• プラットフォーム:プレイステーション3・Xbox 360
  • メーカー:ディースリー・パブリッシャー
  • 発売日:3月4日発売予定
  • 価格:7329円[税込]
  • テイスト/ジャンル:アクション・アドベンチャー/SF
  • プレイ人数:1人
  • 通信機能/10人までのオンラインマルチプレイ
  • CERO:18歳以上対象

ここがヤバいぜ『バイオショック2』語り尽くしプレイリポート!

  これまで3回にわたって『バイオショック2』の魅力をご紹介してきたが、ラストはプレイリポートで本作の魅力を凝縮してお届けする。となれば、そのクレイジーとしか言いようのないマッドな世界観に触れないわけにはいかない。そのまえに、まずは本作の背景をおさらいしておこう。海底都市ラプチャーは、アンドリュー・ライアンによって、国家権力や社会にとらわれずに科学が発展できる都市として建設された。その結果、ラプチャー内では監視カメラや自動タレット(機銃)といった時代的にありえない機械類が整備されており、史実では1952年に発見されたばかりのはずのプラスミドが、ラプチャーでは人間に特殊能力を与えるものとして当たり前のように利用されている。ビッグダディやリトルシスターといった一種の改造人間が存在している異常さについては言うまでもない。天才たちが何にもとらわれず才能を最大限に発揮した結果、ライアンの野望であった海底のユートピアが一度は実現したわけだ。しかしご存じのとおり、ラプチャーはやがて破滅へと向かっていくことになる。ラプチャーは欲望のままに“ADAM”を取り込んで人体改造をくり返し、精神に異常をきたしてしまった“スプライサー”だらけ。正気を保っている連中なんか、ほとんどいない。いい意味で悪趣味なブラックジョークも盛りだくさん。「来るぞ、来るぞ」と思っていると何も起こらず、安心した瞬間に「ギャー!!!」と驚かされるショックシーンもある。突然死体が降ってくるのなんか序の口だ。だが、意味もなく“悪趣味”なわけではない。

↑ラプチャーのいたる所で見ることになる蝶の絵、はラムのモチーフ。しかしよく見ると、絵は手を無数につけて描かれているのだった!

↑死体がここぞとばかりに浮かんでいるのがあやしい。さらに注目すると、アイテムが置いてあるのも発見。ますますクサい。

美しくもマッドな世界がヤバすぎる!

  例を挙げよう。ラプチャーのとある場所には、●館(ぜひその目で見てほしい場所なので詳細は伏せるが、要はオトナのお楽しみの場所)がある。人類の楽園であるハズのラプチャーに、その高尚な理念から真逆に見えるソレがあるというだけでもヒドい話なのだが、専用の設定まで丁寧に用意してある。ダイアリーから判明する、この施設に横たわる死体たちに隠されたストーリーは、本当にヒドいブラックジョーク! はっきりとは書かれていないが、どうやらアイテムを使った変態プレイをする関係だったというのである。もちろん、よく見るとちゃんとそのアイテムも転がっている。いつもの如くプレイを要求したら……というわけだ。死体そのものが、その場所で過去何が起こったかを物語る一部になっているのは、本作で頻繁に見られる手段のひとつ。そんなものにも「ラプチャーにはこんな場所もあって、こんなエピソードがあるハズだ!」という、クリエーターの意図が込められているのだ。
 死体さえも何かを物語るのだから、本作のキャラクターたちが魅力的なのは言うまでもない。ラプチャーの人々の異常な行動には、それぞれのキャラクターが抱える複雑な事情が原因となっていることが多く、たとえ最初は一面的な性質のキャラクターに見えても、ダイアリーによって、隠された秘密や、別のキャラクターの視点からの意外な評価が浮かび上がってくることも多い。ダイアリーはいかにも本筋と関係がない“やり込み要素”のように見えるかもしれないが、放置するのはもったいない! 本作を真に楽しむのならば、探すだけの価値はある。すでにこの特設ページでもお伝えしてきたように、ダイアリーは本作だけでなく『バイオショック』全体をより深く理解するのに欠かせない。ぜひ、シリーズを通じた、ラプチャーの全貌に迫ってみてほしい。

