『ファイナルファンタジー』シリーズの最新ナンバリングタイトル『ファイナルファンタジーXVI』(以下、『FF16』)の有料DLC第2弾の情報が、アメリカ・ボストンで開催された“PAX East 2024”内の『FF16』ステージイベントで公開された。

▼『FF16』攻略&解説まとめ

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 第2弾DLC“The Rising Tide《海の慟哭》”は、2024年4月18日に配信予定。新たに追加されるフィールド“ミシディア”を舞台に、幻の召喚獣・リヴァイアサンの謎に迫る物語が描かれていく。

 《海の慟哭》では、リヴァイアサンの召喚獣アビリティも追加。リヴァイアサンとの召喚獣合戦もプレイ可能だ。さらに、新たなバトルコンテンツ“カイロスゲート”も実装される。

 今回、『FF16』DLC第2弾《海の慟哭》について、DLCのディレクターを担当する鯨岡武生氏、プロデューサーの吉田直樹氏、『FF16』本編のメインディレクターである高井浩氏の3名に話を伺った。

 澄んだ青空が広がる“ミシディア”や、イフリートを操作してのリヴァイアサンとの召喚獣合戦、遠隔攻撃が主体となるリヴァイアサンの召喚獣アクションなどの開発秘話をお届けする。

鯨岡武生氏(くじらおか たけお)

代表作は『ディシディア ファイナルファンタジー』、『ファイナルファンタジーXIII』。現在は『ファイナルファンタジーXVI』DLC版のディレクターを務める。

吉田直樹氏(よしだ なおき)

スクウェア・エニックス 取締役執行役員 第三開発事業本部長。2010年12月に『ファイナルファンタジーXIV』のプロデューサー兼ディレクターに就任。現在、『ファイナルファンタジーXVI』のプロデューサーも兼任している。

高井浩氏(たかい ひろし)

代表作は『ファイナルファンタジーV』、『サガ フロンティア』、『ラストレムナント』。現在は『ファイナルファンタジーXVI』のメインディレクターを務める。
※高井氏の“高”の字は、正しくははしごだかです。

ヴァリスゼアの“明るい未来”を感じさせる物語

――2023年12月に配信されたDLC第1弾《空の残響》の反響はいかがでしたか?

吉田装着率は非常にいい成果が出ており、とくに第2弾DLCの《海の慟哭》を含めたセットの購入率が高いという結果が出ています。『FF16』を気に入ってくれた方々は、両方楽しみにしていただけているのかなと。

 前回のインタビューでもお話した通り、第1弾DLCは、クライヴとして戦うラストダンジョンというような立ち位置として作ったのですが、そこはすごく丁寧に受け取っていただけたと感じています。海外の一部からは「もう少し難度が高くてもよかった」という声をいただきましたが、その先の第2弾DLCがあることを考えると、いい落としどころだったかなと思っています。そのぶん、今回の《海の慟哭》の後半はすごく遊び応えのあるものになっていますので、そのあたりにもご期待ください。

鯨岡開発終盤に調整を終えた後に、「ちょっと足りないかも」と難度を上げるぐらい、ギリギリを攻めた難度になっています(笑)。

――前回のインタビューでも大枠を伺いましたが、改めて今回のDLC第2弾《海の慟哭》のコンセプトを教えてください。

鯨岡《海の慟哭》は、たとえるなら“MMORPGの拡張版を作る”ようなイメージで開発がスタートしています。メインストーリーをはじめ、フィールドや集落、そこにちなんだクエスト、アクション部分など、『FF16』を構成する要素をとにかく全部盛りにして、プレイヤー体験を拡張させようとしています。なにより青空が広がる新たなフィールドで、新規の物語が始まるという部分をしっかりと演出し、描きたかったのです。

【FF16DLC】第2弾《海の慟哭》鯨岡氏×吉田氏×髙井氏インタビュー。青空が広がる新フィールド“ミシディア”、リヴァイアサンの召喚獣アビリティなどの開発秘話に迫る

――物語としてのコンセプトはいかがでしょうか?

鯨岡本編のエンディング後にお話が追加されるわけではないですが、「ヴァリスゼアからクリスタルがなくなっても、人はきっと立ち直っていける」という、希望を感じてもらえるようなストーリーになっています。

――“ヴァリスゼアの未来は明るい”と感じさせる作りとなっているのですね。

鯨岡本編の終盤は「これからどうなっていくのか」と不安を掻き立てる描写が多かったので、プレイヤーの皆さんには「この先、人はこうして生きていくのだろう」と明るい未来が想像できるようにしたかったという気持ちが強かったですね。

――DLC第2弾のボリュームはどのぐらいあるのでしょうか?

鯨岡前回のインタビューでもお伝えしましたが、メインストーリー、サイドクエスト、そのほかのコンテンツもすべて遊ぼうとすると10時間以上はかかると思います。

――新たに追加される“ミシディア”は澄んだ青空が広がるフィールドになっています。何故ミシディアという名前をつけられたのでしょうか?

鯨岡過去のシリーズ作品に出てくる単語(※)ではありますが、すごく深い意味があるわけではないんです。魔法にちなんだ設定が多く、秘境というイメージにもぴったりだったので、オマージュという形で採用しました。

※ミシディアは『FF2』や『FF4』に、魔道士たちの集落または国として登場している。

吉田第三開発事業本部には本当に『FF』オタクが多いよね(苦笑)。

高井本当に多いです(笑)。

――ミシディアの設定は、『FF16』の本編を作っているときにすでに考えられていたのですか?

