画面から立ち上る緊張感といったら! これぞ新世代のオープンワールドアクション

 2Kから2016年10月27日発売予定のプレイステーション4、Xbox One、PC向けソフト『マフィア III』。2016年発売の海外屈指の超大作の1本として期待値も高い同作は、“復讐”をテーマに裏社会に生きる男たちの生き様を描くアクション・アドベンチャーだ。

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 ファミ通.comでは、開発元であるHangar 13のスタジオツアーのリポートの模様をお届けするなど、度々ゲームの概要をお伝えしているが、同作の大きな魅力とも言えるのが、アメリカ架空の都市“ニューボルドー”だ。オープンワールドで構築されたニューボルドーは、『マフィア III』の世界観を構築するうえで欠かせない役割を担っている。すでに明らかにされている通り、架空の都市ニューボルドーにはれっきとしたモデルがある。アメリカ・ルイジアナ州のニューオリンズだ。仕事でさんざんアメリカを訪れている記者ではあるが、ニューオリンズには足を運んだことはない。せいぜいの知識としては、「ジャズが盛ん?」なくらいだが、『マフィア III』で見るニューボルドーから推察するに、「さぞや魅力的な場所なんだろうなあ……」と、想像力を膨らませてみたりもするのだが、そんな記者に実際にニューオリンズを知る機会がやってきた。ニューオリンズで『マフィア III』のハンズオンが行われるというのだ。「さすがは2Kさん! 粋な図らい」ということで、記者は一路ニューオリンズに飛んだ。

 “一路”と言っても、日本からニューオリンズへの直行便はなく、乗り継ぎ時間も含めると16時間近くにも及ぶけっこうな長旅。さらに空港に降り立って気付かされたのが、かなりの湿気。ロサンゼルスやサンフランシスコなどに行っていつも実感されるのが、湿気の低さによる過ごしやすさで、「アメリカって、どこでもこんな感じなのかな?」と感じていただけに、アジアを思わせるこの多湿ぶりはちょっぴり意外。そして、とにかく暑い! とはいえ、こんな高温多湿ぶりが何となく『マフィア III』にふさわしく思われるから不思議……。というわけで、『マフィア III』におけるニューオリンズの再現度に関しては、後日改めてご紹介するとして、まずは、ニューオリンズプレスイベントのメインイベントとなる、『マフィア III』ハンズオンリポートをお届けしよう。

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 昨年のgamescom 2015のタイミングに合わせて発表された『マフィア III』だが、([関連記事] 『Battleborn(バトルボーン)』、『NBA 2K16』そして『Mafia III』と2Kの注目タイトルをピックアップ【gamescom 2015】 )、試遊の機会が設けられたのは、今年の春に行われたプレスツアーに次いで2度め([関連記事] 【プレイ動画追加】『マフィア III』2Kの超大作を“世界最速プレイ” オープンワールドで展開されるシリアスで重厚なストーリーは圧巻)。E3 2016やgamescom 2016でもプレイアブルデモが出展されることはなく、いかに試遊が貴重な機会かということがわかる。しかも今回は、プレイ動画の撮影が可能なうえ、2K側で用意された動画もふんだんに提供されるという。発売も10月27日と間近なだけに(海外での発売日は10月7日)、いよいよその全貌の一端が明かされる……という感じだろうか。

 ニューオリンズのダウンタウンの外れにあるイベントスペースで開催された『マフィア III』のハンズオン。世界中から招かれたメディアは50媒体で、それぞれ一斉にゲームをプレイするとのこと。つまり、用意された試遊台は50台(!)で、かなりな壮観。プレス向けのハンズオンとしてはけっこうな規模。これだけを見ても、2Kの『マフィア III』に対する注力ぶりがうかがえると言えるだろう。

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▲ダウンタウンにあるGeneration Hallにて『マフィア III』のプレビューイベントが開催。開催にあたっては、ホテルから会場までマーティングバンドが先導するというこだわりよう。

