スクウェア・エニックスの新作スマホRPG『OCTOPATH TRAVELER(オクトパストラベラー) 大陸の覇者』が、10月28日についにリリース。本作は、Nintendo Switch、PC(Steam)向けに発売された『OCTOPATH TRAVELER(オクトパストラベラー)』の、数年前の世界を描く。『オクトパストラベラー』ならではのグラフィックやシステムを踏襲しながら、スマホで遊びやすい形にUIを最適化した作品だ。

 今回は、前作未経験のライター・ハラハジメの視点から、まっさらな状態で本作の先行プレイの感想をお伝えしていく。

 率直な感想は、初プレイだからこその驚きをゲームの各所で体感でき、スマホが悲鳴を上げるような長時間連続プレイをしてしまうほど楽しめた。とくにインパクトを受けた要素は、やさしい見た目のドット絵からは想像し難いハードなストーリーと、そこで起きる驚愕の展開の数々。そのほかにも、長時間に及ぶボスとの熱い戦いなど、さまざまな部分でつねに感情が揺さぶられ続ける作品だった。レビューではその内容を詳しくご紹介したいと思う。

ドット絵なのに立体感と高級感を実現!?

 本作のグラフィックは、ドット絵の進化系である“HD-2D”を採用している。2Dドット絵でありながら、立体感を感じられる表現方法が特徴的だ。

前作未経験者が『オクトパストラベラー 大陸の覇者』を先行プレイ。さまざまな部分でつねに感情が揺さぶられ続けるRPG

 一見、ノスタルジックなドット絵だが、プレイしていると精巧な作りがよく見えてくる。手の込んだ細かい部分は多々あるが、もっとも目につきやすい点を挙げるならば、背景のぼかしと3DのCG効果を利用して奥行きが描かれている部分だろう。

 温かく幻想的なぼかし具合と、高解像度のグラフィックと組み合わさり、ドット絵ながら“立体感”と“高級感”がうまく表現されていると感じた。

 とくにグラフィックで感動したフィールドは、“名声”のクエストが発生する“シアトポリス”の大劇場。室内の下フロアは稽古場になっており、窓の付近と下の階層には白いボカシが入っている。

前作未経験者が『オクトパストラベラー 大陸の覇者』を先行プレイ。さまざまな部分でつねに感情が揺さぶられ続けるRPG

 そう、これは見ての通り、“射し込んだ光が室内のホコリを照らして白く見えるアレ”である。さらに、キャラクターが移動して近づいた場所はモヤが晴れて鮮明に見えてくるので、この演出ひとつで、“ホコリが舞う稽古部屋”と“広い奥行きのある部屋”のふたつを同時に表現している。ホコリの動きも細かく再現されており、この繊細な演出と表現方法を見れば、本作の2D-HDが伊達ではないことを理解していただけるだろう。

前作未経験者が『オクトパストラベラー 大陸の覇者』を先行プレイ。さまざまな部分でつねに感情が揺さぶられ続けるRPG
“立体感のある2D”と言うと「つまり3Dでは?」とツッコミが入るかもしれないが、3Dのドット風の絵とはまた異なる見え方をしている。本当に文字通りの“立体感のある2D”なのだ。

 フィールドでは、キャラクターの移動はスワイプ入力で行うが、道が続く限りは1回の入力でそのまま進んでくれるうえ、ミニマップ上で目的地をタップすると、そこまで自動で移動してくれる。画面を触り続ける必要もないので、快適にゲームを進められた。

一部の場所では、立体感のある視点を活かして、道の陰に宝箱が隠されていることも。これがまた絶妙な立体感の影響で、行きかたを見つけるのが難しいときもあるが、そのぶん、隠し通路を見つけたときはうれしい。独特なグラフィックを利用したおもしろいポイントだ。

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目的地に向かう途中だが、ちらりと見える宝箱が好奇心を掻き立て、寄り道したい気分になってしまう……。
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画面右上部のミニマップでは、一度通った道が明るく表示されて地図が完成していく。初めてのフィールドでは、未開の地を開拓するようなワクワクを感じられること間違いなし。

 本作のグラフィックは、既存の技法をそのまま使用しているわけではなく、高解像度化と3D効果を得て進化したグラフィックであり、懐かしさとハイクオリティーの共存に成功している。昨今の3Dゲームに目が慣れてしまっている方々も、2Dドット絵だからという理由でビジュアル面に見劣りを感じることはほとんどないはずだ。