高井本編を開発している時点では、まだ詳細な設定はありませんでした。

吉田DLCを作る可能性を残すという意味で、リヴァイアサンの存在や、あの大波の先に隠れ里があり人が住んでいる、という設定は早い段階で決めていました。ただ、その時点でロアまですべて書いていたら、本編の作業が終わらなかったので、「余地を残しておいて、もしその時が来たら……」と話していたのです。そしてDLCを開発しようとなったときに、改めて設定したという感じですね。

青空広がる新フィールド“ミシディア”と世界観

――ミシディアでは澄んだ青空、自然豊かな緑という壮観な風景が広がっていますが、バックグラウンド(背景や景観)のコンセプトを教えてください。

鯨岡シンプルに、「明るい世界を冒険したい」というところから開発が始まっています。前廣(クリエイティブディレクター&原作・脚本の前廣和豊氏)からも、「本編の物語終盤からは世界全体が暗くなるので、つぎの冒険の舞台は明るい場所がいいのではないか」と話がありまして……(笑)。

吉田自分で散々暗くしたい! 終末感を出したい! と言っていたのに……(笑)。そこでミシディアは緑が溢れる場所にして、“オリジン”の影響を受けないエリアにするための設定を作りました。

鯨岡そして、作るからには『FF16』でいちばん青空が映える場所にしようと、デザイナー陣と相談しながら、ミシディアの見た目を作っていきました。本編にも晴れた昼間のフィールドはありますが、きっとミシディアでしか得られない清々しさを感じていただけると思います。

【FF16DLC】第2弾《海の慟哭》鯨岡氏×吉田氏×髙井氏インタビュー。青空が広がる新フィールド“ミシディア”、リヴァイアサンの召喚獣アビリティなどの開発秘話に迫る

――固まった大波を間近で見たときはものすごいインパクトでした。

鯨岡止まった状態でも波に見えるように、担当者が質感や形を試行錯誤しながら完成させてくれました。じつはVFXも配置してあり、飛沫ひとつひとつがグラフィックとしてちゃんと作られているのです。最終的にすごくいいものになったと思います。プレイヤーの皆さんに「おお!」となってほしいポイントのひとつです。

吉田しばらく立ち止まって見ていただきたいですね。

高井おそらく皆さんが想像しているよりも近くに行けるので、インパクトがすごいと思います。

【FF16DLC】第2弾《海の慟哭》鯨岡氏×吉田氏×髙井氏インタビュー。青空が広がる新フィールド“ミシディア”、リヴァイアサンの召喚獣アビリティなどの開発秘話に迫る

――固まった大波もそうですが、ミシディアの風景が全体的にすばらしいなと。吉田さんと高井さんは実際にミシディアの全景をご覧になっていかがでしたか?

高井最初にミシディアに向かうときに全景が見られるカットシーンがあるのですが、それを見た時点で「このDLCは大丈夫だ」と思いました(笑)。すごくインパクトがあって、気持ちがいい風景になっているなと。

吉田固まった大波を最初に見たときは、「これぞ『ファイナルファンタジー』だなあ」とすごく感じました。自分は『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FF14』)のP/Dも担当していますが、第一世界と呼ばれる場所で“光の氾濫”のシーンを描くときに、似たような無茶をお願いしたことがありました……(苦笑)。スペックやコストの制限がなければ、『FF14』の第一世界の光の氾濫も、これぐらいの表現ができたのかなと感じましたね。

鯨岡あの見た目のインパクトがないと今回の話は成立しなかったと思うので、デザイナー陣には本当に感謝です。

【FF16DLC】第2弾《海の慟哭》鯨岡氏×吉田氏×髙井氏インタビュー。青空が広がる新フィールド“ミシディア”、リヴァイアサンの召喚獣アビリティなどの開発秘話に迫る
【FF16DLC】第2弾《海の慟哭》鯨岡氏×吉田氏×髙井氏インタビュー。青空が広がる新フィールド“ミシディア”、リヴァイアサンの召喚獣アビリティなどの開発秘話に迫る
【FF16DLC】第2弾《海の慟哭》鯨岡氏×吉田氏×髙井氏インタビュー。青空が広がる新フィールド“ミシディア”、リヴァイアサンの召喚獣アビリティなどの開発秘話に迫る
【FF16DLC】第2弾《海の慟哭》鯨岡氏×吉田氏×髙井氏インタビュー。青空が広がる新フィールド“ミシディア”、リヴァイアサンの召喚獣アビリティなどの開発秘話に迫る

――ミシディアのフィールドには“アクアマリン”を探索するという要素も追加されています。こちらを導入した意図を教えてください。

鯨岡アクアマリンの探索は、フィールドを作っていく中で生まれた要素です。今回のフィールドは当初はもっとコンパクトになる予定でしたが、開発が進むにつれて作る側も興が乗り、結果的にはエリアも増えて、本編のフィールドを上回るほどの延べ面積になっていったのです。

 そこで「せっかくなら、このフィールドを活かした探索要素を入れよう」と、若手のプランナーと相談しながら、最終的にダウジングのような宝探しの遊びとして実装することになったんです。そこから設定を詰めて、パッド振動や音を頼りに発見するというシステムを作っていきました。

――音や波紋を頼りにアクアマリンというアイテムを探すという、これまでにない要素ですよね。

鯨岡フィールドを追加するのであれば、新たな探索要素が欲しいとも考えていたので、うまくはまりました。アクアマリンを見つけることで、便利なアクセサリが作れるようにもなりますし、楽しみながらフィールドを歩けると思います。

――ミシディアの各地では、恐ろしい見た目をしたトンベリ族も登場しますね。『FF』シリーズおなじみのトンベリを実装した経緯を教えてください。

鯨岡新たなフィールドを実装するなら、新しい蛮族も登場させたいと思っていました。新規で『FF16』オリジナルのデザインを起こすのもよかったのですが、やはり『FF』のレガシー要素を入れたいという気持ちがあり……。そのときにちょうど、本編開発時のアートの中に、未実装のトンベリのラフアートを見つけたのです。

高井トンベリは、じつは最後の最後まで本編に登場させるかどうかの当落線上にいました。

【FF16DLC】第2弾《海の慟哭》鯨岡氏×吉田氏×髙井氏インタビュー。青空が広がる新フィールド“ミシディア”、リヴァイアサンの召喚獣アビリティなどの開発秘話に迫る