 さて、最初に試遊できたのは、『マフィア III』ゲーム本編のまさに冒頭。主人公であるリンカーン・クレイが、仲間とともに警備員になりすまして銀行に潜入する……というシーンから始まる。冒頭は、いわゆるチュートリアル的な部分にあたり、操作に慣れさせるために用意されたものなのだが、とにかく意外な展開の連続で、目が離せない。冒頭はネタバレ要素満載となっているので、詳細を言及するという無粋なことはもちろん避けるが、特筆しておきたいのが演出の巧みさ。たとえば、フラッシュバックで過去に遡ったり、リンカーン・クレイを知る人物(ジェームズ・バラード牧師)が、“現代”から過去を回想したり……と、“語り”に関して随所に工夫が凝らされているのだ。キャラクターたちの演技の巧みさ(とあえて表現してしまうが)とも相まって、ぐいぐいとストーリーに引き込まれてしまうのだ。“ストーリー重視”というのは、Hangar 13の開発陣が何度も言及しているところだが、まさにその魅力の一端を確認することができる。

 ストーリーということに関して言えば、特筆すべき点がある。キャラクターの“演技力”だ。映画でも、俳優の演技力が成否を分ける部分があるが、『マフィア III』におけるキャラクターの存在感は本当に際立っている。アート・ディレクターの方は、「3年間にわたってキャラクターを作り上げてきた」と語っていたが、美麗なグラフィックはもちろんのこと、こうした緻密なキャラクター設定が、リアリティーのあるキャラクターを作り上げ、引き込まれるような“演技”に結びついているのだろう。

 アクションに関して、「へえー」と思ったのが、Xボタンをステルスアクションに振りあてている点(試遊はプレイステーション4版を使用)。ゲームプレイに関しても、開発陣から「派手な銃撃戦を仕掛けるも、後ろから忍び寄って密かに倒すも自由」とは聞きつつも、「まあ、マフィアのストーリーだし、派手に正面から撃ちまくるのが本分じゃね?」と思っていたのだが、本作からステルスアクショが追加されているということもあり、隠密アクションの比重も相当大きくなりそうだ。敵を倒さずにこなせるミッションもあるようだし、実際のところ、こっそり近づいて少しずつ倒していくほうが、何となくラクではあるような気はする。

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 どこまでをチュートリアルと定義するかは難しいところだが、流れるようにストーリーは進み、リンカーン・クレイは3人の“腹心の部下”との関係を構築。ニューボルドーにある10地区(ディストリクト)を、順次制圧していくことになる。これまでは、何となく1本道だったが、以降はいよいよオープンワールドでのゲームプレイが本格的にスタートするのだ。まさに、宿敵となるサル・マルカーノへの“復讐劇”が始まることになる。この冒頭部分をプレイすることで、プレイヤーはなぜリンカーン・クレイが強烈な復讐心を持つに至ったのかを理解する。プレイに対するモチベーションが一気に高まるのだ。

 ハンズオンで体験できたのは、10地区のうち、“フレンチワード”と“フリスコフィールズ”のふたつ。フレンチワードは、ニューオリンズのフレンチ・クオーターをモチーフにしており、いわゆる歓楽街。ニューオリンズがアメリカ合衆国に所属する前、フランス植民地時代やスペイン植民地時代からの建物が多数残っており、歓楽街でありながら歴史の息吹を感じさせる地域だ。もうひとつのフリスコフィールズは、高級住宅街にあたるようだ。

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▲フレンチワード。

 記者が選択したのは、フリスコフィールズ。緑鮮やかな芝生が目に眩しい大邸宅が立ち並ぶフリスコフィールズだが、一方ではそんな表側の顔とは裏腹に、裏では差別主義者のサザン・ユニオンが、イタリアンマフィアと手を組んで密売ビジネスに手を染めている。リンカーン・クレイは、そのビジネスに打撃を与えるため、サザン・ユニオンの拠点に乗り込んでいくことになる。

 キモとなる戦闘は、カバーアクションを取り入れた銃撃戦がメイン。正面からのほほーんと突入しても、当然のこと返り討ちに合うだけなので、建造物の位置や敵の配置などを考慮しながら、敵を倒していくことになる。からっきしの腕前を持つ記者のことなので、当然のこと何度も血祭りに上げられるわけですが、「今度はこうしよう!」といった感じで、工夫して着々と進んでいくのはやっぱり楽しい。“派手な銃撃戦もステルスプレイの思いのままで、幅広いゲームプレイを実現”とは、『マフィア III』を表現するときによく聞く言葉ではあるが、まさに工夫のし甲斐のある銃撃戦であると言える。

