『ストリートファイター』シリーズをはじめ、『バイオハザード』や『モンスターハンター』など、世界的な大ヒットタイトルを生み出し続けているカプコンは、2023年で創業40周年を迎える。これを記念して、代表取締役社長の辻本春弘氏にロングインタビューを実施。40年の歩みや今後の展望、そして発売間近の注目作に関するお話などをうかがった。

聞き手:林克彦(ファミ通グループ代表)

辻本春弘氏(つじもとはるひろ)

1987年、大学卒業と同時にカプコンに入社。1997年に取締役に就任し、以後は家庭用ゲームソフト事業の強化に注力。2007年7月に代表取締役社長 最高執行責任者(COO)に就任し、現在にいたる。

(文中は辻本/“辻”はしんにょうに点ひとつ)

2022年度はデジタル版およびエクスパンションタイトルが好調

――カプコンは2023年6月11日で創業40周年を迎えます。節目の年になりますが、いまの率直なお気持ちを聞かせてください。

辻本ひと言で表現するなら、まさに激動の時代でした。40 年前、大学1回生のときに、現会長と社員がわずか5名で創業して。アーケードゲームからはじまり、さまざまな家庭用ゲーム機での展開を経て今日にいたるわけですが、本当にさまざまなことがあった40年間でした。

――ゲーム業界は移り変わりがはやく、そこに対応していくだけでも大変な中、御社は方向性がぶれることなく、ゲーム開発に取り組んでこられた印象を受けます。

辻本創業当初から、「いかにしてグローバルにゲーム事業を展開していくか?」という考えはつねにありました。ワールドワイドで受け入れられるゲームとはどういったものか? そこを突き詰めていくと、原点となるのはやはり『スペースインベーダー』なんですね。シンプルな作りながら、あれだけ世界中の人々を魅了して、ゲームとしてのおもしろさも凝縮されていて。同作に負けないくらい、グローバルに楽しんでもらえるものを作っていかないといけないという思いは、いまも変わらずに持ち続けています。

――2022年度は『モンスターハンターライズ:サンブレイク』や『バイオハザード ヴィレッジ ゴールドエディション』などが話題になり、つい先日には『バイオハザード RE:4』も発売。大ヒットを記録しています。改めて、2022年度のゲーム事業を振り返ってみての、率直なご感想をお聞かせください。

辻本2022年度は、エクスパンションタイトルを主軸にしたビジネスが好調でした。それ以前にも『モンスターハンターワールド:アイスボーン』などを展開しましたが、ここまでエクスパンションを中心にしたビジネスは初の試みだったので、チャレンジの連続でしたね。

【VIPインタビュー】カプコン辻本春弘社長「グローバルで戦えるコンテンツとしてゲーム産業を育てていく」創業40周年を迎えたカプコンの歩みとこれからの展望を訊く

――そうした展開と合わせて、数年前に発売されたタイトルが変わらずに好調な売れ行きを見せたことも、2022年度の特徴だったように感じられます。

辻本当社では2021年以降、「発売から3年が過ぎたタイトルもしっかり売っていこう」という目標を立てて、そちらもしっかり遂行してきました。デジタル版が主流になる以前は、店舗でパッケージ版を売ってもらう形が主流でしたが、そうなると棚の効率を考えて、半年で売り切れるくらいの本数しか出荷できず、ゲーム会社としては売りたくても売れない状況が続いていたんです。それがここ数年で、「デジタルストアでの購入」が一般的なものとなって。

 デジタルの場でなら自分たちの判断で、発売から3年が経ったタイトルでも販売できるので、「それらのタイトルもしっかり売っていこう」となり、いまにいたります。3年の理由は、当社における開発の投資回収期間は2年程度が目安で、3年目以降のタイトルは、低単価で販売してもメリットがあるからです。こうした取り組みは今後も力を入れて継続していきます。

――デジタル版は定期的にセールが行われるところも、ユーザーにとってはうれしいポイントですね。

辻本そこにも「低価格で良質なゲームを楽しんでもらい、シリーズ作そのもののファンになっていただく」という狙いがあります。そうしてワールドワイドにファンベースを拡大していく施策も、デジタルに舵を切ったときから注力している取り組みのひとつです。リピートタイトルの毎月の売り上げは細かくチェックし、月ごとに前年比も出していく。このようにして得たデータを基準にしつつ、別プラットフォームでの展開やエクスパンションビジネスも行っています。

――データの分析は、専門のチームが担当されているのでしょうか?