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なお、キャラクターの詳細画面では、イラストを見ることも可能。

人間味のある重厚な3つのストーリー

 本作のメインストーリーは“富”、“権力”、“名声”の3つをテーマに進行する3本柱の構成だ。ゲーム開始時にはどのストーリーを進めるのか選択し、それに対応する町から物語がスタートする。

 最初に選択しなかったふたつのストーリーも、ゲームを少し進めればプレイできるので安心。気になったストーリーからプレイを開始して問題ない。

 本作のストーリーを進める上で、“富”、“権力”、“名声”それぞれのステータスである影響力が物語の進行に影響してくる。影響力は、メインストーリーを進める、キャラクターごとに発生するトラベラーストーリーをクリアする、仲間を増やすなどを行うことでレベルアップ可能だ。

前作未経験者が『オクトパストラベラー 大陸の覇者』を先行プレイ。さまざまな部分でつねに感情が揺さぶられ続けるRPG
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トラベラーズストーリーは、町にいるキャラクターに話しかけると発生するストーリー。最初は1章までしか進められないが、ガチャでそのキャラクターを仲間に加え、かつ条件を満たすと最後までストーリーが見られるようになる。

 本作では、ゲームの進み具合によって、メインストーリーの敵のレベルは変化していく。RPGあるあるの“レベルを上げすぎて、残ったクエストが作業化”という問題も、この形式ならばほとんど発生しない。自然とトラベラーズストーリーや、未経験のメインストーリーをプレイする流れになり、適正レベルでクエストを進められるので、いずれも新鮮な気持ちで楽しめた。

前作未経験者が『オクトパストラベラー 大陸の覇者』を先行プレイ。さまざまな部分でつねに感情が揺さぶられ続けるRPG
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それぞれのストーリーの起点となる町は、フィールドを挟んで近い範囲に存在している。町などは一度訪れてしまえば、その後はファストトラベルで行き来できるので、ストーリーの同時進行などもラクラク行えた。

 筆者は最初のストーリーに“権力”を選択。このストーリーでは、絶大な権力を持つタイタスと、大切な女性であるリンユウを人質に取られ、望まない薬の研究をさせられているヴェルノートを巡る物語が描かれる。

 ストーリーの詳細はネタバレを考慮して控えさせてもらうが、かなり“容赦のない内容”になっているとだけ言っておこう……。2Dドット絵のグラフィックによって、画面から受ける“容赦のなさ”は少しは中和されているが、プレイしているだけで心が締め付けられるハードな内容だった。

前作未経験者が『オクトパストラベラー 大陸の覇者』を先行プレイ。さまざまな部分でつねに感情が揺さぶられ続けるRPG
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前作未経験者が『オクトパストラベラー 大陸の覇者』を先行プレイ。さまざまな部分でつねに感情が揺さぶられ続けるRPG
タイタスは、まさに絵にかいたような暴君。ヴェルノートとリンユウは、タイタスの目に留まってしまったことで多くの災難に遭遇する。

 “富”と“権力”のストーリーでも、それぞれ“力”を持つ者と持たざる者たちの物語が展開される。どれも人の醜い部分と美しい部分がストレートに描かれており、人間味のあるメインストーリーはプレイヤーの心にさまざまな感情を抱かせてくれる。苦悩や思いやりの精神、現状からの脱却など、我々の現実世界においても通じるテーマが含まれているため、プレイヤー自身とキャラクターを重ねれば、さらに感情移入して物語を楽しめるだろう。

 筆者も、彼らのストーリーを自分の人間関係や社会生活に置き換えることで「自分もあのとき、その選択と行動ができたらな……」と共感してしまい、昔を思い出して目がウルっとしてしまうようなシーンもあった。

前作未経験者が『オクトパストラベラー 大陸の覇者』を先行プレイ。さまざまな部分でつねに感情が揺さぶられ続けるRPG
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町民との人間関係が影響する“フィールドコマンド”