――本編に登場させる構想もあったのですね。

高井ふつうにフィールド上に配置する敵としてトンベリを考えていたのですが、もろもろの作業工程を鑑みて、ギリギリ登場させられなかったのです。そういったこともあり、ラフアート自体はすでにある状態でした。

鯨岡ラフアートには怖くて大きいトンベリが描かれていたのですが、なぜか“アンデッド”というメモが残されていて、全身が骨でした(笑)。

高井そうそう、トンベリを怖くしたいと話していて、骨が見えたりしていて(笑)。

鯨岡トンベリをリアルな頭身にして、さらに骨になっていると情報量が多すぎるということで、今回はあらためてアートを起こしてもらい、制作しています。インパクトのある見た目だなと思ってはいましたが、前回のトレーラー公開時に、あそこまで話題になるとは思っていませんでした(笑)。

――巨大な包丁を持った姿が印象的でしたね。

鯨岡「トンベリといえば包丁だし、あの巨体なのだからいっそ両手剣サイズにして……」と、バトル班と話し合いながら、楽しく決めていきました。

――ほかの作品だとマスコット的な見た目になることが多いですが、リアルなトンベリが出てきたのはかなりインパクトが大きかったです。

吉田トンベリの本来のデザインはドット絵なこともあり、意外とシンプルです。ですので『FF16』のリアルな世界観に、情報量が少ないままマスコットのようなビジュアルで出しても、かえっておかしなものになってしまうかな、と。やはり、世界に合った形にしないとどうしても浮いてしまうのです。モーグリもなじませるのがすごくたいへんでしたので……(苦笑)。

――リアルな世界観だからこそ、そのギャップを埋めるのがたいへんということですね。

高井本当にかわいく見せようとすると、お人形のようになってしまいます。それを生きているように見せなければならないとなると、そのギャップがなかなか埋まりづらい。

吉田加えて、クライヴと戦ったときの違和感をなくさないといけないので、小さいまま登場させることも難しい。ドット絵を再現した情報量の少ないデザインのまま巨大化しても、すごく浮いてしまう。このあたりは、『FF16』全体として悩んだことですね。

――ドット時代の『FF』シリーズのモンスターを登場させるときは、そういった苦労があるのですね。ちなみに、モンスターとしてのトンベリの特徴は、シリーズ作品を踏襲しているのでしょうか?

鯨岡トンベリの特徴は、包丁を構えて、じわじわ近づいてきて強烈な攻撃を仕掛けてくるという、過去のシリーズ作品のイメージを『FF16』に落とし込んでいます。いわゆる雑魚敵で、あれだけ手痛い攻撃をしてくるのはトンベリが唯一無二かなと。しかもプレイヤーを執拗に追いかけてくるので、しっかりと避けないとHPがあっという間になくなってしまうという……。

吉田どの方向からトンベリが迫ってくるのか、状況をしっかりと把握しておかないと気が付いたらあっという間に倒されてしまうかもしれません。

鯨岡包丁を研ぐように構えてくるので、そのモーションを見逃さないように注意してください。巨大なトンベリに関しては、『FF16』らしさに振り切って、あの巨大な包丁をブンブン振り回す凄腕の剣士というイメージで作っています。

 それをさらにパワーアップさせたトンベリキングなる個体も登場するのですが、これはとあるサイドクエストに登場する敵で、トンベリのもうひとつの代名詞である“みんなのうらみ”を使用します。どんな内容かは、見てからのお楽しみということで……。トンベリを倒した数によって強くなる…なんてことはないのでご安心ください(笑)。

【FF16DLC】第2弾《海の慟哭》鯨岡氏×吉田氏×髙井氏インタビュー。青空が広がる新フィールド“ミシディア”、リヴァイアサンの召喚獣アビリティなどの開発秘話に迫る

――ミシディアには多数のサイドクエストが用意されているとのことですが、どのぐらいの数が存在するのでしょうか?

鯨岡サイドクエストの数は10個程度用意しています。世界観の理解を深めるもののほか、クリアーすることによりミシディア内でもチョコボが使えるようになったり、アクアマリンを集める要素が解放されるなど、機能解放系のクエストも存在します。ストーリー進行に合わせて少しずつ発生するのですが、報酬も魅力的なので、ぜひプレイすることをお勧めします。

 あとは、ネタバレになるのであまり詳しくはお話できませんが、DLCの第1弾《空の残響》、第2弾《海の慟哭》の両方をクリアーすると出てくるサイドクエストも用意しています。

――おお、それは気になりますね!

鯨岡具体的な内容は伏せますが、DLCを両方遊んでくれた方々に向けて「ありがとうございました」の気持ちを込めて、総合的なエピローグという形で作っているクエストです。

高井「へー、そうだったんだ」というような感覚で終われるクエストですね。

吉田『FF16』の世界で語られる物語は、クライヴがやってきたことがつながっていくものになっています。その締めとなるものだと思っていただければ。

鯨岡もしかしたら、DLC中でいちばん希望を感じる内容かもしれないですね。クエストをプレイすれば、「この世界は大丈夫だ」と感じていただける内容だと思います。

――第2弾DLC《海の慟哭》を導入することで、ミシディアが追加される以外に、既存のフィールドに何かしらの変化があったりしますか?

鯨岡「あそこで何かがあったみたいだ」と話をするNPCを数名、用意してはいます。ただ、フィールドをあまり行き来させたくなかったので、基本的にミシディアのエリア内で話が完結する作りになっています。

――前回の《空の残響》ではさまざまな装備やアクセサリが報酬として用意されていました。今回の《海の慟哭》ではどのような報酬が用意されているのでしょうか?

鯨岡リヴァイアサンの召喚獣アクションが追加されるので、本編のほかの召喚獣と同じように、リヴァイアサンの召喚獣アクションを強化するアクセサリはひと通り用意しています。それ以外にも、既存の召喚獣のフィートを強化するアクセサリを、全召喚獣分追加しています。

高井あとは、あのでかいトンベリが持っている包丁も作れます(笑)。

鯨岡あのサイズは、クライヴの武器のレギュレーションとしては完全に規格外なのですが、デザイナーを含めて「この大きさであれば何とか実現できる」というギリギリのラインで作られています。

 これ以外にも装備の追加はありますし、報酬の密度としてはかなり濃いので、ぜひひと通り遊んでいただければと思います。

――DLCの購入特典としては、コルタナが追加されています。この武器は『FF14』のナイトの武器がモチーフでしょうか?

