まさにディズニー/ピクサーの人気映画の世界に入り込めるかのような感覚が味わえる

 現地時間2月29日~3月1日の2日間、アメリカ・サンフランシスコにてXbox 360などの最新作をお披露目する“Spring Showcase 2012”が開催。会場では、ピクサー人気映画の5作品『カーズ』、『トイ・ストーリー』、『Mr.インクレディブル』、『レミーのおいしいレストラン』、『カールじいさんの空飛ぶ家』が収録されたKinect専用タイトル『Kinect ラッシュ:ディズニー/ピクサー アドベンチャー』が出展。ピクサーでゲームの監修などを務めたジェイ・ウォード氏がファミ通.comの取材に応じてくれた。

ピクサーのキーパーソンに訊く『Kinect ラッシュ:ディズニー/ピクサー アドベンチャー』の魅力とは?【Spring Showcase 2012】_06
▲ピクサー・アニメーション・スタジオのジェイ・ウォード氏。

――本作において、ウォードさんはどのような立場で関わっているのですか?
ウォード 私の仕事はゲームのコンサルタント的な立場で、いかにクリエイティブにコラボできるかサポートすることです。具体的な仕事としては、本作では、マイクロソフトがピクサーのタイトルを手掛けることになり、開発会社のAsobo Studioに行って、彼らと協力して作品を開発することでした。Asobo Studioはプレイステーション2版のピクサータイトルをいくつか開発していて、ピクサーのことをとてもよく理解しているし、仕事の質も高いので、とても安心して任せることができました。本作でも、彼らはよい仕事をしてくれたと思っています。

――ピクサーはたくさんの映画を手掛けていますが、この5作品を選んだ理由を教えてください。
ウォード ピクサーの映画は全部で12本あって、すべてよい作品なので、選択は容易ではありませんでした。ポイントになったのは、バラエティー感を持たせることでした。たとえば、『Mr.インクレディブル』や『レミーのおいしいレストラン』は少し前の作品ですが、「ゲームとしてプレイしたら楽しいのでは?」ということで採用することにしました。ゲームにいろいろな要素を持たせるようにしたかったんですね。とはいえ、本作をプレイした皆さんが楽しんでいただけるようであれば、ほかの作品が収録された次回作を期待したいくらいです(笑)。

――ピクサーはゲームにはどの程度関わっているのですか?
ウォード 最初からすべてです。まずは、子どもたちがピクサーパークに入っていくゲームの導入部分と設定から考えました。映画でも導入部と設定は大切ですからね。

ピクサーのキーパーソンに訊く『Kinect ラッシュ:ディズニー/ピクサー アドベンチャー』の魅力とは?【Spring Showcase 2012】_11
▲プレイヤーはピクサーパーク内で遊ぶことになる。

――ピクサーパーク内の子どもたちの想像の産物である、いわば“ごっこ遊び”がゲームになる……という設定はとてもユニークですね。
ウォード ありがとうございます(笑)。子どもは本当に想像力が豊かで、ダンボールの箱を本物のレースカーに見立てて楽しむことができる。それと同じように、本作では、子どもたちの想像がゲームとして形になるんです。で、アトラクションが終われば子どもたちはもとの世界に戻るわけです。

――5タイトルとも人気作品ですが、ゲーム化するにあたってとくに気をつけたことは?
ウォード 各キャラクターにはそれぞれ固有の個性や能力があります。「ゲームのキャラクターは何か違う」ということにはしたくありませんでした。映画を何度も見ているお子さんたちは、映画のキャラクターのことをよく知っています。キャラクターが映画以外のジャンルで登場するときは、映画と違和感なく、まさに「映画と同じ」だと思ってもらえることが重要です。

――なるほど。キャラクターとしての制約がある中で、ゲーム性とのバランスを取るのはたいへんだったのでは?
ウォード そうですね。私たちの課題は大きなワールドで皆さんが興味を持って楽しく遊べるようにすることでした。映画はカメラで写したところだけを見せるのでカメラ移動などをコントロールしてショットを決められるのですが、ゲームは“見えないところも構築する”という、それ以上のことをやらなくてはならない。プレイヤーは好きなところに行って、好きなことをやるので限界のない大きな世界です。それがすべて、“映画と同じ世界”としてうまく動かなくてはならない。映画に比べるとゲームは限界がないので難しいです。

ピクサーのキーパーソンに訊く『Kinect ラッシュ:ディズニー/ピクサー アドベンチャー』の魅力とは?【Spring Showcase 2012】_10
ピクサーのキーパーソンに訊く『Kinect ラッシュ:ディズニー/ピクサー アドベンチャー』の魅力とは?【Spring Showcase 2012】_01
ピクサーのキーパーソンに訊く『Kinect ラッシュ:ディズニー/ピクサー アドベンチャー』の魅力とは?【Spring Showcase 2012】_02
▲プレイヤーのデータをKinectで読み取り、ピクサーパークの住人へ!