 本作の特徴として、町にいるNPCに話しかけることで、アイテムをもらったり、支援者としてバトルのサポートを依頼したりできる“フィールドコマンド”の機能がある。

前作未経験者が『オクトパストラベラー 大陸の覇者』を先行プレイ。さまざまな部分でつねに感情が揺さぶられ続けるRPG

 この“フィールドコマンド”を行うためにも、各影響力が一定レベルで必要になる。各NPCには必要影響力の種類とレベルが設定されており、ストーリーを進めるほど、より強力なサポートをしてくれるNPCと交流できる仕組みだ。

前作未経験者が『オクトパストラベラー 大陸の覇者』を先行プレイ。さまざまな部分でつねに感情が揺さぶられ続けるRPG

 “フィールドコマンド”は何度も挑戦できるが、勧誘のための交渉やバトルを失敗すると、町の住民全体との関係性が悪化していく。最低まで関係が悪化すると、24時間の“フィールドコマンド”が禁止されてしまうので要注意だ(ただし、酒場でお金を払えば、時間経過を待たずに関係性を改善できる)。

前作未経験者が『オクトパストラベラー 大陸の覇者』を先行プレイ。さまざまな部分でつねに感情が揺さぶられ続けるRPG

 強いNPCの協力を得られれば戦闘がぐっと楽になるが、そのぶん勧誘は難しく、失敗の可能性も高い。堅実に分相応な支援者を集めるか。それとも一発大当たりを狙って強力なNPCに声をかけるか。プレイヤーのスタイル次第でゲームの進行度に影響が出てくる。

 筆者は貪欲な性格なので、必要レベルを満たした瞬間に、強力なNPCに声をかけまくっていた。その結果……戦闘に発展して敗北、からの失敗。何も得られずに信用だけを失うという、まさに自業自得な生活を送ることになってしまった。失ったのがゲームの世界の信用で良かったと、前向きに反省を経験として現実世界で活かすことにしようと思う……。

前作未経験者が『オクトパストラベラー 大陸の覇者』を先行プレイ。さまざまな部分でつねに感情が揺さぶられ続けるRPG
依頼に必要な代金を値切ることも可能だが、もちろん失敗の可能性も高まる。現状の影響力に見合わない人物に協力を求めたり、値切りをしたり、強欲な行動をしたりすると、人々の信用を失うことにつながるわけだ。

ふつうの攻撃ではダメージが与えられないバトル!?

 本作のバトルは、ターン制のコマンド式。スマホRPGのスタンダードのひとつであるシステムだが、本作のバトルには、独自性の強い新感覚の要素が取り入れられていたので、その注目ポイントをより詳しくご紹介しよう。

前作未経験者が『オクトパストラベラー 大陸の覇者』を先行プレイ。さまざまな部分でつねに感情が揺さぶられ続けるRPG

“ブレイク”で相手の隙を作る!

 まず本作のバトルでは、しっかり考えて行動しないと、敵にダメージはほぼ通らない。0ダメージにはならないが、闇雲に攻撃しているだけでは、道中のザコ敵であればまだしも、ボスを倒すことは難しいだろう。

前作未経験者が『オクトパストラベラー 大陸の覇者』を先行プレイ。さまざまな部分でつねに感情が揺さぶられ続けるRPG

 では、どうやってダメージを与えるのか? 敵にダメージを与えるためには、まず弱点を突いて一定回数攻撃して、“ブレイク”させる必要がある。

 敵をブレイクさせると、相手の防御力が下がってようやくまとまったダメージが与えられるようになる。ところが、1ターン経つと相手はブレイク状態から復帰してしまうので、バトル中はブレイク中の敵にどれだけ一気に攻撃できるかが重要だ。

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 もちろん弱点は敵によって異なる。編成の時点で敵の弱点を突けない状態では、かなりのハンデを背負った戦いを強いられてしまう点に注意しよう。

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キャラクターは前衛4人、後衛4人の最大で8人まで編成できる。幅広い種類の攻撃を行えるパーティーを目指すことが大切だ。

 敵の弱点は最初の段階では何もわからないが、実際に攻撃すると、その攻撃が弱点かどうか確認できる。敵の弱点を自らの手で調べていく瞬間はまさに手探り状態なので、自身で攻略の糸口を掴むような感覚がバトルのおもしろさをさらに引き立ててくれる。