プレイヤーが迫られる選択の意味とは――

  そもそも、ラプチャーはなぜ科学の楽園として作られたのか? ここで前作『バイオショック』に影響を与えたとされる小説『肩をすくめたアトラス』について触れておきたい。著者Ayn Rand(アイン・ランド)の綴りを入れ替えてAnd(rew) Ryan(アンドリュー・ライアン)というキャラクターの名前を作ったのだという、ちょっと眉つばものの話もあるのだが、もっとも重要なのは、ラプチャーそっくりの“天才の楽園”が出てくることだ。国家権力によってその才能を奉仕させられたり、潰されたりしてきた天才たちが姿を消し、ある山中に自分たちだけの楽園を作るという話は、ライアンとラプチャーの関係と似ている。ほかにもアイン・ランドの小説には『水源』というものもあり、原題を『The Fountainhead』と言う。フォンテインヘッド……前作をプレイした人なら、ラプチャーの豪商にしてストーリー上の重要人物“フォンテイン”の名を思い出すだろう。この小説は’20年代から’40年代あたりを舞台にした建築家の話なのだが、ラプチャーの建築は、史実ではまさにその間に流行したアール・デコ調となっている……。
 それは偶然にしても、つながりは名前や作中で起こる出来事だけではない。アイン・ランドはアメリカでは熱心なファンによりその思想が信奉されているのだが、その内容は、ものすごくおおざっぱに言うと、徹底した合理主義。その考えに従うと、個人の才能が国家や社会に浪費されたり制限されるのはありえないし、弱者への無償の愛を説く宗教や、個人が全体に奉仕しなければいけない共産主義といったものも同様。こういったものへの評価も、ライアンと似ている部分だ。なぜなら、ラプチャーでは宗教はご禁制で、聖書は密輸入品として扱われるほど。そして、ライアンは共産主義が大嫌いだ!
 『バイオショック』に込められているのは、こうした合理主義とは逆のメッセージだ。人間はそんなに合理的にはなれない。ラプチャーの超科学力も精神を進化させることはできなかった。その象徴が、ADAMの副作用で精神に異常をきたしたスプライサーたちだ。欲望に身を任せて行動する彼らは、進化というよりもむしろ退化したのではないかと思えるほど。だが、神の名を高らかに歌った数秒後には人を殴りにかかるスプライサーのデタラメさは、極端な理想を掲げるライアンよりも人間臭く、その怖い顔に慣れさえすれば、何となくかわいく思えてきたのは記者だけか? 話がそれたが、前作でプレイヤーが試されるのは、「リトルシスターを助けてほしい」と説くテネンバウムの頼みを聞き、彼女たちを救済するのか、あるいは自分がADAMをより多く入手するために手っ取り早く彼女たちから“搾取”するのか、という問題だ。その選択によって物語の運命は大きく変わる。本作ではこれにプラスして、実の親子ではない実験体デルタ(プレイヤー)とエレノアの絆もテーマとなっている。ふたりははたして、実の娘であるエレノアを使ってラプチャーのすべてを手に入れようとする、ラムの野望を打ち倒すことができるのだろうか? 

↑ライアンの夢と理想が詰まった博物館は必見。展示物がすっかり寂れてしまっているのが、なおさら哀愁を感じさせる。

↑ラムはいったいエレノアを使って何を企んでいるのか? とても実の娘とは思っていなさそうな、実験物扱いがヒドすぎる……。

新たな戦闘システムはかなり快適!

  ただ武器で倒すだけでなく、プラスミドを使ったり、罠にハメたりと、幅広い戦いかたができるのも、本作の魅力のひとつ。前作では武器とプラスミドをいちいち切り替えなければいけなかったのが、左手から放つ特殊能力プラスミドと、右手に装備した武器の“ワンツーパンチ”で戦えるようになり、快適に進化している。このおかげで、リトルシスターが死体からADAMを吸収している際に出現する大量のスプライサーとも、スピーディーに戦えるというワケだ。このスプライサーとの戦いや、ビッグダディ、ビッグシスターとのバトルは、それぞれ違ったテイストを持ちながら、いずれも戦いが本格的に始まるまで猶予期間があるのがミソで、強力な敵と戦うまえに戦闘の準備ができるのがうれしい。このおかげで、純粋なシューティングの腕が足りなくても、うまく作戦だてて戦えばある程度カバーできるぞ。
 ちなみに記者が気に入っている作戦は、爆発物とトラップリベットを組み合わせた罠と、敵の攻撃に通りすがりのビッグダディを巻き込むこと。前者は敵がセンサーに引っかかった瞬間に炎上させることができるので、どこから襲撃してくるかわからないスプライサー軍団や、俊敏で動きを捕捉しにくいビッグシスターと戦う際に役立つテクニックだ。後者はビッグダディがじつは基本的に中立であることを利用した罠。攻撃を受けると、放った相手を全力で倒しにいく。うまくハマれば共倒れを狙えるのがサイコーだ。ビッグダディに一度火がついたら、たとえビッグシスターでも無傷ではいられない。ガチンコでぶつかり合うふたりを邪魔しないよう、そっと高みの見物を決めよう。
 本作は、濃厚な世界観とストーリー性、そして自分で好きなようにプレイヤーキャラクターを強化できるスタイルから、FPS(一人称視点シューティング)の方法を使った一種のRPGと見ることもできる。シリアスにストーリーの謎を追い求めるのもよし、ブッ飛んだ世界に浸って暴れまくるもよし。美しく退廃的な、かつての楽園ラプチャーを存分に堪能してくれ!

↑トラップリベットのセンサーに障ると爆発物に引火、そのまま油に火がつくという複合トラップ。敵の足止めにもなる。

↑ハッキングしたライフステーションを敵が使うと毒ガスを噴出する。さすがのブルート・スプライサーもこれでオダブツ。

(編集部:ミル☆吉村)

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