲームとして描きたかったんです。油と埃にまみれた世界――それをつねに考えていました。

岡野 ヒロイックなメカと兵器はまったく別物だと思います。たとえば鉄騎にウィングがあって、動きも軽やかで敵をつぎつと倒すような存在だったら、このゲームの印象はまったく違うものになっていたでしょう。また、戦場でヒーローなるという状況は、見かたを変えればただの大量殺戮になってしまう。我々が描きたかったのは現実的で説得力のある戦場なんです。

北林 だから鉄騎のデザインに関しては本物らしさにこだわりました。それこそ、戦争博物館に飾ってあってもおかしくないような雰囲気ですね。

岡野 嘘をなくすことを追求していった結果とも言えます。複数人の人間で運用するならこれくらいの大きさは必要だろうけど、あまり大き過ぎると被弾しやすくなるからここは小さくして……といった具合の思考を積み重ねていきました。

松井 戦場のリアルを考え抜いた結果、必然的にいまの形になったと。ストーリーの細かい設定にも当然かなりのこだわりが?

岡野 かなり気を配りましたね。「シリコンが存在しないってことは、この技術はありえないな……」といった具合に。

北林 通称“シリコンカビ”と呼ばれる細菌の存在にはかなり神経質にさせられました。シリコンはコンピューター機器を運用するうえでは欠かせない存在ですが、日常使うものすべてに影響があるかと言えばそうではありません。また、代用品が発明されている可能性もあるわけですし。

岡野 本作の世界設定は、文明が過去に戻ったわけではなくて、あくまで一部の技術が使えなくなっただけ。だから第二次世界大戦のときとまったく同じ武器を使っていたら嘘になりますし、もしそうするならば最初から第二次世界大戦を舞台にすればいい話ですよね。

北林 まあ、そこらへんに関してはフロム・ソフトウェアさんにだいぶ揉んでもらいましたね(笑)。

松井 自分たちが設定した事実関係を元に、歴史の教科書をゼロから作るような作業ですね。

北林 実際、現代から『重鉄騎』の時代にまで続く年表も作りました。空白を穴埋めをしてく感覚でアイデアを出しあって……ゲーム内では描かないようなところまでこだわって。

岡野 制約が多いのでとてもたいへんな作業ではありましたが、そこをしっかりとやったおかげで、辻褄を合わせるといった必要はありませんでした。

北林 あとは登場人物の設定もかなり細かいところまで作り込みましたね。メインのキャラクターはもちろんのこと、主人公の隊に所属している隊員ひとりひとりまで……もう、そのまま映画撮れるんじゃないかな、っていうレベルですよ。

映画化も!? 押井守監督も絶賛した『重鉄騎』のコクピット描写

松井 ちなみに、『重鉄騎』のボリュームはどれくらいですか?

北林 個人差あるとは思いますがキャンペーンモードのクリアだけなら、15〜20時間くらいですかね。ただ、一度クリアーしたら終わりということにはならないと思いますよ。たとえば、誰といっしょに鉄騎に乗るかによって、プレイの感覚が大きく変わったりしますから。

岡野 敵からの攻撃にすばやく反応する隊員も入れば、すぐ気が動転して「ああ! ああ!」しか言わない隊員もいます。

松井 誰といっしょに戦うかで、プレイヤーごとに違う戦争体験が待っているわけですね。

北林 おかげで、ボイスの収録がすごいことになってしまいました。ふたつのスタジオを同時に使って、1ヵ月くらいかかったかな……収録スタジオのスタッフが「これはRPGですか!?」って驚くらい(笑)。まあ、それくらい隊員がよく喋るんですよ。

岡野 同じ人物でも、危険なシーンで「危ない!」と言う場合もあれば、「あっ!」しか言わないこともあるし、「あ、あ、危ないっ!」と間を取ることもある。それくらいのパターンがないと、臨場感って出ないと思うんですよね。

北林 だから1回目のプレイと2回目のプレイではまったく違う体験ができると思います。

松井 そういえば本作では、押井守監督がプロモーション映像を制作していますよね。

北林 ええ、先日お会いする機会もありました。そのときうれしかったことがあったのですが、『重鉄騎』について「映画にしたくなるゲームだ」って言ってくれたんですよ!

松井 そもそもどういったきっかけで押井守監督が絡むことになったんですか?