――映画のソースをゲームに落とし込んだわけではないと聞いたのですが、ゲームのビジュアルを映画に近づけるのはたいへんでしたか?
ウォード それはありませんでした。Asobo Studioには、ピクサーで使ったアートワークを渡して、それをもとにワールドを制作してもらい、できたものを映画のプロダクションデザイナーに見せて意見を言ってもらいました。「空はもう少し青くなくっちゃ」とか、「『トイ・ストーリー3』では、この置物はここにあったらおかしい」などと、細部に渡る細かい指摘をしてもらったんです。それをくり返していきました。ゲームをいちから新しく構築することになっても、この作業で本物に近づけることができたんですよ。

――『Mr.インクレディブル』では、ライティングも映画に忠実だったのだとか? すごいこだわりを感じます。
ウォード 『Mr.インクレディブル』だけではなく、すべての作品において、ライティングや色味など、原作の世界観を忠実に再現していますよ。ピクサーの映画はそれぞれが独特でユニークなワールドを作っていて、それを混ぜるようなことはしませんでした。本物志向とディテールへのこだわりがあります。「このゲームは映画と同じだ」と思ってもらえることが大切なんです。そのために、声優さんもオリジナルと同じ方にお願いしています。

――おお。『トイ・ストーリー』のウッディ役はトム・ハンクスが?
ウォード ああ、それは彼の弟ですね。トム・ハンクスは非常に多忙なので、映画以外の声の出演は、弟が演じているんですよ。声が非常に似ていますよ。バズ・ライトイヤーは映画と同じティム・アレンにお願いしています。そのほか、『カーズ』のマックィーン役も映画と同じオーウェン・ウィルソンです。声優に関しては、そこまでやる必要がなかったのにも関わらず、マイクロソフトさんが努力してくれました。これにより、さらに本物に近づいて、とてもよかったと思っています。

――開発にあたっては、Asobo Studioがピクサーの作品を手掛けていたということも大きかった?
ウォード それはとても大きかったです。彼らはピクサーの映画のファンであり、ピクサーをリスペクトしてくれているので、「ピクサーの期待を裏切らないものにしよう」と注意を払って開発をしてくれたんですね。前にいっしょに仕事をしていたということで、お互い信頼関係がありました。これはとても重要なことです。

ピクサーのキーパーソンに訊く『Kinect ラッシュ:ディズニー/ピクサー アドベンチャー』の魅力とは?【Spring Showcase 2012】_05
▲会場では実際に『Kinect ラッシュ:ディズニー/ピクサー アドベンチャー』で遊ぶことができた。

――では、Kinectについて聞かせてください。Kinect専用タイトルを開発してみていかがでした?
ウォード Kinectのテクノロジーについては、当初からコントローラーなしですぐにゲームに入って遊べるというところがクールだと思っていました。Kinectはピクサーの世界観を再現するにはとても合っています。コントローラーでは細かい操作が必要ですが、Kinectでは体を使って世界観に没入することができる。

――あえて意地悪な質問をしますが(笑)、ご苦労などはありませんでしたか?
ウォード 大きな課題は大人と子どもの動きの違いでした。大人の動きはある程度読みやすいのですが、子どもはそういうわけにはいかない。ハンドルを握る動作ひとつにしても、子どもによって本当にまちまちなんです。ある子どもは大きく腕を左右に広げたかと思うと、ほかの子どもは小さく前に出すだけだったり……と。そのために、大人と子どもの動きの違いにも対応できるように、カメラを改善する必要がありました。個人的には、先日ニューヨークで行われたイベントでの出来事が印象深いです。3歳のお子さんが、『Kinect ラッシュ:ディズニー/ピクサー アドベンチャー』の前に来て、いきなりクルマを運転しだしたんですよ。これにはとてもクールだと思いました。コントローラーではとてもできないことです。

――本作を遊ぶ人は誰でも気になると思うのですが、本作に登場する架空の“ピクサーパーク”が実現する可能性は?
ウォード (笑)。それができたらクールですね。まあ、現時点でもディズニーランドにはピクサーのいろいろなアトラクションがありますからね。東京ディズニーランドにある『モンスターズ・インク』“ライド&ゴーシーク!”は私のお気に入りです。いま私は、ディズニー・カリフォルニア・アドベンチャー・パークにこの夏オープンする“カーズ・ランド”のプロジェクトにどっぷりと関わっているのですが、規模もディテールもすばらしいですよ。

――では、最後にファミ通.comの読者に向けてのメッセージをお願いします。
ウォード ゲームが好きな方もピクサーファンの方も、「違う世界で新しいことを楽しみたい」という共通の思いがあり、ファンタジーワールドでふだん遊べない体験がしたいと思われていることと思います。『Kinect ラッシュ:ディズニー/ピクサー アドベンチャー』では、まさにピクサーの世界に入り込めるかのような感覚が味わえるので、きっと気に入っていただけると思います。

ピクサーのキーパーソンに訊く『Kinect ラッシュ:ディズニー/ピクサー アドベンチャー』の魅力とは?【Spring Showcase 2012】_03
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ピクサーのキーパーソンに訊く『Kinect ラッシュ:ディズニー/ピクサー アドベンチャー』の魅力とは?【Spring Showcase 2012】_07
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