辻本そうです。ちなみにマーケティングをより強化するようになったのは、『バイオハザード7 レジデント イービル』の開発時からですね。蓄積したデータを活かして、『バイオハザード RE:2』以降のタイトルは作られています。2年ほど前には社内体制も変更し、データ分析専門のチームを編成しました。

 この取り組みの最大の利点は、売上の推移から国別の売れ行きまで、あらゆるデータを分析し、入念なシミュレーションを行ったうえで次回作を開発できるところにあります。開発チームにとっても、必要な情報が随時フィードバックされるので、修正するべきポイントなどを割り出しやすく、販売動向や投資回収の目途を立てた状態で発売できるのは大きなメリットですね。

――2023年度に入り、業界全体でもデジタルへのシフトはさらに顕著になると思われますが、現在、デジタル版の比率はどのくらいなのでしょうか?

辻本2年前の時点で、会社としての体制もデジタル化に向けて大きく方向転換したので、いまは年間の販売本数のうち、約8割はデジタル版になります。

――時代の変化に先んじて、大々的に投資をされていたと。

辻本なんといっても、40年かけて培ってきた経験則があるので。これまではゲームセンターであったり、問屋様を相手にしたBtoBのビジネスが主流でしたが、そのころからいつかやってみたいと思っていたのが、ダイレクトにユーザー様とやり取りができるBtoCのビジネスでした。ユーザー様に興味を持っていただいて、ご購入いただくまでの流れを直に体験したい……といいますか。そうした環境でのビジネスに新たに参入したいと思い、いち早く舵を切りました。

注目作『ストリートファイター6』では初心者を意識し、さまざまな施策を展開

――2023年6月2日発売予定の『ストリートファイター6』をはじめ、今年は例年以上にカプコン作品に注目が集まりそうです。2023年度の展望や、ソフト展開の戦略をお聞かせください。

辻本さまざまなタイトルが控えていますが、まずはお話しいただいた、『ストリートファイター6』に注力いたします。カプコンはeスポーツにも力を入れていますが、初めて取り組んだ『ストリートファイターIV』のころは、まだ日本でそうした文化が根づいておらず、『ストリートファイターV』を展開していた時期にようやくJeSU(※)が発足して、「本腰を入れて盛り上げていこう」ということになりました。『スト6』は最初から、eスポーツとしての展開を想定して開発したタイトルなので、大いに盛り上がることを期待しています。

※JeSU:一般社団法人日本eスポーツ連合。

――盛り上げ施策として意識されている点はありますか?

辻本以前からeスポーツにおいて気になっていたのが、「参加するのはプロばかりだから」という理由で、エントリーすることはもちろん、ゲームプレイ自体も断念してしまうユーザー様が非常に多い……ということでした。そこで『スト6』では、いきなり対戦プレイからではなく、まずはシングルでも楽しめるモードを遊んでいただいて、そこから“対戦格闘ゲームのおもしろさ”を知っていただくことを意識したゲームデザインになっているところが、いちばんのこだわりになります。

 ちなみに昔は、対戦格闘ゲームといえばゲームセンターに通って、そこで対戦をしたり、上級者のプレイを見て腕を磨くという接しかたが主流でしたが、いまはなかなかそういったことが難しい状況なので、“バトルハブ”(※)というメタバースをゲーム内に実装し、そこで対戦や交流が楽しめるようになっています。