北林 何か仕事につながればいいな、という思いでトレーラーを送ったんですね。そしたら、押井さんのほうから「何か絡めないかな?」と声をかけてくださって‥…僕らが考えた世界観を認められたというのは、すごくうれしかったですし、自信を持つことができました。あと押井さんが褒めてくれたのが、鉄騎の中でも争いが起きているという点。初期のトレーラーで掲げた“War Inside and Out”というテーマが、本作のすべてを現していると言ってくれました。今回のPV撮影でも押井さんは、内部の息苦しさを表現するために「戦車の中が撮りたい」とずっと言っていたくらいですから。

岡野 実際、ゲームでも鉄騎内部は“もうひとつのマップ”と言えるくらい細かいところまで作り込んでいるんでますよ。

北林 見ていないときも隊員はつねに何かしていますからね。ヘタすれば死んだことに気づかないなんてこともある。

松井 確かに、コクピット内の緊張感や息苦しさは本作の見どころのひとつですね。

岡野 あと、『重鉄騎』には押井さんの好きな犬も出てくるので……もしかするとそこがポイントになったのかもしれませんね(笑)。

松井 ゲーム内に犬が出てくるんですか?

岡野 グッと来る戦場を考えたとき、ただ敵がいるだけというのはリアルじゃないと思ったんですよ。それでいろいろなシチューエーションを考えていく中、案の一つとして挙がりました。戦場で兵士が汚れた犬を抱いている構図ってよくありません?

北林 あとは鳥も出てくるし、そういえばラクダもいる! けっこう生き物が出てきますねこの作品は。

Co-op、そしてDLC……気になる情報も続々

松井 『重鉄騎』ではCo-op(協力)プレイもありますけど、対戦を入れるという考えはなかったんですか?

岡野 もちろん選択肢としてはあったのですが、正直なところ『重鉄騎』の仲間と戦場を体験するというコンセプトには合わないと思いました。隊員たちが戦死するという設定の中で、対戦という形には違和感を抱かざる負えなかったんですよ。設定的に、辻褄が合わなくなってしまうと思いますし。

松井 ダウンロードコンテンツの予定はありますか?

北林 はい、用意をしています。ソフト発売後のタイミングでCo-opミッションのマップを追加予定ですので、ぜひダウンロードしていただければとおもいます。

松井 では、最後に発売を待つユーザーに向けてメッセージをお願いします。

北林 『重鉄騎』はかなりチャレンジをした、いままでに皆様が体験したことのない作品になっています。動画などですでに興味を持っていただいている方もいるかもしれませんが、実際に触ったときの楽しさは想像以上のものになっていると思います。今後発売に向けて体験会も複数行う予定なので、ぜひ参加してみてください!

岡野 Kinectセンサー+コントローラーという唯一のタイトルですので、その体験だけでも買う価値はあると思います。あとは通常のFPSに食傷気味という人にもぜひ触ってもらいたいですね。操作方法やゲームシステムの面でほかにはないものとなっているので、きっと満足してもらえると思いますので。

松井 本日はありがとうございました!

松井ムネタツの鋼鉄コラム /『重鉄騎』――ジャンル名"ドラマティック戦場体験"に納得!

 2010年の東京ゲームショウで、マイクロソフトによる基調講演が行われた。2010年末にKinectが発売されることもあり、日本人クリエイターによるKinectタイトルもこんなにありますよーという発表があったのだが、その最後にドドーンとスクリーンに映し出されたのが、『重鉄騎』だった。『鉄騎』の新作! マジで! と思わず会場で立ち上がりそうになったほど驚いてしまい、めちゃくちゃ喜んだりしたのだが、そのあとは一抹の不安も出てきた。「……Kinectか……」 そうなのだ。Kinect専用タイトルなのである。『鉄騎』はあのコントローラーでこそじゃないか! と。それをKinectで? どうやって操作するの? と謎だらけ。この謎が解けるまで、さらにもう1年の月日が必要だった。2011年の東京ゲームショウである。ブース展示はなかったものの、プレス向けに見せてもらえる部屋が用意されているというので、真っ先にそこへ向かった。

 正直なところ、あの『鉄騎』がKinectでどうなっちゃうんだろう? と期待と不安が入り混じっていて、やたらとソワソワ。部屋に入ると、プロデューサーの北林さんと片岡さんがあの出で立ち(ゲーム中のキャラも着ているミリタリージャケット)でお出迎え。ここで初めて、実際に操作しているところを見せてもらうことに。コントローラーとKinectセンサーの併用、そして基本は“座って”操作するなど、これまでのKinectタイトルにはない新機軸が盛り込まれていた。『鉄騎』ではジャンルが“操縦”、『鉄騎大戦』では“戦争”となり、今回の『重鉄騎』では“ドラマティック戦場体験”となったのだが、これはKinectだからこそ実現できたものだとハッキリした。

