参加者は、募集1週間足らずで定員いっぱいという大盛況ぶり

 ゲームクリエイターの技術交流の機会として、毎年秋に開催され好評を博しているCEDEC(Computer Entertainment Developers Conference)。その地方開催第2弾として、KANSAI CEDEC 2015が、2015年2月7日に大阪・あべのハルカスにて開催される。ここでは、その開催意図などを、KANSAI CEDEC実行委員長であるヘキサドライブ 代表取締役社長兼CEO 松下正和氏と、実行委員であり、CEDECの運営委員でもあるバンダイナムコスタジオ金久保哲也氏に聞いた。

KANSAI CEDEC 2015がいよいよ開催間近 関西でCEDECを実施することの意義とは?_03

ヘキサドライブ
代表取締役社長兼CEO
松下正和氏(左)

バンダイナムコスタジオ
ET開発本部 サウンド&アニメーション部
モーション課
シニアテクニカルアニメーター
金久保哲也氏(右)

――CEDECにとって、地方開催はここ数年のテーマだと思いますが、KANSAI CEDECはその流れに沿ったものになるのですね?

金久保 はい。ご存じの通り本家CEDECは1年に1回横浜で開催されており、デベロッパーさんを中心に多数のゲーム業界の関係者の集まっていただいているのですが、一方で、地方のデベロッパーさんからは「距離が遠くて……」といったお話をうかがっていました。距離が弊害になっているのであれば地方で開催して、CEDECの一端なりにも触れていただきたい……という話が、前々から運営委員会のほうでも上がっていました。その目標が2014年になって本格的に動きだした形ですね。

――2014年11月のSAPPORO CEDEC 2014の開催に続いて、今回のKANSAI CEDECにつながったわけですね?

金久保 そうです。私は、本体のCEDEC運営委員会では、ビジュアルアーツを担当させていただいているのですが、幸いなことにビジュアルアーツは、関西のデベロッパーの方が多数参加されているんですね。「地方開催をやるんだったら、どんな形がいいんだろう?」といったことは、頻繁に相談させていただいていたので、話し合いをしているうちに、どんどんアイデアが固まっていったというところはありますね。

――地方で開催するんだったら、大阪ははずせない! みたいな?

金久保 というよりは、自然な流れですね。あと、今回は大阪芸術大学のキャラクター造形科にご協力をいただいているのですが、同学科の細田伸明教授が、もともとナムコにいらっしゃったということもあり、いろいろと便宜を図っていただいたんですよ。開催場所の問題とか……。

――ああ、開催場所は、SAPPORO CEDECもいちばんのネックだったとおっしゃっていましたね(⇒関連記事はこちら)。

金久保 その点、大阪芸術大学スカイキャンパスをお貸しいただけるということだったので、場所の問題がクリアーになったのは大きかったですね。

――松下さんがKANSAI CEDECの実行委員長を担当されることになったのはどのような経緯だったのですか?

金久保 実際に関西で開催するとなったら、やはり関西の企業の方に中心になっていただくほうがいいだろうということで、ヘキサドライブの松下さんにお話をさせていただきました。松下さんは、関西のゲーム業界の交流会を主催しているGIPWestに関わられていることもあり、これ以上の適任者はいないということで。

松下 地方版CEDECのお話は以前からうかがっていて、「実際にやるとなったら難しいかもしれませんね」みたいな話はしていたんですね。一方で、「開催するとなったら、どうすれば実現できるのだろう」みたいなことは、ふわふわと考えていたりもしたのですが……。僕は関西でゲーム開発者を集めて交流会を開いていたという流れもあり、「関西のほうでゲームデベロッパーさんにお声掛けするのであれば、ご協力はさせていただきます」ということはお伝えしていました。

――当初は、「やるとなったら難しいかも」と思われていたんですね?

