所司和晴(しょし・かずはる)●将棋棋士七段。“定跡伝道師”というニックネームでも知られており、数多くの著書を出版。人気の将棋ソフト『東大将棋』や『激指』シリーズの定跡編集も手がけている。シャンチー(中国象棋)にも精通しており、国際大会でも実績を残す。将棋の普及にも尽力しており、千葉県・津田沼のカルチャー&将棋センターでは将棋教室を開催している。また、弟子にあたる渡辺明二冠(王将・棋王)が現在、王将戦(3月27日まで)と棋王戦(3月31日まで)のダブルでタイトル戦を争っていることも話題に。

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“サクリファイス”という言葉がきっかけです

――まずお聞きしたいのは、所司さんが『ソウル・サクリファイス』(以下、『ソルサク』)をプレイされるようになったきっかけです。そもそも、ふだんからゲームを遊ばれていたのでしょうか?

所司和晴氏(以下、所司) 『ソルサク』より以前は、それほどゲームをプレイしていなかったんです。若いころもテレビゲームはほとんど触っていません。ゲームに慣れたのは、mixiなどのSNSを利用するようになり、誘われてソーシャルゲームなどを遊ぶようになってからですね。もちろん、将棋のゲームに関わっていたので、PS2やPSPに触れる機会はありましたが、そこまで遊んだことはありませんでした。でも、そのうちにPS Vitaの情報を目にするようになり、PCが好きだったこともあって「単純なゲーム機ではない、性能がよさそうなハードが出るな」と思い、発売当初に購入したんです。PS Vitaではいくつかゲームを遊びましたが、それもひと段落したころに『ソルサク』の体験版が無料で配信されることを知りました。

――数あるタイトルの中で、『ソルサク』が引っかかった理由は?

所司 じつは、“サクリファイス”というタイトルなんです。将棋で言う“捨て駒”のことを、チェスでは“サクリファイス”と呼ぶんですね。将棋では“捨て駒”はとても魅力のある手のひとつなので、まずそこが引っかかりました。しかも無料だったので、さっそくプレイしたのですが、そのボリュームにも驚かされましたね。それに、ニミュエとの切ない結末にジーンときまして(笑)。じっくりと体験版を楽しみながら、発売日(2013年3月7日)まで待ちました。

――『ソルサク』を初めてプレイしたときの印象は?

所司 アクションゲームはあまり得意ではないのですが、操作がしやすいし、スピード感もあって“おもしろい”と。アニメチックではなく本格的なグラフィックも、大人が楽しめると思いましたね。子どものころに読んだマンガの『デビルマン』を彷彿とさせるダークヒーローの姿を、『ソルサク』に見たんです。発売日の前日に、ニコニコ生放送で発売記念番組(※編註:『ソルサク爆誕☆前夜祭』。2013年3月6日22時から配信された)が配信されていましたが、次の日の朝から台湾に向かわなければならなかったのに、しっかりと見てしまいました(笑)。

――発売日が待ちきれないほど期待が膨らんでいたんですね。そこまでのめり込んだ理由とは何でしょうか?

所司 世界観や音楽、スピーディな展開、短い時間でも楽しめるゲーム性など、いろいろあるのですが、やはり魔法でしょうか。魔法を使った戦闘をスムーズに体験できるところはもちろんですが、多彩な魔法の中から“選択”するというおもしろさが理由のひとつですね。威力が高い魔法ほど扱いにくくなっているので、そこをどうするのか。選択は自由なので、自分に合った魔法を見つけ出すのが楽しかった。物語の魅力もありますね。マーリンに挑んだときのスケールの大きさには感動しました。

――アクションゲームが得意ではないとおっしゃいましたが、『ソルサク』はそれなりの歯応えがあるゲームですよね。

所司 やり込み要素が満載だったおかげで、私でもプレイできたんです。ヘタでも、じっくりとやり込むほど刻印や供物が充実していき、魔法使いがきちんと強くなる。それが実感できたので、プレイするほど楽しくなっていくんですよ。しかも、DLCでどんどん新しい魔法や魔物が配信されていくので、もう楽しみでしかたがありませんでした(笑)。

 

将棋の“定跡”と同じものが『ソルサク』にはあります

――どのようなプレイスタイルで楽しまれていたのですか?