鯨岡はい。その通りです。オーケストリオン譜にも『FF14』の楽曲を2曲追加していますが、これは『FF14』側で開催される『FF16』コラボのイベントに絡めた要素になっています。

吉田これまでにも購入特典として歴代の『FF』タイトルのものを実装させていただきましたが、今回は『FF14』の番ということですね。

極限難度・リヴァイアサンとの召喚獣合戦と新たな遠隔召喚獣アクション

――第2弾DLC《海の慟哭》では、ついにリヴァイアサンが登場します。リヴァイアサンに関する設定はもともと本編開発時に決められていたのですか?

鯨岡本編開発時に決まっていたものもあれば、DLC開発時に定まったものもあります。「なぜ、あの大波ができたのか」、「リヴァイアサンのドミナントは誰なのか」などは、DLC開発時にあらためて決めていきました。

吉田リヴァイアサンのドミナントは、かつて存在していたが、最近は顕現された様子がない、ということは、本編開発時に決まっていました。そのドミナントが誰かという部分は描かなかったのですが、今回の《海の慟哭》で明らかになります。さらに、本編開始時にはすでに消滅していたマザークリスタル・ドレイクアイについても……と、うまく絡まった物語になっていますので、実際に遊んでみていただければなと。

 ドレイクアイに関する設定は、今回描く予定はなかったのですが、DLCチームがうまくつなげてくれました。真剣に『FF16』を遊んでくださっている人には、「ここでこうつながるのか!」というものになっていると思います。

鯨岡DLC第1弾《空の残響》は大昔の空の文明の話でしたが、《海の慟哭》では現代の中でもあまり語られていなかった部分を補完しています。DLC全体のコンセプトである“ヴァリスゼアをクライヴの目でしっかりと深く知る”というところの一貫性は保てているかなと思います。

――そして気になるのは、リヴァイアサンの召喚獣としてのアクションです。どのようなコンセプトでアクションを構築していったのでしょうか?

鯨岡「リヴァイアサンは、遠隔攻撃に特化した召喚獣である。」というコンセプトは早々に決まりました。ただ、クライヴが近接特化に近いキャラクター性を持っているので、遠隔攻撃となるとどうしてもニッチな性能になってしまうという危惧がありました。

 しかし、さすがと言いますか、プレイヤーアクション班は最終的にその溝を見事に埋めてくれて。フィートの機動力の高さや、ほかの召喚獣アビリティとの組み合わせやすさによって、使い慣れたアクションセットを崩したくなるくらい魅力的に仕上がっています。

【FF16DLC】第2弾《海の慟哭》鯨岡氏×吉田氏×髙井氏インタビュー。青空が広がる新フィールド“ミシディア”、リヴァイアサンの召喚獣アビリティなどの開発秘話に迫る
【FF16DLC】第2弾《海の慟哭》鯨岡氏×吉田氏×髙井氏インタビュー。青空が広がる新フィールド“ミシディア”、リヴァイアサンの召喚獣アビリティなどの開発秘話に迫る

吉田「遠隔攻撃を使う召喚獣」と言ってはいたけれど、ずっとたいへんそうで、ものすごく苦労していたよね。

鯨岡鈴木(コンバットディレクターの鈴木良太氏)はしょっちゅう「ぜんぜん使いやすくならない……。」と言っていました(笑)。

吉田言ってた(笑)。

鯨岡どの敵であろうが、好きな召喚獣アビリティで戦えるというのが売りのバトルシステムなので、ニッチな性能だと誰も使ってくれない可能性もあります。リヴァイアサンの新しい召喚獣アクションを追加したのに、そうなってしまうと我々としても不本意なので、いかに魅力を持たせるかというところで、各アクションやフィートをひとつひとつ試行錯誤しながら作っていきました。

――たしかに、すでにプレイヤーが愛用している定番セットがあるわけで、そこでリヴァイアサンの召喚獣アクションに魅力を感じないと付け替えない可能性もありますよね。

鯨岡最終的には、ミシディアの敵の配置、敵側のAIも含めて調整をして、「リヴァイアサンの召喚獣アクションを使うと楽しい!」と感じてもらえるようにできたかなと思います。

――遠隔攻撃主体だと、先ほどお話を伺ったトンベリとの戦闘でも相性がよさそうですね。

鯨岡相性はいいと思います。ただ、リヴァイアサンの召喚獣アクション一辺倒だと、それはそれで負荷がかかってくるので、ほかの召喚獣アクションも組み合わせて戦うという、『FF16』の根本にある遊びにしっかりとつなげています。

高井ちょうどこのインタビューの前に、プレイヤーアクション班が作ってくれたリヴァイアサンを含めたコンボ動画を確認していたのですが、既存の召喚獣アクションを組み合わせて相当かっこいいものができていましたね。僕の立場でも「こんなことできるの!?」って思うぐらい(笑)。

――それは気になりますね!