前作未経験者が『オクトパストラベラー 大陸の覇者』を先行プレイ。さまざまな部分でつねに感情が揺さぶられ続けるRPG
前作未経験者が『オクトパストラベラー 大陸の覇者』を先行プレイ。さまざまな部分でつねに感情が揺さぶられ続けるRPG
弱点の攻撃を当てると、敵の下の?の表示が変化して弱点が明らかに。つまり、敵の弱点は?の数だけ存在することになる。
前作未経験者が『オクトパストラベラー 大陸の覇者』を先行プレイ。さまざまな部分でつねに感情が揺さぶられ続けるRPG
ブレイク状態から回復した敵が、つぎのターンに先制攻撃を仕掛けてくることも。ただブレイクし続ければいいわけではない点も奥深いポイントだ。

“ブースト”で連続攻撃を仕掛ける!

 上記の通り、バトル中はブレイク中の敵に攻撃を一気に叩き込まなければならない。そこで、もうひとつの特徴である“ブースト”を使った攻撃が重要になる。

前作未経験者が『オクトパストラベラー 大陸の覇者』を先行プレイ。さまざまな部分でつねに感情が揺さぶられ続けるRPG

 “ブースト”は、簡単に説明するならばパワーアップのようなもの。ブーストした攻撃は、その分だけ攻撃回数、もしくは威力が増加。ブレイク状態の敵に最大までブーストした攻撃を行えば、一気に大ダメージを与えられる。

前作未経験者が『オクトパストラベラー 大陸の覇者』を先行プレイ。さまざまな部分でつねに感情が揺さぶられ続けるRPG
まず敵をブレイク状態にするために、弱点攻撃をブーストして攻撃回数を稼ぐという使いかたもある。

 ブーストポイントはキャラクターごとに毎ターンひとつずつ溜まっていき、最大で4段階までブーストが可能。敵を早くブレイク状態にするためにブーストを使うか。それともブレイク状態にさせてからブーストで大ダメージを狙うか。バトルでは、このシステムを利用した戦略性の高い戦いが楽しめる。

 ストーリー上で戦うボスは、レベルをある程度上げた状態でもかなりの強敵。中には10分以上も戦い続けてようやく勝利できた敵もいたほど。戦略的なシステムと、絶妙な強さの敵が組み合わさり、かなり歯ごたえのある戦いが楽しめた。

前作未経験者が『オクトパストラベラー 大陸の覇者』を先行プレイ。さまざまな部分でつねに感情が揺さぶられ続けるRPG
前衛キャラクターのブーストの攻撃でブレイク状態にさせ、その後に後衛と交代して再度ブーストで攻撃を行う攻めかたは、ボス戦で筆者がよく行っていた鉄板攻撃のひとつ。
前作未経験者が『オクトパストラベラー 大陸の覇者』を先行プレイ。さまざまな部分でつねに感情が揺さぶられ続けるRPG
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武器製作やアビリティの解放など、キャラクターの強化要素も十分。

未経験ゆえに驚きの連続! 感情が揺さぶられるRPG

 正直なところ、最初に2Dでドット絵の作品と聞いた際には、昨今の高度な3Dグラフィックに慣れてしまった筆者が本作を楽しめるのか心配だった……のだが、それはまったくの杞憂に終わった。

 プレイ後には、“HD-2D”ならではの魅せ方や、リアルな3Dではなくドット絵だからこそ描ける過激な物語など、むしろこのグラフィックでなければ本作は成り立たないとさえ感じてしまったほどだ。

 懐かしさと美しさを兼ね備えた2Dドット絵。人間の生々しい部分を描いた物語。弱点を突かなければ始まらない戦闘システム。どれも王道をひとひねりした独自性の強い要素で、プレイしたほとんどの人は、どこかで「こんなRPG初めてだ!」と感じる箇所があるはずだ。

前作未経験者が『オクトパストラベラー 大陸の覇者』を先行プレイ。さまざまな部分でつねに感情が揺さぶられ続けるRPG
シンボルエンカウントの強敵を倒してアイテムまでの道を切り開くなど“RPGらしい”ところもしっかり楽しめた。

 前作が発売後に話題を呼んでいたことは知っていたが、こうしてアプリ版をプレイしたことで未プレイだった筆者もそれに納得。同じく未経験の方々にも、ぜひ実際にプレイしていただき、この衝撃と驚きを体験してもらいたいところだ。

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