所司 もともとは“魔”寄りがメインでしたが、DLCで“均等”が強くなったので、それからは“均等”で固定しました。魔法は、爽快感や好きなスタイルに合わせて決めるというよりは、どうしても数字で判断しちゃうんです。どれだけ効率よくダメージを与えられて、いいスコアが獲得できるのかを考えて魔法は選んでいました。あまりアクションゲームが得意ではないこともあって、なるべく生き残れる、ある程度被弾されても勝ち残れるように考えて、持っていく魔法を決めています。

――近接魔法でどんどん突っ込んでいくタイプではない。

所司 それも数字的に成り立てばいいのですが、そもそも近接魔法でガンガンと攻めるのは私には難しかったので、投擲魔法がメインとなりました。ベルゼバブがDLCで配信されて“均等”が強化されてからは、“蝿伯爵の王冠”をよく使っています。この魔法はいろいろな距離に適した使い勝手という印象を受けましたので。攻撃系はとくに“蝿伯爵の王冠”がお気に入りでしたが、ケンタウロスの呪部解体報酬である“怠弓師の矢尻”も好きです。投擲魔法の中ではもっとも強力なんです。回復系は、スライムの“粘生物の塊”や、ミノタウロスの“小公女の仮面”を付けるようになりました。やはり、人型魔物の供物の方が強力なのでなるべく装備するようにしています。もちろん、防御もしっかりしたいので、鎧系の魔法も欠かせません。あとは魔法をどのボタンに配置するかを考えます。いちばん押しやすい○ボタンに、よく使う攻撃系の供物を配置して、回復系や鎧系の供物はふたつめの△ボタンに配置して、□ボタンには、補助系か攻撃系をはめ込んでいます。やはり一瞬の判断が大事なゲームですから自分の使いやすい配置を考えます。

――事前にかなり準備をされてから“闘う”タイプなんですね。やはり、将棋に臨むときの姿勢と通ずるものがあるのでしょうか?

所司 そうですね。将棋には決められたルールがありますが、そこに沿って指せば自由です。将棋で言う“定跡”とはいわば“セオリー”のようなものですが、そこを工夫・研究することで新たな手が生まれたりします。『ソルサク』でも同じことが言えるんですよ。体験版では最初、なかなかケルベロスが倒せなかったのですが、初めて倒せたときはうれしかった。そこからつぎに目指したのは、“伝説の魔法使い”の評価を獲得することです。禁術を使うと“伝説”が獲りやすのですが、ケルベロスは強くて、あっという間に瀕死になってしまいます。それでいろいろ試行錯誤しているうちに、禁術を使うと獲りやすいと気づきました。そこで、ケルベロスと戦う前にある程度ダメージを受けておいて禁術が出せる状況を作り、いったん回復してからケルベロスに挑むという方法を見つました。これなら、いいタイミングで禁術を使えるので、ヘタでも“伝説の魔法使い”になれると思ったんですね。もちろん攻略本やサイトで情報を見たりもしましたが、そこから自分なりの研究を通して新たな方法を見つけ出すという行程は、まさに将棋と通ずる部分だと思います。将棋でも研究したりといろいろ準備をして対局に望みますが、『ソルサク』でも同じことをしていますね。あまりにも準備を重ねたせいで、実際に闘ったときに「意外とカンタンだったな、もうちょっと早く挑戦すればよかったな」と思うこともあります(笑)。

――“定跡”がゲームの先を行ってしまった瞬間ですね(笑)。しかし、将棋と『ソルサク』に共通点があるという観点は新鮮です!

所司 私自身が先を読む職業なので、『ソルサク』でも魔物の動きや攻撃方法といった展開を読んで、どの供物をどう配置するのか、などを考えるのは楽しいです。将棋の流れは、おおざっぱに言いますと“序盤”、“中盤”、“終盤”に分かれるのですが、『ソルサク』も同じ感じがします。体力が減って魔物の動きが変わってくるところが“中盤”。生贄と救済の選択や、禁術の発動などが“終盤”に該当すると思いますが、ちょっとしたミスで状況がひっくり返ります。そこは将棋と同じで、“終盤”がもっとも大事なところも魅力的です。

――序盤、中盤、終盤という流れは大きく変わらないまでも、『ソルサク デルタ』ではいままでの“定跡”を更新する必要が出てきますね。

所司 そうですね。いま配信されている体験版も、もちろんプレイしているのですが、新しい組織の“グリム”や魔法連携など、情報を得るごとに期待が膨らんでいます。正直、まだ魔法連携に関しては試している状況なので、全部を把握できてはいないのですが、やっぱり数値が気になります(笑)。いろいろな検証を“ソルサク フレンド”と重ねていきたいですね。

――“ソルサク フレンド”……ですか?

所司 はい。個人的に“共闘”イベントなどにも行ったことがありまして、一度は運よく大会で優勝して豪華なケルベロスの盾をいただいたこともあるのですが、そういった場所で知り合った方々で、LINEを通じて『ソルサク』の仲間グループが生まれたんですよ。そのメンバーでオンラインマルチプレイを楽しむことがあります。グループのメンバーとはイベントやオフ会などで会ったときにアドホックを使ってプレイするというのも、たまにありますよ。

後編では、所司氏の共闘プレイの全貌が明らかに!? さらに『ソルサク デルタ』の注目ポイントを語ります。お楽しみに!

 

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