高井フェニックスシフトなどを駆使しながら、敵を空中から落とすことなく屠りさっていましたよ。近づいては離れ、離れては撃ち……みたいな。動画はそのうちX(旧Twitter)で公開されると思いますので、そちらもご期待いただければ。

鯨岡スコアアタックのテストプレイでも、「リヴァイアサンの召喚獣アクションを使ってくれ」という制限は設けていなかったのですが、多くのテスターがリヴァイアサンの召喚獣アビリティを組み合わせていたのが印象的でした。

――リヴァイアサンのフィートは、リロードの概念があり、タイミングよくリロードすると一定時間撃ち放題になりますよね。それがすごく気持ちよく感じました。

鯨岡どの召喚獣のフィートも技術介入部分を必ず用意するようにしており、アクションが苦手という人でもある程度狙いやすく、達成感を得やすいものにというのが、本編の頃からの鈴木のこだわりです。それがリヴァイアサンの召喚獣のフィートにも踏襲されており、うまくはまっているかなと思います。

【FF16DLC】第2弾《海の慟哭》鯨岡氏×吉田氏×髙井氏インタビュー。青空が広がる新フィールド“ミシディア”、リヴァイアサンの召喚獣アビリティなどの開発秘話に迫る
【FF16DLC】第2弾《海の慟哭》鯨岡氏×吉田氏×髙井氏インタビュー。青空が広がる新フィールド“ミシディア”、リヴァイアサンの召喚獣アビリティなどの開発秘話に迫る

――DLC第2弾の目玉のひとつとして、召喚獣リヴァイアサンとの召喚獣合戦も登場します。この召喚獣合戦はどのようなバトルになっているのでしょうか?

吉田リヴァイアサンとの召喚獣合戦は、ギリギリを攻めた難度になっています。いまのところ、この先のDLCの計画はないですし、これだけ巨大なものを激突させるバトルを作る機会は限られているので、今回はギリギリを目指そうと。演出が中心で、迫力がありながらも比較的クリアーしやすい本編の召喚獣合戦に対して、ここまで遊んでいただいた方へ「“召喚獣合戦の真骨頂”をどうぞ」というのが、今回のバトルになっています。

【FF16DLC】第2弾《海の慟哭》鯨岡氏×吉田氏×髙井氏インタビュー。青空が広がる新フィールド“ミシディア”、リヴァイアサンの召喚獣アビリティなどの開発秘話に迫る
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鯨岡召喚獣合戦の中でも、“アクションで勝たせるバトル”になるように、各チームに調整してもらいました。あっさりめの難度だった本編とは色を変えて、あえて骨太なバトルバランスを狙っています。クライヴのアクションももちろんですが、イフリートのアクションもすごく作り込まれているので、それらを駆使して挑むコンテンツを用意したいという思いもありました。

吉田本編の召喚獣バトルでは、イフリートのいくつかの技を使わなくてもなんとかなるというバランスで作っていましたが、今回のバトルは改めてイフリートのアクションの効果や性能を確認して、フル活用して戦っていただければと思います。

――我々も実際にプレイさせていただきましたが、かなり手ごわくてリトライするほどでした。

高井本編の場合、クリアーできないとエンディングまで到達してもらえなくなってしまうかもという点を心配するのですが、今回はDLCであるという前提で、遊び応えを感じていただけるバトルになっているかと思います。

吉田DLC第1弾《空の残響》では、クライヴ自身のアクションとして歯応えのある“オメガ”とのバトルが展開しましたが、第2弾《海の慟哭》ではイフリートとして戦う極限バトルが詰まっています。アクションの使いこなしを徹底して、リヴァイアサンに挑んでいただければと。

――ちなみに、推奨レベルはどれぐらいを想定されているのでしょうか?

鯨岡アクションフォーカスであればレベル48、ファイナルファンタジーチャレンジであればレベル95くらいからDLCを遊び始めれば、装備さえしっかりしていれば勝てるバランスにはなっています。もちろん、アクションRPGなので、もっと低いレベルでも勝つことはできますし、逆にこれより高くても負けることはありますが。

吉田クライヴの装備のうち武器や防具はイフリートのパラメーターにも反映されるので、装備をしっかりと整えていただいたほうがよいかと思います。

新コンテンツ“カイロスゲート”の魅力とコツ

――第2弾DLC《海の慟哭》では、新たなバトルコンテンツ“カイロスゲート”も追加されます。カイロスゲートはどのような経緯で組み込まれたのでしょうか?

鯨岡アルティマニアックチャレンジなどで見られるように、『FF16』にはアクションとしての難度を上げるための懐があったので、「それを別の形で、ひとつのコンテンツとして遊んでもらえるようにしよう」というところから、カイロスゲートの企画がスタートしました。単純に連続でバトルするサバイバルモードのような形でも楽しいとは思いますが、カイロスゲートならではの遊びとして、クライヴを強化するという要素を足し、キャラビルド的な観点でも楽しめるようにしています。

【FF16DLC】第2弾《海の慟哭》鯨岡氏×吉田氏×髙井氏インタビュー。青空が広がる新フィールド“ミシディア”、リヴァイアサンの召喚獣アビリティなどの開発秘話に迫る
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――バトルで稼いたポイントを使用してブーストを獲得したり、ステータスを強化したりと、取捨選択の楽しさがありますよね。

鯨岡そのバランスを取るのが非常に難しくて、かなり時間をかけて調整をしました。“スコアをアップさせるもの”と“体力を回復させるもの”の取捨選択などの試行錯誤が生まれる形になっており、クリアーだけ目指すという遊びかたはもちろん、アクションの使いかたや獲得するブーストを突き詰めてランキングを意識するといった遊びかたもできます。幅広いプレイヤー層が楽しめるコンテンツになっているのではないかと思います。

――カイロスゲートではアクセサリや装備は反映されませんが、その代わりに、オート性能など、サポートアクセサリの効果をブーストとして発動する形になっているのですよね。この調整の意図をお教えください。

鯨岡遊ぶ上で考慮しなければならない要素を減らし、どのブーストやバフを選択するかという部分に遊びの重きを置きたかったので、装備の要素は封じることにしました。

 ただ、そうするとサポートアクセサリをつけて遊んでいた方々はこれまでと違う遊び心地になってしまいます。その補填として、得られるスコアは下がりますが、ポイント消費なし&永続で同様の効果を発動できるブーストを用意しています。ですので、安心してこれまでと同じように楽しんでいただければと思います。

 一方で、アビリティの習得状況だけはプレイヤーのものがそのまま反映されるようにしています。これは、システムが用意したクライヴではなく、自分が育ててきたクライヴで挑むコンテンツだということを表したかったからですね。カイロスゲート内でも、自由に習得や付け替えをおこなうことができます。

