開発時のエピソードも披露
2016年7月30日よりスタートした、スクウェア・エニックスの『サガ』シリーズと佐賀県のコラボレーション企画“ロマンシング佐賀3”。
これまでにリポートでお伝えしてきた通り、佐賀市エリアでは、原画展“ロマンシング佐賀展”(佐賀県立美術館にて2016年9月4日まで開催)を始めとする企画を実施。嬉野市エリアでは、温泉とコラボレーションした“佐賀風呂”などの企画が実施されている。
本記事では、2016年7月30日に行われた、スクウェア・エニックス 『サガ』シリーズ・エグゼクティブプロデューサー 河津秋敏氏、スクウェア・エニックス 『サガ』シリーズ・プロデューサー 市川雅統氏、イラストレーター小林智美氏の会見とメディアインタビューの模様をお届けする。
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――“ロマンシング佐賀展”をご覧になっての感想を教えてください。
市川 今年の頭からずっと企画を進めていたのですが、佐賀県立美術館に入るのは今日が初めてだったので、すごく広くてきれいで、驚きました。イラストが美しく映えているのが印象的でした。
小林 変化に富んだ展示をしてくださって。もっと開発資料などが展示されているのかと思っていたのですが、自分の絵がほとんどだったのでビックリしました(笑)。すごくうれしかったです。
河津 自分がイラストを見るときというのは、色をつけていない線画の段階のもので、その段階で「もうちょっとこうしてください」、「オーケーです」というお返事をすると、その後、完成品はちょっと見るだけなんです。後はデザイナーだったり宣伝スタッフだったりが担当しますので。ですので、色のついた原画をじっくり見たことはほとんどなかったんですね。今回はすごく近くで、じっくり見られてよかったです。生で見られるというのはすごく貴重なことなので、皆さんにも楽しんでもらえたらなと思いました。
小林 いつもアトリエの雑然とした机の上で見ている絵が、額装されて、きれいにおめかしされた状態で見ると、感動もひとしおな感じです。
市川 小林智美さんのイラストがここまでズラッと並んでいるさまは、これまでスクウェア・エニックスのスタッフも誰も見たことがないものでしたので、壮観でした。
――70点ほどのイラストが展示されているとのことですが、思い出深い1枚は?
小林 ひとつには決められないのですが、大きな絵は精神力も体力も使いますので、4月ごろに描いた、新作の“光焔万丈”は思い出深いです。ファイアブリンガーは、私もとても気に入っているキャラクターです。それから、『サガ フロンティア』の絵でしょうか。当時、主人公が7人いるから、ぜったいに7種類イメージイラストを描いてくださいと言われて、「えーっ」って(笑)。必死になって描いたことが走馬灯のように思い出されました。
市川 ここ数年は、智美さんの家にイラストを取りにいかせていただくことが多いのですが、“光焔万丈”はタクシーに入らなくて、自分でクルマを運転して取りに行きました。“光焔万丈”は、これだけ大きい美術館で見るとすごく映えますね。
小林 “光焔万丈”は大きい絵ですが、画材屋さんに行ったら、さらに大きい紙が売っていて。タテ110センチ、横9メートルという(笑)。これ、天野喜孝さんの絵だ! と思って。いつかはこれに描きたいな、と思ってしまいました。でも、部屋に広げられないので、巻き物のようにクルクルと巻きながら描かないといけないかもしれません。
河津 みんないい絵なんですけれども、おもしろいなと思ったのは、『ロマンシング サガ -ミンストレルソング-』の攻略本用に描いてもらった絵です。背表紙がくるところが空白になっていて、両側にキャラクターがわかれているんですね。どうしてこういう絵なんだろう、と不思議に思われるかもしれませんが、本の表紙にするという理由があるんです。ゲーム用の絵ならではの構図かな、と思いました。
――絵を描いていた当時のエピソードを教えていただけますか?
小林 河津さんは予定調和がお好きじゃないみたいで、こちらがどう出るかを見ていらっしゃるところがあるんです。河津さんの中に、なんとなくこういうものという思いがあって、河津さんなりの言葉で伝えてくださったりするのですが、私が違う風に受け止めてしまうと、リテイクが何度もくるんです。
――とくにリテイクがあったキャラクターは?