イスに座りながら操縦席まわりのレバーなどを操作し、鉄騎に乗り込んでいる他の兵士たちとコミュニケーションを取りながら、ドラマチックに戦場を体験していく。いっしょに乗っている兵士たちとのやりとりが本作のキモと言ってもいい。過去のいろんなFPSタイトルで小隊を指揮しながら戦うといったものはあったが、ほかの兵士とともにひとつの兵器に乗り込んで戦地に向かうというタイプのものはなかった。それゆえのストーリー展開は、まさにドラマチックであり戦場体験! 実際にプレイすると、その没入感たるやハンパない。よくKinectのゲームは「ゲームの世界に入り込みやすい」なんて言われるが、本作は中でも群を抜いている。圧倒的に“ゲームイン”できるのだ。あの専用コントローラーでなくても、目の前に広がるのは間違いなく鉄騎のコクピットなのである。

 「Kinectなんでしょ? 場所を取るし……」なんていう理由で、本作を見送るのであれば、それは明らかにもったいない。スペースはちょっと片付ければどうにかなるもの。どうしても場所が取れないなら、これを気に部屋の模様替えをすべきだ。何かキッカケがないと部屋の整理整頓をしないんだから(決め付け)、いいチャンスではないか。僕は実戦配備に向けて自室の大掃除中(Z指定タイトルなのでリビングでのプレイは自重)。もういつでもドンとこいだ!

連載企画 イチから始める『重鉄騎』

Vol.3 「逃げるな! ナッチ!!」

6畳間でKinectを遊ぶ方法を考察チュートリアルで鉄騎の基本操作をマスターし、いよいよ初めての戦場へ。最初の作戦は、ニューヨーク奪還の足掛かりとなる海岸線の制圧だ。海上からの侵攻と言えば、第2次世界大戦のノルマンディー上陸作戦が有名だが、ここでの戦いの壮絶さはソレに比類するもの。歩兵たちは上陸したそばから国連軍の鉄騎によって蜂の巣にされ、地面には無数の死体が転がっている。主人公パワーズ軍曹たちが駆る鉄騎の目的は、敵の防衛ラインを崩し、高台にあるトーチカまで工兵たちの進軍ルートを作ること。しかし、自分にそんなことができるのだろうか? 初めての戦場は想像以上の恐ろしさだった。

巨大な鉄騎は敵軍から非常に狙われやすく、つねに銃撃の嵐に襲われることになる。とくにトーチカの正面は敵の数が多く、おまけに地雷原まであって近づくことすらできない。どうすればいいのか……敵の攻撃が鉄騎の装甲を激しく叩くなか、筆者の頭は真っ白になってしまった。そんなとき事件が。恐怖によって気が動転した通信士のナッチが、突然ハッチを開けて外に出ようとしたのだ。この状況で無防備に外へ飛び出すことは、死を意味する。逃げるな! ナッチ!!

6畳間でKinectを遊ぶ方法を考察


6畳間でKinectを遊ぶ方法を考察

咄嗟にナッチの足をつかむ。判断が早かったこともあってか、無事コクピット内へ下ろすことができた。しかし、恐怖によって判断力を失ったナッチはまともに話すこともできない状態。こうなったらアレしかない……鉄拳制裁だ。右手を振りかぶり2度、3度とナッチの顔面を殴りつける。すると、正気を取り戻したナッチが殴り返してきた。逃亡からここまで、時間にしたら10秒程度だったが、筆者はまるでひとつのミッションを終えたかのような疲労感と充実感を得ていた……。

と、今回はなんとなくいままでの連載記事とはテイストを変えてお届けしてみた。それにしてもやはりチュートリアルと戦場はまったく違いました。とにかく敵の攻撃が激しく、「あわわ、あわわ」なんて言っているあいだに機体がボロボロになってしまいます。しかも、コクピットの中でも隊員どうしの戦いがあったりで、一瞬も気を抜くことができない。あ、ちなみに今回はナッチを助けたものの、その後すぐに鉄騎ごとやられてしまいました。
う〜ん…ナッチの判断の方が正しかったのか…などと考えつつ、次回こそは作戦を成功させる所存であります!

 

『重鉄騎』でKinectを始める人はオトクな同梱版がオススメ!

『重鉄騎』の発売を機にKinectデビューを検討している人に朗報。
Kinectセンサーとソフトの同梱版が、数量限定で発売されるのだ。
価格は19800円[税込]。なお、本同梱版には数量限定ダウンロードコンテンツとして 鉄騎の外観を変化させるだけでなく、性能もアップする“特殊迷彩『カーボンアサシンパック』ダウンロード ご利用コード”も封入されている。

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