――全20バトルで、気を抜くと途中で倒されてしまうなど、絶妙な難度に感じました。

鯨岡バトルごとに出現する敵が固定なので、2回、3回とチャレンジすると、「ここの敵には注意しよう」とか、「ここはブーストをかけて突破しよう」といった攻略性が見えてくると思います。くり返し遊ぶほど感覚が掴めると思うので、何度もチャレンジしてほしいですね。

――スコアアタックを突き詰めるとなると、なかなかやりがいがありそうですね。

鯨岡以前にスコアアタックのバージョンアップを行いましたが(2023年9月に実施)、それを踏まえたうえでの仕組みになっています。多彩な技を使い、ブーストでさらにスコアを底上げしたり、ピーキーなブーストの発動条件を満たすように立ち回るなど、工夫できる箇所を多数用意してあります。リーダーボードにも対応しているので、ぜひ挑戦してみてほしいですね。

【FF16DLC】第2弾《海の慟哭》鯨岡氏×吉田氏×髙井氏インタビュー。青空が広がる新フィールド“ミシディア”、リヴァイアサンの召喚獣アビリティなどの開発秘話に迫る

――実際にプレイさせていただいて、クリアーはできても、スコアを伸ばすのがたいへんだなと感じました。スコアを伸ばすコツはありますか?

鯨岡ステージごとに敵の構成がどのようなものかが、ヒントとして見られるようになっています。まず、そのヒントをもとに単体向け、集団向けのアビリティを意識してセットするのが基本になります。そのうえで、生き延びるためのブーストではなく、スコアにボーナスが加算されるブーストを獲得するのが重要ですね。

――限られたポイントで、なるべくスコアが伸びるブーストを獲得するということですね。

鯨岡敵の攻撃に当たらない前提でブーストを選択し、自分の戦いかたに合っていて、かつ倍率が高い効果のブーストを獲得していくことが、スコアを伸ばすためのポイントです。あとは、ステージごとに設定された目標時間内にクリアーすることも大切です。

――タイムを意識して、各召喚獣に用意された大技を使って素早いせん滅を試みましたが、スコアは伸びづらかったように思いました。

吉田攻撃バリエーションを持たせたほうが、スコアが伸びるようになっているので、クライヴの召喚獣アクションを多彩に使いこなすことを意識するといいかもしれません。

高井自分が倒されないように……という思考になると、スコアが伸びづらくなります。敵の攻撃をギリギリで避けて、攻め続けるのがポイントですね。開発途中では、「このブーストはうまくなればなるほど使わなくなるよね」といったことも考慮して、試行し直したりしていました。

鯨岡気持ちよくブーストを使ってもらうために、根本から調整し直した時期もありました。最終的に、スコアを稼ぐためのブーストと、最低限クリアーを目指すためのブーストの両方があることがベストという結論に至り、いまの形に落ち着いています。

――裏を返せば、死なないためのバフやブーストを獲得すれば、クリアー自体はできるということでしょうか?

鯨岡はい。それらを駆使すれば、クリアーは問題なくできると思います。

――すべていいヒントでした!

鯨岡あと、基本的にプレイモードによってゲーム体験に差が出ないようにしているのですが、“ファイナルファンタジーチャレンジ”モードのカイロスゲートには隠された要素が存在します。多くは語りませんが、1回のプレイで全ステージSランクを目指してみてください……。

吉田その条件を満たしたときのみ、「ならば相手をしてやろう」という存在が出てきます。ここまでアクションを気に入ってくださった方々にとっては、ちゃんと挑みがいのある相手が用意されていますので、ぜひ目指していただけるとうれしいですね。

鯨岡テスターからは「こいつとだけ戦えるモードはないんですか?」と言われたりしましたが、この条件を満たしたときでなければ戦えません(笑)。倒しても、誉れ的なアイテムが貰えるだけなのですが、ランキング上位を目指すにはこの敵の撃破も必須になってくると思うので、ぜひ挑戦していただきたいです。

――コアなプレイヤーとしてはいちばん誉れがほしいかもしれませんね(笑)。ちなみに、カイロスゲートの報酬はどのようなものが用意されているのですか?

鯨岡ステージごとに、初回のみ獲得できる報酬が用意されているのですが、その中でも注目していただきたいのが、各召喚獣をモチーフにしたクライヴの“光る武器”です! この構想があったからこそバージョンアップで武器の着せ替えを入れたぐらいで、つい着せ替えしたくなるような全8属性の武器が獲得できるようになっています。それ以外にアクセサリも報酬として用意されているので、スコアアタックで高スコアを目指すという方以外にも、報酬目当てでぜひ1周はクリアーしていただきたいですね。

 あと、これも“ファイナルファンタジーチャレンジ”のみの要素になってしまいますが、もともと“ファイナルファンタジーチャレンジ”で作ることができる最強の武器・アルテマウェポン以上の性能の武器も用意されています。ぜひこちらも獲得を目指していただけると。

【FF16DLC】第2弾《海の慟哭》鯨岡氏×吉田氏×髙井氏インタビュー。青空が広がる新フィールド“ミシディア”、リヴァイアサンの召喚獣アビリティなどの開発秘話に迫る
【FF16DLC】第2弾《海の慟哭》鯨岡氏×吉田氏×髙井氏インタビュー。青空が広がる新フィールド“ミシディア”、リヴァイアサンの召喚獣アビリティなどの開発秘話に迫る
光る武器

――カイロスゲートでは敵の配置が固定ですが、別の敵の配置になったステージも、今後のアップデートで追加されないかなと期待しているのですが……、いかがでしょうか?

吉田そこは皆さんにプレイしていただいて、そういった声がたくさんあるようであれば……(笑)。少し話は戻りますが、リヴァイアサンの召喚獣バトルで極限のイフリートのバトルを作ったことによって、「ほかの召喚獣バトルでも改めてバランスを取り直した極限バトルを作ってほしい」という声が出てきたらうれしいなと思っています。

 『FF16』のベースを丁寧に作ったからこそ、発展性はいろいろとあると思っています。フィードバックは我々も拝見しておりますので、実際に遊んで気に入っていただけたら、そういったご意見、ご感想をいただけるとうれしいですね。

――新たに公開されたトレーラーでは、翼が生えたクライヴの姿が確認できました。この姿のヒントを教えていただけませんか?

