1994年9月2日にスーパーファミコン用ロールプレイングゲームとして発売された『ライブアライブ』。本作の発売26周年を記念して配信された生放送番組(10月3日20時配信)の内容をリポートする。

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 番組には、『ライブ・ア・ライブ』の開発陣である時田貴司ディレクターや下村陽子氏(音楽)、井上信行氏(バトルディレクター)、倉島一幸氏(キャラクタードット)のほか、ファンであるノブオ氏(ペンギンズ)が出演。作品に関するさまざまなトークが繰り広げられた。

サプライズならあったさ。『ライブ・ア・ライブ』の音楽の素晴らしさを、もう一度教えられた!

 事前に告知されていた「みなさんと一緒に盛り上がれるサプライズ」は、2019年8月31日、東京・新宿ReNYにて発売25周年を記念して行われたライブ“LIVE A LIVE A LIVE 2019 新宿編 ~25th Anniversary~”を開発陣と観る同時視聴企画だった。

 パッケージ化される予定がなかったライブということで、会場の客席後方に設置された定点カメラでの映像という、なんとも味のある内容となっている。

 同時視聴は、現代編のパートで開発陣がプロテインを飲む、近未来編パートではたい焼きを食べる、といった『ライブ・ア・ライブ』らしいものに。ちなみに幕末編ではてんむすを食べていたが、ファンからは「かすていらじゃないのか!」とコメントで突っ込まれていた。いまはてんむすの味が最高なのだろう。

【セットリスト】

  1. SELECT・A・LIVE
  2. LIVE・A・LIVE
  3. 最強-VICTORY ROAD-
  4. Versus!
  5. 猛者達…
  6. KNOCK YOU DOWN!
  7. CAPTAIN SQUARE
  8. Unseen Syndrome
  9. 星屑のキャプテン
  10. Wait for Truth
  11. PSYCHOで夜露死苦!!
  12. いいお天気でしょ!
  13. Kiss of Jealousy
  14. WANDERER
  15. MEGALOMANIA 西部Version(口笛)
  16. 密命
  17. 忍者
  18. 殺陣!
  19. 在中国的戦闘
  20. 鳥児在天空飛翔 魚児在河里游泳
  21. 凛然なる戦い
  22. 届かぬ翼
  23. 魔王山を往く
  24. ILLUSION…
  25. PURE ODIO
  26. MEGALOMANIA
  27. GO!GO!ブリキ大王!!(歌唱:時田貴司氏)
『ライブ・ア・ライブ』のリマスターはないの? ファンからの15の質問に開発陣が回答した26周年記念生放送をリポート
上映された“LIVE A LIVE A LIVE 2019 新宿編 ~25th Anniversary~”の映像。客席とステージを見渡せる。
『ライブ・ア・ライブ』のリマスターはないの? ファンからの15の質問に開発陣が回答した26周年記念生放送をリポート
プロテインを飲む下村氏。

 ライブ映像では“GO!GO!ブリキ大王!!”を時田氏が歌い、会場のファンが大合唱する模様も収録されている。これを観れば、液体人間になんかならずとも、人間はひとつになれることを再確認できるだろう。

「何 それは本当かね!?」開発陣がファンからの15の質問に回答!

 番組のメインとなったのは、事前にTwitterのハッシュタグ“#ライブアライブ26周年”で募集していた本作への質問に開発陣が回答するコーナー。合計15の質問に時田氏や下村氏が当時を振り返りつつ答えた。以下で回答内容を要約して紹介する。

 なお最初の3つの質問は、番組に出演したノブオ氏からの質問だ。

Q1:最初に作ったのが中世編だとインタビューなどで拝見しました。7つのシナリオをクリアーしたら中世編を登場させるという仕様は、どのタイミングで決まったのでしょうか?

 時田氏は「最初から」と回答。オムニバスRPGを制作することになった時に、『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』、『サガ』、『聖剣伝説』がすでにある中で、わざわざ中世編を収録するのかどうかを考えたそうだ。

 やるのであれば最後に出てくるようにして、すべてのシナリオを繋ぐ意味があったらすごいのではないか、王道だからこそ最後に出てきたらプレイヤーがびっくりするのではないか、と開発当初から中世編を最後に構成していたという。

 RPGとしては、中世編がもっともスタンダードな内容だ。マップがありイベントが発生し、バトルもあってパーティーメンバーもいる。中世編を最初に作れば、その他のシナリオのプログラムがすべて揃うと戦略的に制作したそうだ。

Q2:近未来編がお気に入りで、あの熱さは『ライブ・ア・ライブ』でしか味わえませんでした。「なあ・・・そうだろ、松ッ!!」や「無理を通してみせるッ!!」「ろれろホゲェ!」などの熱いセリフは、会議で出し合ってチョイスしていったのか、それとも生み出す方がいたのでしょうか?