KANSAI CEDEC 2015がいよいよ開催間近 関西でCEDECを実施することの意義とは?_02

松下 はい(笑)。本体のCEDECを見ても、運営が本当にたいへんそうだったんですね。「これを地方でやるとなったら、それこそたいへんだろうなあ」というのが正直なところでした。それが、実際にいざ動いてみると、「KANSAI CEDECをなんとか成功させよう!」ということで、関西のゲームメーカーさんとか、大阪芸術大学の皆さんなど、いろいろな方たちが少しずつご協力してくださることによって、何とか形になってきたんですね。皆さんの力を少しずつ集めて、大きな元気玉ができるみたいな感じで(笑)。皆さんボランティアでご協力してくださっているのですが、バックアップしていただきながら成り立っています。

――案ずるより産むが易しといったところですね(笑)。では、KANSAI CEDEC 2015のテーマを教えてください。

松下 “横浜でしか開催していなかったCEDECを地方でも聴講できます”というのがひとつ。そのため、半分はCEDEC 2014で好評だったセッションを予定しています。残りの半分は関西の企業さんを中心とした、KANSAI CEDEC初のセッションになりますね。言ってみれば“ひと粒で二度おいしい”的な感じかな(笑)。

――横浜のセッションを再現するというのは?

松下 もちろん、ただの横浜の再録というわけではなくて、お話いただくことは少しずつ変えていただくつもりでいます。同じテーマなんだけど、内容がちょっとリニューアルされていたり、バージョンアップされていたり。同じパネルディスカッションだったら、参加者が変わっています。たとえ横浜のCEDECに参加された方でも、そういうところは楽しんでいただけるのではないかと思っています。

――関西のメーカーによるセッションはどのような内容に?

松下 本家のCEDECではあまり聞けないような、関西ならではの話が聞けるセッションになるかと思っています。「関西の企業のここまでがんばっていますよ!」という感じは出せるのではないかと。ちなみに、ヘキサドライブでは、当社が開発を担当した『ファイナルファンタジー零式 HD』に関する講演をさせていただく予定でいます。HD化ということでは当社は好評をいただいているのですが、いままであまりお話したことがなかったんですね。そういった意味では、少し手前味噌になってしまいますが、注目していただきたいです。

金久保 じつは、本体のCEDECでも、ヘキサドライブさんにはHD化のセッションをお願いしたことがあるんですが、いろいろとタイミングが合わずに、なかなか条件がクリアーにならなかったんですね。それが今回実現したのは、タイミングが合ったという点が大きいのですが、“関西だから”という一面もあったかと思います。

松下 地方ローカル局だったらぶっちゃけられます! みたいな?(笑)

――大阪の芸人が、大阪のテレビ局だったらはっちゃけられるみたいな感覚かしら(笑)。

松下 そんなこともあったりなかったりするかもしれません(笑)。

金久保 あとは、学生さん向けのセッションも予定しています。大阪芸術大学さんにご協力していただいているので、“ゲーム業界のいまを知っていただく”ということで、学生さんに還元できないかなと思いまして。当日は、学生さんにとって何かしら有益な情報になるようなセッションを企画しています。

――ちなみに、KANSAI CEDECに対する関西のクリエイターの反響はいかがですか?

松下 じつは、KANSAI CEDECの定員が、募集から1週間経たずにいっぱいになってしまいまして。

――なんと、そうなんですか!?

金久保 定員いっぱいです。

松下 今回は初の関西での開催ということで、そんなに大きな施設を予定しているわけではないのですが……。

――それにしても、思いもよらぬ反響ぶりですね。こういう機会を待ち望んでいたということなのかしら?

松下 ニーズはあったということだと思うんです。関西では、そういう場がいままでなかったんですよ。

金久保 蓋を開けてみれば大人気という(笑)。そういう機会に飢えていたのかもしれませんね。

――関西にはGIPWestがあるので、そういった意味ではクリエイターさんの交流は盛んに進んでいるかと思っていました。

松下 ああー。せっかくの機会なので、GIPWestのご説明を少しさせていただいたほうがいいかもしれませんね。GIPWestは、一見マイナーな団体に思われるのですが、実際マイナーなんですけれども(笑)、3ヵ月に1度くらい交流会を開いていているんですね。それが6年くらい。“関西でもいろいろな方のお話が聞けるように”との意図から、毎回ゲストスピーカーの方に来ていただいて、講演をしていただいているんです。毎回50社・100名以上の方に参加していただいています。賛同会社も35社以上にも及びまして、そういう意味では規模は小さくはないです。「関西を活性化させよう!」ということで、すごくかんばっている団体ではあります。