※バトルハブ: ゲーム内で最大100人のユーザーが日常的に集える場所。

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『ストリートファイター6』

――ゲームの中にさらにゲームセンターがあって、そこで『スト6』をプレイするという感覚ですね。

辻本それともう1点、注目していただきたいのが、「バトルハブにおけるキャラクター(ユーザーの分身となるアバター)のビジュアルは、自由にエディットできる」というところです。これはつまり、自身が世界中で有名になればそのアバターも“キャラクター”としてビジネスチャンスにつながる可能性も秘めていると思い、バトルハブは入念に作り込んであります。

――対戦格闘ゲームというジャンルを確立したカプコンが改めて、同ジャンルの敷居を下げたり、間口を広くするための展開に尽力されているというのは感慨深いですね。その一方で、労力や費用面の負担は相当のものだったのではないですか?

辻本当社にとって『ストリートファイター』シリーズは看板タイトルですので、投資することに迷いはありませんでした。ここ数年、『バイオハザード』シリーズは複数タイトルで販売本数1000万本を記録し、『モンスターハンター』シリーズもいまや2000万本を狙えるタイトルを抱えています。『ストV』も700万本を超えているので、ここにデジタル方面の経験則を活かせば、次回作ではライフで1000万本は狙えるだろうと。だったら、いままでできなかったことをすべて『スト6』で実現しようとなり、現在にいたるわけです。

 データ分析の専門部署がユーザー動向を見極めつつ、『ストV』では十分とはいえなかったeスポーツへの取り組みや、ジャンルのすそ野を広げる展開にも力を入れて取り組んでいます。

――新規ユーザーに興味を持ってもらい、遊んでもらうためには、開発とはまた別のさまざまな労力がかかりそうですね。

辻本新規ユーザー様の獲得はもちろんですが、我々としては買っていただいて終了ではなく、その後も楽しんで、最後まで遊んでいただくことが重要だと捉えています。というのも、たとえば『モンスターハンター』シリーズの場合、エクスパンションタイトルでは本編後のストーリーや新しい要素が追加されるため、より魅力を理解してもらうためには、まずは本編をしっかり遊んでいただく必要があります。ですから、プレイ状況に関しては細かくデータを取っていて、途中で行き詰まった方が多い場合は、救済措置として装備を無料配信したり、情報の周知が足りていなければ告知のための番組を配信したりしました。

 ここまでして初めて、エクスパンションタイトルのビジネスは成立するので、その辺りは徹底しています。

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『モンスターハンターライズ:サンブレイク』

――『スト6』でも、新たに参入してきたユーザーを飽きさせないために、さまざまな展開が実施されることを期待しています。ちなみに、世界規模の格闘ゲーム大会“CAPCOM Pro Tour 2023/CAPCOM CUP X”では、賞金総額200万ドル(約2億6000万円)以上ということが発表され、こちらも話題になっていますね。

辻本現場の方から、“カプコンプロツアー”を盛り上げたいので賞金総額を上げたいという相談がありまして、「現場がそう言うならいいよ。その代わり、1000万本を狙うんやで」と、ふたつ返事で了承しました(笑)。

技術的な実験も含め新規IPを開発。世界に向けて既存IPの復活にも注力

――『スト6』以外にも、2023年以降には『エグゾプライマル』や『プラグマタ』といった新規IPが控えています。これらの開発の経緯をお聞かせください。

辻本『スト6』と『エグゾプライマル』は、どちらも長く楽しんでいただくタイトルになります。『モンスターハンター』も同じカテゴリーに含まれますが、これらと『モンハン』の違いは“クロスプレイの可否”で、開発中の2タイトルでは、プラットフォームの垣根を越えた対戦・協力プレイを楽しむことができます。今後のタイトルではクロスプレイに対応させるつもりなので、『エグゾプライマル』の開発には、そのためのノウハウの蓄積という目的もあります。クロスプレイ時のサーバーの負荷やユーザー様とのコミュニケーションも含めて、さまざまなチャレンジを試すつもりです。

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『エグゾプライマル』

――先々を見据えた技術的なトライアルに加え、新規IPとしてもしっかり作り上げていく……というわけですね。

辻本当社に限らずですが、昨今のゲームは非常に品質が高くなり、1タイトルの開発に携わる人数は増加の傾向にあります。ですので人員を割いて、複数のタイトルを同時に開発するのはなかなか難しいのですが、『エグゾプライマル』のように“会社としての今後の方向性”にも深く関わる、試金石となるタイトルは、是が非でも作っていかなければならないと考えています。

――現在、御社には2500人近くの開発スタッフがいらっしゃいますが、それでも人員は足りない状況ですか?