 近未来編は、バトルディレクターの井上氏がシナリオを書き、時田氏がイベントに実装(脚色兼演出)したもので、最初の井上氏のシナリオではもっとドライな内容だったそうだ。ちなみに、「ろれろホゲェ!」は井上氏が生み出したセリフとのこと。

 大筋は変わっていないそうだが、時田氏が実装していく中で島本和彦氏の魂がブーストされ、「そうだろ、松ッ!!」などと言いたくなってしまったという。近未来編は島本イズムと井上イズム、時田イズムが組み合わさって仕上がったもののようだ。

 なお、「あの世で 俺にわび続けろ」などの有名なセリフが生まれた土壌として、時田氏はボイス収録がなかったことを挙げた。ボイス収録がないからこそ、シナリオを1回固めた後に、実装してキャラクターを動かしながらセリフを変え、さらにテストプレイをしながら編集して変えて、という練り込む作業が延々とできたそうだ。

Q3:現代編のラストバトルで主人公・高原日勝がいままでに戦ったボスのことを語るシーン。「ジャッキーの力、モーガンのパワー」と力とパワーがかぶっていますが、これは高原の知力がMAXで25だからですか?

 時田氏はインターネットが普及してから『ライブ・ア・ライブ』の感想を見ていたそうだが、そのときに「このセリフかぶっているよね?」という書き込みを見て、初めて気づいたという。さらに「力とパワーはかぶっているから仮で入れて、後で変えようと思っていたらそのまま実装されてしまったのではないか?」と振り返った。

Q4:『ライブ・ア・ライブ』を作ろうと思ったきっかけは?

 スーパーファミコンのROMの容量がどんどん上がっていた当時、RPGを作る際に西部劇っぽいカッコよさ、SFっぽいエッセンス、熱血系など、いろいろな要素を入れやすくなっていたという。だったらばとそれぞれを独立させて、1本のゲームを何十時間と遊ぶよりも「今日は現代編、明日は功夫編」といった形でプレイし、最後にすべてが繋がったらおもしろいだろうという思いから開発を開始したそうだ。

Q5:幕末編にあった「けっこんおめでとり~」は、どなたへのメッセージでしょうか?

 対象はバトルディレクターの井上氏で、奥様は幕末編や中世編の背景を担当していたデザイナーの佐々木由紀子氏(旧姓)。チーム内結婚だったという。番組では結婚26周年(『ライブ・ア・ライブ』と同じ)を祝われていた。

Q6:幕末編最後の選択肢で「おもしろい」を選んだ場合のおぼろ丸が坂本龍馬を刺客から守るシーンは近江屋事件ですか?

 近江屋事件とはこだわっておらず、おぼろ丸がいることで坂本龍馬が死ななかった未来を描いているという。

Q7:斬新な戦闘システムが生まれた経緯は?

 井上氏は開発当時、ターン制のバトルが多かった中で一歩踏み込んだ新しいものを作ろうと思った際に、シミュレーションのような要素を入れたらおもしろいのではないかと考えたそうだ。かなり苦労していろいろな形を試し、最終的にいまの『ライブ・ア・ライブ』に落ち着いたという。

 シミュレーションの効果範囲と射程、位置どりの要素を入れつつ、なおかつアクティブに動かしたかったと時田氏。『FF』のアクティブタイムバトル(ATB)をもっと自分で能動的に動かしたいという思いもあったそうだ。

 また、最初はHPなどの数値表示が一切なかったそうで、ピンチになったらプレイヤーキャラクターがしゃがんだりすることで判断してもらう仕様だったというが、開発を統括していた坂口博信氏(『FF』シリーズの生みの親)から「やっぱり数字は見せないと」と指摘があったという。

 時田氏は「確かに、ゲームはやり込むと数値を極めたがる。そういう人にとって、数値が見えないのはストレスになってしまう」と考え直し、数値を表示するようになったそうだ。ただし、各種数値は常時見えているわけではないので、当初の仕様の名残を感じ取れる。

Q8:現代編の主人公の知力が25で止まる理由は?

 井上氏によると、理由は特にないとのこと。後に「25で止まる」と指摘されて初めて気づいたそうだ。時田氏は、キャラクターにメリハリをつけていった結果、高原の知力が25で止まってしまったとコメント。また、25日は高原の日としてファンがイラストを描いてくれたりするので、結果オーライだと回答していた。

Q9:中世編のキャラクターデザインは誰が手掛けたのですか?