――関西ではもともとクリエイターどうしの交流はけっこう盛んなんですね。

松下 GIPWestの交流会に来ていただいた方は、だいたい皆さん「関西は超盛り上がっているじゃないですか!」って、いつもびっくりされるんです。そんなときは、「いやあ、そうなんです。関西は超盛り上がっていますよ!」って答えますけど(笑)。

――クリエイターが交流する土壌は整っているわけですね。

松下 ただ、GIPWestに交流会はあくまでも“ゲーム会社のための交流の場”であって、“ゲームクリエイターのための交流の場”ではないんです。

――ああ、なるほど。

松下 どちらかというと、ビジネスの話がメインなので、クリエイティブに関する話はあまりしないんですね。

――そういう意味で、CEDECのような技術交流の場は待ち望まれていたと?

松下 そうなんです。もちろん、クリエイターさんどうしの勉強会は、関西でも頻繁に開いていますが、CEDECのような規模の大きなカンファレンスはないんです。そういった意味では、KANSAI CEDECは待ち望まれていたと言えるでしょうね。

KANSAI CEDEC 2015がいよいよ開催間近 関西でCEDECを実施することの意義とは?_01

金久保 実際のところ、今回のKANSAI CEDECに関しては、今回おもしろさや手応えを感じていただいて、今度は横浜のCEDECでの講演に公募していただきたいという裏設定というか、目論見もあります。

松下 横浜から地方に派生して、そして地方からまた横浜につなげる感じですね。いい循環ができるといいなと。

――ちょうど、CEDEC 2015の公募も開始されたところですしね(⇒関連記事はこちら)。

松下 KANSAI CEDECで交流が生まれて、アウトプットをすることによって得るものもあるといった気運が高まって、「横浜でも講演をしてみたい!」みたいになると、日本のゲーム業界全体のレベルアップにもつながるわけです。それが地方からできるというのは、とてもいいことだと思いますね。

金久保 まさにそれが、地方CEDECの狙いと言えるかもしれませんね。

――定員いっぱいということで、始まる前から少し気の早い話ですが、つぎにつながりそうですね。

松下 そうですね。大事なのは、これを今後につなげていくことなのかな……と思っています。具体的に何かが決まっているというわけではないのですが、これだけの方にKANSAI CEDECに注目していただけるのであれば、ぜひとも、つぎの機会を作りたいと思っています。

――毎年開催とか?

松下 というのもできたらいいですよね。

金久保 運営面に関して言うと、今回はCEDECの運営委員会が引っ張っていくという形だったので、ゆくゆくは関西のメーカーさんに、その役割を担っていただいて組織だったコミュニティーができるというのが、重要じゃないかなと思っています。そういった意味では、今後KANSAI CEDECがどうなっていくのかというのは、CEDEC運営委員会のがんばりももちろんですが……。

松下 地方のゲームデベロッパーにかかっているということですね。

金久保 KANSAI CEDECに刺激を受けて、どうしようかと考えていただけるかな……というところですね。

松下 そういった意味では、我々GIPWestでも、「CEDECのような技術交流会は開いてみたい」という話はしていたんですね。今回KANSAI CEDECにご協力させていただくことによって、「つぎにつなげていきたい」という気持ちは、ものすごくあります。

――KANSAI CEDECが終わって、参加者の方が「定期的にやろう!」という形で盛り上がってきたら、本当の成功と言えそうですね。

松下 そうですね。関西のクリエイターから、「またやってよ!」みたいな声が聞こえてきたら、ぜひやっていきたいですね。

 というわけで、インタビュー中にもある通り、KANSAI CEDEC 2015はすでに定員いっぱい。残念ながらこれから聴講することはできないが、ファミ通.comではリポート記事をお届けする予定なので、せめてKANSAI CEDECの一端なりとも感じてみてほしい。そして、その盛り上がりぶりが気になった方は、つぎの機会にKANSAI CEDECを開催させるべく、後押ししてみてはいかが?