辻本そうですね。とくに昨今では、タイトルを開発して終わりではなく、発売後も定期的にDLCを配信するなど、長期間にわたって遊んでいただくための展開に注力しているので。シリーズ作ならつぎのタイトルが出るまで継続して遊んでいただいて、“飽きさせない”という命題があるので、発売後も開発が継続できる人員を確保しておく必要があるということです。

――そうした展開がある一方で、『ロックマンエグゼ』や『ゴースト トリック』など、既存のIPの復活・継続に関する需要も高まってきています。既存IPを活用する取り組みについても、ご意見をお聞きしたいです。

辻本これもデジタルが主流になったからこそ実現できた展開ですね。デジタルストアであれば、我々が「これを売りたい」と思ったら、即座に実現できるので。『ロックマン』シリーズの場合、これまでにもコレクション作品を発売してきて、売れ行きなどのデータがあるので、「ここで『ロックマンエグゼ』を出せば、これくらいは販売できるな」という予測を立てやすかった、というのが大きいですね。

 『ゴースト トリック』は、ディレクターの巧舟が手掛けた『逆転裁判』シリーズが、現在、グローバルベースで非常に好調でして。このタイミングで「『逆転裁判』の巧舟がディレクターのタイトルですよ」という紹介をすれば、海外のメディア・ユーザー様に注目されるだろうという狙いがあり、リマスター版を発売することになりました。

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『ロックマンエグゼ アドバンスドコレクション』
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『ゴースト トリック』

――新規IP、既存IPともに、世界を視野に入れて展開されていますが、そうした中、日本のゲーム市場については、どのようにご覧になられているのでしょう?

辻本他地域に比べ、ハードの偏りは感じています。海外では、Nintendo Switch、プレイステーション5、Xbox Series X|S、そのほかにもゲーミングPCやスマートフォンがバランスよく展開していて、それに沿った構成比率で新作タイトルがリリースされています。市場規模としては、いまではアメリカと中国がダントツですが、日本もそれらに次ぐゲーム大国として、国内外の多くのゲームメーカー、クリエイターからいまなお注目されています。グローバルに訴求するため、弊社は以前よりマルチプラットフォーム戦略を掲げ、PCでの展開にも注力しています。

――日本でもゲーミングPCがトレンド入りするなど、徐々にニーズが高まってきていますが、グローバルベースで見てみるとまだまだですか?

辻本残念ながらそうなります。我々が何を危惧しているかというと、ハードのバランスが取れていない環境でゲームに触れてきた人たちが、将来ゲーム開発者になること。多くのゲームクリエイターは、いま現在のゲームをプレイしているユーザー様の中から現れるわけですからね。そのときはたして本当に、多様なプラットフォームでのゲーム開発ができるのか?という、新たな不安の種でもあるわけです。誰が悪いというわけではなく、現状を真摯に捉えて、将来を見据えた展開を模索していかなければならないと考えています。

映像会社カプコンピクチャーズ設立。ゲーム×映像でファン層の拡大を目指す

――根源的な質問になりますが、カプコンのタイトルが世界中で受け入れられている理由は、何だと思われますか?