 小学館の漫画家がデザインした7人の主人公とは違い、中世編のキャラクターはスクウェアのオリジナル。中世ファンタジーの主人公としては『FF』の戦士が王道だという考えがあったため、戦士のシルエットは残しつつ、時田氏が紙に描いたラフをもとに加藤清文氏がドット絵として仕上げたそうだ。

 なお時田氏は、当時は中世編はシークレットでパッケージにも描かれていないが、いまだったら出していたかもしれないとコメント。当時は中世編がないことで色物に見られた印象があるそうだが、だからこそインパクトがあり、結果としてはよかったと振り返った。

Q10:作曲がいちばん大変だったのは何編でしたか?

 下村氏は中世編がもっとも大変だったと回答。下村氏としては最後に中世編の曲を書きたい気持ちがあったそうだが、「最初に中世編を作ってほしい」と言われてしまったという。転職して最初の仕事ということで、いい曲を作らなきゃというプレッシャーもあったのか、まったく作れずに植松伸夫氏に「悩みがあるなら聞くぞ」と呼び出されたこともあったそうだ。

 最初に作った“魔王への叙曲”が完成するまでは大変だったそうだが、“魔王への叙曲”ができてからはイメージがつかめて、次に作曲した“凛然なる戦い”はすぐに完成。残りの曲はスルッとできたという。

 ちなみに、功夫編の曲“鳥児在天空飛翔 魚児在河里游泳”の読み方については“とりはそらをとび さかなはかわをおよぐ”とのこと。当時、中国出身のプログラマーにその曲名を中国語で書いたらどうなるの?と聞き、出てきたものをそのまま付けたという。そのため、読み方はいまでもわからないが、下村氏は“鳥は空を飛び、魚は河を泳ぐ”と読んでいるそうだ。

Q11:最終編に出てくる最強防具を落とす隠しボス5体と防具の名前の由来や元ネタは?

 エリアルシリーズの名前の由来については、「ぶっちゃけ覚えていない」と井上氏。石化を防ぐから風をイメージしてエリアルと後付けで考えたが、名前を付ける時は深く考えていなかったそうだ。

 隠しボスのうち、ユラウクスはスクウェアの綴りを反対にしたもの。ジャギィイエッグは階段状のギザギザを指すジャギーから、あとは感覚だという。なお、100回逃げると出現するデスプロフェットについて、当時、時田氏から「100回はない」と必要回数が多すぎるといった意味の指摘があったという。時田氏は、いま制作したとしたらそこまで逃げるゲームにはならないはず、とコメントしていた。

Q12:中世編冒頭の決勝前に、王が勝者にはアリシアに求婚する権利を与えると発言しましたが、あれは事前に告知されていたのでしょうか? それとも、オルステッドとストレイボウが比較的まともそうだったから言ったのでしょうか。

 王様としては、強い血を残すために勝ったものを跡取りにしたいという目論見があるため、基本的には告知していたと思うと時田氏。そして、「そう思うとアリシアもかわいそうだよね」とポツリ。

Q13:西部編のサンダウン・キッドは、なぜ延々とミルクを飲めるのですか?

 時田氏は、昔のゲームは“はい”と“いいえ”の選択肢で正解するまでループするという要素がゲームの文法としてあったとコメント。

 メモリなどに余裕があったら、ミルクを30杯くらい飲んだらお腹を壊してトイレに行く、といったイベントも入れていたかもしれないと振り返った。「でもそれでゲームオーバーになったらクソゲーだと思うでしょ、皆さん」と視聴者に言葉を投げかけていた。

Q14:来年や30周年等、今後のイベントについてどのようにお考えですか?

 来年のイベントについて時田氏は、「この状況が解決に向かうと信じて、また皆さんとライブでお祝いできるといいな」とコメント。また、次回は会場でのライブと配信を検討しているという。

Q15:(海外のファンからの質問)『ライブ・ア・ライブ』は『ロマンシング サ・ガ3』みたいに海外で発売してくれないの? スクウェアの16ビットのゲームは素晴らしい! スーパーファミコンのゲームのリマスターを期待しています。私はターンベースの日本のRPGが懐かしいです。アクションゲームばっかりじゃやだよ!

 いままで続編やリマスター版、リメイク版が発売されていない『ライブ・ア・ライブ』。

 海外ファンからの質問に対して時田氏は、「こうやって皆さんが応援していただいているから、今日も生放送ができていると思います。新しい形でまた何か提供できるように、皆さんといっしょに『ライブ・ア・ライブ』の世界を楽しめるようにがんばりたいと思いますので、引き続き熱い応援をお願いします」と回答した。

 26周年を記念した生放送も、この質問で最後。時田氏は「また来年、いっしょに27周年を迎えられるように皆さんお気をつけて健康にお過ごしください。皆さんの応援を形にできるように僕もがんばりますので、引き続き『ライブ・ア・ライブ』ファンの皆様、応援お願いします!」と番組を締めくくった。