吉田“クライヴが何のためにアルテマに狙われたのか”を考えると、予想できるかもしれません。これまでの物語では、伝説と呼ばれていたリヴァイアサンが欠けている状態でしたが、それがそろったときにどうなるのか……。それに対する遊びをご用意させていただいています。これ以上言うと楽しみを奪ってしまうので、ぜひ実際に遊んでいただいてお確かめいただけるとうれしいです。

『FF16』最新トレーラー

アップデート1.30の解説とPC版の開発状況

――DLC第2弾《海の慟哭》と合わせてバージョン1.30のアップデートが実施されますが、本アップデートの注目ポイントを教えてください。

鯨岡バージョンアップではさまざまな要素が追加されますが、大きな部分としてはクエストのクイック報告機能の追加があります。サイドクエストを遊んだ方と遊んでいない方で、本編の物語の感じかたが違うというのは、フィードバックを拝見して感じており、今後PC版が発売されることも考えて、クエストをより遊びやすくする要素として、クエストの最後に依頼人のところまで報告しにいく手間が省ける機能を追加しました。

 ほかにも、コレクションアイテムがもらえるクエストのアイコンを、固有のデザインに変更しています。対象のクエストは各キャラクターを掘り下げる内容のもので、キャラクターに対する解像度が上がったり、シナリオの印象が大きく変わったりするものが多いです。ですから“このクエストをやればシナリオがより深く楽しめます”というものを、我々から提示させていただく形の変更となります。

吉田これについてはもともとクリエイティブディレクターである前廣がこだわっており、「アイコンをつけるとそのクエスト以外をやらなくなってしまう」と、当初は敢えて入れていませんでした。そのこだわりも大事ですが、いま世界中がエンターテインメントにあふれており、時間のない中でたくさんの方々に遊んでもらおうというときに、メリットを示さないと触ってもらえない時代でもあります。サイドクエストを遊んだ人と、遊んでいない人とで評価がぜんぜん違うというフィードバックをいただいていたので、追加したほうが今後のためになるという話をして、入れてもらいました。

――ほかに、召喚獣アビリティのセットが登録できるようになったのも便利だなと感じました。

鯨岡「ボスと雑魚では使うスキルを変えたい」という意見を拝見していましたので、それを反映した形になります。今回のアップデートでは、召喚獣アビリティが5セットまで登録でき、非バトル時であれば自由に切り換えられるようになっています。

 これはカイロスゲートを実装しようとしたのもきっかけで、ステージごとに毎回付け替えるのは手間だと思い、この機能を追加することを決めました。

――コントローラの操作タイプも追加されていますよね。

鯨岡自由にボタンのアサインを変更できるカスタムモードを追加しています。これまでに用意されたプリセットだと操作がしっくりこないという方は、自分好みにカスタマイズしていただければと思います。

――召喚獣アビリティにも調整が加えられるとのことですが、こちらの調整意図を教えてください。

鯨岡『FF16』が発売されてから、配信や動画、SNS上の書き込みなどを見ると、多くの人が使っているアビリティと、逆に使われていない・使いづらいという声が目立つアビリティがあったので、その穴を埋めるための調整を加えています。物足りなかった性能を持ち上げるという方針で、中には性能がガラッと変わったものもあります。たとえば、バハムートやラムウのフィートなどは、使い勝手が大きく変わっていますね。

高井ちなみに、調整方針としてナーフ(弱体化)はしていないです。基本的に使用率が低いアクションの性能を上げる方向で、プレイヤーの選択肢の幅を広げるような調整となっています。

――エピソードとしてクライヴがベアラーの刻印を消すエピソードが追加されていると伺いました。これはなぜ追加されたのでしょうか?

吉田これは完全に僕のわがままで追加してもらいました。『FF16』発売後に、プロとして物語を書いている方、作品を作っていらっしゃる方とお話する機会がけっこうあったのですが、今回の『FF16』は、すごくストーリーにこだわって、“クライヴの物語を体験するために遊ぶゲーム”として割り切って作ったからこそ、そういった方々の評価は気になっていました。結果、お褒めの言葉を多数いただけて、その点はとても手ごたえがありました。

 ただ、そういった方々とディスカッションをする中で、とある映画監督の方から「クライヴが大好きになったし、世界の描きかたはすばらしかった。でも、唯一思ったのだけど、なぜクライヴがベアラーの刻印を剥がすときの様子を描かなかったの?」と聞かれたのです。それは僕たちの設定の中には当たり前にあったエピソードで、どれだけの覚悟であの刻印を外しているのかを全体を通して描いていたつもりでしたが、クライヴのそのときの様子が描かれていないのは確かで。刻印の除去の意味、たいへんさはクライヴを通じて描けば、よりそれが伝わりやすかっただろうな、と。

 そこで、クライヴをはじめとするベアラー、ドミナントという『FF16』の世界の中で不遇な扱いを受けている存在の覚悟や、その先の未来へ向かう部分が、ラストピースとして足りていなかったなと反省して、PC版等も見据え、より完全にしておきたかったので追加カットを入れることにしたのです。

――それはメインストーリーで語られるのでしょうか?