辻本 ここ数年において……ということでしたら、やはり“RE ENGINE”(※)の存在が大きく関わっていると思います。RE ENGINEを用いることで、よりいっそう高クオリティーな作品を開発できるようになり、『バイオ7』を皮切りに、同シリーズのタイトルや『モンスターハンターライズ』など、グローバルベースで戦えるタイトルが充実してきたことがいちばんの理由ではないでしょうか。

※RE ENGINE : カプコン独自の開発エンジン。

 それともう1点、先ほどのお話と重複しますが、自分たちの判断でデジタル版を戦略を立てながら販売できるようになったことも影響していると思います。現在、約200を超える国や地域でカプコンのタイトルをお買い求めいただけるようになって。もちろん、これらのデータも蓄積して、今後のソフト開発に活かしていきます。

――自社開発のエンジンとデジタルシフトが、現状に大きく影響しているわけですね。

辻本あと、もうひとつ付け加えるなら、毎年必ず、看板タイトルのシリーズ作を発売していることも、多くのユーザー様から支持されているポイントだと捉えています。こちらも話が重複しますが、『バイオハザード』や『モンスターハンター』はエクスパンションタイトルも含めると、毎年何らかの新作を発表しているんですよ。そうして発売後も、次回作の情報が解禁されるまで、定期的にDLCを配信したり、デジタルイベントを実施して、ユーザー様を飽きさせないための施策に力を注いでいる点も、多くの方に愛していただけている理由ではないでしょうか。

【VIPインタビュー】カプコン辻本春弘社長「グローバルで戦えるコンテンツとしてゲーム産業を育てていく」創業40周年を迎えたカプコンの歩みとこれからの展望を訊く
『バイオハザード ヴィレッジ ゴールドエディション』

――カプコンはゲームだけでなく、IPの映像化も積極的に推進されています。このようなワンコンテンツ・マルチユース展開の今後の方針であったり、さらに広げていきたい領域などありましたらお聞かせください。

辻本2022年に映像会社“カプコンピクチャーズ”を設立しました。今後は映像作品への展開にもいっそう注力していきたく考えています。よく「なぜゲームだけでなく、映像事業にまで手を出すのか?」と聞かれるのですが、当社のIPがヒットし続けている理由としては、前述の展開に加え、同じIPが題材の映像作品を定期的に制作していることも大きく影響しているんです。

――具体的にいいますと?

辻本ゲームはしないけど、『バイオハザード』や『モンスターハンター』といったタイトルは知っている……という方は大勢いらっしゃいます。まずはそういった方たちに、映像作品で当社IPに触れていただき、そこからゲームにも興味を持っていただいて、「試しに1本、買ってみようか」という流れに持っていく。こうやって徐々にIPそのもののファンを増やしていくことが、映像制作に積極的に取り組んでいる理由になります。

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――貴重なお話を聞かせていただきましてありがとうございました。最後に、2023年度の展開に対して期待してほしいことなど、カプコンファンやファミ通読者に向けてひと言お願いします。

辻本“カプコンの展望”からは少し話がそれますが、これからの日本で成長していく産業は、エンターテインメントと食だと考えていまして。お隣の韓国では、映画にせよ、音楽にせよ、国を挙げてエンタメを盛り上げようとしていて、そうした取り組みがいい形で機能しています。日本でも同様に、グローバルベースで戦えるコンテンツを育てていくべきですし、現在、それに当てはまるのはゲーム産業しかないと思うので、40年間、最前線で戦ってきた身としては、「ゲームの力で日本をもっと元気にしたい」という思いを強く持っています。

――まさに40周年を迎えたカプコンだからこそ言える言葉ですね。

辻本このように考える根拠というわけではないですが、2022年度のグローバルベースでの販売本数は、全タイトル合わせて4000万本を見込んでいます。この数字は、努力次第でもっと押し上げていけますし、各タイトルのブランド力の向上や、映像作品の展開など、注力できるところはまだまだたくさんあります。

 ゲームのリーディングカンパニーとしては、多くのファンの皆さんに「新しいゲームプレイの楽しみ」をお届けするだけでなく、まったく別の分野であっても、世界に出てがんばっていこうとされている方たちに勇気を与えられるような。そういった企業としての在りかたを念頭に置いて、これからも精進していきたいと考えています。