小林 『サガ フロンティア』のヒューズですね。それから、今回展示してある、『サガ スカーレット グレイス』のレオナルド。“北関東系です”と言われたのですが、私は北関東系が何かわからなくて、「力士かな?」と思ったり(笑)。それから、河津さんから「ジェームズ・ディーンみたいな感じ(映画『ジャイアンツ』のジェット・リンクのような)」、「ちょっと怖い感じなんだ」と言われて、顔だけ10種類くらい描いてみたら全部リテイクになったりして。彼についてはそんな思い出があります。
――“ロマンシング佐賀3”コラボグッズの中で、お気に入りのものはありますか?
市川 僕はロビンとにせロビンが描かれた、“佐賀のり”のデザインがすごく好きで。なかなかおもしろいものができたと思っています。『ロマサガ3』のロビンとにせロビンを選んだのは、色からです(笑)。
小林 どれも素敵だと思うのですが、昨日、初めて“佐賀のり”を見て、これはいい! と思いました(笑)。サイダーは、瓶が小柄なので、飲み終わったら花瓶になるなぁ、と思いましたね。ブレンドティーは、レオニード様などがプリントされていて、エレガントでいいですね。
河津 『サガ スカーレット グレイス』のファイアブリンガーの扇子ですね。『サガ スカーレット グレイス』の初めてのグッズで、いい感じにできているなと思いました。
――“ロマンシング佐賀3”のグッズは、『ロマンシング サ・ガ3』のキャラクターがあしらわれているものが多いですが、『ロマンシング サ・ガ3』に関する思い出を教えてください。
河津 ゆきだるまとか、ロブスターとか、ちょっと変わったやつが出てくるのですが。ゆきだるまのデザインを最初にお願いしたとき、ヨーロッパ風のものを描かれてきたので、「いや、そうじゃないんです、日本風の炭団がはまっているやつです」とお伝えしました(笑)。
小林 ミシュランのキャラクターのようなデザインを描いたんです。そうしたら、「ふつうでいい」と。
河津 ロブスター(ボストンのこと)は後ろの部分や鎧の部分に星がついているんです。当然、こちらから何も指定はしていないんですが、小林さんが黙って星を描いてきて。
小林 模様がなくちゃいけないかな、と思って。変化を持たせようとしたんです。
河津 そこにこちらもインスピレーションを受けますね。『ロマサガ2』のときに、“トカゲ”とだけお願いしたら、エリマキトカゲを描いてきたんですよ、小林さんは。これはやっぱりすごいなと。これはプロのイラストレーターだと。社内のアートスタッフに「トカゲを描いて」と言っても、ぜったいにエリマキトカゲは描いてこないです。そこまでは踏み込めないんです。“造形することで生きている”という凄みみたいなものを感じましたね。
――佐賀県立美術館がある佐賀市エリアのほか、嬉野市エリアでもコラボが行われていますが、嬉野市での企画について教えていただけますか?
市川 224 porcelainさんのすごくおしゃれなショップに、たくさんのグッズを置いてくださっています。それから、コラボプランを実施している嬉野館さんと入船荘さん、どちらもすばらしかったです。コラボ部屋には智美さんの色紙も飾ってあります。湯宿広場もぜひ体験してみてください!
河津 市川が足湯に浸かっている写真を撮ったのですが、疲れ切った表情で、「もっと癒されている表情をしてよ」と言いました(笑)。
市川 レンタカーの運転を担当したのですが、初めての道を運転するのに疲れてしまって(笑)。でも、足湯で元気を取り戻したので、帰りも運転できました(笑)。
――皆さんが考える佐賀県の魅力とは?
小林 牛です(笑)。昨日、佐賀牛をいただきました。
市川 アツい人が多いです。いろいろな企業の方々とコラボさせていただくのですが、情熱的な方が多くて。佐賀と『サガ』をどうやったらよく見せられるか、とこだわったものを作ってくださったので、コラボグッズもいいものになっていると思います。
河津 自分は九州人なのですが(熊本出身)、すごく思うことは、佐賀県だからできたことだ、と。佐賀県はいい意味でコンパクトなので、集中できる。コラボをここまで進めてこられたのも、佐賀県の皆さんの取り組みのおかげですね。