吉田いえ、メインストーリーではなく、ベアラーの刻印に関するサイドクエストで語られます。クエストを体験したときの重みが違ってくるのではないかと思います。

――その話を伺うと、もう1度遊びたくなってきました。

吉田ほかにも、皆さんが配信でプレイしているのを拝見して、「意外とこのシーンがどういうことなのかが伝わっていないな」というシーンに、時系列を解説するキャプションを加えたりしています。配信をされている方はコメントで補って理解してくださるのですが、そこで一旦感情が途切れてしまうのはよくないことですので、よりわかりやすく調整した形ですね。

――先ほど吉田さんの話にも出てきたPC版についてですが、現在の開発状況をお聞かせください。

吉田正式に開発がスタートしたというアナウンスから続報を出していないのですが、開発は順調に進んでいます。ふたつのDLCを追加したバージョンに対しての最適化が残っていますが、ここからさらに1年お待たせするようなことはないと思います。それなりのタイミングで発売できるのではないかなと。ただ、完成したら即「発売します」といってリリースする可能性もあるかもしれません。

――それはそれでうれしいニュースになりそうです(笑)。

吉田PCという市場を考えたときに、長々と広告を出してリリースをお待たせするのは違うかなと。そうであれば、長く遊んでもらうためにも、デバッグや調整が完了した時点で、できるだけ早く発売するのもありかと思っています。

 ただPC版については、当然それなりのスペックが必要になってきます。そのあたりはきちんと事前に情報を出しますし、それを試していただくためにPC版でも体験版をリリースする予定です。自分の環境で快適に遊べることを確認してもらったうえで本編に進んでもらえればと思っています。

高井現在はグラフィックボードもものすごく種類が豊富なので、推奨スペック、最低限スペックを出して終わりにはせず、社内のPCアライアンスチーム、システムQAチームとも協力して、できる限り多くのグラフィックボードでの動作をチェックしたうえで、リリースしようと思っています。ですので、もう少しお時間をいただければと。

――ちなみに、PC版をリリースするのであれば、DLCもセットになったバージョンになるのでしょうか?

吉田いくつかのパターンを用意しますが、もちろん2種のDLC込みの全部入りのバージョンも用意させていただく予定です。

――では最後に、DLCを含めた『FF16』の全体の流れを振り返って、改めてご感想をお聞かせください。

吉田高井と僕は最初期メンバーの3名のうちの2名ですが、長かったようで、いまにして思えばあっという間だったなと感じています。スクウェア・エニックスとしても、第三開発事業本部としても、そして僕といういちゲーム開発者としても、今回の『FF16』を通して、足りていなかったものが明確になったなと思いました。その足りていなかったものをスタッフみんなで積み上げて、試行錯誤して、壊した部分もたくさんありました。それをさせてもらえたのは、すごく経験として大きかったなと。

 今回やり切ったという経験を活かして、今後の我々のゲーム開発においては、よりいいものをより短いスパンで作れるようになっていくでしょうし、プレイヤーの皆さんにできるだけ高サイクルでおもしろいゲームを味わっていただく機会を増やせるかなと思っています。実際にDLCの開発では、ミシディアのフィールドが「本編のあの苦労は何だったのか」という勢いでできあがっていきました。それはもちろん作ったメンバーの実力もあるのですが、試行錯誤を通り抜けた先の経験が活きているなと実感しました。

 『FF16』のPC版を改めて全世界の皆さんにお届けしたいですし、それ自体が喜ばしいことなのですが、それを含めてまたつぎのゲームにチャレンジするところにも期待していただければと。ずいぶんと長くチャレンジしたぶんだけ、結果として皆さんにお返しできたらいいなと思っています。ありがとうございました。

鯨岡『FF』のナンバリング作品がアクションに振り切るということで、おもしろそうだと思ったのがチームに加わった理由のひとつなのですが、もうひとつ理由があって、スクウェア・エニックスという会社で、世界で戦えるタイトルをちゃんと作りたかったという思いがありました。それが実現できて、かつ召喚獣バトルという作成難度の高いコンテンツを担当して、改めて弊社の開発メンバーは凄腕ぞろいだなと感じました。

 自分も含めて、まわりもレベルアップできたタイトルだと思っており、このメンバーがいるならまだまだスクウェア・エニックスは戦えると、強く感じました。この経験をつぎのタイトルにしっかりと活かして、ほかのメンバーといっしょにスクウェア・エニックスとして世界で認められる作品を継続して作っていければと思います。

 非常に長い期間ではありましたが、『FF16』は充実していたタイトルでもありました。『FF16』を受け入れてくれる方が数多くいらっしゃって、自分たちが作ろうとしているものは間違っていなかったと思うので、引き続き、皆さんにおもしろいと思えるゲームをお届けするために、これからもがんばっていきたいです。

高井“長年”といってもいいぐらい、初期の初期から開発に携わらせていただきました。開発中は、アクションであったり、召喚獣合戦であったりと、チャレンジの要素もすごく多くて、本当に紆余曲折がありました。スタッフにもすごい苦労をかけたのですが、おかげ様できちんと『FF16』という作品をリリースさせていただき、お客様におもしろかったという声も多数いただけて、自分としては報われた感じがありました。

 DLCの開発では、ディレクターとして鯨岡くんが立ってくれて、自分は1歩引いて全体を見る形ではありましたが、本編の開発で苦労したかいがあり、DLCの開発はデザイナーやプログラマー、プランナーなど、全員の練度が上がっており、環境もこなれてきていて開発スピードがすごく早かったですね。それを傍から見ていて、「しっかりとした開発環境があって、それを理解しているスタッフたちがガシガシと開発していったら、こんなにすばらしいものがこのスパンで作れるのか」ということを、改めて認識できました。

 ちなみにDLCの開発が進むたびにチェックし、本編とセットで何周も遊んだのですが、DLC込みの本編がすごくキレイにまとまっているなと感じています。本編をクリアーした後でDLCを追加要素として遊ぶのももちろんいいのですが、もしお時間に余裕があれば、一度まっさらな状態でDLCが含まれた本編をまるまる遊んでいただきたいなというのが、いまの正直な気持ちです。DLCのために新たに追加した多数の要素やシステムが本編に活きてくることもあるので、それを込みで改めて『FF16』を楽しんでいただけたら、それはすごく幸せなことだなと思います。

 そしてDLCまで購入してくれた方はもちろん、本編のみ遊んでいただいた方々にも、改めてお礼を言いたいです。遊んでくださって、本当にありがとうございました!

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