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 『マフィア III』における基本的なゲームプレイの流れは、街で情報などを仕入れながらミッションを選択。目的をこなしていくことになる……。と、ここで欠かせないのが“アシ”。つまりクルマだ。ご存じの通り、本作はオープンワールド。言うまでもなくそのフィールドは広大で、移動に際してはクルマが不可欠(そのへんは現実といっしょ)。勢い、“クルマでの移動”の占める割合が高くなるわけだが、これがなかなかに楽しい。リンカーンは、「この世界にあるクルマはすべて自分のモノ」とばかりにフィールドにあるクルマを乗りこなしていく。まずうれしいのが、とにかくクルマの種類がバラエティーに富んでいること。スピーディーなものから、ちょっと馬力の足りないものまで多種多彩で、「つぎはどれに乗ろう?」と、思わずワクワクしてしまう。ちなみに、クルマの性能の違いをいちばん実感させられるのがパトカーとチェイスするとき。馬力のないクルマに乗っているときにパトカーに追いかけられと、思わず「うわー、もっと速く走ってくれ!」と、叫んでしまう(心の中で)。マフィアゆえに交通法規無視上等……と言いたいところだが、意外と信号を守って走るのも楽しかったりする。そもそも信号を無視したり、通行人を轢いたりすると、警察に目を付けられるので、移動は穏便に済ませるのがいいのだ。ことほどさようにクルマは、『マフィア III』においてけっこうな比重を占めると思われる。映画はだしのカーチェイスが満喫できるのも、『マフィア III』の大きな楽しみのひとつと言える。2Kから提供される『マフィア III』の画面写真には、けっこうクルマが写っているものが多いが、作り手のクルマ重視を反映したものと言えるのだろう。クルマ自体は、“1960年代のアメリカ風”の架空のデザインらしいが、エンジン音などは実際のクルマから収録したとクリエイターが発言していたのを思い出した。せっかく緻密に構築したニューボルドーの街並み。ドライブするのも悪くない。

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 世界観を構築する上で欠かせないのが、音楽。『マフィア III』では、1960年代を象徴する名曲100曲以上が収録されており、プレイ中はそれらの音楽が流される。記者も、1960年代の音楽はそんなに詳しいわけではないが、ローリング・ストーンズやビーチ・ボーイズの楽曲など聴き覚えのある音楽も多く、なじみのフレーズを聴きながらのゲームプレイは、やっぱり気分が盛り上がる。

 さて、フレスコフィールズを制圧すると『マフィア III』の(ある意味で)象徴的なシーンが訪れる。“シットダウン”だ。『マフィア III』では、3人の腹心の部下がおり、手に入れた地区を彼らに任せていくことになる。その代償として、リンカーンは3人から固有の“サービス”を受けることになる。一方で、どの部下にどの地区を任せるか、どんな仕事を割り振るかで、部下たちのリンカーンに対する反応も違ったものになる。たとえば、カサンドラにひとつの地区を任せてヴィトを冷遇すれば、もちろんのことヴィトは拗ねる……といった具合だ。腹心の部下の感情によりストーリーは異なったものになる。「3人の部下とうまいことバランスを取るなんて、できるものなのだろうか? 現実でも難しそうだし……」とも思ったりもするが、そのへんも『マフィア III』の醍醐味のひとつなのだろう。いずれにせよ、“シットダウン”では、3人の部下を巡る、緊迫したひとときが味わえそうだ……。

 “そうだ”などと伝聞調で書いてしまったのは、じつは記者がこの“シットダウン”を体験していないからだ。事前にHangar 13のスタッフの方から、「ゲームの進めかた次第では、“シットダウン”まで体験できますよ」と教えられてはいたのだが、腕がないための悲しさゆえか、残念ながらまるっきり到達できなかった次第。

 というわけで、ハンズオンを終えてしばし虚脱状態に陥る記者。なかなかに体力を使う濃密な4時間あまりだった。そう、『マフィア III』は濃密なのだ。濃密は緊迫感と言い換えてもいいかもしれないが、世界観も濃密ならストーリーも濃密。さらに言えば、画面も濃密だ。ニューオリンズをしっかりと再現しえた完成度の高さゆえか、画面からはむせるような濃密さが立ち登ってくるのだ。思えば、ニューオリンズという街にも、ほのかに濃密さが漂っているように思われる。街がぎゅっとまとまっている点や多湿なところなどから、そんなことを感じさせるのかもしれない。そんな濃密さが、ここ(ニューオリンズ)を本作の舞台に据えた理由のひとつにしているのだろうなあ……と思いつつ、心地よい濃密さに身を浸してみるのだった。

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